僕のヒーローアカデミアーブラッドオブボンゴレー 作:ゴールデンバナナ64
両脚を怪我した緑谷は保健室へ運ばれ、それ以外はモニター室へと戻る。
爆豪は未だ呆然とし、色々な感情でぐちゃぐちゃになってしまっているようだった。
チラリと様子を見つつ、オールマイトは講評に移る。
これは授業である。オールマイトは雄英の教師、限りある授業の時間は有効に使わねばならない。
そして長引けば当然、
「と言っても、今戦のベストは沢田少年と飯田少年だけどな!何故だかわかる人~~~!!」
ボッっと音がするほどパワフルに手を上げるオールマイト先生に追従して手を挙げたのは八百万だった。
「ハイ、オールマイト先生。それは沢田さんと飯田さん。どちらも状況設定に順応していたからですわ。あらかじめ”個性”が割れている分、お互いの作戦は読まれやすい。現にヒーロー側の作戦は沢田さんに見抜かれていました。もちろん、屋上まで素早く移動できる移動力を持たなければ麗日さんに侵入を許していたと思われます。ですが沢田さんは自分が取れる手段を最大限活用し、屋上へ先回りしていました。もし、屋上へ向かわずに一階から三人の侵入を許していたとしても、屋上から切り返して爆豪さんと合流するか、核兵器を防衛することが出来る。沢田さんはそこまで考えて麗日さんを確保しに行ったのだと思います。そして早期に麗日さんを確保して上からの攻め込まれる選択肢を潰しました。ヒーロー側の”個性”の特性を良く分析したいい立ち回りだったと思いますわ。そして飯田さん。飯田さんは作戦こそ見破られましたが、自身の”個性”を最大限生かせる選択肢を取りました。核兵器の場所が分からない以上、部屋をひとつひとつ探していくしか方法はありません。2対1で爆豪さんを抑え込むことも出来ましたが急造チームアップというシチュエーション上、連携を組むのは難しいでしょう。二人で足を引っ張り合うよりは緑谷さんに任せて自分が核兵器を探すことに集中した。もしかしたら沢田さんよりも先に核兵器の場所へたどり着く可能性も無くはなかった。あの場面でヒーロー側が取れる最善の一つだと思いますわ...緑谷さんも爆豪さんを確保したという功績はありますが、自爆覚悟で突っ込んだことは愚かな選択だと思います。緑谷さんの機動力ならば、あのまま逃げ続けることも出来たはず。麗日さんは沢田さんを避ける立ち回りはかなり良かったと思いますが、一度技を見せてしまえば当然警戒されます。二度同じ選択を取ってしまったのが運の尽きですわ。爆豪さんは誰が見ても分かるように、私怨丸出しの行動。そして一歩間違えば緑谷さんを殺していたかもしれません...ヴィラン側とはいえ、あくまで対人訓練。やりすぎです」
「Oh...全部言われちゃったよ...」
「常に下学上達!一意専心に励まねばトップヒーローになどなれませんので!」
さすが推薦入学者。何も言えずオールマイトは静かにサムズアップした。
そして全員の訓練が終わった頃───
「お疲れさん!!緑谷少年以外は大きな怪我もなし!しかし真摯に取り組んだ!!初めての訓練にしちゃ皆上出来だったぜ!」
無事に、とは言いづらいが、授業を終えて1-Aの生徒達は物足りなさというか呆気なさを感じていた。
「相澤先生の後でこんな真っ当な授業...何か拍子抜けというか...」
「真っ当な授業もまた私たちの自由さ!それじゃあ私は緑谷少年に講評を聞かせねば!着替えて教室にお戻り!!」
オールマイトは一瞬で走り去っていくと、生徒達は教室へ戻るべく、更衣室まで歩き出す。
「緑くん大丈夫かなぁ」と芦戸三奈(あしどみな)が呟いた。
ピンクのヒョウ柄の派手なデザインにアイマスク。彼女の趣味が出たコスチュームだ。
「リカバリーガールがいれば大丈夫だろ」と瀬呂範太(せろはんた)。
肘にあるテープ状の物体を自由に出す器官が特徴的。顔は、地味だ。
「それにしても沢田君!俺達の作戦を見抜いていたとは...俺もまだまだ浅かった...!」
「いや...”個性”をお互いに把握してたから出来た事だし、ヒーロー側の方が状況は不利だったからそこを突いただけだよ」
「沢田ちゃんって、炎を出してる時と出していない時、ちょっと雰囲気違ってるわよね」
ケロッと蛙吹が口を挟む。
「あっ、ええと、蛙吹さん...”個性”を使っている間はいつもああなんだよ。余計な事考えている暇がないというか...集中しているというか...」
「梅雨ちゃんと呼んで、沢田ちゃん。二重人格とはまた違うものなのね、不思議だわ」
「梅雨ちゃん...女子を呼び捨てなんて...あわわ...」
赤面する綱吉に左側がゴツゴツしたコスチュームを着た、もう一人の推薦入学者の轟焦凍(とどろきしょうと)が話しかけてきた。
「沢田、お前の”個性”ただの炎じゃねえよな?」
死ぬ気の炎は事前知識無しで見れば純粋な「炎系」の”個性”だと認識するだろう。
だが、個性把握テストと今回の実戦訓練を経て、轟は死ぬ気の炎が普通の炎と違うことを見抜いた。
「君は、轟君。そうだよ。死ぬ気の炎っていうのはただの炎じゃない。生命エネルギーのかたまりみたいなものなんだ。炎みたく物を燃やしたりすることには向いてないんだよね」
「「焼き饅頭」みたいなものか...わかった」
焼き饅頭。その独特な解釈に困惑しつつも、何か思い詰めたような表情の轟に特に何も言うことはなく、綱吉は更衣室へ戻るのだった。
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とある、喫茶店──────
広げた新聞紙に載せられた見出し、書かれていたのは「オールマイト、雄英の教師に!」という記事。
一面のトップを飾ったその内容はヒーロー側だけでなく、ヴィラン側も騒がせることとなる。
平和の象徴が、雄英高校で次世代のヒーローを育成する。
それだけでない。ヒーローとして日本中を飛び回っていた存在が、雄英高校へ縛り付けられるということも意味している。
真に賢しいヴィランは、それを見逃さない。
「へぇ...教師になるんだ...なァ どうなると思う?平和の象徴が.......
「...失せろドカスが...気安く話しかけるんじゃねぇ」
身体中を掌に覆われた不気味な青年と、顔の傷が特徴的の、鷹のような鋭い目つきの青年が話していた。
不気味な青年は軽く舌打ちをし、傍らでたたずむ黒い巨体に目を向ける。
「おい...お前から先に殺してやろうか」
冷たく言い放たれた言葉を傷の青年は鼻で笑い飛ばす。
「ハッ...そのでかいオモチャでか?ウチのモスカの方がまだマシに見えるがなぁ」
「死柄木弔(しがらきとむら)、ザンザス、ここで喧嘩はやめて下さい...ザンザス、あなたは雇われの身。雇い主に従順になるのも仕事のうちでは?」
ザンザスと呼ばれた男は、割って入ってきた黒い煙のような男へ視線を移す。
「てめぇは喋るんじゃねぇ。誰が割って入っていいと言った?」
その言葉とともに掌が輝き出す。
その圧倒的な威圧感に、煙の男は背中に冷たいものを感じた。
(裏社会では知らぬ者はいないと呼ばれるこの男...雇ったのは彼と聞きましたが...横暴すぎる...)
「あぁ...もういいか...お前で試運転といこう」
不気味の言葉と共に、ゆっくりと黒い巨体が動き出した。
「裏社会で有名とか聞いてたけど、コイツ一人殺せないんじゃオールマイトなんかヤれないよなぁ」
「おもしれぇ...かっ消えろ」
その口を獰猛に吊り上げ、目の前の標的を黒い巨体へと変えたザンザスはその掌を黒い巨体へと向けた。
「やめなさい二人共」
輝きが牙を剥こうとした瞬間、備え付けられたモニターから音声が流れた。
「チッ...」
「先生...」
先生と呼ばれた声の主は、同時にザンザスを雇った「彼」でもある。
雇い主の言葉に、ザンザスの掌は輝きを消した。
「老いぼれ...飼い犬の首輪くらいちゃんとかけろ。次はかっ消す」
「すまないね、ウチの弔が」
「先生...なんでコイツを雇った!?コイツ以外でも数は十分だろうが!」
「平和の象徴を殺すには万全の準備が必要だからだよ。「脳無」...そこにいる改造人間を含めても足りないかもしれない。確実に殺すための彼さ...彼の力も加わればオールマイトもただでは済まない」
「オールマイトを殺すのは俺だ。ドカスの出る幕はねぇ。帰る」
「承知しました...お送りします」
「チッ...コイツ本当にムカツクなぁ...高い金払ってやってんだからちゃんと仕事しろよ...?」
黒いモヤの中に消えていく男を見送った後、弔と呼ばれた青年は新聞紙を握り込んだ。
塵になっていく新聞紙を見ながら呟く。
「暗殺専門の傭兵部隊「ヴァリアー」...お手並み拝見してやるよ...」
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実戦訓練を終えた放課後───
緑谷が戻り爆豪と何か話した後、帰る身支度をする緑谷を待つべく綱吉は待機していた。
「ごめん沢田君!着替えに戸惑っちゃって...」
片足にギプスと松葉杖姿の緑谷。
体力を消耗していたため、リカバリーガールの”個性”でも回復しきれなかったようだ。
「デクくん大丈夫!?片足だけ治してもらったんだね」
麗日も緑谷を心配して一緒に待っていた。
足以外は問題無さそうなことを確認すると、綱吉は話を切り出した。
「両脚を折るような無茶をしたらしいね。コントロール出来てたと思ったんだけど...」
「いや、”個性”で折ったわけじゃなくて...これは僕のひとりよがりみたいなものなんだ」
苦笑いしてそう話す緑谷。
「ひとりよがり?男のインネンってやつかぁ」
麗日が分かったような、分からないような曖昧な返事をする。
「かっちゃんと僕は幼馴染でさ、何をするにも僕はかっちゃんの背中を追いかけていて、憧れてたんだ。でも”個性”が発現してからあんな感じになっちゃって...それでも凄い奴だったから...僕も逃げてばかりじゃなくて、正面から勝ちたくてさ...思わず飛び込んでた」
「でも、今日は勝てたんだね!」
「あれは勝ったとは言えない。かっちゃんは冷静さを失っていたし、半分不意打ちみたいなもんだったから...自分の”個性”で大怪我をさせてしまったこと、かっちゃんもかなり応えてると思う」
「爆豪君にはその件を話してたのか」
「いや、それもあるんだけど...もっと大事なことを...」
後半につれ緑谷の言葉が詰まっていく。
何かまずいことでも言ったのだろうか。今後に関わる重大な秘密を明かしたことは綱吉には知る由もないのだった。
ザンザスと「ヴァリアー」一体何者なんだ...?
原作ではなんやかんや味方ですが、今作では敵に回ってもらいます。
リボーンは前章の敵が味方になるので敵と言える敵がいないのがなんとも...