知っているのはゲームだけ。
 それも流行りでやっていただけで、メジャーなスキルくらいしか知らない。
 そんな男がウマ娘への世界に。
 (ゲーム通り桐生院トレーナーやたづなさん、学園長と戯れてたらシンボリルドルフに旅館でチェックメイトされるまでの話です)以上。

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 ゲームやってて、たづなさんとか桐生院トレーナーと出掛けて体力回復できるのおかしいよな、と思って出来た流し書きです。



 


キングメーカー

 

 ――この世界に来てから二十年が経った。

 

 

 

 『ウマ娘プリティダービー』。

 自分が今生きている世界はそう呼ばれていた。自分が生きている世界に対して呼ばれていた(・・・・・・)という言い方がおかしいことは重々承知だが、自分からすればそれは当然のことであり、即ち——この世界以外で暮らしていたことを表している。

 それもそのはずで、自分は『ウマ娘プリティダービー』を知っていた。厳密には流行りに乗ってプレイしていただけであるのだが、‟ウマ娘”という不思議な女の子たちがトレーニングして、走り、競い合い、そこにライバル同士の甘酸っぱい青春があったりする――ゲームだと。

 そう、ゲームなのだ。

 この世界は、いや、ゲームの世界観であって現実じゃないのだ。にも関わらず自分は生きている。別に死んだ後神様に話しかけられたとか、いきなり呼ばれたとかそういうものではなく、日々を普通に過ごしていると目が覚めて胎内にいた。ほわほわとした、詳しく覚えていないが漠然とした生きているな、という感覚だ。

 思えば二十年よく生きてきたものだ。しかし、あなたが今生きている世界に違和感を持たないように、自分も今生きている世界に違和感は持たない。野生から離れた人間は動物に比べて〜〜なんて言葉を度々耳にするが、人間の適応力もまだまだ捨てたものじゃないとひしひし感じた。

 

『――君が帝道を歩もうとするなら』

 

 そして、今――。

 せっかくなので、この世界を堪能しようとトレーナーになった自分の目の前に初めて担当するウマ娘がいる。

 

『自分がその道にレッドカーペットを敷こう』

 

 名前をシンボリルドルフ。

 茶、黒、月のような弧を描く白い前髪が特徴的でウマ娘たちが通う学園の生徒会長であり、デビュー前から最高と名高い一人だ。

 

『大丈夫――自分がいる。

 君は玉座に向けて走り続けるんだ。やがて君の出場するレースすべてが‟皇帝”シンボリルドルフの凱旋と謳われるまで、君の隣にいよう』

 

 人の上に立ち、民を説く――王ではなく。

 すべての挑戦者たちを薙ぎ払い、無敵に君臨する――覇王ではなく。

 人の上に立ち、民を説き、圧倒的姿の前に挑戦者たちを傅かせ、憧れを抱かせ先頭を走り続ける――皇帝。

 

『ウマ娘たちに相応しい皇帝に君はなれる』

 

 

 

 

 

一、

 

 

 

 

 

 そうやってシンボリルドルフを口説いたのが三年前だ。

 一応、トレーナー養成学校で基礎を学び、応用も修学したわけだが実際にウマ娘を指導するとなれば学んできたことがまったく無意味の場面にも遭遇するだろう。心の動きほど不確かなものはなく、予想できないものはない。ただ、シンボリルドルフの目標は『皇帝』であるため、そのぶん歩かなければならない道筋は一先ずURA優勝まで立てることができる。そこら辺の大人よりも大人なシンボリルドルフだが、逆に辺に気を遣わせてストレスが溜まってしまってもいけない。こちらは襟を開きつつ、向こうには踏み込み過ぎずにコミュニケーションを取るのが最善だろう。

 

『好きなことは?』

 

『チェスは好きだよ。よくエアグルーヴと……副会長と空き時間に指していてね』

 

 なるほど、チェスか。

 将棋はやったことがあるもののチェスは片手で数えられるくらいしかやったことがない。

 よし――。

 

『君のことをもっと知りたい。これからたまにチェスに誘おうと思うんだが大丈夫かな? あと、出来れば教えてくれると嬉しい』

 

『本来指導をする立場のトレーナーにチェスを教えることになるとは……君は面白いね』

 

 ちなみに、三年経った今ではようやくシンボリルドルフを倒せるようになってきている。しかし、自分に教えてくれているだけあって彼女には自分が指す癖を見抜かれており、勝ち越すことは不可能だろう。

 デビュー戦まではありきたりなトレーニングメニューを立てつつ、その中でシンボリルドルフの長所と短所を見抜いていく。ウマ娘によって重心が変わり、走る姿勢を変えなければならなかったり、意識する歩幅を調整しなければならないのだ。こういったことは実際に担当するウマ娘が決まらなければわからないので、担当後の迅速な把握が重要だ。

 

『シンボリルドルフ。君は脚が長い分、歩幅が広がりがちだ。今までの模擬レースの頻度なら大丈夫だが、デビュー戦を終えた今、目標次第では連続出場もありえる。そうなると膝や靭帯に負担がかかってステイヤーとして短命になるかもしれない。今まで走ってきた感覚を変えるとなると本番のレース中にとてつもない違和感を感じるだろう。でも、君なら出来ると自分は信じている。夏合宿までには調整していこう』

 

 ゲームではわからなかったウマ娘のリアルな事情はトレーナーとして自分も成長出来たと思う。

 そんなこんなでシンボリルドルフの走り方を調整しつつ、夏合宿で自分はあることを思い出した。

 そう――サポートカードだ。

 サポートカードとは育成するためのウマ娘のトレーニングを補助してくれるもので、得られる力を増やしてくれる。スピードを上げたければスピードカードを入れ、パワーを上げたければパワーカードを入れる。そうやって能力値を上げながら強いウマ娘を育てるのだ。

 そのことを思い出したのは砂浜でシンボリルドルフとナリタブライアンが二人で走る姿を見たからだ。中距離はともかく、長距離は走り慣れたウマ娘でもスタミナ管理が難しい。ここは本番の経験がものを言うのだが、デビューしたてのシンボリルドルフにはそれがない。しかし、合宿中の模擬レースでシンボリルドルフが先行で走ると普段よりスタミナに余裕があったように見えたのだ。先行と同じくらい得意な差しでも走ってもらったが、先行のほうが息が切れにくくなっていた。

 

 目に見えないが、サポートカードと同じような効果はある。

 

 このことに気付けたのは幸いだった。

 ゲームと違ってわかり辛くはあるが、たしかに効果がある。他のトレーナーやウマ娘が理解しているのか知らないが、間違いなくシンボリルドルフの力になるのだ。

 そうなれば、共に練習するウマ娘の選択が難しくなる。自主トレーニングまではさすがに口出しが出来ないので、せめて本トレーニングでは管理したい。もちろん、シンボリルドルフから提案があれば尊重するつもりだ。

 自分がまず誘ったのスーパークリークだ。

 彼女はゲーム内でも一、二を争う優秀なスキル『円弧のマエストロ』と『末脚』を教えてくれる。ステイヤーのシンボリルドルフは必須スキルだ。

 毎日中距離で最終コーナーからゴールまでのタイムを図り、連続して最速タイムが出たところで『末脚』を習得したと判断。『円弧のマエストロ』はもう少し時間がかかると思ったが、ジュニア級中盤後期でコーナーで力強い走りを見せるようになったため習得したことを確信した。

 シンボリルドルフのサポートカード云々を並行して、自分はさらに恩恵を受けようと他トレーナーなどへ顔を合わせに行っていた。トレセン学園理事長秘書の駿川たづなと同期トレーナー、名門桐生院を生家とする桐生院葵の二人だ。

 この二人のサポートカードは担当ウマ娘と一緒にトレーニングするといったものではなく、自分とイベントをこなすことで担当ウマ娘に疲労回復やスキルを得るためのポイントがもらえるのだ。疲労回復効果がどう出るのかわからないが、スキルポイントはコツや助言といった形になるのだと思う。

 

『となると、疲労回復はトレーナーが出掛けていないためトレーニングは休みになった、ということかもしれないな』

 

 特にシンボリルドルフは頑張り過ぎるきらいがある。怠け癖があるよりマシだが、時にそれはマイナスにしかならない。ある程度の理由付けがあったほうが良いだろう。

 

『ルドルフ。すまないが、明後日のトレーニングは午前までだ。午後からは用事が入ってな』

 

 ちなみに、あたかも急用のような言い方をしているが練習密度はいつも通りだ。

 

『急用……?』

 

『ああ。桐生院トレーナーから隣県のトレセンに誘われたんだ。前回のGⅡで君と直線を競ったウマ娘がいただろう? 彼女がいるらしくてな。あの速さの秘密を探ってくる』

 

『そうか。なら、私は久しぶりにエアグルーヴと——』

 

『次の日の、元々休日だった午前まではいないから何かあれば連絡してくれ』

 

『丸一日いないのか? 隣県には泊まりで?』

 

『ああ。桐生院トレーナーが実家の伝手で宿を手配してくれたんだ。ルドルフには悪いが、ほんの少しだけ良い思いをしてくるよ』

 

『気にしなくて良いさ。いつもトレーナーにはお世話になっている。寝食くらい私のことを考えず楽しんできて欲しい…………それにしても、桐生院トレーナーか……』

 

 無事、ルドルフは休養を過ごせたようで次の日からの練習は力が入っていた。こちらもさり気なく向こうのトレーナーから聞き出したトレーニング方法を二人で行いつつ、有用な部分はこれからも継続することを決めたのだ。

 そして、ルドルフにとっては運命の一戦。始まりとも言える戦いが始まる。

 ――七冠の一番。クラシック三冠の皐月賞だ。

 ウマ娘たちの手本、憧れになるべく‟皇帝”を志したルドルフ。ここで躓けば終わりに等しい重要な局面。しかし、意外にも結果は大差を開いたルドルフの圧倒的勝利。この日からルドルフの名声は格段に上がったのだ。

 

『おめでとう。ルドルフ』

 

『ありがとうトレーナー。まずは一つ。私がスタートラインに立てたのも君のおかげだ』

 

『そんなことはない。君の努力が身を結んだ、それだけだよ。

 これを言うにはもう少し余韻に浸っていたいが……』

 

『わかっている。まだ一つ目だ。私が欲しているのは七つの冠。慢心も油断もしない』

 

 残り六つ。

 正直、クラシック三冠は確実に取れるだろう。あと二つのダービーと菊花賞。出走するであろうウマ娘たちも実力高いが、それ以上にルドルフは強い。今自分がやるべきはシニア級に上がってからの行動方針とその骨組みを作ること。先行策をとっているルドルフは同じシニア級のウマ娘に負けないようにパワーを上げるか、抜け出るためのスキルが必要だ。

 

『ヒシアマゾンはいるだろうか?』

 

 そこで求めたのは『先行のコツ』。良い位置に着きやすくなるスキルだ。本来ならば『スピードスター』が良いのだが、『先行のコツ』は寮長として生徒会と関わりのあるヒシアマゾンが持っている。彼女は中・長距離を得意とするため、ルドルフとの練習は互いに良い影響を与えあうだろうと考えたのだ。

 

『はいはい〜……って、会長のトレ公じゃないか!』

 

 ヒシアマゾンには簡単に事情を説明して、ダービーを獲ったあとは菊花賞までの約五ヶ月間定期的にトレーニングへ参加してもらう約束を取り付けた。どうやら彼女は来年のデビューを考えているらしく、ちょうど緊張感を高める練習相手を探していたようだった。

 

『たまには昼から映画も良いですね』

 

『はいっ。お付き合いいただいてありがとうございます』

 

 もちろん、桐生院トレーナーやたづな秘書との関係も忘れない。休日を利用して一定の間隔を空けて交互に出掛けている。

 

『探究ッ! ウマ娘にあったトレーニング器具を探すのもトレーナーの仕事だな!』

 

 そして、学園長との関係は二人以上に大切かもしれない。何故なら学園長は気まぐれに強力なスキル『ハヤテ一文字』と『好転一息』のどちらかをくれるのだ。自分が欲しいのは『ハヤテ一文字』。ルドルフの直線速度を上げたい。

 

『共用トレーニング室に置くならこちらのほうが良いのでは? 少し値が張りますが、ウマ娘の脚質に合わせてペダルと長さが変えられます。数が揃えやすいのはそちらですが、質と怪我を防ぐなら断然こちらかと』

 

『納得ッ! なら学園のエアロバイクはすべてこちらに入れ替えよう!』

 

 と、もう少し悩むのかと思ったら決まってしまった。たづな秘書曰く、学園長は見た目年齢ともに少女然としているがウマ娘たちを思いやる気持ちと経営はピカイチらしい。自分も話していてそれは感じており、その行動力と決定力は頼もしくあった。

 

『……空腹ッ! どうだろう。この近くに美味しいレストランがあるのだが夕食は?』

 

『もしかしてビジネス街にある――』

 

 ルドルフの実力は順調に上がっていき、おそらく出会った当初の倍以上は成長していると感じられた。先行策で安定した脚質とそれを可能にするスピードとパワー。集中してトレーニングをこなすことで上がっていくスタミナと最後まで走る抜くための根性。何より大事なのはそれらを使いこなすための賢さだ。

 ルドルフが成長していくにつれ、彼女の持つ資質が際立っていく。

 

『――誕生日おめでとう。ルドルフ。今日は君が生まれた記念すべき日だ。ささやかながらトレーナー室でお祝いだ』

 

 ケーキは自分の手作りだ。自炊はしていたためまったくの素人ではなかったが、ルドルフを唸らせるものを作れるかといえば当然出来ない。そのため、ヒシアマゾンと菓子作りが得意なエイシンフラッシュに教わりながら作り上げたのだ。

 

『君という人は……昨日から妙に部屋に入れてくれないかと思えばそういうことだったのか。ありがとう、トレーナー。今まで一番嬉しい誕生日だよ』

 

『そう言ってくれて嬉しいよ。来月から君は、君と同じくらい強いウマ娘たちとの戦いが待っている。URAを優勝するまでの一年間、しっかり戦い抜けるように頑張ろう』

 

 シニア級初戦は四月後半――天皇賞(春)。

 選ばれしステイヤーだけが出られる、至高のレースだ。ルドルフの壁となるウマ娘はただ一人。同じ三冠ウマ娘のミスターシービー。

 

『負けませんよ』

 

『こちらこそ。ただ――』

 

 ミスターシービーの女性トレーナーが声をかけて来たため答える。トレーナー界隈では名声を博し、過去には重賞連勝を叩き出したウマ娘を輩出するなど最高峰のトレーナーだ。

 

『今の‟皇帝”に勝てるウマ娘が、自分には現存していると思えない』

 

 ウマ娘たちが発バ機に辿り着くために歩く、最後のコンクリート廊下から小気味良い音が鳴り響く。錚々たるウマ娘たちが並び、沸き立っていた観客がその音に気付いて静まり返った。

 

 ――一瞬にして、京都競バ場が呑み込まれる。

 

 ただ一人、悠然と歩いて発バ機へ向かう。

 およそ何人かのウマ娘が芝の色が変わるのを幻視した。青々とした走り易い天然芝から、赤い絹地に金糸の目立つレッドカーペットへと。

 天皇賞、前身の大会名を――『エンペラーズカップ』。まさしく、‟皇帝”シンボリルドルフに相応しいレースなのだ。

 

『勝ちや負け。競い合いにすらならないかもしれない。ルドルフが出場するレースの一着は既に決まっている』

 

 あとは――勝ち方を極めるだけだ。

 彼女の能力も殆ど上限に達し、地上、いや、史上最強に近いウマ娘へと成長してくれた。間違いなく歴史に残るウマ娘だ。

 勝利は必須、前提条件となり、しかし油断のならない一戦一戦に負けない戦いをしなければならない。

 事前情報とそこから導き出される対シンボリルドルフ用の各ウマ娘たちの作戦を予想する。担当ウマ娘が極限まで育ったときこそ、トレーナーの真価が発揮されると養成学校で言われたがきっとこういうことなのだろう。

 

『おや……』

 

 残り二冠となったジャパンCまでのある日、商店街で買い物をしていた自分とルドルフはそれに気付いた。

 

『福引きか。夏休み記念か何かだろうな』

 

『なるほど。さっき八百屋からレシートとともに貰ったこれはそういうことだったのか』

 

 隣にいるルドルフを見ると手に福引券を持っている。

 

『せっかくだし回してきたどうだ? たまの運試し、シンボリルドルフの運を見よう』

 

『それも良いかもしれない。よし、すみません――』

 

 

 

 ――‟にんじん一本”

 

 

 

『ふふふ、別にかまわないさ。私は欲しいものは運より実力で手に入れるタイプ……』

 

『あまり気にしないようにしよう。むしろ、悪運落ちたということで』

 

 軽く落ち込んでいるルドルフを慰める。その様子を見ていた係員が話しかけて来た。

 

『残念だったね。また商店街で買い物してリベンジしてくれたら嬉しいな。特賞には‟旅行券”も用意してるから是非』

 

『……旅行券』

 

 そんな日々を過ごし、いよいよ七冠目となる有馬記念が目前に迫る。

 有馬記念の出走条件はデビュー年数などもあるが、最もわかりやすいのは勝ち数の上から順に招待状が送られるということだ。一度や二度の勝利ではなく、何十回も優勝経験があるウマ娘たちの集う一年の締め括りレースである。

 

『いよいよか――』

 

 彼女と駆け抜けた三年間。

 出会いから今まで色んなことがあっただろう。

 強いウマ娘とは、それだけ癖のあるウマ娘ということだ。ゲームストーリーでもシンボリルドルフはその気高さから目に入る全てを自分でやろうとしていた。そんな性格を知っていたからこそ、自分は周囲のウマ娘にも何気なく事情を説明しつつ精神的負担はかけないように気を付けた。

 最強の肉体――。

 最高の精神――。

 誇り高き志し――。

 その三つが揃った‟皇帝”シンボリルドルフに、

 

『――凄い! 凄いぞ! これが‟皇帝”! ‟皇帝”シンボリルドルフの走り……いや、凱旋でしょう! 正しく、皇帝が自身の玉座に座るが如く堂々としたその姿! 有馬記念一着はシンボリルドルフ! ‟皇帝”シンボリルドルフです!』

 

 ――敗北はない。

 

『ルドルフ』

 

 インタビューを終え、無事七冠ウマ娘となったルドルフの控え室に行く。

 

『トレーナー!』

 

『あぁ、おめで――おわっ』

 

 感極まったのか、若干涙ぐんだ様子のルドルフが飛び込んでくる。結構な勢いだったがしっかり踏ん張って抱き留めた。

 

『ありがとう、ありがとう。トレーナーのおかげだ。君がいてくれたからこそ、私はここまで走り続けることが出来た!』

 

『そんなことはない。君が成長する姿を見て、自分も頑張らなきゃいけないと勇気をもらった。君に相応しいトレーナーであろうと、自分もここまで隣にいられたんだ』

 

『だとしても、ありがとう』

 

『自分は世界で一番の幸運者だ。君に出会えたからな』

 

『それは違う。私と君が出会ったことが世界で一番の幸運になるのならば、私こそが世界で一番の幸運者だ』

 

 七冠ウマ娘になったその日の夜は自分の支払いで学園長と訪れたレストランへ行った。本来ならば疲労した身体を一日程度置いてから行くべきだっただろうが、それ以上に嬉しさが勝り、珍しく騒がしい食事を過ごしてしまった。個室だったことが一番の幸運だったかもしれない。

 

『さて、七冠ウマ娘になった次の日だがまだ走らなければならない』

 

『ああ。URAが残っている』

 

『史上初の七冠ウマ娘である君に敗北は許されなくなってしまった。今まで以上に背負うモノは大きい。それでも――』

 

『それは愚問というものだよトレーナー。私と君がいる。その時点で敗北はない。考えるべきはどう勝つか、だろう?』

 

 七冠ウマ娘になったルナに相手はいなかった。それがたとえ、最強のウマ娘が集まるURAだとしても同じだ。一回戦、準決勝ともに大差勝ち。決勝の強敵はハッピーミーク。桐生院トレーナーが担当のウマ娘だ。

 

『あなたが桐生院トレーナーか。初めまして』

 

『は、初めましてシンボリルドルフさんっ!』

 

『今日はよろしくお願いするよ。私よりも先にトレーナーを旅館に誘った桐生院トレーナー』

 

『うぇっ、ぇえ!?』

 

 そして決勝もまさかの大差勝ち。

 ルナが一着、二着にハッピーミークだった。おかげで後日二人を慰めることとなったのは言うまでもない。

 ルナがURAを優勝してからは暫く落ち着いた日々を過ごしていた。URAまで担当ウマ娘を導いたトレーナーにはボーナス期間が与えられ、来年の担当ウマ娘を決めるまでトレーナー業を行なっていなくとも基本給が貰えたりする。ただ、そのかわりフリーになるのでトレセン学園の授業を手伝ったりと様々だ。

 

『――旅行?』

 

『ああ。以前、商店街の福引があっただろう? 実はあの後、偶然(・・)引いたら特賞の‟旅行券”が当たったんだ。ちょうど二人用とあるし、トレーナーも時間が取りやすい時期だろうから』

 

『別に良いが……生徒会のメンバーは?』

 

『ブライアンは私と行くようなタイプではない。エアグルーヴも私のトレーナーである君を差し置いて楽しめるような性格だと思うかい?』

 

『そうだったな。じゃあ、適当な日を決めて行こうか』

 

 行き先は地方にある温泉街。自然豊かな風景と効能多種な温泉水が有名な場所だ。

 久しぶりの温泉、非常に楽しみである。前回桐生院トレーナーと泊まった宿も温泉はあったのだが、半人工温泉だった。今回は天然温泉らしいので上せないように気をつけなければならない。

 

『――まさか先を越されるとは思っていなかった。しかし、今回ばかりは邪魔も入らない。チェックメイトだ』

 

 旅行にハプニングは付き物である。

 




 
 
 
 地雷を踏み続けて、それに気付かない主人公。
 
 ウマ娘の二次小説の許されてる範囲がわからないので、もしかすると何かに触れて消えるかもしれません。最後のチェックメイトはチェス教えてもらってたからだし、旅行にハプニングは実際にあるのでセーフ!






 以下、純粋なる後書き





 SSを書く時間が取れないけとどうしてもウマ娘書いとかないと収まりがつかなかったのでダイジェスト風に書きました。割と綺麗にまとめたかなと思いましたが、読みにくかったら申し訳ない><
 誤字脱字、語録などは随時見直しと報告を頼りに適正していきます。



 

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