ゲームが現実で、現実が夢になった。誰か助けて   作:大豆万歳

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タイトルの割にジョージに関する話が少ないのは気にしないでください(土下座)


ジョージ・モーガンという男

 ある朝の、ランドソル王城門。

 

「おはようございます。あなたが【王宮騎士団(NIGHTMARE)】の団長、ジュンさんでしょうか?」

 

 右腕に包帯、首元にマフラーを巻き付けて鎖をジャラジャラ鳴らしてやってきた魔族の少女。

 彼女の名はアンネローゼ・フォン・シュテッヒパルム。本名はアンナ。自らを『疾風の冥姫(ヘカーテ)』と名乗る、【トワイライトキャラバン】というギルドのメンバーの一員。

 

「そうだけど……キミは?」

「あっ、自己紹介が遅れました。私、【トワイライトキャラバン】のアンネローゼ・フォン・シュテッヒパルムと申します。実は、あなたにお訊ねしたいことがあってきたんです」

 

 時と場所を弁えたのか、普段の中二病な言動を控えて普通の挨拶をする。

 

「実は先日、私が前に所属していた【ニャルラトホテップ教団】の団長からギルド再結成の話を持ち掛けられたんです。……まあ、今のギルドになんやかんや愛着も湧いたので脱退はできなかったんですが」

「【ニャルラトホテップ教団】の団長というと、ジョージ君のことかい?」

 

 その通り。と、アンナは頷いた。

 

「それで、【王宮騎士団(NIGHTMARE)】にいた頃の団長のことがちょっと知りたいなと思って来たんですけど……お時間よろしいでしょうか?」

 

 アンナの申し出に、ジュンは暫し考える。

 彼女の主な仕事は門番。

 全身鎧を身に着けたまま微動だにしないこともあって、観光客の記念撮影の被写体になることも珍しくない。

 とは言ったものの、仕事中に誰かとおしゃべりに熱中するのはいかがなものか。と、真面目な彼女はそう考えた。

 

「こう考えませんか?『自分が暇を持て余せるということは、それだけ王都が平和なんだ』と」

 

 アンナの言葉が、甘い誘惑となってジュンの心を揺さぶる。

 そして考えた後、彼女が出した結論は……。

 

「……まあ、ここで門番をしている間だけでよければ」

 

 自分の知らないジョージの一面が分かるかもしれない。或いは、彼のギルド【ニャルラトホテップ教団】がどのような組織かわかるかもしれない。という理由から、彼女はアンナと少し話すことにした。

 といっても、2人が語るジョージの様子にそこまで差異はなかった。

 年齢問わず、女性は『さん』など敬称をつけて呼ぶ、温厚な男性。しかし温厚さの裏返しなのか、時として冷酷な一面も見せる。

 戦闘では弓や槍などの長物を使った中~遠距離戦を好むが、近距離戦も熟す万能型。

 村をモンスターから守るために大人たちから戦い方を教わり、実践してきたこともあってそれなりの実力がある。

 

「そういえば、『前に所属していた』といったけれど、君はなぜ【ニャルラトホテップ教団】を抜けたのかな?」

「あー……団長って思考が脳筋気味というか、基本的に作戦の内容が『相手が死ぬまで殴る』なんですよ。心当たりはありますか?」

「沢山ある」

「それが影響したのか、他の団員も種族性別関係なく筋肉質な体型でして……簡単に言うと、筋肉だらけのむさくるしさに耐えきれなくて脱退しました」

「そ、そうなんだ……てっきり、教団の教義に疑問や不満を抱いて脱退したものだと」

「いえ、教義は確かにありますけど、結構緩いですよ?飲食に関する制限は無いですし、婚姻も愛があり犯罪でなければ良しとしてますから」

「ふむ。【ニャルラトホテップ教団】が信奉する神は、どのような神なのかな?こう、外見とか」

「教団の本部に石像がありましたけど、とても奇妙な造形でしたね。貌は目と鼻と耳のないのっぺらぼう。手足は細いものや太いもの、潤いに満ちた瑞々しい肌や干した果実のように皺だらけの肌が混在。胴体も男性と女性の特徴が混ざり合った雌雄同体の造形になってました。何でも、様々な姿で顕現するため、決まった容姿がないことを表現しているとか」

 

 ちょっと見てみたい。そんな好奇心が、ジュンの心に生まれた。

 

「じゃあ、次は──」

「団長!団長!」

 

 次の話題を振ろうとしたところで、【王宮騎士団(NIGHTMARE)】の団員が大急ぎで門まで駆けつけた。

 

「どうした?」

「ワイルドグリフォンの変異種と思われる大型の魔物が王都北門を破り、王都内に侵入したとの報告がありました!」

「わかった。すぐに向かう!すまないが、話の続きはまたの機会にさせてくれないか」

「ええ。お気をつけて」

「ありがとう」

 

 アンナは道を開けるように横に退くと、その隣をジュンが駆け出し、現場へと急行した。

 

 

 

 

 ジュンの姿が見えなくなったところで、アンナは数歩門を離れて王宮を見上げる。

 

「(偽りの王を玉座から引きずり下ろす、か……。まるで小説みたいだ)」

 

 ニヤリ。と、心の中で口角を上げて笑みを浮かべるアンナ。

 彼女はジョージほどではないが、この世界に関するすべてが作り物であると自覚している。そして、自分達が夜な夜な見る夢こそ、現実であると。

 今のギルドに愛着があるからと断ったのは事実。しかし、同時に彼とこのような契約を交わしていた。

 

 『こちらの準備が整い、時が来たら招集をかけるから、それに応じる事』

 

 現在、【ニャルラトホテップ教団】の構成員としてギルドに登録されているのは団長を含めて4名。

 大人数で動けば敵の注目を集めるため、今は少ない人数で行動する。

 それに加え、他ギルドの協力者も戦力として加わっていると聞いている。それも現時点で、七冠(セブンクラウンズ)が3名いると聞いた。

 そこに【ニャルラトホテップ教団】の構成員108名が加われば、負ける気はしない。……しかし、油断大敵という言葉が世の中には存在する。

 

「(帰ったら、筋トレでもしよう)」

 

 来るべき時への備えの第一歩に肉体の鍛錬を選んだアンナは、王宮に背を向けて街の人混みへと姿を消していった。

 

 

 

 

 一方その頃。アストライア大陸の何処かにある拠点。

 

「なあジョージ。去年合コンでお持ち帰りした女子との仲はどうなったんだ?」

「んぐっ!?」

 

 ワイルドホーンのもも肉を使用したカレーを食べていると、そんな爆弾発言が投下された。

 水を飲んでいたタイミングだったため、思わず咽た。

 

「詳しく」

 

 ネネカさんは相変わらず何を考えているか読めない表情をしているが、帽子の宝石が輝き方からワクワクしているのがわかる。

 

「ネネカさん。最初に言っておきますけどお持ち帰りしたというのは誤解です、あれは──」

「わかっています。ですが言い訳に時間を割いて話が長引くと、後日誇張表現山盛りで晶とクリスに伝えますよ」

「おい馬鹿やめろください」

 

 いかん、焦りで日本語がおかしなことになっている。

 心を落ち着かせるために周りを見てみると、ムイミが俺の顔を覗き込むように近づき、興味が無いように飯を食っているが俺をチラチラと見るマサキさんとラジラジさん。仲間たちは白状してしまえと満面の笑みで煽っている。畜生、味方が1人としていない。

 晶さんは目を輝かせて根掘り葉掘り訊いてくる程度で済みそうだけど、ブラコン拗らせたクリスティーナが知ったら面倒なことになる。

 

「まあ、人数合わせで呼ばれた合コンが終わって帰ろうとした時に、同じく人数合わせで呼ばれた人がいたんです。それで途中まで送りますってことで同行していったら偶々同じアパートの、隣の部屋に住んでいたんです」

「ほほぅ」

「で、帰り道で話を聞いたら彼女も俺と同じゲームやアニメのファンだったので、『ここで会ったのも何かの縁』ということでメールアドレスと電話番号をお互いに教えて交流が始まったんです」

「なるほど……」

 

 ふむ。と、頷いたネネカさんに、更に続けて話す。

 

「それ以来買い物の荷物持ちを頼まれたり、アニメのイベントなんかに一緒に行ったりする程度の仲まで進展しました」

「随分親密になったんですね」

 

 ニヤニヤといやらしい笑みをネネカさんが浮かべる。

 

「あれは確か、俺が誕生日を迎えたんで4月の中旬頃ですかね。堂々と酒を飲める年になったから、酒の味のレビューをしてくれないか頼まれたんです。8か月後に自分が誕生日を迎えて、どっかのタイミングで酒を飲むときの参考のために。それで俺の部屋で酒を、とりあえずコンビニで買ってきたビールとチューハイを俺は飲んで味とかの感想を口にしたんです。『場酔い』って言うんですかね。そしたら彼女、飲んだわけじゃないのに酔ったような感じになって『帰りたくない』とか『寝る』とか言って寝落ちしてしまいまして……」

「マサキ」

「はっ」

 

 その一言で察したのか、マサキさんが香辛料の入った壺とスプーンをネネカさんに手渡す。

 

「……その後は、どうなりましたか?」

「普通に彼女をベッドに寝かせて、俺は痛いのを我慢して床で寝ましたよ」

「……ノーギルティ」

 

 ネネカさんはそう言うと壺とスプーンをマサキさんに返した。

 何だか知らないが、許されたようだ。やったぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「(そういえば)」

 

 食後のコーヒーを飲みながら、俺は今話題に上がった彼女のことを考えた。

 彼女は今どこで何をしているのか。

 『こちらの世界』に来ているのか。

 来ていたとして、記憶を失っているのか、それとも記憶を保持しているのか。

 来ていないのであれば、どのような精神状態なのか。

 物静かで、あまり人との交流が得意とは言えない彼女が、少し心配になった。

 

「(元気にしてるかなー……蘭さん)」




蘭さん、一体何者なんだ……(すっとぼけ)
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