ゲームが現実で、現実が夢になった。誰か助けて   作:大豆万歳

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メイドインアビスアニメ2期、開幕フルスロットルで安心しました


何でもない夏休みのある日

 あれは、俺が大学1年の時の事。

 

「あっつい」

 

 その日は天気予報の通り、36度(人間の体温)を超える猛暑日だった。

 パンツ一丁で扇風機の風に当たっていたが、もう我慢の限界。

 扇風機の電源を切って汗を拭い、寝間着を着てエアコンの電源を入れる。

 

「あ~、涼しい~……」

 

 ベッドで横になり、エアコンの涼しさを堪能する。

 

「そういえば、昼どうすっかな。一応米は炊いてあるんだけど……」

 

 などと考えながらゴロゴロしていると──。

 不意に玄関のチャイムが鳴った。

 

「はーい、今行きますよー」

 

 起き上がった俺は玄関に向かい、鍵を開けてドアを開ける。そこに立っていたのは……。

 

「久しぶりだな、ジョージ」

 

 仕事で日本に来ていたのか、仕事着(スーツ)姿の従姉、クリスティーナが立っていた。

 

「うん、久しぶり。急にどうしたの?」

「仕事で近くに来る用事があってな。お前と昼食でもと思ったんだが……昼は済ませたか?」

「まだだよ」

「それは良かった。ならば早速行こう。勿論、私の奢りでな」

「へーい」

 

 寝間着から着替え、小さめの鞄に財布と免許証、鍵や携帯その他諸々を入れて俺は部屋を出た。

 タダ飯やったぜ。

 

 

 

 

 「チャーハンのお客様は?」

 「私だ」

 「担々麵大盛りと餃子のお客様は……」

 「俺です」

 「では、ごゆっくり」

 

 やってきたのは近くの中華料理屋。

 お昼時だからか、店内はそれなりに席が埋まっていた。

 ……それと同時に、俺の方に視線もそれなりに集まっていた。

 

「(まあ、無理も無いよな。『七冠(セブンクラウンズ)』の1人が、街の中華料理屋で男と飯食っているんだから)」

 

 こういうのも慣れたので、今は食事に集中する。

 

「一人暮らしは慣れたか?」

「あー、まあそれなりに。ただ、牛の世話や畑仕事が無くなってちょっと物足りなさを感じているぐらい」

「はっはっはっ。やはり習慣は抜けないものか」

「どうせ帰省したら嫌というほどやるんだけどね。そういえば、今年の夏も休暇でウチに来るの?」

「そこはスケジュール次第だな。今年は特に忙しいから、夏はそっちに行けないかもしれん」

 

 と、周囲の目を考慮して他愛のない会話を挿みながら食事をする。

 俺にとっては『母方の従姉』でも、世間からすれば『天才』或いは『超人』なんだ。イメージを大きく崩すような話題を出してはいけない。何より、本人も仕事中はそれらしい振る舞いをするよう無意識に心がけているそうだ。

 

「そうだ、ジョージ。『例の件』だが、結論は出たか?」

 

 クリス姉が言った『例の件』とは、『レジェンド・オブ・アストルム』というゲームで『七冠(セブンクラウンズ)』が選んだプレイヤー1人に、公式チートと言える特殊な能力を与えるというもの。彼ら彼女らから特殊な能力を与えられたプライヤーは、『プリンセスナイト』と呼ばれている。

 他の『七冠(セブンクラウンズ)』のメンバーは既に各自の『プリンセスナイト』を決めたらしい。誰を選ぶか考えたところ、俺に白羽の矢が立ったのが1週間ほど前の事。考えるための猶予期間が、ちょうど今日だったんだ。

 

「悪いけど、ノーで」

「そうか……わかった。ならば、向こうで相対した時はお互い全力でぶつかろう♪」

「うん」

 

 それで話は終わり。後は黙々と迅速に箸(クリス姉はレンゲ)を進めて食事を終わらせた。

 

「ふむ、まだ時間があるな……。ジョージ、ついでにお前の部屋を見てもいいか?」

 

 会計が終わって店を出るとクリス姉に言われた。

 

「いいよ」

「ほう。あっさりと承諾するということは、きちんと部屋は片付いているんだな?楽しみだ♪」

 

 ~チェック中、暫くお待ちください~

 

「どう?」

「そうだな。ベッドの下などからいやらしい本を発見され、慌てふためくお前の姿が見れなくてつまらないから100点満点中……90点だ。だいたい、いやらしい本が一冊も無いとはどういうことだ?お前もそっちの食欲旺盛で合法的に堂々と購入できる年齢になったというのに」

 

 部屋を隅々まで見て回って、クリス姉が出した結果に俺は静かに怒った。

 具体的に言うと、今度実家で会ったら堆肥の山に頭から放り投げてやろうと考える程度には。

 ぶっちゃけ、その手の本はほぼ電子書籍でしか買わない。だって、身内に性癖ばれて生温かい目で見られるのとか凄く恥ずかしいし。

 ……ほぼと言っただけで、クリス姉にもバレないように隠してある紙媒体の本が1冊も無いとは言っていないのは内緒。

 

「はいはい。で、時間の方はどうなの?」

 

 けどそれは決して口に出さない。ぐっと堪えて壁に掛けてある時計を見るよう促す。

 

「ちょうどいい時間だ。では、私は仕事に戻る」

「うん。行ってらっしゃーい」

 

 では。と、クリス姉は手を挙げると、逃げるように部屋を出て行った。

 

 

 

 

「はい、お疲れ様」

「はっ!?」

 

 謎の声に起きてみれば、そこはどこかの庭のようだった。

 周囲を囲むように生えた木と、花畑。池の中心にはとても大きな一輪の花が咲いている。

 

「眠気覚ましに一杯飲む?」

 

 そう言いながらティーポットを傾けて何かを淹れていたのは、機械仕掛けの翼のようなものを背負った少女。

 目はけだるげに半開きになっており、口調もどこか間延びしている。

 

「貴女は……?」

「そういえば、自己紹介がまだだったわね。あたしはアメス。あんた達の味方よ」

 

 聞けば、彼女は『レジェンド・オブ・アストルム』に閉じ込められたプレイヤー達の現実世界での出来事を、『夢』という形で再現して見せているらしい。曰く、これで現実世界での記憶の回復を行っているんだとか。

 

「で、どうだった?久しぶりに現実世界を体験した感想は」

「そうですね……まあ、悪くはないんですけど強いて要望を挙げるなら、講義の記憶とかも再現して欲しいですね。これでも学生ですから」

「あんた、夢の中でも勉強するつもりなの?良いじゃない、夢の中くらいそういうの忘れても」

 

 そう言って、アメスさんはカップを傾ける。

 それでも。と、俺は続ける。

 

「試験を受けて単位を取得するためには普段の勉強が欠かせないんです。現実世界でどれだけ日数が経過したか分からないからこそ、遅れた分は取り返したいんです」

 

 俺が熱弁すると。アメスさんは顎に手を当てて暫く考える。

 

「まあ、現実世界に帰還するために頑張っているようだし、その位やるってあげるわ。でも、他のプレイヤー達の記憶の再現もやってるから、直ぐには見せられないけどね」

「ありがとうございます」

 

 アメスさんに深々と一礼したタイミングで、俺の体が発光した。

 

「そろそろ向こうで起きる時間ね。じゃあ、また会いましょ」

「ええ。また」

 

 バイバイ。と、アメスさんは手を振るのに合わせて、俺も手を振った。

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