当作品独自の時代設定などがあるので、TVシリーズとは設定に矛盾が発生していますが、その辺り「細かい事は気にすんな!」精神でやっています。
また、作者が今まで書いてきたのは、主にシリーズの名前だけ借りたオリジナル作品ばかりなので、他人が作ったキャラを使う、所謂二次創作的なことは勝手がよくわかりません。
その辺り、ご容赦頂き、原作ありキャラに関しては「似たような設定の違う人」くらいの感じでご覧ください。
時は、大和会獅子道組の面々が、拐われた轟文太の妹・明菜を奪還するため、広島市へ遠征していた頃の話である。
呉市では撤退した暴新会若頭補佐・籠池真三率いる籠池組に代わり、直参・鶴城仁一率いる鶴城組が猛威を振るっていた。
鶴城組には、抗争を行う際の統一されたドクトリンがある。それは、電撃戦とも呼ぶべき速攻戦術だ。
まず、相手の本部に襲撃をかけ、相手の指揮系統を破壊、あるいは混乱させた後、素早く重要拠点を制圧して完全に相手の身動きを封じるというモノだ。
この戦法により、鶴城組は幾度となく数的な不利を覆して勝利を掴み、暴新会きっての武闘派集団としての評価を確立してみせた。
だが、今回、その戦術は空振りに終わったと言ってもいい。
大和会の会長及び主要な幹部たちは攻撃を察知してどこかに身を隠してしまったらしい。本部にも、拠点にもその姿はない。
そうなると、先手必勝、不意打ちのパターンを潰された鶴城組は、一転ピンチになる。暴新会本部が動かず、鶴城組単独で大和会のシマに乗り込んで来ている以上、状況は多勢に無勢。呉にとどまっていたら、攻勢をやり過ごして戻ってきた大和会に数で押し潰される事になるだろう。
目論見の外れた指揮官の鶴城仁一はイラだち、近くにいる呉の市民に因縁をつけ、あたり構わず暴力を振るい、シラミ潰しに大和会幹部たちの居場所を尋ねた。
どう見ても愚かな八つ当たりなのだが、そこで鶴城は偶然にも興味深い情報を得た。
大和会の暴力戦隊リベンジャーに倒された暴新会系籠池組の組員・貝原が姿を消したのは、呉市の繁華街にあるアムールというキャバクラを訪ねた後だというのだ。そのアムールという店がリベンジャーと何かしら関係があるのは間違いない。
そこで鶴城は妙案を思いつく。もし、一時撤退するにしてもリベンジャーを誘きだし倒す事ができれば格好がつく。そんな訳で、今現在、リベンジャーが自分たちと入れ違う様に広島市へ行っている事を知らない鶴城組の面々はアムールを訪ねリベンジャーに関する情報を聞き出す事にしたのだった。
「オンドレらャあ! 貝原殺ったヤツがこん店の関係者なんは調べがついとるんじゃ! ドコんドイツが殺ったんじゃ! とっとと白状せんかい!」
呉市の繁華街にあるキャバクラ店・アムールの店内にドスの効いた声が響きわたる。鶴城組組員たちの怒号である。
鶴城らはアムールに到着すると、すぐボーイに銃を突きつけて脅し、従業員を男女問わず呼べるだけ呼び出させた。そして、店からの呼び出しに真面目に応じてやって来た者から順にフロアに整列させて尋問を開始した。
最も激しい尋問を受けているのは、この店の雇われ店長、梅田である。本来、大柄で逞しい体格を持つ強面であるこの男は鶴城組構成員3人の前に正座させられてシュンと小さくなっている。一時間以上、時に殴打を加えられながら質問を受けており、顔にはいくつも痣ができている。
「オウオウ、店長さん。そろそろ言うて楽にならんかい? リベンジャーはどこにおる?」
「そがいな事言われてもワシは知らんのですよ、知らんモンは言えんのですよ!」
「こん外道が! まだ知らばっくれるか!!」
梅田を囲む三人の男は再び彼を床に引き倒し何度も踏みつける。店に呼び出されだ十数名の従業員たちは、壁づたいに整列した状態でそれを見せつけられている。
小太りのチーフボーイはあまりの凄惨さに目を背け、この店のNo.1ガール・ミキは天井を仰ぎ涙をこらえている。
そして、接客嬢の一人、ミルクはイラだっていた。
休みの日に急に呼び出されたというのに真面目にこんな店にやってきてしまった自分自身と、目の前で繰り広げられる傍若無人な光景にである。
どうやら、そんな顔をしてしまっていたらしい。店長を殴っている男の内の一人、坊主頭に二本ラインの反り込みを入れた男がふとミルクの方を見て叫んだ。
「おぉ!? オドレは何か文句でもあるんか、イヤな目しおってからに!」
そうして、ミルクの方に近寄って来ると顔と身体…特に胸部を舐め回す様に見てから言った。
「おう、姉ちゃん、いいオッパイしとるのう。ちいと、コッチ来いや」
坊主の男はミルクの左手を掴み、力任せに引っ張った。
「痛いな、ちょっと何すんだよ!」
「じゃかあしい! オドレ、立場わかっとるんか!?」
「女の子に手ェ出すんは止めてつかぁさい!」
大きな声でミルクと坊主の男のやり取りを遮ったのは、小太りボーイの吉田である。
ミルクは、いつも他の従業員たちに偉そうに指図してくる吉田が自分を守る行動に出たことに意外さを感じた。もう少し余裕がある状況だったら、彼の事を大いに見直した事だろう。だが、この場でそれを行う事は、勇敢を通り越して無謀であった。
「オウオウ、兄ちゃんエエ度胸しとんのう…」
ボーイの言葉に最初に反応したのは、拷問が行われている場所から少し離れたソファーで店のシャンパンを勝手に飲みながら様子を見ていた組長・鶴城仁一であった。
鶴城はシャンパンの瓶をフラフラ振り回しながら吉田に近づくと
「ワシ、兄ちゃんのこと気に入ったわ」
と言いニヤリと笑った。そして、徐にシャンパンの瓶で吉田の頭を殴り付ける。
バリン!
という大きな音が店内に響きわたり、瓶の破片が乱れ散る。容赦のない力ずくの殴打であった。
「ぐぁぁ! 鶴城ぃ! 貴様ぁぁぁ!」
吉田は床をのたうち回り、多分に悲鳴混じりながらも何か言い返そうとするが、鶴城はそんな吉田の血が滲んだ頭を更に踏みつけにした。
「エエのう、エエのう! ワシャぁ、オドレの様な生意気なヤツを痛めつけるのが大好きなんじゃ! どうじゃぁ、この! 痛いか! この、痛いか!」
鶴城は吉田の頭を何度も何度も力一杯踏みつける。
最初はうなり声をあげていた吉田だが何度も踏まれる内に、それをする元気もなくなっていき、身体をピクピクと動かすだけになってきた。
このままでは吉田が死んでしまう。
その場にいた誰もがそう思った時、声をあげたのは従業員の列の中で目立たないように黙っていたミキだった。
「やめて、もうやめて! 話すから、リベンジャーの事、話すからもうやめて! チーフ、死んじゃうから!」
「アンタちょっと!」
とミルクがミキを止めようとしたがミキは構わず続けた。
「この店で働いてるユリナって子がピンクリベンジャーです…」
「ほう、ソイツは今ドコにおるんじゃ?」
「貝原って人と一緒に戦いながら出ていったっきりで…」
「そんユリナっちゅうんは本名か?」
「いえ、源氏名です…」
「ホントの名前は知らんの?」
「わかりません…」
鶴城は首を横に振った。
「それじゃ、何の手がかりにもならんの。ああ、残念じゃあ…オドレらがもっとマトモな情報を教えてくれるまで、質問を続けなくてはならん…。」
「そんなっ…」
鶴城はミキの顔をしげしげと眺めた。
「そう言えばアンタ、なかなか可愛い顔しとるじゃないの」
すると、先ほど店長を殴っていた坊主の男が鶴城に言った
「兄貴、その子たぶん、この店のNo.1ですよ」
「ほー、そうなんか?」
「店の入口に写真が出とりました。名前は確か…ミキ言うたかな。」
鶴城は下卑た笑みを浮かべてミキの顎を掴んだ
「オウ、ミキちゃんよ。ワシはのう、アンタみたいな別嬪さんを乱暴に犯すのが大好きなんじゃ。」
「え…さっきは、生意気なヤツを痛めつけるのが好きって…」
「お、ほうじゃの! 言った、言った。よく気のつく子じゃ。」
鶴城は少し驚いた表情でミキを褒めてから口元をニヤつかせた。
「ま、要するに暴力が振るえれば何でもエエんじゃが…」
「ひっ…!」
「ミキちゃんがリベンジャーの事を教えてくれれば特別サービスで痛いことせんでやってもエエんじゃぞい?」
ミキは膝から崩れ落ちて静かに涙を流した。
「私、あの子とは別に仲良くもなくて、店以外での事はよく知らなくて…」
「ほうかい。じゃ、残念じゃの。ワシはミキちゃんか、周りの誰かが思い出して言いたくなるまでミキちゃんに乱暴せんとならん。」
「イヤっ!」
「仕方ないじゃないの。コッチにはコッチのやり方があるんじゃ。」
そこまで言うと、鶴城はミキの頭の後方の壁を所謂、壁ドンの様なカタチで激しく叩いた。凄む様な表情だが、先ほどからのおちょくる様な口調は変えずに言う。
「さあ、ミキちゃん。あと20秒で答えなんだら、レイプじゃ。」
「え…」
「怖いぞー、痛いぞー。何せ、ワシのアソコは凶悪極太じゃからのう…乱暴に犯したら、ミキちゃんの小さくて可愛いオメコが引き裂けてしまうかもしれん…さぁ、言えや! こんクサレ売女が!」
そう言葉をかけられ、ミキは、急に下を向いた。
その瞬間、彼女の心が折れたのが、誰の目からもハッキリとわかった。ミキはそこからダムが決壊した様にユリナに関することを一気に語り出す。
「私は、あの子の事はそこまで知らない…元は東京から来たお嬢様だってことは知ってる…。スゴく大人しい子…だと思ってた。でも、あの貝原って人と向き合った時は全然態度が違った…たぶん、それがあの子の本性なんだと思う…」
「で、今はどこにおる?」
「知らない…さっきも言った通り…貝原って人と戦いながら出ていったきりだから…。でも、この店のオーナーの部屋に面接の時の書類とか一式あるはずだから、それを見れば本名も住所も連絡先もわかるはず…」
「ほうかい。ミキちゃん、よう言ってくれた。イイ子じゃの」
鶴城はそう言うと、ゆっくりと数歩歩いた後、急にミルクにビンタを食らわせ、吉田に今一度蹴りを入れた。
「クサレ外道が! 抵抗せずに、とっとと言わんか、バカタレが!」
そして一番入口側に立っている、一週間前にバイトで入った茶髪の大学生ボーイ、田口の胸ぐらを掴んで、また叫ぶ。
「オイ、オドレ、ボサッとしよんな! そうと決まったら早よう、そんオーナーの部屋に案内せんかい!」
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そうして、10数分後、鶴城組一行はオーナールームからいくつか書類の束をもって店から出て行った。
その直前、出かけに鶴城はミキに声をかけた。
「いやぁ、ミキちゃん。教えてくれて助かったぞ。」
「はい…」
「他の奴らは口が固うてならん…。ミキちゃんだけじゃ。暴力に屈して同じ店で働く仲間を見捨てられる都合のいい女は…」
「え…私、違う…そんなっ…!」
「エエんじゃ、エエんじゃ。ワシはのう。暴力さえ振るえば何でも言うことを聞く奴隷みたいな女が大好きなんじゃ。」
そして、鶴城はミキの耳元で
「気に入った。また来るぞ」
と言い残し、出ていった。
鶴城の姿が見えなくなった瞬間、それまで静かに涙を流していたミキはワンワンと大きな声をあげて泣き出した。
ミルクは、そんなミキの様子にお構い無しに彼女に近づいていき、平手打ちを食らわせる。
いきなりの出来事にカッとしたミキはミルクにつかみかかり、ミルクも応戦した。さながらキャットファイトの様に2人はもつれ合い床に倒れて揉み合った。
「もう、2人とも何やってるんですか、止めてください!」
男性従業員の中では唯一ケガを追わなかったバイトの田口が止めに入るとミキは
「だってコイツが私を叩いた!」
と金切り声で言い、ミルクは
「コイツ、ユリナを売りやがった!」
と怒鳴った。
「アンタは、ユリナと仲が良かったからそう思うのよ」
とミキは言う。
「そんなの関係ない、同じ場所で働く仲間の個人情報は漏らさない…それがルールでしょ!?」
ミルクの言うことは間違ってはいない。過去や素性を隠して働く者が多い水商売の世界では、他人の個人情報は詮索しない、もし知ってしまっても妄りにバラさない、というのが掟であった。だが、ミキにはミキなりの理屈がある。
「私が話さなかったら、梅田店長も吉田チーフも殺されてたかもしれないじゃない!」
「でも、あの子はこの前、貝原が来た時、私たちを助けてくれた…。それで追われる羽目になってるの! それをアンタは裏切った!」
「…鶴城組はユリナを追ってきた! 貝原たちだって始めからユリナを探しに来てたのかもしれない。あの子がいなかったら、こんな事にならなかったんじゃないの?」
「そんなの、憶測じゃない!」
「でも、そうじゃないって証拠もないでしょ!?」
「それは…」
「それに、あの子、リベンジャーなんでしょ? ユリナなら、鶴城組が来ても自分で戦える…。でも、弱い私たちはどんな理不尽なメにあっても黙って殴られるしかないじゃない!」
「いくらリベンジャーだって、あんな大勢に囲まれたら…!」
「ミルク…あなた、さっきから、ユリナ、ユリナ言ってるけど、東京出身って事以外に、あの子の事、何知ってるのよ。本名だって知らないでしょ?」
確かに、知らなかった。この前、リベンジャーに変身した時に「吉原ナントカ」と名乗っていたが、いきなりの出来事でよく聞こえなかったし、もし聞き取れていたとして、それが本名である保証もない。
「それは…知らないけど…」
と、下を向くミルクにミキはたたみ掛ける
「今、鶴城組が持っていった面接資料には『山田千春』って書いてあったけど、この前、変身した時に言ってたのとは全然違うわね。一体、どっちが本当の名前? もしかしたらどちらも偽物? 結局、私たちあの子の事なんて、何も知らないじゃない。そんな子の事庇ってどうするのよ!」
ミルクには、返す言葉がない。しかし、先に精神的な限界を迎えたのはミキだった。
「どうして…? どうしてこうなるの!? 家が貧乏で! まともに学校も行けず! こんな仕事しかできず! それでも真面目に頑張ってNo.1になったのに! どうしてこんなメに遇わなくちゃいけないの!? 私、ホントはあんまりお酒飲めないの! おかげで毎日二日酔いで苦しいのよ! 太客には身体も売ったわ! イヤだった、気持ち悪かった! でも頑張ったの! お金があれば幸せになれると思ったから! でも違った…、私はどうしたら幸せになれるのよ! 誰か、教えてよ!」
ミキはまた大声で泣き出してしまった。ミルクはため息をつく。
確かに、ミキの言うとおりかもしれない。自分はなんでこんなにユリナに肩入れしてしまうのか。
ミルクはカウンター席に腰掛け頬杖をつきながら考えた。
結局、感覚でしかない。
同じ東京出身ということで彼女とは話す機会が多かった。実際、接して受けた印象として、どうしても彼女が悪い人間だとは思えない。むしろ、今どきあれほど純粋な女の子はいないのではないか、とすら思っていた。そもそも、同じ水商売の人間として、語っている素性に多少の嘘や隠し事があることは想定済みである。その隠し事が、想像より遥かに大きな秘密であったのは確かだが、そんな事で実際、彼女と関わり受けた印象は変わらない。
もう一度、ユリナに会って、彼女は何者なのか、本当はどういう人間なのか確かめたい。
ミルクがそんな風に考えながらボーッと店内を眺めていると、店内中央のテーブルに見慣れない白いアタッシュケースが置かれているのが目に入った。
「アレ? あんなのさっきからあったっけ?」
と、ミルクは田口に声をかける。
「あぁ…鶴城組の奴らがあんなの持ってたような…」
「忘れ物?」
「まあ、そうなりますかね。」
ミルクは眉をひそめてあからさまにイヤそうな顔をした。
あの恐ろしく迷惑な輩がやっと、どこかへ行ってくれたところだったのだ。もう二度と会いたくない。ちょうどそう思っていたのに、アイツら、取りに戻ってくるかもしれない。
これは早く帰るに限る。ミルクからすれば、呼び出しにまんまと応じてしまったが、そもそも、今日は休みなのだ。
「田口くん、私、もう帰るわ…」
ミルクはそう宣言したが、田口の関心はアタッシュケースに移っている様で、彼はミルクの発言を半ば無視した。
「コレ、中身確認してみましょうか。」
「ええ!」
ミルクは業界入りたての田口の無謀さに驚きと恐怖を感じた。
「ちょっと、アンタ、アイツらがどんな連中かまだわからないの!? そんなモノ、放って置きなさいよ!」
「でも、コレが本当に鶴城組のモノか確かめないといけないし…」
「そうだけどさ…」
「あるいは、逆に中身が鶴城組の機密文書だったら? その秘密を握ったらもう脅される事はないし、逆に彼らを脅し返せるかもしれないですよ!」
それは希望的観測が過ぎはしないか。
ミルクはそう思ったが、心情的にやや好奇心が勝った。
「…ま、開けるだけなら、いいんじゃない?」
田口は満面の笑みを浮かべた。
「そうですよね、そう来なくちゃっ!」
田口は店中央のソファーに滑り込む様に勢いよく座った。そして、アタッシュケースのロックを外して中身を覗き込むと、そこから眩い閃光が放たれた。
そして、次の瞬間、ドンッという大きな爆発音が店内にいた者たちの鼓膜を貫く。
カバンはブービートラップになっていた。
その事実に気づく間もなく、その場にいる全員の意識は吹き飛んだ。
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広島県呉市内、轟家。
広島市の犯罪組織・暴新会に捕らわれていた明菜が帰ってきて、その翌日、早朝のことである。
玄関から文太が
「明菜! お兄ちゃん、行ってくるわ!」
と叫ぶと、明菜がまだ眠い目を擦りながら、部屋から出てきた。
「今日は仕事お休みじゃなかったん? どこ行くんよ?」
「そりゃ、決まっとる。獅子道組の事務所じゃ。」
「あぁ…」
と明菜は目を覆った。
「お兄ちゃん、悪いこと言わん。あの人らとは、これっきりにしときないや。お兄ちゃん、本当にヤクザになるつもりなん?」
「そうじゃ。」
「やめときないや」
「何でじゃ。獅子道組のみんなのおかげでお前は助かったんじゃぞ。」
「それはそうじゃが…お兄ちゃんには向かんと思うよ。喧嘩とかそういうの、好きじゃないじゃろ」
文太は日頃、肉体労働をしている事もあり、体力はある方だ。しかし、だからと言って荒事に向いているかと言われたらそうとは思えない、というのが妹の見解だった。
喧嘩には、力の強さや格闘センスの他にも才能が必要だ。それは、相手を傷つける事に対しての躊躇いの無さである。その辺り、喧嘩早い彼女は体感的にわかっている。
暴新会・竹下との戦いの様に大義名分でもあれば、ある程度までは容赦なく相手を倒す事もできようが、組織に入り、誰かの命令に従って何の怨みもない人を傷つける事が、このまっすぐ過ぎるくらいにまっすぐな兄にできるだろうか。いや、できまい。
明菜はそう思ったのだ。
だが、文太には明菜の深い思慮がわからない。
文太は、明菜の肩にそっと手を置く
「なぁ、明菜よ。これは向いとるとか、向いとらんとかではないんじゃ。人から受けた恩を返すかどうか。そういう気持ちの問題なんじゃ。」
「でも…」
「獅子道組の人らはみんないい人じゃ。ま、あんまり心配するなって。」
そう満面の笑みを浮かべた文太に対し、明菜は呟く様に言った。
「あの人らが本当にいい人たちなら、お兄ちゃんみたいな人に極道になれなんて言わんと思うケド…」
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「色々考えたんじゃが、文太。コンナ、やっぱし極道になるんはやめておけ。」
文太が獅子道組の事務所を訪ねると、獅子道は文太を呼び止めて第一声そう言った。
「な、なんでですか!? ワシ、なんかマズイことしましたかの?」
「いや、そうではのうて…。妹も戻ってきた事じゃ。ワレの今後の身の振り方を今一度考えてみたらどうかと思うてな」
「そげなこと言われても、ワシの心は決まっとります」
「しかし、あん時は非常時じゃったろ、少し落ち着いて考えてみい。」
「いや、それはおかしいですよ、兄貴。確かにワシの願いは叶のうたが、それでサヨナラじゃスジが通らん。妹を取り戻したいなら、全てを投げ打つ覚悟で極道になれ言うたんは、兄貴ですよ?」
獅子道はまいったな、とばかりに頭をかいた。
さすがに自分が見込んだだけあって言っている事のスジは通っている。そう思ったのだ。
だが、たった2、3日ではあるものの、状況は獅子道が文太をリベンジャーとして迎え入れた時からかなり変化している。
そもそも、獅子道はこんなに早く拐われた文太の妹・明菜を暴新会から取り戻せるとは思っていなかった。
本来、人拐いをする輩の手口はそんなに甘くない。彼らにとって、家族や知人が拐った娘を奪還しようと動くのは想定済みの事態である。だから拐った娘はすぐにどこか遠いところへやってしまうか、絶対に見つからない場所に監禁してしまうのが、あの類いの連中の常套手段である。
そうした裏社会の常識を踏まえた場合、明菜の捜索及び奪還には数ヶ月、あるいは1年以上かかるというのが獅子道の見立てであった。
その間、文太とは長く行動を共にする事になるだろう。そうした状況から獅子道は文太をリベンジャーに入れ、その代償として相応の覚悟を求めたのである。
だが、実際には2日で明菜の奪還は成った。
誘拐実行犯の籠池は捜索対象者の居場所をアッサリと白状し、暴新会会長の竹下を守る護衛たちもカチコミをかけたらほとんど戦いもせず逃げてしまった。結果、何の妨害も受けずに竹下と戦えたリベンジャーは見事に彼を倒して明菜を連れ帰る事に成功したのだった。
奇妙なまでに事はスムーズに進んだ。
崩壊寸前の組織なら、まだしも冷泉会の後ろ楯を持つ広島県一の犯罪組織・暴新会で、こんな事がありえるだろうか。獅子道はそこに違和感を感じていた。
今、それは、いい。
ここで獅子道が頭を悩ませているのは、明菜奪還戦が早期終結したことにより発生した、もう一つの困り事についてである。暴新会との長期戦を想定して渡世入りさせた文太の処遇の事だ。
長くいればいるほど、多くの怨みを買い、いつの間にか堅気に戻れなくなっているのが極道の世界である。獅子道が文太に「覚悟を決めろ」と言ったのにも、そこに所以がある。
だが、今の文太なら、まだ引き返せる。獅子道はそう思ってしまったのだ。
「文太、ワレ、よう聞きないや」
と前置きし、獅子道は諭すように言う。
「そもそも、極道言うんは、何も捨てるモンのない様なモンがなるんじゃ。じゃが、コンナは違う。」
「でも、ワシに盃くれたんは兄貴じゃろう。」
「そうじゃのう…。確かに、あん時、妹を奪われたコンナは、何もない破れかぶれの状態じゃったけえ、ワシもコンナに盃やったんじゃ。じゃが、妹が帰って来て、どうじゃ? コンナの考えは変わらんのか?」
「言ったじゃろ。ワシもそんな生半可な覚悟で盃受けた訳じゃありませんよ。」
「じゃあ、コンナの事はいいとして…妹は何と言うとる? 反対しとらんか?」
「それは…」
文太の顔が一瞬曇ったのを見て、獅子道はその意味をつかみとった。
「そうじゃろ。コンナには妹を幸せにする義務があるんじゃ。そうでなければ、せっかく妹を助けた意味がのうなってしまうじゃろ」
「じゃが、それではワシの気持ちがおさまらん。」
「ほうじゃのう。文太、もしコンナにそん気持ちがあるなら、妹が学校卒業して一人立ちしてから、また来ないや。」
「じゃが…」
「コンナん気持ちはようわかっとる。じゃが、初志貫徹してこそ一人前というモンじゃ。コンナが無事、そうなった暁には、ワシのところで働いてくれや。」
「わ、わかりました…」
文太が肩を落として事務所を出ようとすると、獅子道と文太の会話を少し離れた位置で見ていた桐生ナツメが駆け寄ってきて、何かを要求するように右手を差し出した。
ナツメの言いたい事がよくわからず文太は
「え? 姉さん、これは一体…?」
と首を傾げた。
それを受けたナツメは
「代紋チェンジャー。」
とだけ言った。
要するに、しばらく獅子道組と関わらない事になった以上リベンジャーに変身することもないだろう、だから変身アイテムも置いていけ、ということだ。
ごもっともだが、もう少し言い方があるのではないだろうか。
文太にはナツメのニコリとした表情がなんだかとても意地悪なモノに思えた。
「わかっとるわい!」
文太はズボンのポケットに入れていた代紋チェンジャーをナツメの手に押しつける様に渡して、事務所から出ていった。
ドアが閉まると、ナツメは獅子道の方を向いて言った。
「兄さん、あんな優しい言い方やと、あの子、すぐ戻ってきてしまいますよ。」
「ほうかのう。」
「ええ。律儀な子ですきに。」
「そういう事なら、助かった。恨まれ役にして悪かったのう。」
「気にせんといて下さい。組長が下から恨まれとったら、組織は機能しませんきに…。ところで…」
そう言ってナツメは事務所内を見渡した。
「今日は、南と空が来んね。何やっとるん?」
「あぁ…南は取り立てじゃ。で、空は…何も言って来とらん」
「やっぱり…アムールやろうか。」
「行くなと言うたんじゃが、やっぱり行くじゃろうのう。」
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国際特別警察機構日本支部所属の武装特殊部隊・警察戦隊パトレンジャーに広島県呉市への出張が言い渡されたのは大和会系獅子道組が広島市に、暴新会系鶴城組が呉市にそれぞれ襲撃を仕掛けた翌日の事である。
広島県で改造人間化された組員を擁する暴力団同士の抗争が激化。広島県警単独では手に追えない状況になりつつある。
市民への被害も報告されており、一刻も早い対応が必要である。
それを聞いたパトレン1号こと朝加圭一郎はトリガーマシンを使用して早急に駆けつける案を主張したが、それは上層部によって拒否された。
マシンが発進して戦闘を行う勇ましい姿のみを見ている人にはわからないだろうが、マシンの発進には毎回の整備が欠かせない。元がルパンコレクションという特殊なアイテムだとしてもそれは変わらず、そして、それにも一回一回予算がつくのである。
巨大化した敵を倒す為ならともかく移動手段としての使用など許可できない、というのがパトレンジャーのメンバーたちに通達された回答なのであった。
バカ真面目な圭一郎は
「なぜですか? 実際、国際警察のコロンビア支部ではマフィア相手に巨大ロボットを用いた例があってだな…」
などと根拠をあげて、命令を下達したヒルトップ管理官に反論しようとしたが、パトレン3号の明神つかさは
「圭一郎、やめないかっ!」
と彼の脛を蹴って止めた。
「痛いな、何をするんだ!」
と圭一郎が食って掛かると、つかさは
「しつこいぞ。管理官を責めても仕方ないだろう」
と呆れ顔をした。
ヒルトップ管理官は満足げに微笑む。
現在、ヒルトップは上からは睨まれ、下からは不満を持たれる大変難しい立場にいる。ある程度の不条理は役割として覚悟した上で中間管理職のポジションにいる訳だが、そんな中、部下に1人でも自分の立場を理解してくれる者がいるというのは心強い。
つかさは続ける。
「いいか、圭一郎。管理官というのは、名前だけ立派だが、実際のところ何の決定権もない。上がやりたくない事を全て引き受け、失敗したら責任をとる。それが管理官の仕事だ。つまり、この件に関しても管理官は上の命令を下に受け流しているだけ…。決定に管理官の意思は全くもって含まれてないんだ。そりゃあ、管理官だって多少、現場の意見を伝える事もあるだろう。でも、それは上にとっては参考程度の話であって、ほとんどの事はお偉いさんの都合と国際警察参加国の国家間利害によって決まる。だから、管理官に文句を言うな。言ったところで、何の意味もないぞ。」
ヒドイ言われように呆気にとられているヒルトップ管理官の顔を見ながら、つかさは微笑む。
「そういう事ですよね。この単細胞はよくわかっていないようですが、私は管理官の立場を理解しています。どうか我々の事はお気になさらぬよう。」
当たらずも遠からずだが、そこまで言わなくても…。ヒルトップはそんな風に思いつつ
「ありがとう。お気遣い、感謝するよ…」
とひきつった笑みを浮かべながら礼を言った。
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大和会系獅子道組組員・万田南は呉市内にある浅見工業という町工場を訪ねて来ていた。
ここはスーパーマーケットや食肉販売店で使われる食肉スライサーを製造する際、必要になる肉を押さえるための部分のパーツを専門に製造する工場である。
おそらく、食肉スライサー自体触ったことがない人には、どういうモノなのかサッパリわからないだろうが、とにかく、そういうニッチな機械部品を造っているところだということだけわかってもらえれば良い。
金属の塊から機械のパーツを製造し、食肉スライサーを製造する企業に出荷する。それが浅見工業の仕事である。
さて、浅見工業には創業以来のお得意様がいる。
五大財閥の一つ菱山財閥のグループ企業、国内の食肉スライサーシェア80%を占める菱山加工である。
食肉スライサーの国内シェアのほとんがこの企業によって占められるということは、自然、そのパーツの出荷先も限られる。
よって、浅見工業の業績はこの菱山加工への出荷が90%を占めていた。
浅見工業の先代社長・浅見浩一はその状況に危機感を覚えていた。一つの出荷先に利益を依存するということは、その企業の出方次第で浅見工業の地盤も危うくなるということだ。
実際、いくつかの関連企業関係者の話によると、このところ、菱山の取引担当者が下請けにパーツの値下げを提案してきているらしい。出荷先の限られた下請けに、それを断る事は難しい。
「おたくのパーツは高いので他の社の製品に切り替えます。おたくとの縁はこれっきりという事で。」
担当のその一言で小さな町工場は簡単にひねり潰されてしまう。大企業の言いなりにならない様にするためには、何らかの手段を講じなくてはならない。
浅見浩一がそんな風に考えていた折、菱山加工社長の政治家との癒着問題がメディアに出た。
浩一はこれを自社の経営危機ともに菱山加工への依存体制脱却の好機とも見た。そこで浩一は広島中央銀行からの融資を受けて工場に新機材を導入し、人材も採用。新商品の開発と新たな販路の拡大に乗り出したのだった。
当初、計画は概ね順調に進んだ様に思えた。だが、ここで好調に待ったをかける出来事が起こる。
菱山加工が食肉スライサー用機械パーツの仕入値値下げを通達してきたのである。それも「従わなければ、他社製品に切り替える」とかなり強気な態度でだ。つまり、浩一が危惧していた事態が予想よりも早く起きた。
後、わかることだが、菱山加工は浅見工業の(町工場としては)規模の大きい借入を見て、彼らの動きに警戒心を懐いていた。
そして、同時に行った人材募集に紛れ、浅見工業の動向を探るスパイを潜入させた。菱山加工は浅見工業が依存体制からの脱却に動いていることを知ると、将来的に浅見のコントロールが効かなくなる事を懸念。今のうちに浅見工業の製品を出来るだけ下げておく為に早急かつ強硬に圧力をかける事にしたのだった。
まだ、体制が整わない浅見工業は、これに従うしかない。結果、浅見工業の利益はおよそ半減し、新製品開発も減速。広島中央銀行からの融資の返済が滞る事態となった。
さて、次に動いたのは広島中央銀行の融資担当者であった。
現状は苦しいが、依存体制の脱却計画は減速しつつも着実に進んでおり、先を見れば浅見工業の業績はそこまで悪くない。
しかし、融資担当は浅見工業の返済遅延が自身の出世に響く事を怖れた。
融資担当は浅見浩一を騙して、かねてから繋がりのあった大和会系世羅組に返済の肩代わりをさせた。そして、そこから世羅組による激しい取り立てが始まった。
取り立てを行う末端組員には、暴力を振るい脅す以外、どうすれば金を得られるのかなどわからない。
組員たちは浩一に拳を振るい、工場の操業に最低限必要な機材すら、差し押さえ、と称して持ち去ろうとしたが、浩一は自ら盾となり、従業員と工場をよく守った。その為、浅見工業からは人材も機材も流出せず、工場は操業を続けることができた。
だが、その代償も大きい。
浅見工業経営者、浅見浩一がある日、首を吊って死んだ。浩一は重度のうつ状態に陥っていた。工場と従業員を守り抜けば、その内、状況は好転する。
だが、もし不測の事態が起きてそれが上手くいかなくなったら?
上手く行くにしたって、それがいつになるのかはわからない。
いつまで、暴力と恫喝に耐えながら、昼夜問わず忙しく働き続ければいいのか。
そんな不安の中で浩一は自ら首を吊った。死を選んだ、というよりも衝動的なモノだったのではないか、というのが検死を行った監察医が遺族に語った見解だったのだが、原因は結局のところ本人にしかわからない。
浩一の死を受けて、小規模ながら世羅組への捜査が始まった。契約は法令上、違法ではないが、世羅組は表立って暴力や脅しは使えなくなった。
「経営者が死んだ以上、状況の改善と借金の返済は望めん。いよいよ土地ごと工場売り払うしかないかのう。」
世羅組の中でそんな事が囁かれ出した時、浅見工業の借金の肩代わりを申し出たのが、大和会系獅子道組であった。
計画を主導したのは、金庫番の万田南である。
南は独自の調査によって、浩一の経営計画を続行すれば、近い将来、浅見工業の経営は改善され利益が出るであろう事を突き止めていた。
そこで南は浅見工業の借金を肩代わりして、長めの返済猶予期間を確保。その代わりにより高めの利率を設定し、更には経営者となった浩一の妻・洋子の経営コンサルタントとして事業をコントロールし、かつ大学を出て3年目の浅見家長男・弘樹に経営者としての教育を行う事になった。
南による経営再建策は功を奏し、現在、浅見工業は黒字化に成功し、借金の返済も始まった。南にとって今日は、その返済金の請求と経営状況の把握の為の訪問である。
南が工場の門をノックしようと近づくと、中からドスの効いた怒鳴り声が聞こえてきた。
「このガキ、コッチが大人しゅうしとったら調子にのりおって! とっととサインせんか、このバカモンがぁ!」
警戒した南がそっとドアの中を覗くと、いかにもヤクザというガラの悪い二人組が、背の低くチンチクリンな作業着姿の青年の胸ぐらを掴んでいる。
「チッ!」
と南は舌打ちをした。
胸ぐらを掴まれたチンチクリンは、浅見家長男の浅見弘樹。ヤクザ二人は身元不明。呉の者ではない。昨今の流れでやってくる余所者、つまり暴新会系組織の人間だろう。
衝突は免れない。
南は、鉄製のドアを乱暴に開き、ゆっくりと中に入っていく。鉄製ドアが開いた際、大きな音がしたので、中の三人は一斉に入口付近に注目した。
「万田さん!」
と弘樹が叫ぶ。
「何じゃ、オドレは?」
ヤクザの内の一人、背の高い大仏ぼくろのある男が如何にも侮った様な半笑いで言った。全身をファストファッションで固めた南の若者然とした格好を見て、弘樹の友人か何かだと思ったのだろう。
「大和会系獅子道組・万田南。」
南がそう名乗ると、ヤクザ二人は共に目をギョッと見開いて意外そうな顔をした。
「この工場は、ウチの組が面倒見てるんだよね。わかったら、悪いんだけど、帰ってくれない?」
南がそう言うと、二人もやっと相手が敵対組織の一員だということを理解して身構える。
「じゃけぇ、それは誰の許可とって面倒見とるんじゃ!」
大仏ぼくろが怒鳴ると、もう一人のサングラスをしたヒョロい男も続いた。
「今から契約交わしてコンサル変えるところなんじゃ! 黙って見とれ!」
「へぇ。そうしたいなら、先にコッチの契約破棄しないと。僕らと浅見工業の契約は経営コンサルティングのセカンドオピニオンを否定するモノではないけど、契約が切れない限り、僕らは口を出し続けるぜ?」
二人は南の言葉の意味がよく分からない様で首を傾げたが、とにかく難しい言葉を言われた事自体に腹が立ったらしい。
「訳わからん事を言いよって! ワレ! ぶちまわしちゃる!」
二人の男は両腕を機関銃に変化させた。
半改造人間か、よし一人でも勝てる!
南はそう思ったが、同時に生身で銃撃を食らう危険性も察知した。
「代紋チェンジャー!」
南は急いでブルーリベンジャーに変身。機関銃の乱射を飛んでかわすと、そのまま飛び蹴りに移行して二人の顔面を蹴飛ばした。生身の部分を攻撃された二人はひとたまりもなく、その場に倒れ込む。
弘樹はもう勝負がついたと思ったらしい。
「万田さん、あんたがリベンジャーだったんか…!」
とフラフラとブルーの側へ寄ってこようとする。
だが、大仏ぼくろの方の男はまだ意識があり、弘樹に銃口を向けていた。弘樹は気づかない。
「来るな!」
ブルーは叫んだが、間に合わない。
もうダメか、とブルーが思った瞬間、もう一発乾いた銃声が鳴り響き、大仏男の頭から血が吹き出した。
ブルーが音のした方向を見ると、工場の入口付近に仁王立ちするレッドリベンジャーとチャカシューターを構えるホワイトリベンジャーの姿があった。
「兄貴! 姉さん! 来てくれたのか!」
とブルーは胸を撫で下ろした。