Monster Maker ResurrectionRPG FAN SS- Monster Makers' Conflict Side Stories-   作:Tale=Reaper

2 / 2
ブログの引っ越し作業などでドタバタしたり病気になったりで更新が遅れました
すいません
リハビリがてら、ずっと書きたかったお話を書きます
100%ギャグ&ぶっ壊れSSです

大好きなキャラであるシャットさんについて、
「商人のシャット」を描くことに挑戦するにあたり
頭の中に用意していたプロットというか前日譚です
 なのでこのSSのプロット自体は相当最初に考えていました
色々あったり原稿を書いたテキストの置き場所を忘れたりで、
ここまで遅れてしまいましたが(汗)

 実は一番最初に構想していたSSだったりします(汗) 
(2026/01/20加筆修正)


Monster Makers’ Conflict 外伝SS:ある商人ができるまで(執筆&公開2024-06-24)(修正済)

---ノベル「モンスターメーカークロニクル リザレクション」が始まる前のお話です---

 

 それは、ウルフレンドの地中海---エルセアの沖を行く、とある海賊船の上で起きた。

「ノーラの姐御、オレ、商人になる!」

 ”卒業”を前にしたシャーズの少年『シャット』の言葉に、「ぽかーん」と、シャ-ズの女海賊船長『キャプテン・ノーラ』は口を開け放した。

「うわああああああ・・・」

 刹那、マストから悲鳴を上げながら見張り役の船員が海に落下した。

「火事だああああああ!」

 そして船の厨房から黒煙を上げながら真っ赤な炎が上がった。

 さらに、水面に飛び出た『地中海の王』が、岩礁に激突して気絶した。

 

「あのな、シャット、あんたは・・・・・・」

 『ノーラの姐御』こと、ウルフレンドでまず知らない者はいないだろうネームドの海賊『キャプテン・ノーラ』は、頭を抱えて溜息をつきつつ、

言葉を頭の中でじっくり選んでから続けた。

「”商人”って仕事が何なのか、分かっているのかい?」

 自分を姉御と慕う愛弟子かつ愛すべき弟分へ、キャプテン・ノーラは呆れ気味に問いかけた。

「もちろん!

 物を買い取ってさらに高い値段で売り付けて儲ける商売でしょ!

 そのくらい、オレも知ってますって!」

 とても元気よく、シャットは答えた。シャットの返答は、大方間違ってはいない。だがしかし、大事なものを見落としている。

 ノーラは落ちかけたキャプテンハットを溜息混じりに被り直すと、再度、口を開いた

「それじゃあ、商人にとって一番大事なことは、分かっているね?」

「もちろん、『破産しないこと』でしょう?」

 シャットの返答は、間違ってはいない。だがしかし、ノーラが聞きたい答えではない。

 そして『姐御の顔色』を見て、それを窺い知れないほど、シャットは間抜けではない。彼女との付き合いは、転生人生でずっと続いていた。

彼女の一番弟子は、一番の弟分は自分だと常に胸を張って幾度も生まれ生き生まれ変わりを繰り返してきたシャットは、彼女の顔色で何を彼女が考えているか

察することができる(と、本人は思っている)。

「それに、商売をする土地のギルドと仲良くしなくちゃ。」

 これも姉御から教わってきた大事なことだ。ウルフレンドは、まだ冬の時代を抜けたばかりとは言え、あちこちに都市があり、商人のギルドがある。

余所者が挨拶もなく勝手に街で商売を始めるなら、ギルドは即座にその非礼のツケを取り立てるだろう。

「そうだな、それは大事なことだね。」

 だがしかし、それもノーラが聞きたい答えではない。そして『姐御の顔色』を見て、それを窺い知れないほど(以下略)。

 他に大事なことは何なのか、シャットは尊敬する姉御を失望させたくない一心で考えた。そして閃いた。

「そうだ、部下とお客を大事にすることです!」

「そうだね、シャット」

 ノーラの姉御の顔に微笑みが浮かぶ。『惜しいところまで行った!』とシャットは確信した。そして考える。

 これまでの問答から導き出される答えは・・・。

「商人として商売をする上で大切なものは、『信用』ですね!」

「その通りだよ、シャット。」

 ものすごく優しくノーラに言われ、そして自分の口から出た言葉を頭の中で噛み砕いて、シャットは気づいた。

 自分がこれまで数々の武勇伝を築き上げて得たのは、『ウルフレンド最悪のいたずらっ子』の二つ名だ。これまで海賊として盗賊として行ってきた

数々の悪行(と、本人は思っているが、された側の認識は大抵”悪戯”止まりである)は、どう考えても『信用を得る』どころじゃない。

 最悪、店の場所によっては客としてやってきた、かつての被害者(大体はオーク)に捕まって、罪をでっちあげられてでも牢獄に送られる可能性だってある。

(袖の下が通じないマトモな司法が期待できるほど、ウルフレンドは甘くはないのだ。)

 だがしかし、商人になったなら、そういった面々も相手にして商売をする必要もあるだろう。もしくは商売敵として対峙する事もあるだろう。

「お、オレの店が、燃える・・・。」

「何を想像したのか、察しが付くよ。」

 他人から見たら唐突に飛び出た意味不明な言葉も、付き合いが長いノーラには思考の経緯含めて理解ができた。

 かと言って、せっかく『海賊』以外の生き方を選ぼうとしてくれている弟分に、その生き方を諦めさせることはできない。

 それに『商人』という職業は、表にも裏にも、あるいは双方の橋渡しにもなれる可能性を秘めたものだ。自分が教えた内容も、シャットのこれまでの経験も

きっと活かすことができるだろう。

「店を開くなら、ブルガンディかエルセアにしな。そこなら、脛にキズある奴でも問題ないだろ。」

 白黒になって固まってしまった弟分へ、ノーラは助け舟を出した。

「あねご~!」

 敬愛する姉貴分からの助け舟に歓喜しつつ、顔から出るものを全部出しながら、シャットはノーラに飛びついた。

「待ちな。まだ店を出していいとは、あたいは言ってないよ!」

 シャットを拳骨で撃墜しながらノーラは言った。結果、甲板にすさまじい音を立てながら、シャットは頭を下にしたまま垂直に突き刺さった。

文字通りに。

「いいかいシャット。本気で商売をやりたいんなら、あんたには身につけなきゃならないものが山ほどある!

 その試練を乗り越える覚悟はあるかい!?」

「もちろんです!」

 上半身を甲板に刺したまま、ピン!と姿勢を正してシャットは応えた(逆立ちのままだが)。

 さすがに、いきなり商売をさせるわけに行かないので、知人の商人たちの協力を得つつ、ノーラはシャットにいくつかの『試練』を与えた。

 結論から言うと、シャットはノーラの期待にきちんと応えた。ノーラの使い走りで読み書き程度はできていたし、金銭感覚も養われていた。だから、

与えられた試練を次々と突破してみせた。

 次にノーラは、シャットに船員付きの船を与えることにした。商売には商品の輸送も、部下を使うことも、護衛を雇うのも必須だ。これは最終試験だと、

船を与えられたシャットは喜びながら気を引き締めた。

 シャットは船を海賊行為に使わず、輸送船として使った。荒事をできるだけ避け、安全に行くことができる航路を選んだ。ここまでは合格だった。

 しかし・・・・・・・・・。

「シャット、あんたが相手するのは一般人も含まれることになる。

 あたいが言っている意味、分かるよな?」

 ある程度まで船や人の扱いを見た後でノーラは聞いた。シャットは頷いて答えた。

「もちろんです!

 誰が相手だろうと、絶対にナメられたりしないよ!

 このシャット様をナメたヤツには目にもの見せてやります!」

 ノーラはその返答に、足元を強く踏みつけた。そこは甲板の板の一枚で、その端っこにシャットは立っていた。

 だから、テコの原理でシャットは空高く飛んだ。たまたま上空を通過中だったハーゲンとヴィラフレックは、一瞬だけ自分たちの視界に入った

『空を飛ぶシャーズ』に目を疑ったものの、目をこすった後でそこにはいなかったので、気のせいだと思うことにした。

 シャットは船の上の同じ場所に落っこちて、足元から甲板に突き刺さった。

「こいつは、さすがのあたいも骨が折れるな」

 下半身を船の甲板に突き刺したまま、自分の身に何が起きたのか把握できず固まっている弟分を見ながらノーラは頭を抱えて呟いた。

 ノーラが聞きたかった正解は、『礼儀作法』だ。キャプテン・ノーラは転生者だ。だから、どの世界でも職種や価値観を問わず『礼儀作法』は

共通して重要な要素だと知っていた。

 礼儀正しい相手は信頼される。信頼される相手は取引を持ち掛けずとも向こうから持ち掛けられる立場になる。

 逆に、無作法な奴は信用されない。取引を持ち掛ける相手は限定されるし、持ち掛けてくる相手もまた信用ならない奴ばかりだ。

ようは『類は友を呼ぶ』というやつである。

 もちろん、その程度で済むならまだマシだということもノーラは知っていた。調子こいた挙句に自分が絶対に敵わない巨竜の尻尾を踏んで挑発し、逆に

後悔する暇すらなく踏み潰された輩の話は、ウルフレンドにも尽きない。

 だが、と、ノーラは考えた。海賊稼業で慣らしてきた自分に『礼儀作法』など程遠い事柄だ。もちろん海賊に礼儀作法が無いわけじゃない。

だがそれは、商人たちや相手にする一般の客には縁が薄いものだろう。彼らに通じる『礼儀作法』でなければ、遠からずシャットは失敗する。

 どうするべきか・・・ようやく自分の状況を理解して、甲板に下半身をめり込ませながら抜けずにジタバタしている可愛い弟分を眺めながら、

ノーラは『礼儀作法』に詳しい人物を頭に浮かべた。

 

 数日後、港町エルセアの宿屋にて、ノーラはその人物と出会った。

「で、私が呼ばれたっていうわけ?」

 シャットの礼儀作法の講師として選ばれたのは、青を基調とした軽装鎧を身に着けた女戦士---王女戦士ディアーネだった。ウルフレンドのずっと南にある

島国『レオスリック』の王家の、正真正銘、本物の王女であり王族である。

 ノーラは彼女とエルフ族のロリエーン、そしてまだ転生を果たしていない魔術師ルフィーアの『三人娘』とは、旧知の仲だ。

「ほら、あんたって本物のお姫様じゃないか?」

 ノーラは即座にディアーネの疑問に答えた。

「お姫様で冒険者なら、他にも適任がいるでしょ?」

「訂正するよ。”ゾラリア王家との揉め事を抱えていない”本物のお姫様は、あんたしかいないんだよ。」

 ノーラの訂正に、なるほど、と、ディアーネは納得した。『姫』に該当する人物は二人ほど思い当たるが、ゾラリアの政治的内紛で追われる身だ。

対してディアーネは、それがない。そもそも彼女の実家であるレオスリック王家自体が、ゾラリアとは地理的条件も含めて縁が遠い場所だ。

 レオスリックは、ウルフレンド大陸の断崖絶壁と海に囲まれた島国である。ウルフレンドと隔絶したその環境のおかげで大戦の影響を最も免れ、滅亡からも避けられ、

当時の繁栄を唯一維持し続ける国家としても有名だ。

 ゾラリアの役人も、ベング高原へ手出しはしても、レオスリックまで足を運ぶ者は王家への使者以外にはいない。行く手段が限られている上に、

船で行き来するだけで一苦労だ。

 空を飛ぶ技術はとっくに失われているし、ドラゴンライダーも未だ世界に復活していない。

 そもそも、そこまで苦労してレオスリックに手を出せたとしても、迎撃に出るのはウルフレンド屈指のネームドのディアーネだ。

 あの災厄に等しい魔女『ミッドガルダ』をはじめとした脅威すら、彼女の振るう『ホリィアックス』に撃退されて来た。つまり、勝てるネームドは限られる。

 これだけでも侵略する側には絶望的なのに、彼女の人格と人脈のおかげで、あちこちにいる光のネームドが敵に回る可能性も高いと言えた。

 ようは、レオスリックへの侵攻は『割に合わない』のだ。だから、独立した王家を認め放置するのが無難な扱いだと言えた。

「仕方ないわね、引き受けてあげるわ。」

 肩をすくめながらディアーネは言った。今やっている親友のルフィーアの捜索は、未だうまく行っていない。まだ転生していないのかもしれない。

一旦捜索を切り上げ、気分転換をするにはには、ちょうどいいだろうと思ったのもあった。

「よろしくお願いするぜ、ディアーネ!」

 シャットはドヤ顔で自信たっぷりに腰に手を当てながらディアーネに言った。

「はい、だめ。」

 ノーラが叱るより早く、容赦なく飛んできた鉄拳で、シャットは『飛んだ』。文字通り、垂直に真上に。大きな音を立てて、少年シャーズは天井に刺さった。

「これは、マナーの教え甲斐があるわね。」

 薄レイク意識の中、宿の天井に刺さりながらディアーネの愚痴を聞きつつ、シャットは思い出していた。

 今のシャットには妹分がいる。エリミネッタという旅芸人の一座に拾われ育てられている、リュミールという少女だ。きっかけは、ノーラの姉御の常連客である一座が

船に乗ってブルガンディへ向かう時に、甲板の隅っこで彼女が歌っていた歌に自分が聞き惚れていた事だった。以来、その子は自分にすごく懐いてくれている。

 そんな可愛い子がこの前、レオスリックに行ったという話をしてくれた。

『ディアーネお姉ちゃんは、すごく優しいお姫様なんだよ!』

 まったく全然、正反対の対応をされたが、あの子が嘘を言うなど思えない。薄い意識の中で考えたシャットは一つの結論に至った。

 ディアーネが優しいのは、たぶん、あの子が小さい女の子だったからだろう。

『今度、生まれ変わったら、幼女になろうかな・・・』

 どこをどう経由してそうなったのか、そんな考えすら放棄したまま、シャットの意識は闇に落ちた。

 

 こうして、王族直伝のマナー講座は幕を開けた。

「この剣にかけて、値切らせねぇぜ!」

「客を脅してどうするの!」

 

「いただきまーす」

「スープを飲む時はスプーンを使って!

あとナイフを垂直にステーキに突き立てちゃダメ!」

 

「オレはこいつを手に入れるのに、3か月の船旅と5か月の陸路を・・・」

「説明は簡潔に!

 あとナマモノにそんな時間かけたら腐るでしょ!」

 

「これはこれは泥棒さん、死ね!」

「いつもの調子で襲い掛かるんじゃないわよ!」

「いや、これは別にいいんじゃないかい?

 あといつもの調子じゃないよ、なんというか・・・キモい。」

 

 時間にして一月ほど、数々の艱難辛苦を乗り越え・・・。

「初めまして、ボクはシャットと言います。

 以後、お見知りおきを。」

 シャットは見事に商人としての礼儀作法を身に着けた。

「やったよ、やったよノーラ!」

「ああ、本当にありがとうディアーネ!

 シャット、よくここまで成長した!

 さすが、このキャプテン・ノーラの弟分だ!」

 教師役のディアーネも姉貴分のノーラも、人目も憚らず互いに抱き着き泣きながら祝った。

「そんなに喜んでくれるなんて、オレ、生まれてきて良かった!」

 シャットは、まだ帰還しているか分からない天の神々に感謝した。

 それから、時間は経過して・・・。

「素晴らしいわ!」

 話を聞き終えたロリエーンは、感涙しながら拍手した。時はリザレクション・エイジ。あらゆるものが帰還、あるいは再生する、

混沌とした時代だ。

「いつ断って帰ろうかって考えたことも、一度や二度じゃなかったわよ。」

 ディアーネは、ため息混じりに言った。

「いやぁ、ディアーネには本気で感謝しているよ、うん。」

 シャットは後頭部に玉の汗を浮かべつつ、ディアーネに感謝の意を伝えた。

 ここは、ブルガンディ島にあるシャットの館、投資で成功した彼は商売の拠点になる場所を作ろうと思い至り、すべての情報や物資が

ウルフレンド中から集う、あらゆる勢力から独立した島に、館を建てたのだ。

 もちろん、『ブルガンディ島に館を持つ』というステイタスも得られるというアドバンテージを見据えての、一石二鳥の行動でもある。

「それで、リュミールちゃんとは、その後どうなの?」

 いたずらっぽい笑みを浮かべながら、ロリエーンは聞いた。

「待ってよロリエーン、あの子とはそういう関係じゃないから!

 ていうか常連の重客に手を出すとか、ノーラの姉御に殺されちゃうよ!」

 卒業した今でも、シャットにとって『ノーラの姉御』は頭が上がらない、尊敬すべき存在だ。彼の自室には、いつのころ描かれたか分からない

古い女海賊の絵が飾ってあるという。

「ああ、そういえばさ、沖のほうに沈んでいる大戦の船の引き揚げの話だけど・・・。」

「あ~、宇宙から来た連中の船ね。

 そんなの引き揚げて、大丈夫なの?」

 ディアーネたちも、そいつらに『大戦』の時は散々辛酸を嘗めさせられたことを覚えている。だが、彼らは無敵の神というわけではなかった。

撃墜に成功した船の残骸は、今もウツフレンドを含む世界のあちこちで眠っている。

 その一つ、巨大な空母がブルガンディの沖に沈んでいるのが最近発見されたのだ。ちょうど、冬の時代に彼らとの間に戦いが起き、

巨大空母『マリー・ア・ヴェール』が司令官ごと沈められたという記録があった。

 そこで、商人たちが有志を募り、引き揚げ計画を画策しているのだ。

「え~、何かお宝を積んでるかもしれないじゃん!」

 ロリエーンは楽観的な意見を言った。

「それが、さ・・・。」

 シャットは躊躇いがちに切り出した。

「船の劣化が酷くてね、試しにこっそり部下を送ってみたけど、フックをかける端からボロボロと構造が崩れてったそうでさ・・・。

 危ないから部下たちも引き上げさせて、失敗の確率が高いから、計画への参加も断っておいたよ。」

「えええ~、ロリちゃんつまんない!

 船のお宝とか、ワクワクするのに~!」

 シャットはロリエーンのこの反応を予想していた。

「いや、引き揚げるのもタダじゃないんだよ。

 例えば、深海に沈んだ船からワインの箱を引き上げるだけでも、費用がいくらすると思ってるのさ?

 それに、積み荷だってお宝ばかりじゃないんだよ?

 危ない兵器だったら責任がボク・・・っと、オレに降りかかるからね。」

 シャットは商人モードの時は『ボク』、プライベートでは『オレ』というふうに、一人称を使い分けていた。そうすることで、「スイッチの切り替え」を

行い、表と裏の顔の使い分けもスムーズにできていた。

 二人のやり取りを見てディアーネはクスリと笑った。かつてのシャットだったら費用対効果や危険など考えもせず、

ひたすら船の引き揚げに邁進していただろう。

「あとね、実際におかしなことも起きてたし。」

 まだ納得がいっていなさそうなロリエーンを窘めつつ、シャットは続けた。

「何か変なものでもあったの?」

 頬を膨らませながら、ロリエーンは問いかけた。それに対して、シャットは少し考えてから口を開く。

「調査した部下からの話だけどね、どうにかフックに引っかかった、一部の頑丈な船体の構造物だけ、船の上に

引き揚げられたそうなんだけど・・・。

 ”大きな植物”が絡みついていたらしいんだよ。」

 ディアーネとロリエーンは顔を見合わせた。

「植物?

 海藻じゃないの?」

 ロリエーンの意見を、シャットは首を振って否定した。

「いや、地上の植物さ。伝書バトで連絡を受けてサンプルを貰ったんだ。

 現場から指示を仰がれたんだけど、すぐに”こいつも含めて海の中に戻せ”って、サンプルを返しながら言っておいたよ。

 こういう『あり得ないもの』には、触れないほうがいいからね。」

 ロリエーンはシャットの言葉にキョトンとしつつ、言った。

「それもディアーネから教わったの?」

 シャットはそれに、誇らし気に答えた。

「いいや、こいつはノーラの姉御から教わった海賊の伝承さ。」

 どうやら自分は、シャットの中では、あのキャプテン・ノーラには永遠に勝てそうにない。

 ディアーネはそれを思い知りつつ、海に戻されたという『未知の植物』とやらに、思いを馳せた。

*

*

*

 生命維持装置代わりに伸展させていた『肉体』から、本体を引きはがす。

 傍から見れば巨大な植物---それも陸地の---に、見えないこともないそれは、光合成と周囲を通りかかる海洋生物の捕食を行い、空母という

巨大質量の構造物に挟まれて動けない本体の生命維持を、ひたすら行っていた。

 今ようやく、自分の体を長いこと拘束していた空母の構造物が外れた。座乗艦だった巨大空母『マリー・ア・ヴェール』は、今や見る影もない。

部下たちと共に様々な任務に就き、過ごした、我が家のような船は、すっかり自然に還っていた。

 上層部の方針で、自然分解される物質でできていたからだ。それでも、巨体を分解しきるのに800年ほど経過してはいたが。

 『ソレ』は、海面へ顔を出す前に周囲を探した。800年前の戦いで散った部下たちのドックタグを、海底から拾い集める。あの船の乗員は

自分が育てた。下の兄弟か子供も同然の部下ばかりだった。

 視界に入るすべてを回収してから、朽ちていく船に敬礼をして、『ソレ』は海面へ上昇を始めた。

 

(おわり)




<あとがきとか解説とか>

解説:シャットの投資成功
なんと、公式です!
ノベル版モンスターメーカーリザレクション クロニクルの作中で触れられていました!
おめでとうございます!

解説:ウルフレンド最悪のいたずらっ子
これも、公式です
何を今までやらかしてきたのか、この名前から察せられると思いますが、
この状態から投資で成功し、ブルガンディに館を持つまでに成り上がったシャットさんは
彼のファンとしても、純粋にすごいと思います

ではまた
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。