吉良 明花は賑やかに暮らしたい   作:ヤンダ

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もう1人の妹

 

 

 

1967年、冬の冷たい空気の漂う夕方の中、白い雪に地面が覆われた公園のトンネル状の遊具の中に2人、少女がいた。

1人の名前はホリー・ジョースターという。

彼女は今、家出の真っ最中だ。

父ジョセフと喧嘩し、家を飛び出し、この公園にたどり着き、トンネルの中で寒さを凌いでいた。

喧嘩の理由は下らないものでは母の誕生日のプレゼントを選ぶ中言い争った事が原因。

 

「パパの馬鹿…!絶対、ホリーが描いた絵手紙より、綺麗なアクセサリーを買った方が良いに決まってるのに…」

 

ホリーは涙目になりながらも少しでも暖を取ろうと手を擦って愚痴る。

ホリーの愚痴を聞きながら苦笑いする少女がもう1人いた。

彼女の名前をホリーは知らない。

家出して着いた先の公園で、1人いじけてたホリーに声をかけて一緒に遊んでくれた初対面の少女だ。

 

手を擦るも冷たいホリーの手に手を被せ少女は微笑ましいものを見るかの様な笑みを浮かべたまま言った

 

「ホリーちゃん…ホリーちゃんのママ、きっとホリーちゃんが描いた絵と手紙を喜んでくれると思うよ…」

 

「どうしてそう思うの?子供のホリーが描いた下手な絵なんかより、綺麗に作られた指輪の方が喜んでもらえるわ。」

 

ホリーはさも当然の事の様に応えて初対面の少女になぜそんな事が分かるのかと疑問に思う。それが顔に出たのか、その顔を見た少女は、あはは!と笑い出した。

 

「なによ!何で笑うの!?ホリーはこんなに悩んでるのに!」

目の前で数時間遊んだだけの初対面の少女にこんなにも笑われるとは思いもしなかったホリーは怒り出す。

そんなホリーも見ても笑顔のままの少女はふぅと一息つくと言い出した。

 

「私絵手紙描いてママにプレゼントした事があるの。ママすっごく喜んでくれてたんだ。」

幸せそうな笑顔で言う彼女の言葉には芯があった。

これにはホリーもたじろぎながらも聞き返さざるえなかった。

 

「ほんとう、なの…?」

彼女はまっすぐと目を合わせながら力強く手を握って言う。

 

「私はママもパパも大好き!ママもパパも私の事愛してくれてるんだもん。私もパパとママが何かくれたらすっごく喜んじゃうよ!それも手作りなんてとっても素敵じゃないのぉ!」

 

「!そっか!」

温かみのある両手から伝わる希望の熱、

ホリーは家に帰る決心をした。

立ち上がり振り返り、トンネルから出る。冷たい風が少し激しく冷たく感じたが、

彼女からもらったパワーがそんな冷たい風も平気にすら感じた。

 

「ホリー、パパに謝らないと!」

「いってらしゃい!ホリーちゃん!」

走り出したホリーは一度振り返りトンネルから出た少女に向かって尋ねた!

 

「あなたの名前!教えて!」

「私は…ーーー!だよ!またね!」

激しくなっていく冬の風音に遮られて肝心な名前は聞こえなかったが、

彼女はトンネルを横切り、そのまま反対方向へ走っていった。

 

(きっとまた会えるわよね…)

 

その日夜、家出したホリーを心配して探し回っていたジョセフに怒られたが、次の日の母の誕生日は無事成功で母は涙ながらホリーを抱きしめてくれた。

 

ーーーーーーーーーー

ーーー

1996年…8月、

 

あの日から29年…ホリーはあの冬の日の事を忘れないで時たま少女の事思い出しては感謝していた。

また会いたいと願ったがあの日以降一度も会ったことがない。

 

ホリーは現在、2人の子供がいる。

誕生日を祝い祝われる度に思い出すのだ。あの日の事を

 

吉良・ホリー・ジョースターはその日は病院勤務を終えた後、

14歳の息子の吉良吉影と7歳になる娘の吉良京とともに外食に出る予定でいた。

だがその日の昼、彼女の勤める病院に交通事後に巻き込まれた1人の女性が緊急搬送される。

 

点滴を受けながら搬送用のベッドで運ばれる女性はホリーの手を掴み、息も絶え絶えに必死に言葉を紡ぐ。

「私、死にたく無い…お腹の子が…1人になっちゃう…はぁ、はぁ、」

 

女性の身元は調べられており、名前は『音石由美』。37歳になるが

両親を6ヶ月前に火事で亡くしていて、身寄りも無い。

彼女は妊娠しており、お腹の子は9ヶ月目である事が分かった。

 

「そう、由美さん…あなた妊娠してるのね…旦那さんは?」

 

ホリーは点滴を受けながら必死に意識を保つ女性に声をかける。

音石由美は汗を拭われながら悪い表情をさらに暗くし応える。

 

「はぁ、はぁ、もういない…。妊娠した途端消えちゃったのよ…」

 

あまりに衝撃的な答えにホリーは、自分の手を握る彼女の手を強く握り返した。

そして、決意した表情で彼女に言う。

 

「絶対にあなた達を助けてみせるわ、安心しなさい。」

 

ホリーのその揺らぎない目と表情を見た音石由美は安心しきった表情で

流れる涙と共に眠気に身を任せる前に一言話す。

「ホリーちゃ、ん…よね?」

 

その呼び声にホリーはあの日の冬の事を思い出した。

(まさ、か…)

 

「あり、がとう…お腹の子の、名前、めいか…明ける花と書いて…『明花』っていうの…お願い…」

「!」

 

目を閉じて衰弱していく彼女を見て全てを察し感じとったホリーは、即座に判断し、付き添う看護師達に言いながら手術室へ進む

「先生達に伝えて!これから緊急帝王切開手術よ!」 

 

………………

 

 

その日、無事1人赤子が産まれた。母の死を感じて泣いているような、命を叫ぶような産声だった。

永遠の眠りに付いた母親の表情は安らかだったのホリーは覚えていた。

 

 

「『由美』ちゃん…無事産まれたわ…安らかにね…」

 

ホリーは腕の中で泣く赤子の頭をそっと撫で名前を告げた

 

「『明花』ちゃん…」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜〜〜〜

〜〜

1998年の夏

あの日から明華が産声を上げて2年が立った。

2歳になり指を咥えながらボーっと見ている先に2人の子供達がいる。

 

1人は15歳になった水兵帽を被り水兵姿で壁に寄りかかり本を読む少年『吉良吉影』、

 

もう1人は大きなクマの人形抱き抱えて明花と手を繋ぐお姉ちゃん風を吹かせた表情の9才の『吉良京』だ。

 

何故明花がこの2人とともにいるかと言うと

身寄りの無かった明花をホリーは自分の養子『吉良 明花』として引き取ったのだ。

 

今ではボーとしているがすくすくと育っている。

明花は吉影と京を見続けながら口から指を離し質問した。

「にぃに、ねぇちゃはどうしてなぁ〜?」

 

「ん〜?」

本を閉じ、明花の質問に耳を傾ける吉影。

「かみのけ、のいろ、ちがうなぁ?」

 

吉影と京の髪の毛は黒いが、

明花の髪の色だけは黄色なのだ。

答えは単純に…と吉影は言う。

 

「あぁ…血が繋がってないから、かな。」

「!?」

 

吉影は当たり前のように平然と口にした。

その様子に明花は涙目になってしまう

 

「おぉっと?泣くな、泣くな、よしよし、」

 

吉影は泣き出しそうな明花を抱き上げると話を続ける。

 

「血が繋がってないのは確かな事だぞ…だがな、そんな事どうとない。ちっぽけな事だよ。」

 

吉影は優しく微笑みながら、明花に顔を合わせて言った

 

「俺は明花のお兄ちゃんだし、心から愛してるよ。」

「京もぉ〜!」

 

京も吉影に持ち上げられた明花の足を掴んでギュッ抱き寄せた。

 

明花は2人の暖かい体温に触れたまらず、にぱぁっとなる。

「ほんとぉ?やったぁ!えへぇ!えへへぇ!」

 

 

 

 

 

 

これは杜王町で始まる呪いを解く物語に

少女が関わる話となる。

 

 

『吉良 明花は暖かく暮らしたい』

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