「…でっ!?」
豪快に尻餅を突いて思わず呻く。
尻をさすりながら起きあがって周りを見渡す。
…これは、何というか。
霧が濃くて見えにくいのもあるけど、とにかく広い場所だというのは解る。
床には、多くの人が倒れている様な絵…。
照明器具ややたらと高く組み上げられた鉄骨…。
…何だろう、撮影スタジオ?
周りを見回している間にも、他の3人は誰かに話しかけていた。
…着ぐるみ?何で、わざわざ着ぐるみ…?
空っぽだとか解る解らないとかでギャーギャー騒いでいる花村と着ぐるみに、里中が「うっさいよあんた等!」と一喝する。
「それよか、昨日ここに誰か来たでしょ」
「なんと!?クマより鼻が利く子がいるクマ!?お名前、何クマ?そっちのキミも、教えて欲しいクマ」
「お、お名前?千枝、だけど」
「僕は、シン。神薙、シン。君は……?」
「クマは、クマクマ」
…クマ、なのか。
まぁ、クマ、なのかな?
というかそのままなのか。それで良いのか。
「それは良いから、その『誰か』の事教えてよ!」
「確かに昨日、キミらとお話したちょっと後位から、誰かいる感じがしてるクマ…クマは見てないから誰かは分からないけど」
里中の質問にクマは答えると、向かって右を指差した。
「気配は向こうの方からするクマ。多分あっちクマ」
「あっちね…みんな、準備は良い?」
里中からやや鬼気迫る様な気迫を感じるのか、気圧され気味に花村はおう、と頷く。
走っていく3人。
クマと一瞬顔を見合わせた後、遅れない様に僕等も走り出した。
たどり着いた僕等を出迎えたのは、いかにもファンタジーとかでありそうな洋風の城だった。
「もしかして、昨日の番組に映ってたの…ここなのかな?」
番組…マヨナカテレビの事かな。
花村に番組についても質問されたクマが、首(?)を横に振る。
元々クマとシャドウしかいないこういう世界だ、番組を撮る等といったものは無い、と。
「キミ達の話を聞いてる限りだと、そのバングミ?っての…その子自身に原因があって産み出されてる気がするクマ」
「こういう世界だとか言われても、意味が分かんねーっつーの!」と呻く花村、「あーもう頭こんぐらがって来た!」と唸る里中、頭をかきながら考え込む鳴上。
…まぁ、僕も置いてけぼりなんだけども。
「ねぇ、雪子…このお城にいるの?」
「話を聞く限り、間違い無いクマね」
城を見上げる里中にクマが答える。
雪子、というのは里中の友達だろうか…初対面ではあるが、何だろう、必死さが伝わってくる。
「あ、でさ、『逆ナン』って「ここに雪子が…あたし、先に行くから!」え、ちょ、チエちゃーん!?」
クマの言葉をスルーし、走っていく里中。
おい、1人で行くなって!、と怒鳴る花村の声も聞こえていないのか、里中の姿はどんどん小さくなっていった。
「あー、ったく!1人で行っちまったよ…」
ボヤく花村の横で、クマがあ、と声を上げた。
「お城の中はシャドウが一杯クマ…オンナノコ1人はキケンかも…」
冷や汗をかいている様な顔。
花村もマジかよ!?と焦る。
「それ先に言えよ!くそ、里中を追うぞ!」
頷きあうと、僕達も城の中へ走っていった。
赤い絨毯。赤のカーテン。
思った以上に赤の配色が多い場所だな、と漠然と思う。
「敵2体クマッ!」
クマが叫ぶと同時、窓ガラスから何か液体の様なモノが床に落ちた。
仮面を適当にくっつけた様なそれは、宙に浮かぶと球体へと姿を変え、そこへ口が形作られる。
また、角を生やした魚の様な形のナニカも宙に浮かんでやってきた。
これが、シャドウ…?
早速お出ましか、と花村が言うと同時、花村と鳴上の前に蒼く輝くカードが落ちてきた。
…何だ、あれ…?
「イザナギ!」
「来い、ジライヤァ!」
鳴上は握り潰し、花村はそれをレンチで叩き潰した。
何かの力が吹き荒れ、それが形を成して2人の背後へと浮かび上がる。
学ランを羽織り、長刃の得物を構えた戦士。
赤いマフラーに迷彩柄が特徴的な、忍者。
それらを見て、身体の中で「ナニカ」が疼いた気がした。
「うっしゃ、行けぇ!」
クルクルとそれ…ジライヤは周り、まるで忍術でもするかの様に手を構える。
すると風が巻き起こり、魚の様なシャドウを巻き上げ地面に叩き付けた。
その隣でイザナギが構えると同時、雷が口だけオバケ(?)を打ち据える。
体勢を敵が崩した、まさに絶好のチャンス。
「行くぜ相棒!」
「あぁ!」
そこをゴルフクラブやレンチの滅多打ちが襲い、もれなく敵は全滅した。
「よっしゃ、これなら行ける…しっかり付いて来てくれよ、神薙!」
「うん!」
階段を上がり、扉を開ける。
そこに先へ走っていった里中の姿はあった。
それを見つけて安堵すると同時に、どこからともなく女子の声が聞こえてきた。
「これ…天城の、心の声か?」
「そして多分、この場所はユキコって人の影響で、こんな風になったクマ」
花村とクマが話している間も、声は続く。
自らの名前への嘆き。
自分に価値を見いだせないと呟くその声は、千枝…里中を羨む声へと変わっていった。
まるで自分を守る騎士であるかの様に、崇めるかの様に。
けど……驚いたのは、それからだった。
「優しい千枝…だってさ。笑える」
響く声に戸惑う里中の前に。
瓜二つの少女が現れたからだ。
「…里中に双子っていたの?」
「聞いた事ねーよ!あれってまさか…!?」
「あぁ、花村の時と同じ…!」
「抑圧された内面…それが制御を失って、シャドウが出たクマ!」
思わず間の抜けた事を呟く僕に花村が答え、鳴上とクマが続く。
…あれも、シャドウだって…?
「雪子が、あの雪子が!私に護られてるって!自分じゃ何にも出来ないってさ!」
そうこなくっちゃねぇ、と里中シャドウはニヤリと笑う。
「雪子ってば、美人で、色白で、女らしくて…男子なんかいつもちやほやしてる。そんな雪子が、時々あたしを卑屈な目で見てくる…それが、たまんなく嬉しかった」
金色の瞳で里中を真っ直ぐ見据え、ソレは言う。
自分がいなきゃ雪子は何にも出来ない。
自分が、雪子より上なのだ、優れているのだ、と。
「ど、どうすりゃ良いんだ?」
「とにかく、里中を護らないと!」
「センセイの言う通りクマー!」
話し合った結果、とりあえず里中へと駆け寄る。
「や、やだ!来ないで!見ないでぇ!」
けど、彼女はまるで里中シャドウを背にして僕達に叫ぶ。
まるでソレを、隠すかの様に。
落ち着け、となるべく鳴上が優しく冷静に言うも、彼女は錯乱しているのか、違う、違う、と震えながら繰り返す。
「ば、馬鹿、それ以上言うな!」
「そうだよねぇ……1人じゃ何にも出来てないのも。人としても、女としても、本当は勝ててないのは、あたし
焦って花村が割り込もうとするも、里中シャドウは続ける。
「けどそんな私を、雪子は頼ってる…ふふ、だから雪子は大事な『トモダチ』。手放せない…」
それでも尚否定するかの様に首を振る里中を見て、ソレは一層笑みを深くする。
「うふふ…今まで通り、見ないフリであたしを抑えつけるんだ?けど、ここでは違うよ…いずれ『その時』が来たら、残るのはあたし」
残忍な笑みを浮かべて、ソレは言った。
まるで宣戦布告でもするかの様に。
「良いよね?あたしもアンタなんだから」
「黙れ!!アンタなんか…!」
「ダメだ、里中!!」
花村が叫ぶも、もう止まらなかった。
「アンタなんか、あたしじゃない!!」
それが、引き金だった。
高笑いし、黒いもやが集まったかと思うと、そこにはもう里中を模した姿は無かった。
長い黒髪。
黄色で統一されたその身体は、顔まで黄色で覆われている。
鞭を持ったソレは、数人の学生の上に、文字通り乗っていた。
まるで女王が如き、姿。
…ナニカが、身体の中で蠢いた。
身体が、熱い。
息が荒くなるのを自覚する。
心臓の音が、煩い。
『我は、汝…』
思わずよろめく。
目の前では、2人がもう臨戦態勢だ…。
『汝は、我…』
頭に響く声が煩い。
気を抜けばすぐ身体は床に倒れてしまいそうだ。
『呼べ、我を…呪われた炎を…』
手に、何かが収まった。
1枚のカード。
そこに描かれているのは、宙吊りにされた人間の姿。
12、という数字。
「ペル…ソナ…!」
カードを握り締め、光の塊となったそれを口に押し込んだ。
「う、おァァァァァ…ッ!」
熱い。
さっきなんかよりずっと熱い、まるで本当に身体を焼かれているかの様な感覚。
『キミは、アクマになるんだ』
いつか、聞いた声。
『我はカグツチ…そなたの糧となろうぞ…』
新しく、響く声。
…一瞬だったのか、だいぶ時間が経ったのか。
気が付けば、膝をついていた。
熱過ぎたのだろう、無意識の内に上着を脱ぎ捨てていたらしい。
霧が深く、見通しが悪かったハズの世界はだいぶ見える様になった。
熱も嫌な気分も、今は感じない。
奇妙な、説明しにくい感覚だけが身体にはある。
…両手を見る。
奇妙な紋様が、手に、腕に胴体にと現れている…。
いつもなら不気味に思うだろうそれも、何も感じない。
パニックになってもおかしくないのに、どうとも思わない。
「僕」はこうなのだ、と、あっさり受け入れてしまっている僕がいた。
…力を、感じる。
今、僕がするべき事は。
目の前のアレを、倒す事だ。
ついつい長くなってしまいました…あっはっは…。
という訳で、とうとう「人修羅」の姿がお披露目となりました。
早速で恐縮なのですが、原作との相違点。
この世界の人修羅は、マガタマではなく、ペルソナを飲み込んで身体に憑依させる事でアクマ化します。
初期ペルソナは、刑死者、カグツチ。
…元ネタ的にはちょっと待て、みたいになりますが、まぁ色々ネタがあるもので、ついやってしまいました。反省はしていない(ぉぃ
正直初心者のノリで突っ走っているもので、不安な処もあったりします。
意見や感想、お待ちしております。
それでは、また見える時まで。