熱でおかしくなっている八幡は盛大に悪戯をしてしまい……
オーケー、落ち着け。まず落ち着け。全てはそれからだ。
……そうか、俺は雨に打たれて冷え切ったせいで熱を出し、部屋に着いてすぐ意識を失ったんだ。
川崎はそんな俺をベッドに寝かしつけてくれて、部屋を暖かくしたり濡れタオルを当てたりと世話を焼いてくれたのか。小町は友達の家に泊まることになっていたな。つまり、今までずっと面倒を見てくれていたのは川崎ということになる。
冷静に考えると、これはかなり危険な状態だったのではないか?
両親も会社に泊まりだと連絡があったし、本来ならば俺は今日たった一人で一夜を過ごさなければならなかったはずだ。それも部屋で倒れてしまう悪条件で、川崎がいなかったらどうなっていたことか。
そして今は別の意味で危険な状態にある。
妹の乳を事故で触ってしまったつもりが、実はそれは不良っぽいクラスメイトの乳で、後に続けた軽口も完全にセクハラだった。前者も割とキツイが話は家庭内に止まる。が、後者は社会的に抹殺されるレベル。その前にこの場で肉体的な死へと誘われるかもしれん。
ぞっとして冷や汗が流れる。当の川崎はそれを目敏く見つけ、俺から濡れタオルを奪うと額を拭ってくれた。パシャパシャとタオルを濯ぎ絞ってまた額に乗せてくる。
目が合うと、また赤くした顔を逸らす。ってかこの顔色がデフォルトなのではと思えるくらい常に赤くなってきたな。俺に見られるだけで辱められてるの、この子?
さっきまでの状況整理で行き着いた最悪のシナリオは何故か回避できたらしい。しかし、事故とはいえ触った挙句、セクハラ発言しておいてお咎めなしなど俺の想定を遥かに超えた超展開で理解が追い付かなかった。
風邪で体力が落ちているのに思弁が過ぎたせいで消耗に拍車がかかる。何も喋らずにうつらうつらしていると、折を見て額の濡れタオルを替えられた。数時間冷気が持続する保冷枕が冷凍庫にあったはずだが、川崎は見つけられなかったのだろうか。
幾度も額の濡れタオルを絞っては替える、郷愁を孕んですらいる看護姿。その甲斐甲斐しい様をもっと見ていたい。俺の為にして欲しい。その願望が、そこまで出かかった保冷枕という言葉を飲み込んだ。
新たにタオルを絞り、俺の額に当ててくれた川崎の表情は学校では絶対に見られないものだった。目を細めて優しげで、ほんのりと頬を染めた面持ちに気持ちが緩み、らしくもなく素直な言葉が漏れた。
「…………悪いな、助かる」
余程意外だったのか驚いて軽くあわつきながら返してくる。
「い、いいって、謝んないでよ。あんたが、そんなんじゃ……、……こっちも、……調子、狂う、し……」
目を逸らして恥じらう仕草が暴力的なまでに可愛らしく、それは俺の心を容易く溶かした。まるで熱病にかかったように、その一挙一動に夢中となる。じっとりとした熱を持つ視線が絡みつき、それを感じて羞恥が増した川崎がさらに艶っぽくなっていく。
部屋に漂う空気が湿り気を帯びたものに塗り替えられ、言い知れぬ昂揚感で埋め尽くされていた。
またタオルを替えようと手を伸ばす。細く長い指は白魚のようで、これが俺の身体を這い回ったらと想像し、下腹部が痛くなる。それに合わせて。
「あっ……」
タオルに打ち上げられた白魚を捕まえた。逃げることを許さずそのまま口へと持って行き、舌で受け止めるように踊り食う。
「⁈」
取り替え損ねたタオルがずれて目隠しとなり視覚情報を遮断した。その為、一種の目隠しプレイのような状態となり、他の感覚がより鋭敏になる。主に嗅覚と触覚と味覚だが、時折漏れる川崎の小さな吐息すら拾い零すことはない。つまり、残りの感覚全てが敏感になっていた。
「っ⁉ ……‼」
まずは、はぐれた一番小さな白魚から味わう。
ぴちゃぴちゃと舌を這わす度、白魚がぴくりと踊る。
「ちゅっ、んちゅる、れろ……っ」
「ひぁっ……」
か細い息が漏れ聞こえる。白魚の悲鳴。
舌が隣の白魚に渡り移った。唇をつけ、そのまま浅く舌を出して軽いタッチを繰り返す。
あーんと口を開き、終ぞ白魚を含もうとした瞬間、隣のさらなる大物の方をぱくりと咥え込む。
「んんっ……!」
震える嬌声が部屋に響き渡った。その反応で昂ぶり白魚に歯を立てる。とはいえ爪を歯で傷つけない愛撫のように優しい甘噛みで、川崎のさらなる反応を引き出すのが目的だ。
視界がない為、白魚の踊り具合と漏れ出る吐息でしか昂ぶりを計れないのがもどかしい。
残された最後の白魚を人差し指と親指で摘まみさわさわと撫で扱く。これからお前を口にする、というサインだ。ぴくっとしたリアクションでそれが伝わったと知らされ満足した俺はさらなる行動に移る。
「……っ」
徐々に強く撫で扱いていくと予感めいたものを感じたのか、ひゅっと息を呑む音が漏れ聞こえる。これからされることへの恐怖からか。それとも……期待、しているのだろうか。
表情が見えればどちらなのかより正確に掴めるが生憎と視覚は閉ざされている。
どっちにしろ俺の嗜虐心は満たされるので関係ないなと益体の無いことを考えてしまう。
「……あぁ、んむっ」
「……っ‼」
こういうことにかけて最も経験豊富であろう塩舐め指をはむっと咥え口内で舌を這わせる。ガッチリと左手で掴んでいるので逃れることが出来ない。拘束から漏れた他の指達がわさわさと動き、頬を撫でられるのが気持ちいい。お返しとばかりに入念に人差し指を嬲り、時に吸い付く。
「じゅぷ、ちゅぷ、ぢゅぷり、ちゅぽっ、ぢゅぼぼ、くぽっ……」
「⁉ ん、……くぁ、……っ‼」
含むだけに飽きてきた俺は舌の動きに変化をつけて反応を窺うことにした。
咥えた口内で優しくも乱雑に指を舐め廻していたが、舌先を固めて爪と指先の間を突いたりなぞったりする。得られた感触が変わり小さい声を漏らしたのを聞き逃さない。
気分を良くした俺は更なる反応を引き出したく次のアプローチへと移行する。川崎の指を徐々に深く、深く喉へと導いていく。
ゆっくりと、第一関節~中節~第二関節と飲み込まれ、ついには基節までが口内へ到達する。第三関節までいけそうだが下手に
舌先から根本まで一杯に使って人差し指を愛撫する。まるで川崎の指と俺の舌が抱き合うように絡み合い、溶け合う。
「っ……ん……ぅぁ……」
抑えきれず漏れた喘ぎ声を聞く限り、悦んでいるようにしか思えないが、どんな表情なのかこの目で見たくなった。自分でタオルを取ることも出来るが情緒がない。
川崎の手でタオルをどかさせ、自ら顔をお披露目してくれるよう仕向けられないだろうか。
極上の白魚を楽しみながら考えるも妙案は浮かばない。
現状の関係性は、見られていないからこそ均衡を保っていられる。川崎もそのことを理解しているから甘んじて受け入れてるのだろう。
ただ、それでも川崎がこの愛撫をどのような感情で受け止めているのか、逆に見られた時どんな反応を示してくれるのかを見たい。その衝動は最早抑えきれなかった。
「……ん、んぶ……ずるるぅ、んぽっ……」
「…………っ⁉」
深く引き摺り込んだ白魚をゆっくりと、焦らすように引き抜いた。名残惜しさで再び咥えようとしては思い止まり、指に熱くじっとりとした吐息がかかる。その度に川崎の繊手がびくりと震えた。
未だに川崎はされるがままで、強い否定や拒絶を示してこない。
吐息に怯える繊手をそっとタオルに誘導する。
きっと川崎の方からは動かない。でも俺が自分で取り去るのは興醒めだ。
だから川崎の白魚で、彼女自身の羞恥に塗れた表情を見せてもらいたい。俺の痴態をどんな顔で見ているのか見てみたい。
そろりそろりと川崎の三つ指が瞼を覆うタオルと額の間に差し込まれる。指をくにゃりと曲げ拒否することも出来たはずだが、彼女はそうしなかった。俺に顔を見られてもいいという肯定に他ならない。ならば存分に拝ませて貰おう。
暗闇に覆われていた視界が徐々に開けていく。
そこには普段の気の強さなど微塵も感じられない美少女の顔が……
「…………っ‼」
「うぉ……⁉」
俺が心臓の高鳴りを感じながら
期待して待ち侘びてから、寸前でのお預け。川崎にあえて焦らすような小悪魔的要素はない。焦らしたとしても、無意識にそうなってしまったくらいで、今のも土壇場で羞恥に負けたと捉えるべきだろう。
だが、経緯はどうであれ存外に効いているという自覚がある。何かやり返さないと蟠りそうだ。
いまの俺はタオルを川崎の左手で捲ろうとして、上から右手で押さえられている。
【右手】
【タオル】
【左手】
【顔】
という状態。
さっきのお預けとも重なったこのざわめきを収めるには極上の御馳走を貪る必要がある。都合のいいことに
まるで味わって下さいと言わんばかりの限りなくゼロ距離にある左手。僅かでも舌を伸ばせば届くそれに再び這わせる。
「…………ちゅ、れろ、」
「…………ひゃっ‼」
今度は指そのものではなく人差し指と中指の間、水かきの部位を舌で小突く。驚きの入り混じった悲鳴のような嬌声。皮膚が薄い敏感な部分だし、先程までの指舐めとは感度が段違いなのだろう。
「ひ……くっ……」
左手が戦慄きぶるぶると震えていた。
――痛い痛い。快感に身を打ち震わせているのか自然と指にも力が込められ、水かきに這わせた舌先が川崎の指で挟まれる。
圧も凄い。まるで両手で地面に頭を押し潰そうとするバイオレンスな絵面が完成した。なんかこれって渋川○気とかがやりそうな技だな。
舌の動きを封じられ、どうしたものかと思案していると右手の圧が少し強まり押さえつけられたままズズッと左手が引っこ抜かれた。
もとより促す程度で自由を奪うほど強く握ってはいない。今まで従順だった川崎から、手を解こうという意思を量り兼ねて逃れられたという表現が正しい。
右手でタオルごと瞼を押さえられ目隠しプレイは続行中。
どうやら今度は川崎のターンらしい。
一体どんなことを、どのようにされるのか。期待と興奮で呼吸が荒くなり動悸が激しい。
布団の上からでも分かるくらい屹立する牡の象徴に川崎が気づいているかどうか、今の俺に知る術はなかった。
つづく