脳内選択肢が俺とウマ娘をうまぴょいさせようとして来る。 作:金木桂
スペとのトレーニングは朝早く、午前6時から始まる。
「おはようございますトレーナーさん! 今日も一日、スペシャルウィーク頑張ります!」
「おはようスぺ。今日の調子はどうかな」
「トレーナーさんのおかげで良い感じです!」
ストレッチをしながら芝の上で会話する。
見たところ、スぺの言う通り調子は悪くなさそう……寧ろ絶好調に近いんじゃないかこれ。さながらGⅠレース直前のパドックで見るような仕上がりようだ。
「凄い調子良いっぽいけど何かあったのか?」
「はい! トレーナーさんのドラミングが良かったので!」
「忘れてくれ。本当に忘れてくれ」
何か良いことでもあったのかなと思って聞けば、ニコニコと昨日の俺の痴態を口にするスぺ。勘弁してほしい。俺だってやりたくてやったわけじゃないんだ。マジで。
これ以上この話を続けると俺が致命傷を負うので話題を変えよう。
「スぺスぺスぺ」
「なんですかトレーナーさん?」
「スぺって凄い言いやすくて良い名前だなぁって思っただけ」
「そうですか! 嬉しいです!」
呼びかけたはいいけど何も話題が浮かず、恋人みたいな事を言ってしまった。何してんだろうな俺。
「トレーナーさんトレーナーさんトレーナーさん!」
「ん?」
「お返しに呼んでみました!」
スぺはそう言って笑顔を浮かべる。俺の愛バが一番可愛い。ってそうじゃなくてさ、ちょっと無警戒過ぎないか?
誰にでもそんな調子で接していたら何人の男を落とすか分かったもんじゃない。スぺのそれは無垢で魔性の笑顔なんだから気を付けて欲しい。
あ、今更だけど話すことあったね。朝から少し重い話になるけど。
「そうだ、スぺ。気になることがあるんだけど」
「なんですか?」
「そのさ。もう決めた?」
明確な言葉を用いずともスぺは発言の意図を理解したようで「そうですね……」と悩んだように深く息をつく。
既にスぺはトゥインクル・シリーズで類稀なる結果を残している。当然これまで通りトゥインクル・シリーズを走ることは可能だけど、スぺなら意思さえ固まればすぐにでも上のレースであるドリームトロフィーリーグに移籍できるだろう。
ドリームトロフィーリーグはトゥインクル・シリーズで結果を残したスターウマ娘が走ることが出来る次の舞台だ。一年に二回しかレースは行われないけど、各部門のトップクラスのウマ娘が覇を競うためそのレベルはGⅠよりも更に上がる。
移籍条件はほぼブラックボックスで、具体的にどこで何勝すれば移籍可能だとか、そういう明朗会計とした基準が存在しない。それでもトゥインクル・シリーズから過去に移籍したウマ娘の経歴からすればスぺは余裕でボーダーラインを越している。そもそもこの移籍条件、ホントに上の人間の匙加減という感じで、人気さえあればGⅠ未勝利のウマ娘でも移籍したケースもあったりするんだけど……まあそれは別の話。
重要なのはスぺには選択肢があるということ。
望めばトゥインクル・シリーズを卒業してドリームトロフィーリーグに移籍が出来る。
しかしスぺは未だ決心が付かなかったようだった。
「まあ、スぺはまだ三年目だから時間はあるしな。急かしちゃってごめん」
「……いえ。私こそ、ごめんなさい」
「謝ることなんてないよ。どうしようと俺はスぺのことを支えるだけだからね。それだけは覚えておいて欲しい。さて、じゃあ軽く走ってみようか」
「はい! 分かりました!」
元気溌剌と疎らなターフを走り出すスぺに、俺も気を取り直してストップウォッチを握りしめた。
─── ─── ───
始業時間になってすぐ、ピコンと業務用に貸し出されたスマホの通知が鳴った。
たづなさんからの呼び出しである。しかも理事長室に来いとのこと。
文章を三回ほど読み直して、背筋に冷たいものが走る。
……え、俺なんかやらかした?
身に覚えはそれはもう沢山ある。最近だけでも公衆の面前でスぺにプロポーズもどきな言動をしてしまったし、スカーレットさんにも迷惑をかけた。
俺だって素で奇行をしているわけじゃないんだ。自覚はある。
でもこれ全部脳内選択肢のせいなんだよなぁ……。
この脳内選択肢の存在を人に言うことは出来るだろう。
でも普通に考えて、こんな奇想天外な事情を誰が信じられるというのだろう。理事長に話したとしても狂人の与太話と思われるのが関の山だ。スぺなら信じてくれそうな雰囲気はあるけど、こんなことでスぺの悩みの種にはなりたくはない。俺はトレーナーなんだ。余計な心配を与えてスぺの調子を狂わせるのはトレーナーとしての本懐に反する。
仮に選択肢のせいで呼び出されたとして、流石に一発解雇ということはないとは思うけど……物凄い緊張するな。
トレセン学園一階にある理事長室に着くと一度深呼吸をして、意を決してノックする。
「入りたまえ!」
「し、失礼します……」
久々に理事長の声を聞いたけど変わらず威勢の良い声だ。
緊張を紛らわすためにそんなことを考えながら理事長室に入室する。
室内は外と違い、静かだった。理事長は重々しく高価そうなデスクに肘を付きながら、オレンジ色の髪をストレートに流した姿で大きな椅子にちょこんと座っている。
この中央のトレセン学園の理事長、秋川やよいさんは姿だけだと全くそんな偉い立場の人間には見えない。ウマ娘たちと並んで立っても全く違和感なく見えることだろう。顔立ちも幼いしね。でも実際は俺を含めるトレセン学園の職員全員を束ねるやり手の経営者なのだ。
しかしなぁ、身長だけなら小学生だなぁと思ってしまう。失礼過ぎて口にはしないけど。
『①身長だけなら小学生だなぁ。と優しく言いながら理事長の頭を撫でる』
『②身長だけなら小学生だなぁ。とニタニタ言いながらニタニタする』
理事長の口が半開きになった瞬間、時が止まり文字列が俺の周りを泳ぎ始めた。
このクソ選択肢が!
口にはしないけど、って思った瞬間になんて二択を突き付けるんだよ!
ニタニタするって動詞はなんなんだ。どういう行為なんだニタニタって!
それに『ニタニタ言いながら』ってなんなの? 口で本当に「ニタニタニタニタ」と虫みたいに囀ればいいの? あのさあ選択肢くん、意味不明な文章を寄こすのは止めてくれよ。理解できない。一億歩譲って選択肢を出すのは良いけど、せめて人が理解できる文章を書けるよう練習して? クソガキがよ。
脳内選択肢を脳内で貶すという世界一非生産的なことをしつつも、しょうがないので①を選ぶ。
「理事長って身長だけなら小学生だなぁ」
「し、
俺は全てを諦めて理事長の髪を撫でることにした。
あ、柔らかくてふわふわしてる。指を滑らせると艶やかに流れて、おまけに良い匂いまでするなぁ。小さくて可愛いし、とても俺より年上とは思えない。こうしてるとなんか癒されるなぁ。はぁ~~~~終わった俺のトレーナー生活。
冗談は置いておいて、このままだと真剣と書いてマジで俺の職場での立場が無くなる。
沈黙していても状況は悪化するだけだ。口を回さないと。
「すみません……理事長があまりにも可愛かったので! 本当に申し訳ございません!」
「う、うん……?」
俺は二の句を継ぐ前に手を引っ込めると土下座した。なんか昨日も土下座したような気がするけどそれはきっと気のせいだろう。気のせいということにしておかないと正気の保ちようがない。なんたって俺のクビがかかってる。
理事長はどういう反応をしてるのか。怖くて確認できない。首筋から流れる冷や汗の水量が増えていくのを感じる。
土下座して数秒。
反応が無いので気になって、チラリと目線を上げて理事長の様子を伺ってみる。
「か、可愛い……と。う、うむ。そんなことを面と面向かって言われるのは何年ぶりだろう。私もまだまだ現役だな……」
もしかして、存外悪い気がしてない?
「疑問ッ! だがなぜ今、突然そのような行動を起こしたのか説明を求めたい!」
「せ、説明ですか……」
「無許可で女性の髪を触るのが昨今セクハラに該当することは一社会人であるキミも知っているはずだ!」
しかし流石に謝罪だけでは誤魔化せなかったようで、理事長はそう言って俺へ扇子を突きつけた。
説明かぁ……。脳内選択肢のことを言えれば簡単なんだけどなぁ。何も思いつかない。
土下座を維持しながら考えること30秒。
やっぱり駄目だ。この状況でノーダメで凌げる言い訳なんてない。
畜生……とにかく変態ロリコントレーナーという評価だけでも撤回しないと!
そのためにここは諦めて土下座に土下座を重ねるしか……!
そう意思を固めていると、ふと俺は違和感を持った。
もう何十秒と経っているのに一向に反応が無い。
幾ら俺が一言も喋らないからって理事長も根気強く待ちすぎでは?
微動だにしない世界に疑問を持ったところで俺は顔を上げた。
『①その、髪に芋けんぴ付いてましたよ?』
『②ニンニクマシマシ、お好きなんですか?』
俺の周囲を飛び交う選択肢を見て眩暈がした。
案の定、案の定そうじゃねえかと思ってみれば! また俺に艱難辛苦を差し向ける気かよ! つか現れる時はちゃんと『選べ』という声を出せ! サボるな!
悪態を吐きつつも世界が停止するのはもう慣れっこなのでさっと選択肢に目を通す。
本日の脳内選択肢さんは通常営業みたいで、前回に引き続き①も②も意図が分からない。まあ脳内選択肢の意図が分かったことなんて一度も無いがそれはさておき。
①はさっき髪を撫でた理由を芋けんぴのせいにしようとしているんだと思う。でもなんで芋けんぴ? なんで髪についてるの? 暗に理事長が芋臭い女と馬鹿にしているのだろうか。
一方、②はもっと意味が分からない。いや二郎のトッピングのオーダー方法だというのは分かる。スぺに連れて行かれたことあるからね。でもなぜそれを今言う必要が? いっみわかんねー。
①を選んでも、すぐバレるよなぁ。
「ニンニクマシマシ、お好きなんですか?」
都合良く芋けんぴなんて持っていないので、俺は②を選んだ。
すると理事長はピシリという擬音が聞こえてきそうなほど表情を固まらせた。
「……に、臭うのか?」
「は、はぁ」
「そんな……食べたのは昨日のことなのだが……口臭ケアもしたのに……」
理事長は凹んだように肩を落とした。昨夜食べたんですね、二郎ラーメン。
なんだかまた申し訳ないことを口走ってしまったみたいだ。
罪悪感から俺はフォローのために口を開く。
「だ、大丈夫ですよ! 理事長の髪はフローラルな香りでしたし、ニンニクなんかよりよっぽど素晴らしく良い匂いです!」
「
落ち込みながら理事長は呟いた。ここまでテンションが低い理事長、俺、初めて見たかもしれない。
このままだと話が一向に進まない気がした俺は、たった今思いついたデタラメな言い訳を使うことに決めた。
「あの、さっきのことなんですが……。理事長が可愛いというのも本当ですけど、綺麗な髪の毛に帽子かなんかの糸くずが付いていて、気になったので取ったんです。許可なく触ってしまいすみませんでした」
頭を下げる。
理事長は暫く俯いていたが、気を取り直したように顔を持ち上げると小さい溜息を吐いた。
「そうか……。それなら良いんだ。ああ。でも私以外にはあまりしないでくれ。セクハラで訴えられたらキミを懲罰委員会に送らなければいけなくなる」
「分かってます。伊達に年下のウマ娘たちと接している訳では……って私以外?」
「な、何でもない! 何でもないぞトレーナー君!」
取り繕うような発言は気になったけど、これ以上蒸し返しても良いことなんて一つもない。ここはスルーしよう。
「納得ッ! ともかく事情は分かった! 今は私とキミ以外に誰も居ないから簡単な注意で済ませるが、これからは気を付けたまえ!」
「あ、ありがとうございます……」
「分かったからさっさとその土下座を止めて椅子に座って欲しい!」
どうにか理事長に許してもらえたみたいだ……。疲れた……。
理事長から言われるがまま、土下座を止めて一人用のソファーに座る。足が痛い。
それにしても、と俺は座ったソファーを観察する。
流石理事長室、黒皮張りのソファーは座り心地がとてもいい。来客用のとても良いものなのが分かる。これトレーナールームにも導入出来ないかなぁ……うん、予算的に無理だね。経費じゃ落ちない価格だろうし。
理事長は「早朝!」と達筆な文字で書かれた扇子を開くと、堂々とした表情のまま空気を震わせた。
「色々あったが、こんな朝早くに呼んですまないと思っている! しかし、白灘トレーナーには色々と確認したいことがあってな」
「か、確認ですか……」
「まず一つ、とあるトレーナーから通報があったのだが。キミがスペシャルウィーク君の目の前で半裸になりドラミングをしたというのは本当か?」
理事長の口から出てきた話題はまさしく俺が今、忘却の彼方にぶっ飛ばしたい黒歴史だった。先手を取って言うけどお前が出しゃばるとややこしくなるから出てくんなよ選択肢。
…………よし、出てこないな。
心底安堵しつつ、俺は思い返す。
あの時、トレーナールームから見える範囲には誰もいなかった。偶にパパラッチみたいに窓の外からアグネスデジタルがフィルター越しに覗いていることもあるが、あの時は確実にいなかったことを覚えている。
順当に、スぺが何かの拍子で漏らしたんだろう。それが誰を経由したかは分からないけどどっかのトレーナーの耳に入って、理事長にまで報告が上がったと。不幸だ。
嘘を吐いてもすぐバレることだし、なにより俺が奇行をするのは誠に遺憾ながら昨日が初めてというわけでも無い。素直に白状しよう。
「はい。それは事実です」
「そうか……。キミの特異な行動は度々聞いているし、ターフを走った時は厳重注意もした。そしていまこの身でも体験もしたのだが。それでその、そういう奇行はどうにかならないのか?」
「どうにもなりません」
「驚愕ッ! 断言が早すぎる! せめて悩むくらいの譲歩はしてもらいたい!」
と言われてもね。
脳内選択肢は非常に苛立つことに現時点では絶対だ。選択肢に服従しない限り、あの時間が静止した空間から脱出できない以上従わざるを得ないのだ。
「どうにもなりません」
「二度も言うか! ……まあ分かった、そこまで言うのならある程度は目を瞑ろう。キミはトレーナーとしては有能だ。その行動も全く無意味という訳ではなく、何かしらの思惑があってのことだろう」
いえ、何も思惑なんてありませんが。俺はただ選択肢に沿ったアホな言動をしているだけで。全部
そう全ての責任を押し付けていると、理事長は続けて言う。
「だが多少は周囲を考慮してもらいたい! 話によれば、キミの行動の幾つかは倫理的にグレーゾーンのものも多いそうだからな!」
「はい、努力します」
「そうしたまえ!」
理事長は俺の言葉に頷いた。
……努力だけでどうにかなるんなら俺もこう苦労しないんだけどなぁ。
「と、これが一つ目の用件になる」
「一つ目ですか?」
「肯定ッ! これは二つ目以降の用件と比較したら本来ついでのようなものだった」
そう言って理事長は息を一度吐いた。
「確認ッ! 二つ目の用件は白灘トレーナー、キミは漸くスペシャルウィーク君以外のウマ娘と契約することにしたそうだが、本当か!」
「はい。去年は大変でしたけど今年に入ってスペシャルウィークのことも落ち着きましたし、俺もトレーナー業に慣れてきたのでそろそろ時期かと思いまして」
「歓喜ッ! それはトレセン学園としても非常にありがたいことだ! 我が校に所属するトレーナーの数はそう多くない、白灘トレーナーみたいな有能なトレーナーが一人でも多くのウマ娘と契約を結ぶことは私としても大変歓迎すべきことだ!」
理事長の扇子の文字が「歓迎!」という文字に代わる。いつすり替えたんだろうその扇子。
「二つ目の用件はそれだけだ! では三つ目、スペシャルウィーク君の担当トレーナーとしてキミに聞きたいことがある!」
「なんでしょうか?」
「スペシャルウィーク君はGⅠを五勝している! 既に彼女はトゥインクル・シリーズを代表するウマ娘で、トレセン学園としても誇らしい限りだ! だからトレセン学園としても彼女の今後の去就には非常に注目している! その上のステージに行くのも可能だからな! そう言った点においてスペシャルウィーク君がどうしたいか、何か聞いていないか!」
「丁度今日の朝、俺も気になって聞いてみたんですけどまだ決めてないみたいです」
「そうか。なるほど……」
「スペシャルウィークにはまだ時間もあるからゆっくり考えるように言っておきましたが駄目でしたでしょうか?」
「いや、それで構わないが……」
理事長らしくない、煮え切らない返事だ。白とも黒とも言わずに言葉を濁す姿なんて初めて見た。
もしかしたらドリームトロフィーリーグの運営からスぺを早く移籍させるよう突かれているのかもしれない。
担当贔屓を抜きにしても現在トゥインクル・シリーズを走っているウマ娘の中で一番人気なのはスぺだ。可愛いし愛嬌もあるし元気で明るい。ウマ娘の中じゃオグリキャップとタメを張れるくらい大食いというのも人気のポイントだ。
そんなスぺは興行面からすれば、レースに勝たなくともいるだけで金が成る絶好のウマ娘だろう。
本格的な事情は知らないけど、ドリームトロフィーリーグの運営がそう考えてスぺを欲しがってても不思議じゃない。
「そうだな……白灘トレーナーは経験的に分かっているかもしれないが、その気になれば来週にでもドリームトロフィーリーグにも移籍可能だ。一応、スペシャルウィーク君にそれだけ伝えておいて欲しい」
悩みながらも、理事長はそう結論付けた。
……優しい人だ。もっと俺のことを説得して、スペを移籍させるよう働きかけることも出来るのにその程度の言葉で済ませるなんて。
理事長は誰よりも一途にウマ娘のことを考えている。
俺もスぺのこと、引いてはウマ娘のことを深く考えているつもりなんだけど……理事長には勝てないな。本当に尊敬に値する人だ。
俺は分かりましたと相槌を打とうとした。
『①分かりましタマモクロス!』
『②了解でスペシャルウィーク!』
おいクソ選択肢。
空気を読めよマジで。何でこんなつまらない洒落をこの局面で言わなきゃなんないんだ!
我ながらアレだけどちょっといい場面だったじゃん! 理事長のことを認めて、俺もこれから頑張ろうってなる場面だったじゃん! そんなエモい内心がパーだよ!
こんな詰まらないギャグ、シンボリルドルフだって言わないからな!
この二択、どれだけ悩んでも正解は分からない。
タマモクロスかスペシャルウィーク。理事長的にはどちらの方が機嫌を損なわないんだ。
前者は現在ライバルであるオグリキャップとドリームトロフィーリーグを争うスターウマ娘で、後者は言わずもがな俺の愛バだ。うん、そう考えると悩む必要なんて無かった気がする。
理事長の機嫌とか関係ない。
この二者択一で俺が選ぶのはスぺ以外にいない。
「了解でスペシャルウィーク!!」
───そう意気揚々と言うと空気が死んだ。
選択肢的な意味ではなく、場が白けた的な意味合いで。
先程まで薄い微笑みを浮かべていた理事長も訳が分からないといった風にその表情が固まる。
もう嫌だこの選択肢。早く死んでくれ。
まるで時間という概念が消え去ったような数秒の虚ろな間を置いて、理事長が動いた。
「そ、そうか。よろしく頼むぞ」
俺の非常に下らない返答に対して、理事長の出した答えはスルーだった。もう死にたい。
次話でまだ書き途中の別のウマ娘ssと同じネタを書いてしまったけどどうしようか悩んでる。まあいいか(華麗なる自己解決)