仮面ライダーセイバー Eternal Promise 作:かなん
《須佐賀美乃緒》
サウザンベースに入るや否やフードの女が出迎えてくれた。
「よく来てくれた。聖剣を渡してもらおうか」
「その前に話したいことがある」
神山さんが先頭に立った。俺と神彗は神山さんの横に並ぶ。
「どういうことなの?華読」
「説明しろ」
神彗と俺を見て観念したのかフードをめくった。その姿はやはり津久井華読だった。
華読はため息をついて淡々と話し始めた。
「私はある男に言われ魔剣を手に入れた」
ストリウスか。俺も一時期手を組んだがあくまで神彗を探す為のものだった。それにアイツは姿を見せなくなったしな。
「そして全ての聖剣を集めて究極の力を手に入れる。その力であなたを、美乃緒くんを人間に戻す!」
今までの行動は全て俺の為だったと。生き返らせようとしていたのか。
魔喰剣と暁弓剣の力で死者が蘇ったわけだが、完全なものではない。魔剣の力が弱まれば蘇った者は消えてしまう。
「儀式を行う為には全ての聖剣と人間の生け贄が必要なの。だから責任を負ってあなたが犠牲になって、神彗ちゃん」
責任?どういうことだ?
すると我慢が限界に達していた新堂さんが叫びブレイズに変身して襲い掛かった。もちろん攻撃が当たるはずがない。魔剣の力によって活性化した聖剣達が仮面ライダーとなって華読を守った。神山さんもユーリさんも変身して場は混乱を招く。
「・・・確かに私が馬鹿だったから美乃緒くんは私を庇って・・・」
そう。俺は神彗を庇って事故に巻き込まれた。でもそれは俺がやったこと。神彗には何の責任もない。
「あのね。あの事故は偶然じゃないの」
その場が一瞬にして凍りついた。トラックが信号無視で突っ込んできたのは人為的だっただと!?華読は狂ったように笑い始めた。
「私がお金を出してわざと轢いてくれって言ったの。まぁ美乃緒くんが庇ったのは予想外だったけど」
その言葉に隠された真実に鳥肌が止まらない。つまり全ては・・・
「まさか・・・神彗を」
「そう。邪魔なソイツを殺す為に用意したの。あの事故は」
それを聞いた神彗は静かに床に崩れ落ちた。長い髪が顔を覆っていて見えないが絶望の表情をしているのはわかる。
「・・・じゃあ最初から。私達が出会った時からの友情は全部嘘だったの・・・?」
神彗は聞こえるかわからないくらいの小さな声で呟いた。
「全部が嘘ってわけじゃないよ。昔は友達だと思ってたあの日まではね」
心当たりが一つある。俺達三人の仲に溝が出来てしまった出来事が。俺は見て見ぬふりをしていた・・・
「やっぱりあの日の答えを間違えていた気がするよ」
「あの日。私は自分の想いを美乃緒くんに伝えた。でも答えは私の求めていたものと違った。それからしばらくして気づいた。神彗ちゃんが、あの女が邪魔してるからだって」
今まで一緒にいて何で気づかなかったんだ。コイツは狂ってる。嫉妬の感情で親友を意図も簡単に殺すなんて。
「だから私は神彗ちゃんを殺そうとした。でも代わりに美乃緒くんが死んでしまった。悲しかったし、ますます神彗を恨んだ。でもただ殺すだけじゃつまらない。美乃緒くんを殺した罪を償わせないとって。
そんなときにストリウスに出会ってこの力を渡された。そして全ての聖剣を集め生まれる究極の力をヤツに渡し美乃緒くんを人間として生き返らせる」
まさにヤンデレと言うべき華読はあっという間に俺達が持っていた聖剣を操り玉座の周りに刺した。
火炎剣、刃王剣と水勢剣がないセイバーとブレイズは変身が解け、最光は聖剣となったまま奪われてしまった。
「このラグナフェンリルのブックは戦えば戦うほど強くなる。だからあなた達の聖剣を楽に奪える」
これで全ての聖剣が揃ってしまった。そして生け贄、すなわち神彗が捕まれば儀式は始まる。危険を察知した神彗は逃げようとしたが背後に現れた不気味な男に捕まってしまった。
「ストリウス!」
「まもなく儀式は始まります。もう誰にも止めることはできませんよ」
「離して!」
ヒーローというのは哀れなもんだ。例え変身できなくても何度も敵に立ち向かう。俺も同じだった。無意識に体が動いた。
「美乃緒くん。今すぐ楽にしてあげるから。儀式が終われば記憶は書き換えられて神彗ちゃんのことを忘れるの。そして私と二人でゼロから始めよう?」
狂気を漂わせている華読はラグナフェンリルの力で俺を拘束した。神彗も同じように縛られ玉座に座らされた。そして全ての聖剣のオーラが神彗に注がれていく。もはや誰にも止められない。神山さんも、新堂さんも立ち上がる力は残っていない。神彗の悲鳴が響き渡る。
「さぁ!究極の力の誕生よ!」
直後、神彗よりも大きな悲鳴が聞こえた。それは華読が発したのだった。何故かオーラが神彗ではなく華読に入っていく。
「この器はあなたの方がふさわしい。まぁ、生け贄は魔剣を使ったあなたしかなれないんですが」
全てはストリウスのシナリオどおりだったようだ。華読を騙し究極の力を宿した怪人を生み出す。最初から俺を蘇らせるつもりはなかったのかもな。
凄まじい衝撃波を合図に儀式が終わった。華読は自我がない怪人となって暴れ始めた。
「これが全知全能の力を越えたメギド、ハデスです。あなた方には倒せませんよ」
雪のように真っ白で不気味なハデス。エイリアンやゾンビを彷彿させる見た目だ。
儀式が終わったことで聖剣が解放されたのを確認した俺は魔喰剣を口に咥え手の拘束具を切る。そして神彗も同じようにほどいた後、それぞれの聖剣とブックを投げ渡した。
「まだだ・・・絶対に救う!変身!」
『クロスセイバー!』
『氷獣戦記!』
『エックスソードマン!』
『バイオレンスオロチ!』
『必中射撃姫!』
《神山飛羽真》
ハデスは俺達に狙いを定め凄まじいスピードで動き回る。アマテラスの矢も当たらない。倫太郎が足下を凍らせたが効いていないようだ。俺は時国剣の力で背後に回り込んだがハデスの背中から手が生えて攻撃してきた。全く隙がない。このままじゃ華読ちゃんもこの世界も救えない。
ふと何か閃いた様子のユーリはエックスソードマンから聖剣状態に戻った。
「俺でアイツを斬れ飛羽真!」
そうか!ユーリならメギドと人を分離できる!早速光剛剣を構え突撃したが思いもよらない出来事が起きた。まるで忍者のように分身したんだ。どれが本物かわからない。
「こうなった一人ずつ斬っていくしかないです!僕と飛羽真なら火炎剣と水勢剣で分離できるはず!」
俺と倫太郎は意識を集中させた。その間に最光シャドーがハデス軍団をまとめて相手にしてくれている。
「神彗!俺達にも出来るはずだ!」
「わかった!やってみよう!」
スサノオ、アマテラスも俺達を真似して力を溜める。そして刃王剣、火炎剣、水勢剣、暁弓剣、魔喰剣の五本の剣がギラギラと輝き始めた。
「一気に決めるぞ!」
『刃王居合!刃王超一閃!』
『必殺読破!烈火抜刀!ドラゴン一冊斬り!ファイヤー!』
『必冊凍結!流水抜刀!タテガミ氷牙斬り!』
『最光発光!』
『暁無双!月下乱舞!』
『必殺卒読!怒愚魔抜刀!オロチ千枚下ろし!』
それぞれの必殺技が重なりハデスの分身を打ち砕いた。そして残った本物を五人で同時に斬った。
「絶対に助ける!」
ハデスの胸が裂け華読ちゃんの手が助けを求めていた。俺は必死で手を伸ばしてその手を掴んだ。もうルナのように後悔はしたくない。その咄嗟の判断が功を奏して華読ちゃんを引っ張り出すことに成功した。
「彼女を助けたところでハデスは止まりませんよ。さぁここからが本番です」
そう言って消えたストリウス。途端に取り残されたハデスから大量の本が飛び出しサウザンベースの屋根を突き抜けていった。その本に紛れハデス自身も何処かへ消えた。
俺達は華読ちゃんを保護すべく一度帰ることにした。ストリウスの言っていた本番とは何だろう?嫌な予感がする。