仮面ライダーセイバー Eternal Promise   作:かなん

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風を打ち負かし、無を従えた者。

《神山飛羽真》

 

玲花さんを助けた翌日、俺と芽依ちゃんは行方がわからない神彗ちゃんを探していた。と言っても町全体を探すのは難しい。だからかがり高校の周辺で聞き込みをしていたんだ。まるで探偵みたいにね。

でもなかなか目撃情報がない。部活にも来ていないみたいだし、そもそも学校に来ていないのかもしれないな。彼女の行方だけでなく性格とか昔のこととかも聞いてみたりしたけど何一つ情報を得られない。彼女のことを知ってはいるものの素性を知る人はいなかった。

彼女が葛藤しているのは一体何故だろう?それに仮面ライダースサノオと共闘していたし。一体どういう関係なんだろうか。

 

粘って道行く学生達に聞き込みをしていると、短髪の女子が近づいて来た。

 

「もしかして神彗を探しているんですか?」

 

そうなんだと答えようとすると芽依ちゃんが遮った。

 

「そう!あなたは神彗ちゃんのこと知っているんだ!こっちは小説家の神山飛羽真!私は須藤芽依!あなたは?」

 

「私は津久井華読!よろしく!」

 

なんだか似た者同士だな、二人は。コホンと咳払いをして二人の視線を集めた。

 

「華読ちゃんは神彗ちゃんの友達?神彗ちゃんのこと詳しく聞かせてくれないか?」

 

俺達は場所を移しファンタジック本屋かみやまで話を聞くことに。華読ちゃんは早速神彗ちゃんのことを話し始める。

 

「私と神彗ちゃんは小さい頃からの幼なじみで、昔はすごく明るい性格だったんです」

 

驚いた。まさかあのクールな神彗ちゃんが明るい性格だったとは。

 

「もう一人幼なじみがいるんです。須佐賀美乃緒っていう男の子なんですけど、私達三人は学校でも暇さえあれば一緒にいるほどの仲良しでした」

 

華読ちゃんが見せてくれた写真には眩しいくらいの笑顔

をした三人が写っていた。その男の子は紛れもなく仮面ライダースサノオ、魔喰剣の持ち主だ。やはり神彗ちゃんと関係のある人物だったみたいだな。ところでさっきの言葉の最後、『仲良しでした』と過去形なのが気になる。芽依ちゃんもこの言葉に引っ掛かってる感じの顔をしてるし。

 

「でも高校生になった直後、美乃緒くんは交通事故に遭い命を落としました。原因はトラックとの衝突で・・・」

 

そうか。神彗ちゃんのあの言葉の意味がようやくわかった気がする。

 

『私は罪を犯した。だからこそ戦って罪滅ぼしをしなくちゃいけない。そのためにこの力が必要なんです』

 

罪。それは美乃緒くんを亡くしてしまったことだろう。それを確信に変えるため華読ちゃんに質問をしてみた。

 

「もしかして・・・その事故に神彗ちゃんが関わっていたりする?」

 

図星だったようで華読の表情が曇り小さく頷いた。

 

「事故で美乃緒くんが亡くなったのは神彗ちゃんを庇ったからなんです。トラックに轢かれそうだった神彗ちゃんを押し出して代わりに美乃緒くんが・・・」

 

彼女にとっての罪滅ぼしとは助けを必要としないくらい強くなること、そして自分が誰かを救うことなのかもしれない。

そういえば。俺が玲花さんを助けたときに神彗ちゃんと美乃緒くんは再会していた。美乃緒くんは死んでいるはずだからきっと先代バスターのように復活したんだろう。尾上さん曰く先代バスターの性格は昔よりも荒々しくなっていたらしい。つまり美乃緒くんもそうなっている可能性がある。神彗ちゃんに危害が及ぶ前に探し出さないと!

 

「華読ちゃん、約束だ。必ず神彗ちゃんを救う!神彗ちゃんが今どこにいるか聞いてくれないか?」

 

「わかりました。メールしてみますね」

 

携帯でしばらくやりとりした後、画面を見せてくれた。

 

「ここから近くの公園にいるみたいです」

 

俺は勢いよく立ち上がりファンタジック本屋かみやまを出ていった。芽依ちゃんも俺を追いかける。外は少し風が吹いていた。俺は一度止まり深呼吸をした。風が心地いい。だけど一瞬すごく強い風が吹いて華読ちゃんが左腕に巻いていた包帯が空高く舞い風に乗って飛んでいってしまった。華読ちゃんは慌ててその包帯を追いその姿は見えなくなってしまった。

 


 

《緋道蓮》

 

ったく。デザストの奴何処にいったんだよ。せっかく相手してやろうと思ったのに。神山飛羽真は新しい力を手に入れてまた強くなった。俺も負けてられない。

 

「なんで小説家なのに俺より強いんだよ・・・まだ強さが足りないのか」

 

俺は無意識に独り言を発していた。それほどアイツを憎んでるってことだ。いや、それだけじゃない。自分自身の弱さにイライラしてる。強さの為だったら何でもしてやる。もうここまで来たら俺はノーザンベースに戻れないしな。

深いため息をついた後、何者かの気配を感じた。ソイツはさっきの独り言に返答してきた。

 

「その通りだ、お前は弱い」

 

目の前に現れたのは神代凌牙、仮面ライダーデュランダルだ。

 

「俺を茶化しに来たのか?相手になってやるよ」

 

こんな奴、叩き潰してやる。頭に血が昇っていて体が勝手に動く。すぐさま剣斬に変身して斬りかかった。

 

『双刀分断!壱の手、手裏剣!弐の手、二刀流!風双剣翠風!』

 

ヤツは俺の攻撃を避け時国剣とワンダーライドブックを取り出す。

 

『時は、時は、時は時は時は時は!我なり! オーシャンヒストリー!オーシャンバッシャーン!』

 

おかしい。いつもは槍のカイジスピアで戦うはずなのに今回はカイジソードだ。俺を舐めてるんだろ。マジないわ!がむしゃらに剣を振るうが全く当たらない。ヤツは軽々と受け流して隙だらけの背中を何度も斬る。時止め能力を使うまでもないってか?

 

「あぁ!何で当たんないんだよ!?」

 

思わず風双剣を地面に叩きつけた。怒りに満ち溢れている俺は単調な動きしかできていない、だからどんどん追い詰められていく。攻撃を何回も受けてとうとう変身が解けてしまった。デュランダルも変身を解くがその姿は神代凌牙じゃなかった。フードを被った幼い少女だ。

 

「風の剣士、お前が必要だ。来い」

 

そこで俺は意識を失った。戦いで疲れ果てたからかもしれない。ただ、少女に服の襟を掴まれてどこかに連れてかれた感覚はあった。

 


 

《デザスト》

 

変なヤツと戦って数時間が経った。しばらくくつろいでいるといきなり風の剣士が現れた。

 

「デザスト。俺と本気で戦え」

 

なんでそうなったかは知らねぇがあの目はマジだ。だが何かおかしい。目ではわからないが確かに匂う。アイツじゃない何かのが。

 

「いいぜ、来いよ」

 

剣をヤツに向けて挑発してみる。が、特に気にする様子はない。静かに剣を分裂させる。

 

『双刀分断!風双剣翠風!』

 

俺の剣、グラッジデントと風双剣翠風がぶつかり合い、大きな金属音とともに火花が散る。

やっぱりおかしい。何でコイツは冷静なんだ?覚悟じゃない、別のモノがヤツを動かしている。

 

「お前、違うな。アイツの匂いがしない」

 

そう言ってみるとソイツは戦闘を中断し脱力した。期待していただけにがっかりした俺はグラッジデントを地面に突き刺して座り込んだ。

 

「つまんねぇ。さっさと失せろ。風の剣士以外興味ねぇ」

 

変身を解除した剣斬は、風の剣士でなくさっき戦ったフードの女だった。女は闇黒剣の作り出した空間から意識を失っている本物を引っ張り出した。

 

「緋道蓮は預かっている。彼の命が惜しければ無銘剣を渡せ」

 

セコいやり方だな。正体がバレたら人質を取るなんてヤベェヤツ。こんなヤツの思惑どおり動きたくはないが、仕方ない。無銘剣を引き抜いてぶん投げた。

 

「交渉成立だな」

 

女はそのまま無銘剣を回収して消えていった。ったく。迷惑かけやがって。

・・・コイツにはまだまだ生きててもらわなきゃ困るんだよ。

 

 

 

 

 


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