GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL   作:混沌の魔法使い

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リポート1 横島家の新しい日常
その1


リポート1 横島家の新しい日常 その1

 

人の波に逆らいながら歩くフードの男――しかし人々はその男に気付かないとでもいうように、交差点を歩く人達は不自然にフードの男を避け、フードの男とすれ違っていく――そんな時、ふと男が歩みを止めると周囲から色が消え、歩いていた人々の動きは止まり交差点に満ちていた音全てが消え去った。

 

「皆様は運命という物をどう思われますか?決して変える事が出来ない不変の物?それとも己の行動によって変える事が出来る物?」

 

手にしていた本を開き、そこから金色に輝く6枚のカードを取り出しながら、男は誰に聞かせる訳でもない。世界に定められた唯一無二の決まりを謡う様に語り始める。

 

「不変――世界に定めれた役割・運命という物は覆す事が出来ない。それもまた1つの答え」

 

男の手から浮かび上がった3枚のカード――それには法衣に身を包んだ女性・己に手を伸ばす様々な人物の手を振り払い天へ続く道を歩む男・黒い糸に縛られた道化師の姿が浮かび、崩れ落ちるように消え去った。

 

「運命は変える事が出来る――世界の定めた役目・運命という物は壊すことが出来る。それもまた1つの答え」

 

残された3枚のカードが浮かび上がり、先ほどのカード同じ様に絵柄が浮かび上がる――漆黒の鎧に身を包み血涙を流す女性・文字盤が砕け、二度と時を刻む事の無い時計の前で車椅子に乗った男とその車椅子を押す女・そして右半身が消え、左半身は罅割れた顔の無い道化師の姿が浮かび、先ほどと同じ様に崩れ落ちるように消え去った。

 

「そのどちらも正しく、そしてそのどちらも間違っている。この世界に絶対的な正義などは無く、また絶対的な悪も無い。全てが等しく正しく、そしてその全てが等しく間違っている」

 

この世に正しい選択などはないと男は子供に言い聞かすように語る。

 

「この本によると救世主たる者は破壊者であり、そして破壊者たる者は救世主でもある。稀有な二面性を抱き、今まで己が築いた絆を胸に抱き、その者が下す決断がこの世界の運命を定める。神魔は既に運命を定める事が許されず、そして人もまた選ぶ事が出来ない――全てはただ1人の心優しき少年によって定められる」

 

風も無いの開かれた本には横島の後姿だけが記されている。しかしその先は無数に別れ、どれが正しい道で、どれが間違った道なのか――その全てが判らない闇に満ちた旅路だった。

 

「これより始まるのは終焉への旅路――その先に待つのは……」

 

虹色に輝くカードが本の中から飛び出し、1つは虹色のまま、もう1つは漆黒へと染め上げられた。

 

「救世主による救済かそれとも破壊者による終焉か……」

 

世界に色が戻り、再び歩き出したフードの男と横島達がすれ違う。だが横島達の視線はやはりフードの男に向けられる事は無かった……。

 

「これより始まる最後の物語……その先に待つ物とは?」

 

宙に浮かんだ2枚のカードは男の手の中の本の中に消え、そして本が閉じられると共に男の姿もまたどこかへと消えているのだった……。

 

 

 

 

~横島視点~

 

色々あった京都から無事に帰ってきた訳だが……俺達には俺達で別の……しかし先送りにすることも出来ない大きな問題が待ち構えていた。

 

「これより第1回 横島家会議を始めます」

 

良く判ってない様子のチビとうりぼーが楽しそうに鳴くのを見て、一瞬ほわっとしたが和んでいる時間は俺には無かった。

 

「横島。昼飯はまだか?」

 

「ご飯まだ?」

 

「うん、ごめんな?少し待ってて、シズク。ごめん、先にお昼ご飯の準備を……」

 

「……しょうがないな。タマモ、私の代わりにちゃんと見ておいてくれ」

 

「はいはい。判ってるわよ」

 

茨木ちゃんと紫ちゃんがお腹空いたと言うので、シズクにお昼の準備を頼み、行き成り1人抜けた状態で横島家の初の家族会議が始まった。

 

「やっぱり部屋数足りないわよ」

 

「まぁそうだろうな」

 

元々東京の借り家だ。普通の男子高校生が住むには広すぎるが、今の俺、タマモ、シロ、シズク、ノッブちゃん、牛若丸、ゴールデン、紫ちゃん(結構な頻度で俺の家にいる)茨木ちゃん――うりぼー、チビ、あと帰ってくるであろうモグラちゃんと孵化待ちのドラゴン……総勢9人と小動物軍団では本格的に手狭になってきている。しかもここに蛍達も泊まりに来る時があるので2階建ての借家でも限界が見えてきている。

 

【飯の時間ずらすか?】

 

「それは嫌」

 

一緒に暮らしているのに食事の時間が別とか俺には絶対耐えれない。

 

「無理よ。横島は寂しがりやなんだから」

 

「せんせーらしいでござるな」

 

否定出来ないのが辛い。でも1回賑やかなのに慣れてしまったら、それが無くなるのって凄い辛い。

 

【あー、俺ッチ無理に食わなくても大丈夫だぜ?】

 

「でも食べれるなら食べたほうがいいだろ?金時の霊力の回復にもなるし」

 

【いやまぁそうなんだけどさ……】

 

【それは最初に私達が提案して却下されてますよ。金時殿】

 

食べれるなら皆で食べた方がいいし、楽しいので基本的に仲間外れは無し。

 

「はいッ!せんせー」

 

「どうしたシロ?」

 

「沖田殿が住む所無いって言ってたでござる」

 

「マジかよ、沖田ちゃん。住む所無いのかよ……」

 

「このアホ犬!余計な事を言うんじゃないわよ!」

 

「……はぁ!?」

 

言った後に気付いたと言う顔をしているシロは確実にアホの子だろう。俺も人の事言えないけどさ……でも知り合いが住む所が無いって言うのを聞くと助けてあげたいって思うんだよなあ。

 

【沖田の奴は眼魂に入れてやれば良いじゃろ。食事代は借金返済で苦しいと思うから期待は出来んが……】

 

沖田ちゃんは眼魂で住む所はこっちで用意して上げれるけど、やっぱり食事の問題が大きいなあ……。チビ達も案外食費が嵩むし……

 

【やはりあれだな。部屋数と食事問題は深刻だな】

 

「だよなあ、心眼先生。何かいいアイデアは?」

 

心眼ならば何かいいアイデアがあるかもしれない……そう期待していると心眼は割りとすぐ解決する問題だと俺に告げた。

 

「心眼。それ無理じゃない?美神からは流石にこれ以上貰えないわよ?」

 

【確かに、相場以上貰っていますからねえ】

 

「本当そこは申し訳無いって思ってる」

 

頭数が多いので美神さんが追加で食費を出してくれている。GS助手としての賃金も相場より大目だし……これ以上くれって言うのはかなり厚かましいと思う。

 

【違う、もっとシンプルで、しかも即効性がある解決策だ】

 

マジで?そんな魔法みたいな方法があるのか?と全員で顔を見合わせていると心眼が疲れたように答えを教えてくれた。

 

【横島。お前が作っているシルバーアクセサリー……霊具としての側面もある、琉璃か六道、くえすでもドクターカオスでも良い売りに行け。それなら即金になるぞ】

 

「いやでも知り合いだし」

 

【知り合いだから安く売れるんだ。厄珍に持ち込んでみろ。馬鹿みたいな値段をつけるぞ?それなら琉璃達の方が相場で買い取ってくれる筈だ】

 

色々な形を作る練習をしているから、結構作ったシルバーアクセサリーはある。正直さほど値段は付かないと思うけど……心眼のアドバイス通り、1回琉璃さんに見てもらおうと思う。

 

「……出来たぞ。野菜炒めと味噌汁だ。机の上を片付けろ」

 

「「「はーい」」」

 

シズクの言葉に頷き、俺達は机の上を片付けて食事の準備を手伝い始めたのだが……やっぱりリビングに9人は非常に厳しくて、本当近いうちに引越しをしないと死活問題になると言うのをひしひしと感じるのだった……。

 

 

 

 

~美神視点~

 

琉璃と共にオカルトGメンに向かい、用意されているマリア7世の来日の打ち合わせの書類を見て眉を顰めた。

 

「これ、何とかならかったんですか?」

 

「なるならしてるよ。僕に出来る範囲では努力してこれだ。申し訳無い」

 

マリア7世の来日と共に持ち込まれる1つの聖遺物――黒い竜の紋章が刻まれた旗。それは私が中世に時間移動したときにマリア姫に預けたジャンヌ・ダルク・オルタの武器であり、その象徴たる聖遺物だった。

 

「やっぱり1枚噛んで来ましたか」

 

「美術的価値に加えて歴史的価値もあるし、なによりも霊具としても一級品だからね。呪われるけど」

 

マリア7世は現代ではヨーロッパで自治区を治めている女性だ。本来ならば周辺の国に合併される様な小さな自治区だけど、ドクターカオスの残した霊力を回復させる泉や、精霊石には劣るが、霊力を圧縮して精製される鉱石の鉱山等を持ち合わせ、侵略行動に抗う用のゴーレムまで用意されている。正直やりすぎ感はあるのだが……それだけマリア姫の事をドクターカオスが思っていたと思うと遠い未来でもマリア姫の子孫が苦しまないように出来る限りの手を打った結果なのだろう。

 

「……これマジ?」

 

「大マジだ。マリア7世が正式な所有者に旗を譲渡すると聞いて、オカルトGメンと国際GS協会の一部の馬鹿が暴走して、美術館に展示されている旗に触れて発狂し、霊力を失った」

 

運び出す前のメンテと言い張り、レプリカの旗にすり替えようとしたオカルトGメンの職員は発狂した上に霊力を失った。

そして国際GS協会の職員は漆黒の炎に包まれて、全身やけどの重傷。うわごとで黒い鎧の女に燃やされたと繰り返し呻いているそうだ。

 

「洒落にならないわね……これ」

 

「やっぱり間違いないですか?」

 

「多分ね、ジャンヌ・オルタだわ」

 

黒い鎧に身を包んだ女を見たと言う発言――それは間違いなくジャンヌ・オルタだと断言出来る。

 

「もう霊力は蓄え終えているって感じかな?」

 

「横島君が近づいたら連鎖召喚されると思うわよ」

 

横島君とジャンヌ・オルタの縁は強い。旗を奪おうとしたら強い怒りを見せた事を考えると、もう半分くらい現界していると見て良いだろう。

 

「令子ちゃん。ジャンヌ・オルタってどんな性格かな?」

 

「くえすを10倍酷くした感じ、プライドと独占欲の権化」

 

「……くえすを酷くした感じってもうこの世の終わりじゃないですか」

 

「うん。でもそうとしか言い様が無いのよね……」

 

くえすと本当に良く似た気質だった。言動は刺々しく、そして敵意に満ちていた。だけど心を許した横島君には相当甘く、自分が消滅する事も覚悟して1度狂神石に飲まれかけた横島君を救い出している……そして横島君本人も慕っているというレベルだ。

 

「実力の方は?」

 

「小手先の技術なら圧倒的な霊力で押し潰す強烈なパワータイプ。でも術系統も優れてて、霊体にダメージを与える黒い炎を駆使する近~中特化のインファイターね。真っ向からぶつかれば小竜姫様も危ういんじゃないかしら?」

 

生半可な結界ならそれごと相手を破壊する。しかも炎を操り、遠距離攻撃も可能とバランスの取れた能力を持っている。少し防御が弱いと思うけど、あのパワーと瞬発力があれば多少の防御の甘さは十分に補える。

 

「私達と敵対する可能性は?」

 

「……正直に言ってあると思うわ」

 

ガープによって属性を反転された英霊だ。普通に考えれば恨みや怨念の塊――それを一時的にでも味方にした横島君のコミュ力の高さには正直脱帽するが、根本的には悪に分類される英霊だ。それこそ、横島君を攫って私達に敵対する可能性はゼロじゃない。

 

「……ちなみに、横島君はマリア7世からの招待状を受け取ってる」

 

なんか海外からの封筒で相談があるって言ってたけどそれかッ!

 

「つまりジャンヌ・オルタの出現は回避出来ない」

 

「そうなるね。うーん……まぁ、日本の馬鹿は政治家達は痛い目を見ると言うことで良いと思うんだけど……問題が大きいな」

 

ジャンヌ・オルタの旗を正式な所有者から買い取ることを考えている馬鹿は正直どうでもいいんだけど、ジャンヌ・オルタが召喚された場合の対処の方が難しい。

 

「これ小竜姫様達にも頼んでおきましょうか?」

 

「それこそ全面戦争になるわよ?横島君に頼みましょう。そんな嫌そうな顔をしないでよ」

 

「してないですけどー?」

 

いやめっちゃしてるから、横島君が好意を抱いている相手に横島君を近づけるの凄い嫌って顔をしてる。ころころ笑うくせに自分の感情を隠すのが上手い琉璃にしては珍しいくらいに感情を剥き出しにしている。

 

「うん、神代会長を見れば納得したよ」

 

「助かるわ」

 

「なんで私で納得したんですか!?」

 

琉璃は不服そうだけど、私と西条さんからすれば納得する要素しかない。あの琉璃の感情を剥きだしにさせて、自分以外の全て死ねという感じだったくえすに不器用ながらに社交性を覚えさせた。

 

「「横島君って凄いなあ……」」

 

「その微笑ましい物を見る目で私を見るのやめてくれませんかねッ!?」

 

「「無理」」

 

私と西条さんには横島君がある意味猛獣使いのように見えてしょうがないのだった……それは耳をほんのりと染めて、声を荒げている琉璃を見て私も西条さんも確信した事なのであった……。

 

 

 

 

~???視点~

 

砕けて周囲に散っていた何かが集まってくる……。

 

それが集まれば集まるほどに不明瞭だった「何か」の意識は強くなる。

 

何かが考えるのは1つだけ……「会いたい」ただそれだけ……。

 

ずっとずっと昔に感じた暖かさにもう1度触れたい。

 

絶対に己を否定することも拒絶する事も無い相手にまた会いたい……。

 

それはきっと恋と呼ぶには歪で……。

 

愛と呼ぶには歪んでいた……。

 

それでも会いたいと願ってしまえば……。

 

間違っていると判っていても……。

 

自分が思うことが許されないことだと判っていても……。

 

その思いを会いたいと思う心を止めることは出来ないのだ……。

 

例えそれが仮初の肉体に与えられた偽りの感情であっても……。

 

例えそれが死者が決して抱いてはならない想いであったとしても……。

 

芽生えた誰かを愛おしいと思ったその心は決して間違いではないのだから……。

 

「マリア様。また参られていたのですか?」

 

「ええ、また泣いているような気がしたんです……」

 

月明かりに照らされた古めかしい城の一室――その中にガラスケースに入れられて保管されている1本の旗……。中世からずっと保管されているのにも関わらず、作れたばかりのような状態を維持しているその旗は満月の夜の度に振るう物もいないのに、風も吹かないのに独りでにその旗を揺らし、ガラスケースの中から出せ、出せと言わんばかりに何度も何度もガラスケースの中ではためいていた。

 

「私には判るんです。会いたくて会いたくて、今すぐにでもこのガラスケースからこの旗は外に出たいのですわ」

 

「マリア様が仰られるのならきっとそうなのですね……」

 

「だから早く連れて行ってあげましょう。それがこの旗の持ち主が何よりも望んでいる事ですから……大丈夫ですよ。すぐに会わせてあげます、だからもう少しだけ待っていてくださいね」

 

物言わぬ旗をガラスケースごしにマリア7世は手を伸ばす。そして幼子に言い聞かせるように語りかけると独りでに動いていた旗はその動きを止める。だがガラスケースの外部には黒い炎が燻っていた……それは約束を破ったら許さないと言わんばかりにマリア7世の回りを脅すように揺らめき続けていたのだが、マリア7世の顔から穏やかな笑みが消えることは無く、大丈夫と告げるとその炎は何事も無いように消え去った。

 

「マリア様、大丈夫ですか!?」

 

「ええ、大丈夫ですよ。爺や、それよりも日本に向かう準備は整いましたか?」

 

「はい、今週末には出発できます」

 

今週末には出発できると言う執事からの言葉を聞いてマリア7世は安心したと言わんばかりに微笑み、漆黒の竜が描かれた旗に背を向けてその場を後にするのだった……。

 

 

 

リポート1 横島家の新しい日常 その2へ続く

 




今回はレクス・ろーの独白を入れてみましたがややポエミーとなってしまいましたね。ウォズ感を出す為の物でありええ?って思うかもしれませんが、温かい目で見てください。私の中でのウォズはオサレ属性なんです……多分きっと某死神漫画に影響を受けていると思いますが、突っ込みはスルーでお願いします。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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