GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL   作:混沌の魔法使い

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リポート16 月からのSOS
その1


リポート16 月からのSOS その1

 

~タマモ視点~

 

紫達が横島の為に作ったという異界に私とシロは訪れていた。いざという時のシェルターであり、魔界で横島に懐いた子供達が遊びに来る公園のようなものと聞いていたので私は大きめの自然公園のようなものを想像していたのだが……。

 

「遊園地じゃないこれ」

 

「凄いでござるなッ!遊び放題でござるよッ!!「こら、遊びにきたんじゃないわよ」ぐえッ!?」

 

遊び放題と叫んで走っていこうとするシロの襟を掴んで止める。こいつは本当に何をしに来たのか、もう少し理解するべきだ。

 

「痛いでござるよ」

 

「やる事が済む前に遊ぼうとするからよ、この馬鹿」

 

私達は異界に遊びに来たのではない、この異界が本当に横島にとって安全なのか、そして私達が避難する事が出来る立地なのかを調べに来たのだ。

 

「本当にタマモの言う通りになるでござるか?拙者、そこまで人間が馬鹿とは思わないでござるが……」

 

「あんたは善良な人間しか見てないからよ。私は横島は信用してるけど、それ以外の人間は信用なんてしてないわ」

 

カマイタチの件もある。確かに西条と琉璃は信用しても良いかもしれない人種だけど、それ以外の人間はそうではない。

 

「とりあえずあんたは暫くこっちに身を潜めると良いわ」

 

「大丈夫なの?魔界の獣とかあたしなんかよりずっと強いけど、本当に安全なの?」

 

カマイタチが心配そうに言うがあたしは大丈夫だと断言した。

 

「ここは横島を慕って集まってるのばっかりだから大丈夫よ。それに横島も絶対ここに来るわ。横島と一緒にいるのを見れば攻撃してくる奴はいないわよ」

 

「……それって横島が来るまで危険って事じゃないの?」

 

まぁそういうことかもしれないけど、そこは横島の拠点になっているログハウスの中にいれば大丈夫だと思う。

 

「駄々を捏ねるなら疑われてる中で東京にいる?」

 

「……それは嫌」

 

「じゃあ少し位我慢しなさいよ。夕方には横島は来るから、それまでの辛抱よ」

 

疑わしきは罰すると言わんばかりに私達を疑っているGSや霊能者が多く東京入りしている。琉璃や西条がそういう奴らを追い返しているけど……2人も完璧じゃない。

 

(六道の狸婆でも駄目ならあの2人じゃ無理に決まってるわ)

 

横島の事や私達の事で西条や瑠璃も頑張ってくれているが、後ろ盾が六道だけでは言いにくい話だが弱いのだ。悪意と言うのはどこにでも存在していて、その悪意は常に私達の足元を狙っている。

 

「とにかく今は私達自身もそうだけど、横島の安全も大事って事よ。行きましょう、最初が肝心よ」

 

「うー拙者は良く分からんでござるからタマモに任せるでござる」

 

「あたしも、何にもしてないのに犯人だ、なんだのって言われるのも疲れたし、横島に迷惑をかけるのも嫌だし、とりあえずタマモの言う通りにするわ」

 

横島の匂いをしている私達を不思議そうな表情で見ている魔界の獣達の方に向かって私達は歩き出す。

 

(私達は私達でやることをやっておかないとね)

 

今の東京の情勢は決して良いとはいえない、表では琉璃と西条と六道の狸婆が何とかしているが若く、巫女の家系であり、神代家の長女にして党首の琉璃は疎まれているし、それこそ失脚させて神代家の権威とその類稀なる霊能を自分の血筋に入れようとしている元名家の連中が山ほどいるし、西条は元々ヨーロッパ方面で期待されていたホープだったらしいが、それを蹴って日本に来ている。西条自身は本人の意志だと言っているが、間違いなくオカルトGメンの上層部との政治的なやり取りがあったのは間違いない。それに六道の狸は日本の霊能界だけではなく、日本政界にもコネがある権力者ではあるが、その娘の冥子が余りにも失態を重ねていて、六道も以前ほどの勢力はないし、そももそ国際オカルトGメン達が美神達の罠に嵌めようとしている事を考えれば最早六道と神代の名は何の抑制力にもならないという事を意味している。

 

(……凄く嫌な感じなのよね)

 

今の東京……いや、日本の雰囲気はかつて私が九尾の狐として追われた時の雰囲気に良く似ている。その対象が私ではなく、横島や美神達になっているだけで周り全てが敵という状況はあの時と瓜二つだ。だからこそまだ自由に動けるうちに最悪に備えておくべきだ、美神達を信用していないわけではない、だが私達を取り囲む今の情勢は美神達が思う以上に悪い物となっているという事をまだ美神達は理解していないと言わざるを得ないのだった……。

 

 

 

 

~美神視点~

 

アリスちゃん達の作った異界は想像以上の代物だった。高位の神魔ですら許可がなければ侵入出来ない性質があり、くえすが門をこじ開ける事が出来たのは鬼一法眼がいたのと、くえすが横島君の魂の形をはっきりと把握していたからの裏技であり、それがなければ上級・最上級の神魔ですら立ちいる事が出来ない世界という妙神山を遥かに越える安全な拠点を入手出来たのは嬉しいが、それに喜んでいる時間は私達には無かった。

 

「……琉璃、それに西条さん。それ本気で言ってる?」

 

苛立ちのあまり腕組をし、足踏みをしながら本気なのかと2人に尋ねる。2人だって本意ではないという事は分かっているが……それでもこの仕事はあり得ないといわざるを得ない。

 

「月神族のSOSなんて蹴れば良いじゃない、それこそ神魔で何とかすれば良いでしょ」

 

月神族からの救援要請が来ていると最初から聞いていれば私はGS協会に来なかったと断言出来る。優れた神魔なのだと言うのだから月神族が自分達で何とかすれば良いだろうというのが私の嘘偽りのない気持ちだ。

 

「救援要請は蹴ります。でもこっちは無碍には出来ないんですよ、特大の魔力砲が日本に向けられています。掠めたとしても……日本が海に沈むレベルの代物だそうです。そしてその周囲は量産型レブナントが固めていて、神魔混成軍は全滅したと」

 

その言葉に舌打ちする。量産型のレブナントが出現しているとなれば間違いなくその一件はガープ達の仕業だ。

 

「どうしてこんなになるまで放置したのよ。それにこういう案件なら小竜姫様達がこの場にいるべきじゃないの?」

 

写真に写っている巨大な建築物を見れば大体の予想はつくけど……小竜姫様達もいないのは明らかにおかしいんじゃないのかと問いかける。

 

「神魔も月神族は見捨てる方針なんだ、小竜姫様達は魔力砲台に攻め込むための前線基地の準備でもう月面入りしてる」

 

「神魔にも見捨てられるって事は相当前から月神族は把握してたって事ね」

 

月神族のプライドの高さは異常なのは知ってるけど、それに巻き込まれるのは本当に勘弁して欲しいと思う。

 

「……ほかの面子も来るの?」

 

「動ける面子には全員声を掛けるつもりです。でも月神族には私達は一切関与しません」

 

月には行くが、月神族の存亡には一切関与しないと断言する琉璃の言葉は真実だろうけど、どうしても月神族が関わっているとなると気が進まない。

 

「天界と魔界からの支援は何かあるのかしら?」

 

「天界からは龍神の武具を貸し出してくれると、それと副作用を軽減する為の薬もだそうです」

 

龍神の武具か……一定以上の霊力がないと使えないけど、人間が装備すればその人の素質によるけど、中級神魔レベルの力を発揮出来る。それでどこまで量産型レブナントと戦えるかは不安要素ではあるけど、人間界の霊具を装備するよりかはずっと生存率が上がると言えるだろう。

 

「魔界からはセーレが月面まで連れて行ってくれるそうだ。シャトルなどで月面に乗り込むよりかはずっと安全だろう」

 

シャトルで向かうと言うのならば絶対に断っていたが、神魔がその権限で運んでくれると言うのならば安全に月面に辿り着けるだろう……。

 

「私だけじゃ決断できないわ。蛍ちゃん達を含めてもう1度話を聞いてそこでどうするか決めたいと思うわ」

 

「是非そうしてください、私も日本の存続が関わってなければ月神族関連の依頼なんて絶対受けたくないんですから……」

 

「本当だよ。今までの自業自得と言う事で勝手に滅亡してくれれば良い物をね」

 

月神族だけが滅んでくれるのならば、今回の件は我関せずで終わらせる事が出来た。だが特大の魔力砲が建造されているとなれば私達も黙っていられない……。

 

(これが万丈達の言ってた事なのね)

 

別の世界の来訪者である万丈や別の世界の妹紅や輝夜が言っていた私達が月に行くことになるっていう話を思い出したが、こんな馬鹿みたいな破壊兵器をガープが持ち出してくるなら教えて欲しかったと文句が一瞬頭を過ぎったが、頭を左右に振って溜息を吐いた。

 

(いえ、聞いていても防ぐ手段は無かっただろうし結局の所……ガープ達の手の内って事には変わりはないのよね)

 

全ての絵を書いているであろうガープ。神魔の爪弾き者である月神族に攻撃を仕掛け、月の魔力を使った特大の魔力砲を建造した。だがガープ達の技術力を考えれば発見されずに建造し、地球に向かって発射する事は可能だった筈だし、月神族の救難要請だって握り潰す事だって出来る……仮に先ガープ達が月で暗躍していたと聞いてもそれを阻止する術が無い事を考えれば万丈達が詳しく説明しなかった理由にも納得が出来る。

 

「今回もかなり厄介な事になりそうね」

 

私の言葉に琉璃も西条さんも返事をしなかった、いや出来なかったのだろう。月神族に救難要請を出させたのも、神魔が無視できないように魔力砲を作ったのも……全ては私達を誘き出す為の罠であり、ガープが横島君を使って何かをしようとしているのか、それともそれすらもブラフなのか……ガープの策略が一切読めないまま、日本を守る為に月に向かわなければならないと言う事に私達は顔を歪めるのだった……。

 

 

 

~蛍視点~

 

 

背筋が粟立つと言うのはこの事を言うのだと思った。今まで何度も恐ろしいと思ったし、死ぬ思いもした……だけどそんなのは子供騙しに思うほどの恐怖を始めて私は感じた。

 

「……おい、今なんつった。なぁ……おい、答えろよなぁッ!!」

 

瞳を紅く輝かせる横島の怒号と共に霊力・竜気・神通力・魔力が複雑に入り混じった衝撃破が部屋の中を暴れまわる。

 

『な、なぜ……お前まだ……生きて』

 

「そんな事は聞いてねえんだよッ!お前ら、てめえらの都合の言い事ばっか言ってるんじゃねえぞッ!!」

 

思わず悲鳴が零れた。本気で怒っている横島の怒気に私は腰を抜かして、その場にへたり込んでしまった。それは私だけではなく、琉璃さんやくえす、小竜姫様に、西条さん達もだ。神魔ですらも恐れ、動けなくなるほどの凄まじい怒気に私達はその場から動けないだけではなく、口を開く事すら出来なかった。瞬きも呼吸すらも満足に出来ない中……私はどうしてこんな事になったのかを思い返していた。

 

「月……ですか」

 

「ええ、そうよ。月にガープ達の建造している特大の魔力砲が確認されたわ。直撃しなくても余波だけで日本を海の中に沈めれるだけの凶悪な代物よ」

 

琉璃さんの説明を聞いて今までガープ達が表立って動かなかったのはこの為だったのかと驚いた。

 

「月ということは月神族との共同戦線ですか?」

 

「いや、それはない。月神族は既にガープ達によってほぼ壊滅させられている。神魔としては月神族の存続はどうでもいいと考えている。そうですよね?小竜姫様?」

 

「はい、月神族は閉鎖的な神魔ですし、その横柄な態度と選民思想は今の神魔にとって受け入れる事が出来るものではないので、ガープの

攻撃によって滅亡するのならばその方が良いと考えています」

 

「……あんな奴らは死ねば良いんだよ」

 

能面のような表情で何の感情も感じさせない声で呟く横島に私は驚いたが、平安時代の事を考えれば横島のこの反応は当然の事だと思う。

 

「横島」

 

「……あ、悪い。蛍……俺はその」

 

「ううん。良いのよ、怒るのは当然だし、怨むのも当然よ。怒りを溜め込まなくて良いわ」

 

「その通りですわよ。横島、怒りを我慢するなとは言いませんわ。時にぶちまける事も大事ですわよ?」

 

私とくえすで横島の手に触れるとその怒りの表情が僅かに緩んだ。その時だった……私達のいる部屋に突然ノイズ交じりの映像が割り込んできたのは……。

 

『聞こえますか……地球の民よ……どうか私達の声を聞いてください』

 

ノイズ交じりの女性の声と共に人離れした容姿の女性達の姿が映る。

 

「月神族よ!貴女達は地球人との接触をしないと約束したので私達は救援すると言ったのですよ!」

 

小竜姫様の怒声にモニターに映った女性たちが今の月神族の姿なのだと初めて気付いた。

 

『……だとしても、私達の要望を……言うくらいは……許されるはずです……我々月神族は今滅亡の危機に瀕しています』

 

「聞いているのですか!かぐやッ!!」

 

『我々は……地球人との友好を願っています……人間達が平安と呼ぶ時代で輝夜姫を救出に向かった我々を攻撃した事は……不幸な事故だと……水に流す度量が我々にはあります』

 

……月神族の言葉に何を言っているのか理解出来なかった。輝夜を攫いに来て、平安時代の人間を虐殺したのは月神族だと言うのに、まるで人間が月神族を攻撃したかのような口振りを最初私は理解出来なかった。

 

『輝夜姫を攫って逃げた黒龍こそ……敵であり、我々と地球の民は再び手を取り合えると……』

 

「……おい、そこの玉座に隠れてる婆ッ!!てめえだっ!!」

 

横島の怒号に振り返り、私は息を飲んだ。横島の瞳が紅く輝き、その身体から渦巻く魔力と神通力によって私は、いや私達は金縛りにあったかのようにその場に釘付けにされてしまった。

 

『ひっ……、な、ななな……なんでお前が……』

 

「うるせえッ!答えろッ!てめえらは穢れ人だなんだの言って殺す事が遊戯だって言ってたよなあッ!!おいッ!!俺を忘れたなんて言わせねえぞッ!!お前らは輝夜ちゃんに子供を産ませて、獣に嬲らせるって言ったよなあッ!!」

 

横島を見て顔を青褪めさせている老いた月神族とそんな横島の言葉に目を見開いている月神族、月神族が長い月日の間に生き残ったあの老婆にどんな話を聞いて育ったのかは定かではない、だが確実に都合の良いように歪められた事実を真実だと誤解している今の月神族は横島の言葉に驚き目を見開き、信じられないと言う表情で老婆を見つめている。

 

「黙ってないで答えやがれッ!!!」

 

横島の怒号とそれによって撒き散らされる魔力と神通力……横島を止めなければと分かっているのに、私達は横島の怒りに完全に飲み込まれ、その場から一歩も動く事が出来ないのだった……。

 

 

 

リポート16 月からのSOS その2へ続く

 

 




生き残りの月神族によって歪められた事実という所を書いて見ました。とは言え例えそうだったとしても月神族へのヘイトが変わるわけではありませんが、月編は館編と同様かなりダークでシリアスな感じで進めて行こうと思います、月に出発する前にもう大変な事になっているのでハードモードを越えてルナティックになっているのは月だけではなく、歪められた事実もあると言う感じで行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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