GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL   作:混沌の魔法使い

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その2

リポート16 月からのSOS その2

 

~迦具夜視点~

 

圧倒的な怒気を放つ人間の姿がモニター越しでも私の目を完全に奪った。燃えるような激しい怒りと憎悪……月では穢れと言われるその強い感情は私の心を強く揺さぶった。

 

「……どういうことなのですか?私達と貴方達では大きな認識の違いがあるように思えるのですが」

 

「聞くな!迦具夜。穢れ人の戯言に耳を傾けるでないッ!!」

 

宰相の老婆が怒鳴り声を上げる。だが私にはその姿は自分にとって都合の悪い事実を隠そうとする子供にしか見えなかった。人間が平安時代と呼ぶ時代に当代の輝夜を救助に向かったが、黒き龍に輝夜を連れ去られ、月の頭脳と呼ばれた永琳様も殺されたと月に逃げ帰って来た宰相から告げられた事を我々は事実だと思いつづけて来た……だがそれは間違いだったのかもしれない。

 

「神無、依姫。宰相を連れて行ってください」

 

「は……は?迦具夜さ……ま?」

 

「よろしいのですね?」

 

困惑する神無と私に確認を取ってくる依姫。同じ月神族の警邏隊の一員だが、まだ若い神無よりも永琳様の弟子であり月の警備の最高責任者である依姫の方が判断が圧倒的に早かった。

 

「はい、これだけ怒鳴られては話も聞けませんから、連れて行ってください」

 

「了解しました、神無。何時まで呆けている、宰相はお疲れだ。休息を取ってもらうぞ」

 

「は、はッ!失礼します」

 

「は、離せ!わ、私は疲れてなどいないッ!離せ、離せッ!!」

 

唾を撒き散らし離せと叫ぶその姿は醜悪そのもので、玉座の間の月神族が信じられないという視線を宰相に向けるが、宰相はその視線すら気にならないのか大声で最後まで喚きながら玉座の間から連れ出された。

 

「どうかお聞かせください。平安時代に何があったのか……」

 

『……良いぜ、見せてやる。あんたらの目で確かめろッ!』

 

紅い布を額に巻いた少年がそう叫び、制止する声が響く中霊力の光が広がり、私達の目の前に過去の映像が映し出された。

 

まだ若い宰相が地球人を穢れ人と呼び、遊戯と言って殺す。その中には月では英雄と讃えられている死んだ神の姿もあった。

 

輝夜を連れ帰り、子供を産ませたら性処理の為に使うと悪びれも無く、むしろそれが正しいと言わんばかりの者達。

 

英霊を死者風情と罵り攻撃を加えるその姿……。

 

そして黒き龍となった紅い布を巻いた少年に仲間が殺される中、1人這い蹲って逃げていく宰相の姿……。

 

「あ……ああ……そ、そんな……これが真実なのですか……」

 

宰相から伝えられた話は何もかも間違いであった。余りにもおぞましく、醜悪な自分達の先祖の行いに吐き気がする。

 

『これが平安時代の話だッ!これだけの悪逆をして、自分達が殺されかけたら助けてくれだとッ!水に流す事が出来るだとッ!!ふざけるなッ!!お前らがやってきた事が全部てめえらに跳ね返ってきただけじゃねえかッ!!』

 

誰も動けない、誰も言葉を発する事が出来ない。それは私達も地球の民も同じだった……。向けられる怒りも罵倒も正当な物で、私達には反論する言葉が無かった。

 

『てめえらは勝手に死ねッ!因果応報だッ!!』

 

その言葉と共に紅い布を巻いた少年の姿は見えなくなった。モニターに映る地球の民や神も驚いているから何かの霊能か異能を使ったのだろう。その少年が消えた事で私達と地球の神と民の間には沈黙が広がる中、今代の月の女王としてし、私は自分が何をやるべきなのかと考え、すぐに行動に移した。

 

「誠に、誠に申し訳ありませんでした……私達はとんでもない思い違いをしておりました、謝らなければならないのは我々月神族……どうか、どうかお許しください……」

 

私は玉座から降りて地面に手を付いて額を床に擦りつけながら謝罪する。

 

「か、迦具夜様ッ!?」

 

「お、おやめください!月の女王たる御身が」

 

「御身などではありませんッ!宰相の言葉だけを信じ、己で考えようもせずッ!地球の神に話も聞くこともせずに滅亡の危機の瀕したら助けを求め、許す準備があるなどと思い違いの言葉を口にした……私は自分が恥ずかしいッ!」

 

何もかも間違った物を信じ、他者の話を聞こうともせず、あまつさえ月神族が優れていると言う歪んだ思想の果てがガープ達による侵略だと言うのならばあの少年の言う通り正しく因果応報であり、同情の余地などどこにも存在しない。

 

『私達は月へ行くわ。だけど貴女達は助けない、自分達で何とかするのね。私達は私達を守る為にしか動かないわ』

 

その言葉に反論など出来る訳も無く、そして恥ずかしさの余り顔を上げる事ができない私は自分の声とは思えないほどに小さな声で分かりましたと返事を返すのだった……。

 

 

 

~蛍視点~

 

横島が文珠によって転移するのを止める事が出来なかった。近くに居た私だけではなく、くえすも金縛りにあったように動けなかった。

それほどに横島の怒りは凄まじかったのだ。

 

「……そりゃ怒るわよね。話には聞いていたけど、まさかあそこまでとは思ってなかったし」

 

1番最初に持ち直した琉璃さんが額に手を当てながら深い溜息と共にそう呟いた。

 

「……横島君がああなるのも納得だ、それに月神族が余りにも醜い」

 

横島が文珠で投影した記憶の映像は私達にとっても衝撃的なものだった。心眼からはある程度話を聞いていたが、それすらもほんの片鱗だった。それで横島の気持ちを理解したつもりになっていた自分の愚かさに身体が震える。

 

「まさかハッキングしてくるとは思っていませんでした……配慮が足りず申し訳ありません」

 

「いえ、小竜姫様は悪くないわよ。私達も想定外だったし」

 

結界に霊力、魔術、科学とありとあらゆる対策をしていたのに、それを突き抜けてきた月神族は確かに神魔としての能力も高いだろし、技術も優れているかもしれないが余りにも人格面が酷すぎた。

 

「横島を探さないと……」

 

「そうですわね、文珠をつかって転移した事を考えると東京には間違いなくいませんわね……私と蛍は横島を探してくるので、後は美神達にお任せしますわ、行きましょうか蛍」

 

「あ、うん。分かったわ、行きましょう」

 

横島がどこに行ったのかは正直皆目見当も付かないけど、今の横島を1人にする訳には行かない。それは私も同じ意見だったけどまさかくえすに一緒に行動しようと言われるとは思ってなかったので少し遅れて返事を返したその時だった……背筋に冷たいねっとりとした陰湿な視線を感じて振り返る。美神さん達もその気配を感じたのか私と同じ様に振り返り、その顔を驚愕に歪めた。何故ならばそこには着物の袖で口元を隠し上下逆さまの状態で私達を見下ろしている蘆屋の姿があったからだ。

 

「ンンン、拙僧小心者ゆえ、そのように見つめられると困ってしまいますな」

 

「くたばれッ!!」

 

ノーモーションのくえすの抜き撃ちが放たれ、蘆屋の頭部が大きく後方へと弾かれる。

 

「ンンン、乱暴なのは嫌われますぞ?」

 

常人ならば即死している一撃を受けても蘆屋は余裕の笑みを崩す事無く、天井を蹴って私達の前に着地する。

 

「初めましての方もいらっしゃいますな、拙僧……蘆屋道貞というしがない陰陽師でございます」

 

「よく言うわね、人間の身体を捨てて、魂を幾つ取り込んでいるのかしら?」

 

琉璃さんの言葉に蘆屋はにこりと心底嬉しそうに笑った。

 

「ンンン、まぁ企業秘密と言う事で、さてと私もまだ忙しい身ですので用件だけをお伝えしましょう。アスモデウス様とガープ様が月にてお待ちしております。我々には歓迎の準備がありますのでぜひとも月へ来てくだされ」

 

こちら招待状でございますと言って蘆屋が投げた招待状が私達の目の前で止まる。

 

「歓迎?私達を殺すためかしら?それとも実験台にもするつもりかしら?」

 

「ンンン、まさかまさか、アスモデウス様とガープ様は平安の世にて人間でありながら御身を退けた貴女達を高く、そうそれはもう高く高く評価しております。何度も刃は交えましたが……相互理解は戦いだけでは不可能、1度食事などをしながら話をしようとの事です」

 

何をいけしゃあしゃあと言っているのかと蘆屋を睨みつけるが、蘆屋は薄く微笑んだままだった。

 

「神族がいる前でよくもそのような話が出来るな」

 

「ここで貴方を滅しても良いのですよ」

 

小竜姫様とブリュンヒルデさんの言葉に蘆屋は白目と黒目を反転させて狂気的な笑みを浮かべて笑った。

 

「ンンンッ!!西洋は天使の反逆、その天使に服従を選ぶ東洋の神魔、そして天使に忠誠を近いかつての神格を取り戻そうとする者達……その事を隠して何を言って、ああ、ご存じないのですね、ンンン、所詮貴女達は下から数えた方が早い木っ端神魔……上層部の話は知らないのですね、これは失礼しました」

 

「な、何を……何を知っているッ!!!」

 

「ンンン、少なくとも貴女よりは今の神魔混成軍の情勢を知っているつもりではありますよ。では皆様方、月でアスモデウス様達とお待ちしております。横島忠夫にも心よりお待ちしているとお伝えください、ではでは……」

 

その姿を弾けさせ、千切れた人型を残して消え去った。

 

「小竜姫様、どういうこと?」

 

「分かりません……蘆屋の言う通り私達は人間界に派遣されていて、詳しい神魔の情勢は分からない状態なのは悔しいですがその通りなんですけど……」

 

「お父様やワルキューレからそんな話は聞いてないんです……隠されているか、それともお父様すらも知らない情報なのか……」

 

芦屋の言葉が真実なのか、それとも私達に小竜姫様達への不信感を抱かせる為のミスリードなのか……蘆屋、いやガープ達が何を考えているのかがまるで分からない。

 

「美神さん、どうするつもりですか?」

 

「招待してくれるって言うなら招待して貰おうじゃないの、危険だけどそれしかないわ。私達は余りにも情報が無さすぎる、虎穴にいらずんば虎児を得ずって言うでしょ?」

 

確かにその通りだとは思うけど、余りにも危険すぎる。ガープ達に一網打尽にされる可能性があるのに招待に乗ると言うのは無謀だ。

考え直すように美神さんを説得しようとした時、教授が声を上げて笑った。

 

【悪には悪の美学があるのだヨ、ガープは私と良く似たタイプだ。招待状まで作って、招待してその場で捕らえると言うのは美学に反する。この招待状の招待は受けても大丈夫だヨ】

 

「教授、しかし……」

 

【大丈夫だヨ。間違いない、君もそれを感じたんじゃないかな?令子。君も私達と同じタイプである筈だからネ】

 

「……あんた達と一緒の扱いをされるのは癪だけどね。危険なのは私も承知しているけど、踏み込む必要があると思うのよ」

 

美神さんの強い口調と眼差しに私は不安を感じながらもうなづいた。

 

「ありがとう。くえすと蛍ちゃん、それにおキヌちゃんはシズク達を迎えに行って横島君を見つけてきて、私達は私達で月への作戦とこの招待状についても調べて見るから」

招待状についても調べて見るから」

美神さんの言葉に頷き、私とくえす、それとおキヌさんはGS協会を後にする。手掛かりも何もない……訳ではない。

 

「くえす、迷いの竹林の先って行ける?」

 

「……なるほど、可能性は高いですわね。シズクがいれば何とかなると思いますわよ」

 

「じゃあ私、一応冥子さん達に許可を取ってきますね!」

 

月神族への怒りを露にした横島ならば迷いの竹林の中に隠れている輝夜達の元にいるかもしれない、くえすもおキヌさんも私と同じ考えで、迷いの竹林へ向かうための準備を始めるのだった……。

 

 

 

~永琳視点~

 

依頼されていた薬を作っている最中に轟音が奥の部屋から響き、私はフラスコなどを引っくり返しながら壁に立てかけてる弓を手に、奥の部屋……即ち姫様の部屋へと走った。

 

「姫様ッ!だい……」

 

大丈夫かと問いかけようとした言葉は尻すぼみになり、最後まで発せられる事無く消えた。何故ならば……。

 

「横島様、どうしたの?」

 

「そんなに苦しそうな顔をして……どうしたの?私ともこに教えて?」

 

姫様と妹紅を抱き締めている横島に2人が触れながら尋ねると横島は小さく私達にとって忌むべき名前を口にした。

 

「月神族が連絡をしてきたんだ」

 

月神族と聞いて姫様も妹紅も、そして私も顔が引き攣り、身体が硬直した。

 

「横島。月神族はなんて?」

 

「……ガープとアスモデウスに襲われているから助けろって、私達は地球の神と民を許す準備があるって……」

 

「何を言ってるの?月神族がどれだけ地球に迷惑をかけたか分かっているのかしら……?」

 

横島の言葉に姫様が何の感情も感じさせない平坦な口調で月神族への怒りを露にする。

 

「六道は月神族を助けるって言ったの?」

 

「ううん、言ってないよもこちゃん。でもあいつがいた、ほかの月神族を盾にして逃げた奴、宰相と呼ばれてた。凄い偉そうにしてて、輝夜ちゃんの救出を邪魔して、幽閉したのは地球の神魔と人間だって言うから俺……あの時の記憶を文珠で見せたんだ」

 

あの時の記憶を見せたと言う横島の言葉に姫様と妹紅が左右から横島の身体を強く抱き締めた。

 

「辛かったわよね。大丈夫、横島を傷つけるのはここにはいないわ」

 

「大丈夫、大丈夫だよ。横島様」

 

「姫様、妹紅。横島をお願いするわ、ちょっと私はやる事があるから」

 

2人に横島を頼んで私は部屋を後にするのだが、廊下に出た瞬間に手にしていた弓を握り潰していた。

 

「……横島の師と言う事で信じたのが悪かったのかしら」

 

横島が信頼している相手だから私も信じたが、それが間違いだったのだろうか?

 

「状況次第では……私も決断をしないといけないわね」

 

横島は消耗しきっていて詳しく話を聞けない状況だ。回復したら横島には詳しい話を聞く必要がある、それにアスモデウスやガープに襲撃されているのならば月神族は間違いなく自分達が生き残る為の手を打とうとするだろう。1番考えられるのは……。

 

「地球への移住かしら」

 

元々は地球の神魔だったのだから地球に戻る権利があると言い出す可能性はかなり高い、その上月には私が運び切れなかった様々な道具がある、それを解析して新しい技術や、私の技術のままだったとしても地球の神魔では作り出せない物が数多くある。それらで取引を持ちかけられたら地球の神魔が頷いてしまうかもしれない……。

 

「駄目だったのかしらね」

 

月に残して来た2人の弟子には期待していたが、月の民を変えることは出来なかったのだろうか?元々傲慢な月神族だが、横島に迎撃された事を切っ掛けに変わってくれるかもしれないと思った事は間違いだったのかもしれない……。

 

「……とにかく、準備だけはしないと駄目ね」

 

横島が永遠亭にいる事はすぐに知られるだろう、そうなれば横島達の師は勿論、地球の神魔だってやってくるだろう。そうなる前にやれるだけの事はやっておかなければならない……それこそ横島は望まないかもしれないが、横島もこの永遠亭の中に縛り付けることすら視野に入れる必要がある。私は深い溜息と共に弓の残骸を片手に永遠亭の防衛を起動させる為に姫様の部屋の前を後にした。

 

「みむう!みみむう!」

 

「ぷーぎゅう!」

 

「……横島はこの竹林の中にいるな。間違いない」

 

「ありがとう……分かってたけどやっぱりこうなるわよね」

 

「後悔している時間はありませんわよ。行きましょう」

 

そして私の予想通り2時間後に横島の師と神魔達が迷いの竹林を訪れるのだった……。

 

 

リポート16 月からのSOS その3へ続く

 

 




今回は少し短めでしたが、流れ的にはこうなりました。月の姉妹も少し参戦し、月編は大きくシナリオを変えていこうと思います。でもメドーサの若返りと生身の大気圏突破はやろうと思っているので、そこはご安心ください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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