GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL 作:混沌の魔法使い
リポート16 月からのSOS その4
~蛍視点~
くえすに言われた言葉は正直かなりショックだった。美神さんに頼りきりで自分が無い、責任を負うのが怖くて自分の考えを口に出来ない。
「全部図星だわ……」
くえすの、いや琉璃さん達のように立ち回ることも出来たのにそれをせずに何時までも美神さんの所に居たのは間違いなく私の甘えだ。横島を守ると言っておきながら常に美神さんや琉璃さんの指示を仰ぎ、自分だけで行動しようとしていない。
「あのシズクの目も納得だわ」
シズクの何の感情も込められていない目を思い出して身震いした。シズクは今回の件によっては永琳さんに付く事を考えていた。くえすが上手く立ち回ってくれたが私だけだったら確実に見限られていただろう。
「蛍ちゃん。あの、元気出して」
「……暫く引き摺りそう」
お父さんはガープ達の所に潜り込んでいるから相談出来ないし、私達に情報を流す事も出来ない。ただ月の魔力砲の製造に携わってくれているならGS試験の火角結界のように突破口を仕込んでくれているかもしれないという希望を持つ事は出来る……だけどそれとこれとは話が違う。
「そりゃ落胆されるわよねぇ……」
私は口先ばかりで行動に移そうとしない……自分で責任を負いたくなくて美神さん達の指示を仰ぐ姿はシズクだけじゃなくてノッブ達にもなんだこいつはと見られていただろう。
「こ、これから頑張れば良いと思います!私もですけど」
「うん……そうする」
美神さんの所から独立するのは今は無理だけど、もっと自分で考えて自分で行動するようにしようと考えながら永遠亭に向かって歩き出した私とおキヌさんだが……永遠亭の入り口で足を止めた。
「怒ってないですか?」
「怒ってないですわよ。ほら、こっちに出てくるんですわ」
「……そうだぞ、私達は怒ってない。お前を迎えに来たんだ」
巨大化したモグラちゃんとうりぼーと兎の陰に隠れながら怒ってないかと問いかける横島と出てくるように説得するくえすとシズク……思わず何これと言いたくなる状況だ。
「俺を東京に連れて帰ってから怒るんですか!?」
「違います、違いますわ。大丈夫ですわよ、誰も怒ってないですわよ?」
「……本当ですか?」
モグラちゃんとうりぼーと兎の間から顔を出す横島は何か凄く可愛かったけど、永琳さん達との話を纏める必要もある。
「大丈夫よ、横島。怒ってないから」
「そうですよー怒ってないですよー」
私とおキヌさんも横島の説得に加わってから10分後に横島はやっとモグラちゃん達の後ろから出て来てくれるのだった……。
~輝夜視点~
横島を迎えに来た連中をジッと見つめる。正直な所、あれだけ傷ついて帰ってきた横島を見た瞬間私も妹紅も横島を返すつもりは無かったのだけど……。
「貴女みたいのが居るのなら良いわ」
「うん、あたしもそう思う」
神宮寺くえすと名乗った女を見て私と妹紅も考えを変えた。冷酷な雰囲気があるが甘いだけの美神達と違って非情な手も取れるくえすの方がずっと好感が持てる。
「……そんなに私達って駄目かしら?」
「駄目ね、駄目すぎてもう……全然駄目」
「うん、駄目。凄く駄目」
横島がそこまで言う?って顔をしているけど、本当に全然駄目だと言わざるを得ない。
「必要な時に動けないんじゃ意味が無いんだ」
「あと口先だけでも駄目ね。その点くえすは良いわ、やると言ったらやる凄みがある。くえすがいるなら横島も安全だと思うし、今回は返してあげるわ」
蛍とおキヌが机に突っ伏すけど、この程度で落ち込んでいるのでは本当に駄目だ。
「そこまで気に入っていただけるとは光栄ですわ」
「帝の妻もこんな感じだったしな」
「そうそう、帝も結構優柔不断なところあったしね」
帝の本妻もくえすの雰囲気に似ていた。何をしても帝を守ると、帝の為に死ぬ覚悟のあるあの人に似ていたのだからきっとくえすも命を懸けて横島を守ってくれると私と妹紅は思う事が出来た。
「さてと話が脱線してしまう前に、話を戻しましょうか。横島、月神族の元に依姫と呼ばれた者が居たそうですね」
「……はい、居ましたけど……それが何か?」
「私の弟子なのです」
「あ、永琳さんのお弟子さんだったんですか!それで依姫さんがなんですか?」
横島がめちゃくちゃ嫌そうな顔をしてた横島が急に笑みを浮かべた。この感情の変わりよう……。
「ねえ、横島様って実はめちゃくちゃ単純?」
「……単純、いや、純粋と書いて横島と読む」
「なるほど、正しくその通りね」
「なんでそれで納得しちゃうの?」
蛍が何で?と言うが私もその通りだと思う。子供のように純粋で清らかで……だからこそ横島は悪に染まりやすい。
「横島はずっとそのままでいてね?」
「え?なんで俺急に子供扱いされてる?」
横島が不思議そうにきょとんとする姿に内緒と笑い、ジト目で私を見ている永琳にごめんなさいと謝って話を続けるように促す。
「また脱線してしまいましたが、依姫達は私達の仲間であり、月神族の情報を私達に流してくれていました。そんな彼女が現在の上層部にいるのはとても好都合です」
にやりって音が聞こえてきそうな顔で笑う永琳に横島達が驚く、いや怖がるような表情を浮かべる。
「くえすさんは黒魔術の使い手なのですよね?」
「ええ、誰にも負けないいう自負がありますわ」
「それは好都合です。どうせ月に行けば月神族は横島達に接触してくるでしょうから」
にこにこと笑っている永琳だが、目が全然笑っていない。そしてそれはくえすも同様で横島の顔がめちゃくちゃ引き攣っていた。
「……何するんですか?」
「クーデターでもやろうかなって」
「後は魔法でガチガチに縛り付けてもう余計な事は一切出来ないように……ああ、投薬も良いですわね」
「とびっきり良く効く薬を用意しますわ」
くえすと永琳が笑いあっているが目が全然笑ってないのを見て脅えている横島達を見ながら私と妹紅は湯のみを手にした。
「クーデター成功したら外に出れるかな」
「そうね。引き篭もってるのも飽きたし、依姫達には頑張って欲しいわね」
ガープ達の攻撃を受けているのはざまあみろと言いたいが私達の事を考えてくれていた月神族も少数だがいて、支援してくれていることを考えると彼らは生きていて欲しいな位には思っているけど……本当の目的はそこではない。
「やっぱり輝夜ちゃんって月に帰りたいの?」
「え?全然全くこれっぽちも帰りたくないわよ?」
「でもクーデターを起こすんでしょ?」
「うん、起こすわね。でも私は月には帰らないわよ」
えっ?って顔をしてる横島達に向かって私はにっこりと笑った。そんな私の顔を見て蛍が脅えたような表情を見せるけど、私は何も気にせずに話を続けた。
「月には帰らないし、月神族が滅亡しても私は正直どうでも良いのよ。でも月の力があれば横島の助けになれるでしょ?だからクーデターを起こすのよ」
依姫達が生きていて一緒に来るならそれも良い、馬鹿な月神族を魔法で縛り付けて何も出来なくさせるのも良い。だけど私は月には帰らない……だって帰る意味が無いから、本当言えばクーデターなんて起こしても、起こさなくても良いんだけど……。
「あいつらが生きてると横島が悲しむでしょ?だから本当は全部死ねば良いと思ってるわ」
「そうだよなー、あいつら邪魔だしな。なぁ、横島様。月に行くの月神族が全滅してからにしたら?」
私達に自由が無いのは別に最悪構わない、だけど横島を悲しませる月神族を私ともこは許すつもりはない。だから本当は皆滅んでしまえと言うのが私の嘘偽りのない気持ちで、妹紅も永琳も同じ気持ちなのだと言うと蛍達は言葉を失っていて、私達はそんな蛍達を見ながら笑みを浮かべるのだった……。
~美神視点~
横島君を蛍ちゃん達が迎えに行っている間も私達は会議を続けていた。その理由は勿論只1つ……ガープ達が何故月面を完全に攻め落とさないかだ。
「戦力を見る限りだと、月神族は抵抗なんて出来る訳が無い。それほどの戦力差がある」
「量産型レブナントですね、レイはいないみたいですけど……量産型の段階でやはりかなり強力なんですか?」
小竜姫様の質問に私は頷き、ドクターカオスに目配せする。
「これは前、別の世界の住人が訪れた際に現れた量産型レブナントの戦闘映像じゃ、これに1度目を通して欲しい」
会議室のモニターに映し出されるのは別の世界の横島君達や、平行世界の住人、そして他の世界の仮面ライダーの戦闘映像だ【※仮面ライダーメモリークロスヒーローズ参照】その中でレブナントと対峙しているのだが……そこで私達は量産型レブナントの恐ろしさを思い知らされたのだ。
「恐ろしいほどに自由度が高いんですね」
「それもあると思うが魂魄を弄って役割に特化した擬似眼魂を作ってるんだろうよ。これはかなり厄介だぞ」
様々な役割に応じた眼魂とそれを使えるレイのクローン達……眼魂としての質はかなり低く、精々下級・中級の神魔程度のマイト数なのだが、レブナントに変身する事でその能力は大幅に底上げされている。
「でもそれはあくまで雑兵なのよ。1番やばいのは……この次よ」
『ブラッドソルジャー!ファントムコールッ!』
「なッ!?マ、マタドールッ!?」
「う、嘘だろッ!?」
マタドールの眼魂が使われたのを見て流石の小竜姫様達も声を上げ、どういうことだと尋ねてくる。
「別の世界の連中が作ったそうだけど……ガープが作れないと思う?」
横島君の眼魂を見るだけで複製を作れるガープが魔人の眼魂を作れないとは私には到底思えないのだ。だがそれを作らなかった、あるいは作る必要が無い。もしくは作るだけのリスクがあるとしたら……何時までもそれに甘えているとは思えないのだ。
「同一個体の魔人を呼ぶ事になる。作るリスクの方が圧倒的に高いと判断したのだろう」
「多分ね、でもガープが魔獣とかで満足してるとは到底思えないし、神魔の眼魂を作っていると思うわ」
小竜姫様達も知らなかったようだが、魔人が複数存在し、自我が強い個体が弱い個体を取り込み自分を強化という性質を持っているとなれば魔人眼魂は言うまでも無く特大の厄ダネだ。
「そんなリスクを負ってまで魔人の眼魂を作る必要はないとガープは考えているんだろうな」
「普通に考えればそれが正解よね。だってガープは英霊を召喚出来るのだから、ある程度制御しやすい英霊と敵が乗り込んでくる魔人眼魂じゃどっちが使いやすいかなんて言うまでもないだろうしね」
【それもあるが、元々狂ってる魔人に狂神石は効果はないって言ってたしネ。狂神石で強化して制御するほうがずっと安上がりで安定度があるヨ】
教授の言う通りだ。ガープ達の戦術の基本は狂神石を使った洗脳にある、それが効かない魔人に拘る必要はないと考えるのは当然だ。
「話が逸れてるな、そもそも何故月神族が殲滅されていないか?答えは1つだろう?」
「躑躅院……ずっと黙っててそれ?」
「私なりに分析して、考えていたのさ。月神族を生かしておくメリットは1つしかない、横島の暴走のトリガーになる。その為だけに月神族は生かされているんだろうさ。だってあいつらも神魔だ、狂神石で洗脳出来る筈だろ?横島を怒らせることを言わせるなんて簡単な話だ」
「……ま、それくらいは普通にやると思うワケ。じゃあこの招待状は?」
「それは普通に招待してるんだろう?私は知らないが横島達は何度もガープ達を退けている。あいつらは人間であっても重宝する、御眼鏡に叶ったと喜ぶかい?」
「冗談止めてよ。なんでガープ達の味方になるのよ」
ガープ達にスカウトされたとしても私達にガープに組する意味は……。
「メリットはあるだろう?四大天使や過激派神族。それに対抗するにはガープの力を借りるのは間違いじゃない、私はそう思うよ」
躑躅院の言葉に会議室に沈黙が広がる。躑躅院のいう事は極論ではあるが……1つの正解である事は間違いないのだ。
「ま、私の考えと言う事で聞き流してくれれば良いよ。それと神代会長、貴女ならガープ達の本命が分かるんじゃないかな?」
躑躅院が琉璃にそう声を掛けると琉璃は少しだけ眉を顰めた。
「何か思い当たる節があるの?」
私がそう尋ねると琉璃はかなり極論になりますけどと前置きしてから話し始めた。
「神卸しをすると私もやっぱり影響を受けるんですよ。巫女って言われて、神卸の天才って言われてもやっぱり降ろした神の影響って受けるんですよ」
「すまない、神代会長。何の話かな?」
西条さんがどういうことだ?と尋ねる。それは私達も同じ気持ちだった、琉璃の話と月神族が攻め落とされていない理由がどうしても繋がらない。
「横島君は私よりもずっと近い部分に神魔の魂や英霊を降ろしてるんですよ。肉体は魂に影響を受ける……って言われれば分かりますか?」
琉璃が渋い顔をしていた理由がこの話を聞いてほしくない躑躅院が近くにいるからだと分かった。躑躅院によって言わされている事が琉璃にとって不味い自体なのだと分かった。
「ガープ達が月神族を殺さず、そして月に魔力砲を設置した理由は多分……横島君に眼魂を使わせることなんじゃないですかね?」
眼魂を使わせ横島君に神魔の影響を蓄積させる。そうなれば狂神石の効力はより強い物になる筈だけど……。
「アスモデウスとガープは狂神石で暴走した横島君に手痛い反撃を受けているのにそんな事をするかしら?」
狂神石の力と眼魂の相乗効果はかなり強力な物だ。下手をすれば自分達が殺されるかもしれないようなリスクを背負う必要性があるのか?
「……あるぞ。最上級の神魔だ。魂の一部を切り分ける事なんて容易い事だ」
「そうか、そういうことですか……戦いの中で自分達の魂を封じ込めた眼魂を無理矢理使わせる」
「そうなれば横島の魂は一気に神に近づく……でもそれに何の意味が……」
小竜姫様とメドーサの言葉を聞いて私の脳裏にある可能性が過ぎった。教授と西条さんも同じだったのだろう、目配せをしてくる。
(……特異点、神に近づく……まさかガープ達の狙いは……)
横島君は特異点と呼ばれ過去を書き換える事が出来る。そして眼魂を過度に使わせる、あるいは最上級神魔の眼魂によって横島君の魂を人間から神の物へ近づければ……。
(新しい神を作ろうとしている……?)
違っていて欲しいと思っているのだが、それが限りなく真に近い考察だと心のどこかで私は理解してしまった。
(でも横島君を地球に残してはいけない)
地球でも月でも、横島君が危険ということは変わりはない。むしろ地球の方が抑止力が無い分四大天使や、過激派神魔が横島君をねらう可能性がある……紫ちゃんの作ってくれた異界もまだ完全に改良が済んでいないのでシェルターとして使うには不安が残る。
(……本当に自分の力の無さに情けなくなってくるわね……)
ノッブ達やシズク達との修行に、昔の除霊方法をアレンジした対神魔や英霊の除霊術、ドクターカオスが開発してくれている新しい除霊具もある……それでも全然力が足りていないと思い知らされ、師匠と慕ってくれている横島君を守る力が無い自分にほとほと嫌気が差す。だがもう時間は待ってくれない、リスクも危険性も承知で横島君も月に連れて行くしかない、そしてまた横島君を戦わせる事になる。
(また後悔する事になる……)
もう私達は舞台に立つことが出来ないのだと……お前達は見ていることしか出来ないのだという声が聞こえてくるようなそんな気がするのだった……。
リポート17 謀略の月 その1へ続く
愛が重い輝夜と妹紅と最早表舞台に立つ資格が無いと宇宙意志に言われているような感覚を覚える美神達と色んな人物の心境をメインで書いてみました。次回は出発する所まで書いて行こうと思います、これもかなり長編リポートになると思いますがリポート17もどうかよろしくお願いします。