GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL   作:混沌の魔法使い

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その3

リポート17 謀略の月 その3

 

~セーレ視点~

 

量産型のレブナントの強襲は正直に言うと僕にとって悪い方向に転がりかねなかった。意図的に量産型レブナントのいる場所に転移したと言われてしまうと小竜姫達からの疑いの目も向いてしまうからだ。小竜姫とブリュンヒルデたちからすれば僕は長い間神魔混成軍に尽くして来た仲間であり、美神達は伝承からアスモデウス、ガープに繋がっていると誤解していると小竜姫達が考えている状況が僕にとっては好都合な訳だ。だからいきなりの強襲は困る訳だったのだが……。

 

「どうも簡易的な命令を与えて月面にばら撒いているようだね」

 

量産型レブナントは移動する先、移動する先にいたが決められた順路をパトロールしていた。つまり最初の強襲はアスモデウス達にとっても想定していたが、ある意味想定外だったのかもしれない。

 

「そうみたいね。少し疑っちゃったけどごめんね」

 

「構わないさ。誰だって疑うよ」

 

それに形だけの謝罪っていうのは分かっているので、こちらも形として謝罪を受け入れる。

 

「さてとステルスを展開してるから見つからないけど、移動も出来ない。これからどうする?一応月神族の所には顔を出す予定なんだろ?」

 

月神族ならば量産型レブナントを倒す事は不可能ではない。だが月神族が敗退しているのは中身の入った眼魂を使っている量産型レブナントがいるからだ。何を使っているかは僕も知らないが、少なくともケルベロスやハルピュイアなどの幻獣系の眼魂を使っているのは間違いないだろう。

 

「情報が欲しいので月神族と1度だけでも会談はする予定ですが……首都はもう制圧されてるみたいですし……」

 

「どこにいるのか分からないならまずはガープ達に渡された招待状の所にでも行ってみるか?」

 

メドーサの言葉に僕は座っていた椅子から腰を上げた。

 

「招待状?そんな物があるのかい?」

 

「あ、伝えていませんでしたね。蘆屋がガープの招待状を持って来たんですよ」

 

聞いてないし……しかし招待状か……。

 

(本気で欲しいわけね)

 

特異点の横島が欲しいとは言っていたけど、招待状まで持ち出すか……。

 

(まあ良いけどね)

 

僕としては下げたくない頭をもう下げなくてすむ様になるし、最後の最後で裏切られたと絶望する小竜姫達を見るのも悪くないだろう。

 

「ですが準備も無しにガープの所に乗り込むのは危険じゃないですか?」

 

「ええ、その通りよおキヌちゃん、出来れば1回休んでからにしたいんだけど……月神族の首都が落ちてるし、量産型レブナントがうろうろしてるし……」

 

「下手に移動してガープ達に見つかるのも厄介ですわね。メドーサ、1度使い魔で偵察を「あ、大丈夫ですよ。月神族の場所なら分かりますよ?凄い嫌だけど」は?」

 

月神族の場所が分かると言う横島に思わず視線を向ける。すると横島は鞄に手を突っ込んで、その中から白い何かを取り出した。

 

「ぴゅう!」

 

「よーしよし、良い子良い子。輝夜ちゃんから預かってきたんですよ、この兎が輝夜ちゃん派の所まで案内してくれるそうですよ」

 

横島の手の中で跳ねる小さな兎が気合満点に鳴きながら頑張るぞと言わんばかりに跳ねている。

 

「……と言う訳で会いに行けるわけだが……当然全員でぞろぞろと行く訳には行かない、この拠点を落とされるわけにも行かないからな。恐らく永琳の手紙を持ってる横島は確実に出向かなければならないが……横島1人で行かせる訳にも行かない。最少人数で向かうべきだと思うがどうだろうか」

 

水神の言葉を聞いて僕は再び椅子に腰を下ろして手を上げた。

 

「僕は待ってるよ、いざとなれば拠点ごと転移できるからね。君達の方で話し合ってくれ」

 

現行の月神族の政治に反対している派閥と接触出来れば殲滅する事も可能だが、下手な動きを見せれば殺されると分かってる場所に自ら乗り込む必要もない、もっと言えば……。

 

(どうせこれもガープのお遊びだ。それに巻き込まれるのはごめんだしね)

 

月面を制圧しなくとも地球を破壊する兵器を作るなんてガープには朝飯前だ。それなのに態々月にそんな兵器を作り出したその意味は阻止すると言う名目で横島達を月に誘い出すため……月に横島が来た段階でガープに取っては作戦終了に近いはず。ならば月に連れて来た段階で僕の仕事も終わり、余計な仕事を押し付けられるのはごめんだし……何よりも。

 

(くだらない恋愛遊びを見てるのもつまらないし)

 

横島を巡る色恋で一喜一憂してる連中を見ているような趣味はないので、いざとなれば拠点を移動させると言う名目でこの場に残ると宣言し、良く分かって無い様子の横島とピリピリしてるくえす達に馬鹿じゃないのかと内心吐き捨てながらワインのボトルに手を伸ばすのだった……。

 

 

 

 

~依姫視点~

 

月面都市が消滅したのは一瞬の事だった。レブナントと言う顔のない騎士を媒介に月面都市の上空に大規模な魔力を増幅する魔法陣を見て私が命じたのは月面都市の放棄と逃走だった。古い考えに凝り固まっている連中は残り、それに従った月神族も恐らくあの特大の雷で消し飛んだだろう。私の部下は無事に逃げおせただろうかとその身を案ずるが……私とお姉様、そしてもう1人もかなりの怪我を負っており、他人を心配するよりもまずは自分という状態だ。本当なら動きたくもないが……どうしてもやっておかなければならない事がある。

 

「分かりましたか、貴方達がどれだけ愚かだったか」

 

「……ぐうの音も出ませんね。ありがとうございます、依姫。私を助けてくれて」

 

私とお姉様で連れ出したのは迦具夜だった。現状の月の女王で、今までは頭を下げていたが彼女にも今の自分の立場というのを理解してもらう必要がある。

 

「別に助けたわけではありませんよ、ただ正規の手続きでかぐやの地位から降りて頂くためですので」

 

迦具夜を助けたのは次のかぐやの地位を継ぐ人の為だ。そうでなければ私に迦具夜を助ける理由はない。

 

「もう依姫、そんな風に言ったら私達がクーデターしようとしてたってばれちゃうわよ?」

 

「お姉様、もう全部言ってます」

 

あらやだと笑うお姉様に思わず溜息が出るがしょうがない。

 

「今のやり取りで分かったと思いますが私達は輝夜様の一派ですので、迦具夜。貴方をかぐや姫とは認めていないという事は覚えておいてください」

 

「……最初からなのね?」

 

「そうですね、最初からです。平安時代の話は私達は知ってましたし、必要以上に自分達が如何に優れているのかと語る月神族にもうんざりしていました」

 

私達も月神族だが、他の神魔より優れているとは微塵も思っていない。むしろ月に引き篭もり他者との繋がりを持たない月神族は衰退しかしないと唾棄していたが、それでも警羅として仕えていたのは機を窺っていただけだ。

 

「本当ならもっと段階を踏む予定だったんだけどねぇ、ガープのせいで前倒しになっちゃったわね」

 

「それも仕方ない事です。狙われて当然なのですから」

 

女で、高い神通力を持っている大して強くもない月神族となれば神魔両方に戦争を仕掛けているガープが目を付けないわけが無い。捕らえられた月神族は恐らく死んだほうがましか、女として生まれた事を後悔しているだろうが……私には関係が無い。

 

「助かる算段はあるのですか?」

 

「あるが説明する気はない」

 

ここは永琳様が用意してくれた拠点であり、月の中で1番安全な場所だ。だがそれを態々迦具夜に説明する必要性は無いと告げて、これからどうするかと考えていると白い影が私達の前に現れた。

 

「ぴゅい!」

 

ぴょんぴょんっと飛び跳ねる小さな兎を見て私とお姉様は顔を見合わせた。

 

「あら、この子……依姫」

 

「来たようですね、お姉様」

 

その兎の後ろから現れる1組の男女と1人の神魔の姿を見ていると人間の1人が前に出て、迦具夜が息を呑んだ。その人間は迦具夜に月神族の罪を教えた人間だったからだ。

 

「えっと依姫さんと豊姫さんですよね?永琳さんからの手紙を預かってきました、横島と言います」

 

「話は聞いてるわ、私が綿月豊姫。こっちが妹の綿月依姫よ、さっそくで悪いけど手紙を見せてもらえるかしら?」

 

「はい、どうぞ」

 

差し出された手紙をお姉様が受け取り、封を切って2人で手紙に目を通そうとして……。

 

「ふっ!」

 

「うっ……」

 

ふりかえって手紙を覗き込もうとしていた迦具夜の首筋に手刀を落として意識を刈り取り、お姉様が縛り上げる。

 

「配慮が足りなかったわね、とりあえずこれはこう、ぽーい」

 

縛り上げた迦具夜を押入れに押し込むお姉様に横島が引き攣った顔をしているが、何百年も薬にも毒にもならないどっちつかずの政治をしていたのだ。本当ならガープの攻撃で死んでいた所を助けてやったのだから文句を言われる筋合いはない筈だ。

 

「じゃあ改めて手紙を見させてもらうわね」

 

「これからの事も話をしたい、少しばかり待ってくれ」

 

私達のやり取りに絶句しているが、起きていたら絶対あーだこーだと口を挟んでくるだろうから、これが1番正しかったはずだ。少し待っていてくれと言って私とお姉様は改めて手紙に目を通すのだった……。

 

 

 

~シズク視点~

 

横島に同行したのは私とメドーサ、そしてくえすだけだ。もう少し大人数で動く事も可能だったが、私の水とくえすの魔法があれば話し合いに参加しようと思えば出来る。移動に秀でた私達3人と永琳を知る横島が1番最適な人員だという判断だ。

 

(1度横島から引き離す必要もあったしな)

 

月の魔力に当てられている蛍には1度厳しい説教が必要だ。戦場で敵が自分よりも弱いからと侮り慢心するなど言語道断。その慢心が全員を死なせる事に繋がる可能性があれば、矯正が必要だ。

 

「確かに拝見させていただきましたが、月神族は見てのとおり全滅ですから、気にしないでください」

 

「今までの驕りの代償だ。何れはこうなると分かっていた」

 

流石は永琳の弟子という所か、他の月神族とは顔付きが違う、これならば話し合いの相手として申し分ない。

 

「かぐや姫はどうするつもりですか?」

 

「ああ、かぐや姫の称号を正しい人に返して貰わないと困るからな。邪魔しかしないから閉じ込めておくだけだ、横島が制裁を加えたいと言うのならば……」

 

依姫が腰に挿した刀を抜いて横島に差し出しながら迦具夜が居る部屋を顎で指す。

 

「殺さない程度ならば憂さ晴らしをしても構わない」

 

「いいいいいい、俺はそういうの良いからッ!!」

 

手をぶんぶんと振りくえすの後ろに隠れてしまう横島を見てやれやれと肩を竦める。

 

「……とりあえず迦具夜は閉じ込めておいてくれれば良い。私達が求めているのはお前達が何に滅ぼされたかだ」

 

量産型レブナントはレイに劣る能力しかない、そんな量産型レブナントが月神族を滅亡一歩手前に負いこめるとは思えない、何か戦力の差を埋める何かがあったと私達は考えている。

 

「良く分からないわ……凄く異質な力だとは思う、死んでも死なない。倒れたら別の敵がその姿になる」

 

「それはあれじゃねえのか?眼魂を別の相手が使って「違うのよ、触手みたいのに貫かれと思ったら同じ姿の奴が2体も3体も増えるのよ」

 

メドーサの言葉を遮って豊姫が何を見たのかを曖昧な言葉で説明し始める。

 

「強くはないのよ、でも強いの」

 

「強くないのに強いってどういう事なんですか?」

 

「んー難しいのよ。とにかく攻撃は当たるの、手足の欠損、下手をすれば頭だって吹っ飛んだわ。でもそいつは生きてて、どうしても倒せないの」

 

どうしても倒せない、手足だけではなく頭が消し飛んでも倒せない。

 

「不死性を持つ神の眼魂のようですわね」

 

「……多分な、まぁ倒せないのならば封じれば「それだけじゃない、雷を放つ槌、炎を放つ大剣を持った個体、不死身の者とあわせてその3体で月神族はほぼ壊滅状態に陥ったのだ」

 

雷を放つ槌、燃える大剣……あまりにも特徴的なその姿に私達はすぐにその正体が分かった。月神族が月に閉じ篭り他の神魔と繋がりが無かったから分からなかったのだ。

 

「馬鹿ですか貴女達は!北欧神話の神の名前すら知らないのですか!?」

 

くえすが我慢しきれなかったのかそう怒鳴るが気持ちは分かる。メドーサですら頭を抱えている。

 

「いや、そのごめんなさい。地球の神魔の話って全然月に来なくて」

 

「調べようとはしたんだぞ?嘘じゃない」

 

とは言えその情報を手に入れられなかったのならば何の意味もない。最上位の神ですら、月神族は自分達より劣ると蔑んでいたとは愚かなんて言葉では片付けられないほどの大馬鹿だ。

 

「そんなに不味い神様なんですか?」

 

流石に横島はまだ勉強中なので良く分かっていないようだ。まぁ横島はしょうがないと思い、月神族を滅ぼした神が何なのかを説明してやる事にする。

 

「……雷を放つ槌は恐らくミョルニル。北欧神話の戦神トールの持ち物だ。恐らくトール眼魂、そして炎を放つ大剣は」

 

「巨人スルト。北欧神話の世界を1度滅ぼしたとされる極めて強大な神ですわ」

 

神魔の中でも上から数えた方が早い武闘派神魔……それがトールとスルトだ。そして量産型レブナントに使わせていた理由も分かった。

 

「使わせれなかったでしょうね。レイには」

 

「ああ。レイに使わせたらそれこそ大変な事になる」

 

「え、え?どういうこと?」

 

横島は訳が分からないと言う様子なので、何故レイにトールとスルトの眼魂を渡さなかったのかを説明する。

 

「……簡単だ、スルトもトールも強すぎる。レイが変身すればトールとスルトのいずれかが顕現してしまう。神殺しの逸話を持つ神を呼ぶ事はガープでも躊躇うものだったということだ」

 

レイでは100%、いや120%スルト達の力を引き出してしまう。そうなればスルトとトールが復活したと同意義だ。恐らく反逆してくるであろうスルトとトールを完全形で復活させるのは余りにもリスクが高すぎる。だからレイよりも数段器として劣る量産型レブナントに押し込めることで制御可能にしているのだろう。

 

「やばくない?」

 

「めちゃくちゃやばいですわ。シズク、メドーサ」

 

「ああ。こいつらを連れて戻るか、ブリュンヒルデがいればオーディンと連絡がつく、急いで作戦会議をしないと不味い」

 

ガープだけではなく、スルトとトールもいる。その上日本を破壊できる魔力砲は今も日本に照準を合わせている……完全に詰み一歩手前……いや完全に詰んでいる。

 

(私が本来の姿を……いや、駄目だ。それでも足りない)

 

本来の大蛇になったとして、初撃は防ぐか相殺は出来るだろうが2発目は身体を使って盾になるくらいしか出来ない。仮に海の水を吸い上げて身体を巨大化させれば海の水が続く限りは防げるが、それをした後に待っているのは天変地異だ。

 

(最高指導者が動けばこれ幸いと四大天使共も動き出すだろうし、アスモデウスに従がう魔神も動く……)

 

引っくり返すにはスルト、トール、そして謎の不死身の神性を持つ量産型レブナントを撃破し、魔力砲が発射される前にガープ、それと恐らく蘆屋が守っているであろうそれを破壊するのは正直に言えば不可能に等しい。

 

(ああ……なるほど、そういうことだったのか)

 

芦屋が届けに来た招待状……紛れも無くそれは招待状だろう。だが会談をする為なんて言う優しいものではない、どう足掻いても覆せない絶望を用意し、降参するのならばそれを受け入れてやろうという私達を何処までも見下したガープからのメッセージなのであった……。

 

 

リポート17 謀略の月 その4へ続く

 

 




今回はドクターカオス視点はおやすみです。次回の話と繋がる部分があるためです、次回は今回よりも少し長めでお送りしようと思いますので次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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