GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL 作:混沌の魔法使い
リポート18 月面決戦 その4
~横島視点~
レクス・ローの召喚したダブルアクションゲーマーを撃破出来たのは正直に運が良かったとしか言い様が無かった。月の水分を利用した分身との同時攻撃によるダブルアクションゲーマーの同時撃破が出来たが、案の定かなり無茶をしたので俺の霊力はまた枯渇寸前に陥っていた。
「横島。大丈夫?」
「な、なんとか……でも暫くは動きたくねえや」
霊力を消耗した事による倦怠感、そして2対1というあまりに不利な戦いで削られた集中力に、全身に走る激痛と自分で言うのもなんだが意識を失っていないのが奇跡のように思えた。
「拠点に戻ったら休んで良いからもう少し頑張って」
美神さんも蛍もくえすも、小竜姫様とメドーサさんもブリュンヒルデさんもボロボロだ。そんな中で1人だけ倒れてはいられないと活を入れて足を引き摺りながら歩き出す。
「くそが……身体がうごかねぇ」
「しゃーねえだろ、新しい力をぶっつけで使うからそうなるんだ」
陰念もノックアウトゲーマーを倒すためにパラドクス眼魂の力を更に解放し、撃破する事には成功したが変身の反動で行動不能。雪之丞に肩を借りてやっと歩いているという状況だ。
「強かったですね……」
「そうですね……あれが分身というのが恐ろしいです」
「だね、数で押されたらそれこそ終わりだよ」
小竜姫様達は美神さん達と異なり、俺と陰念が戦ったような仮面ライダーと戦った事でかなり消耗している。
「シズクを拠点に返したのは正解だったわね」
「ヒーラーですからね、ただアスモデウス達が動き出すまで私達も動けそうにありませんわね」
出来ればアスモデウス達が動き出す前に魔力砲を破壊したかったのだが、レクス・ローによってそれも不可能になってしまった。
【シズクがいれば回復は間に合うが、アスモデウス達が動き出すのにあわせてレクス・ローが動かないというのも言い切れないな】
「アスモデウス達と戦ってるのにあいつまで出てきたらもう無理だろ」
泣き言を言いたい訳では無いが、レクス・ローは余りにも強すぎた。恐らくあいつも仮面ライダーなのだろうが、変身しなくても小竜姫様を一蹴したのは正直驚いた。しかもアスモデウス達の話を信じるのならばガープとアスモデウスを相手にして無傷で勝利したと言うのだからますます化物染みた戦闘力を持つ相手だ。
「確かに、それにあいつの力を私達は何も感じ取れ無かった」
「これはかなり異常ですよ。多分ですけど、何か特異な能力の持ち主だと思いますよ。概念か世界に干渉するタイプの能力者だと思います」
依姫さん達も疲れきった表情でレクス・ローの異常性を口にする。小竜姫様達もそれを感じ取っているようだが、これ以上悪い話はしたくないのか黙っているのが良く分かる。
「とにかく今は休みましょう……話はそれからよ」
「疲れてるからネガティブになるのよ、まずは休憩。そこからどうするか考えましょう」
確かに疲れてる時は悪い事ばかり考えてしまう。美神さん達の言う通りまずは身体を休めようと重い身体を引きずり必死に拠点に帰った俺達はそこで信じられないものを見ることになる。
「おかえりなさーい♪ 貴方の頼れる秘書狐コヤンスカヤちゃんです♪」
「……こいつ結構有能だぞ?タマモより優秀だ」
きゃぴるーん♪って感じでウィンクをしてピースサインをするピンク色の髪をした少女とそんな少女の隣で割烹着姿のシズクを見て、俺は少し考えてから美神さんに視線を向けた。
「琉璃さん怒りますかね?」
「琉璃の前に私が怒るわ」
「ですよねー」
可愛い狐が美少女になっていた。これはよくあると言ってはいけないが俺の中では結構よくある事だが……今回はちょっと不味いかもしれない。
「タマモになんて説明しよう……」
絶対タマモが怒るやつだ。地球に無事に帰れたらタマモになんて説明しようと思わず頭を抱える。
「ささ、まずはお風呂でもどうぞ、お湯を準備してますわ。お風呂に入ってる間に食事を用意するのでまずは身体を休めてくださいな」
「……そう言う訳だ。まずは風呂に入って来い」
コヤンスカヤちゃんとシズクに促され、俺達は疲れを癒すために身体を引き摺るように男と女で分けられている風呂へと向かうのだった……。
~西条視点~
霊剣ジャスティスを生身の相手に向かって振るうわけには行かないと最初は鞘を付けたまま殴りつけていたが、今はそんな事をいっている余裕は無く、抜き放った霊剣ジャスティスで飛びかかって来たカソック姿の男の胴を切り払う。鮮血が噴出すが男はそんな事を一切気にせず、自ら霊剣ジャスティスに向かって進み己の身体を傷つけてまで僕に向かって手を伸ばして来る。
「うおらあッ!!」
男の手が僕の首に掛かると言うタイミングで不動が割り込んで来て、その拳でカソック姿の男を殴り飛ばした。
「おい、西条。とっとと覚悟を決めな、出来ねぇなら失せろ。邪魔だ」
メリケンサックを嵌めた拳を僕に突きつけてくる不動に僕は返す言葉が無かった。
(こんなになるまで何故僕は気付けなかったッ!)
東京都内の高級ホテル……その内部は異界になっているうえにカソックを着た死んでいるのに生きている、そんな連中で溢れかえっていた。
【邪法だろうねえ、天使の力を使っているとは言え、これに気付けなかったのは相手が上手だったカ、私達の警戒が足りなかった……どっちだろうねえ】
そう呟きながら教授が銃を放ち、それは正確に襲ってきたカソック姿の男の額を撃ちぬいたが、脳漿を流しながら男は立ち上がり狂気に満ちた表情でハレルヤ、ハレルヤと唱える。
「西条。悔やんでいる時間はない、今は制圧するしかない」
「そうじゃ、時間を掛ければマリア7世が危ないんじゃぞッ!!」
ドクターカオスの言う通りだ。これだけの邪法の被害者がいる事を考えればいつマリア7世もその毒牙に掛かるか分からない。マリア7世が狙われた理由は火を見るよりも明らかだ。ドクターカオスの残した特殊鉱物の鉱山。天然物の精霊石などは劣るが、それでもマリア7世の国が特別自治区と認められるだけの霊的財産を狙っての物だ。
「はぁッ!!」
「ギッ!?は、ハレル……ハレル……ヤ」
行動不能にさせるなんて甘い考えではなく、命を奪うつもりで振るった霊剣ジャスティスの一閃でカソック姿の男がその場に崩れ落ちる。
「はーはー……」
「動揺も悔やんでる場合もない。いくぞ、西条」
「あ、ああ……分かっているッ」
須田の言葉に頷き、血に塗れたホテルの通路を駆ける。
「ブラドー伯爵。彼らは人間ですが、どう考えてもゾンビのようでした。これはどういうことなのですか?」
ゾンビがいればオカルトGメンも、そしてGS協会も気付く、だが気付く事が出来なかった。その理由はなんなのかとブラドー伯爵に尋ねる。
「天使の羽だろう。天使の羽を埋め込まれ、その天使の羽が心臓などの変わりになっている上に洗脳装置としての役目も果している」
「天使の羽にそんな効果が……?」
ブラドー伯爵の説明を受けても信じきれずに思わずそう呟くと今度はドクターカオスが僕の質問に答えてくれた。
「天使の羽と言っても高位の神魔の身体の一部じゃ、それを埋め込まれればその羽の持ち主に影響を受けるのは当然。それに埋め込まれた段階で人間としては死んでおるわ」
「胸糞悪い話だな、爺さん。んで、この話はバチカンには言うのか?」
「言っても無駄じゃろ、四大天使に従ってる派閥は完全にバチカンと袂を分かったじゃろうしな」
教皇は穏健派でとても温厚な人物だ。そんな教皇が今回の件に関わっている訳が無い、それに……。
「教皇庁には四大天使よりも高位な天使が2体、それに英霊が3体駐在している。四大天使が襲撃を仕掛けたとしても勝てる訳が無いだろう」
余り知られていないが教皇庁には天使、それに英霊もいる。疎ましく思っても四大天使派閥はローマ教皇に手を出す事が出来ない筈だ。
「英霊は誰だ?」
「聖ゲオルギウス、聖モーセ、聖人としての側面が強い聖マルタと聞いている」
「ガチガチの武闘派揃いだな?」
ドラゴン退治の聖人が2人に、天使ウリエルを倒したとモーセと英霊としては最上位が3人も詰めている。それに加えて……。
「大天使メタトロン、大天使スラオシャが守護をしている。突破は出来まい」
「キリスト教の天使じゃないじゃな?」
メタトロンもスラオシャも天使ではあるがキリスト教由来の天使ではない。そんな2人が駐在しているのには僕も疑問を抱いた物だが……今回の件である仮説を立てることが出来た。
「本当の神が派遣したのかもしれないな」
「最高指導者よりも上の存在か、確かにそれなら話は通るな」
ルイ・サイファーが反逆した本当の神、現在の神魔や最高指導者では手も足も出ない本当の神。それらが関わっている可能性は極めて高いと僕は考えている。
「おっと、無駄話はここまでだぜ。とんでもねえのがきやがった」
不動が足を止めて獰猛な笑みを浮かべるが、僕達は当然ながら顔を引き攣らせた。
【ここまでやるか、もう天使じゃなくて悪魔で良いんじゃないのかネ?】
現れたのはさっきまでと同じく天使の羽を埋め込まれた教会の人間だろうが、今僕達の前に立ち塞がるのは到底人間とは思えない姿をした者達だった……即頭部を突き破るように生えた天使の羽が生えたもの、右手首に天使の羽が生え弓矢のようになってる者、その手に天使の羽が変化したであろう剣を持つ者を見て僕は声を張り上げた。
「ブラドー伯爵、ドクターカオス!先にいって下さい!」
「……分かった。行くぞ、カオス」
「おう。死ぬなよ」
ヴァンパイヤミストで霧状になったブラドー伯爵とドクターカオスが通気口の中に消え、僕と教授と不動と須田の4人の前に天使の羽に侵食された神父達が立ち塞がる。
「良い判断だ。マリア7世が洗脳されたら詰みだ。先に行かせるのは間違っていないが、俺達だけで勝てると良いな」
「はっ!突っ込んでぶちのめす!それで決まりだろ?」
「そういうことだッ!!」
【やれやれ、老骨に無茶を押し付けてくれるなッ!!】
天使浸食体とでも言うべき異形と成り果てた神父達を憐れだとは思う、だが憐れと思えば命を失うのは僕達だ。それでも僕は彼らを哀れと思わずにはいられなかった。
「今眠らせてやるッ!!」
もう生きたくないと、死にたいと言わんばかりに涙を流す者達を見て僕は銃を投げ捨て、霊剣ジャスティスの柄を両手で握り締めてホテルの廊下を強く踏みしめながら駆け出すのだった……。
~マリア7世視点~
ひび割れ、色が失われていく結界と結界の前に立つ白い服に身を包み、首からロザリオを下げた司祭服に身を包んだ青年が私を見て下卑た笑みを浮かべる。
「いい加減にこの結界を解除して欲しい物ですね、マリア7世」
「お断りします。貴方のような俗物に触れることを許すほど軽い女ではありませんわ」
私の返答に司祭は減らず口をと吐き捨て、まぁ良いでしょうと笑った。
「ここまで殆ど休息をせずに霊力を消費しそろそろ限界がくるのではないでしょうか?」
「さぁどうでしょうか?」
平然と返事を返したが、実際はかなり限界が近い……カオス様の霊具で霊力の消耗を軽減しているとは言えここまで殆ど休まず結界を維持してきたので霊力だけではなく、体力も精神力もかなり限界が近い。
「何故そこまで強情になるのです?私は貴方の夫となるべく選ばれたエリートですよ」
「笑えない冗談ですね、その話はお断りした筈ですよ。カイン」
いつだったかイクサと共に私の国にやって来て、話もそこそこに求婚してきた無礼な男――それが私のカインという司祭に抱いている感想だった。
「貴女も貴女の国もイクサ様の元にあってこそ輝くというのが分からないのですか?」
「分からないですね、そもそもイクサは何人も愛人を抱えている。そんな男に身体を許すとでも?オカルトGメンの会長の娘と婚姻しているのに良くやるものです。元犯罪者風情の身でね」
私の言葉にカインから怒気が溢れるが、私はそれを見ても笑った。
「不法入国に始り、婦女暴行、国際的に保護するべき魔獣や妖怪、精霊を乱獲し、剥製にする。悪趣味極まりない」
イクサは今でこそオカルトGメンのトップだが、その経歴は後ろ暗いものばかり、オカルトGメンの会長の娘の危機を救ったとして表向きの罪科は消され、オカルトGメンに就職したらしいが、それすらもイクサが手を引いているともっぱらの噂であり、私もその通りだと思っている。
「お前は何も分かっていない。あの御方は何もかも許されるのだ。今はまだ人間という……「作られた命に何の価値がありましょうか?」……貴様ッ!」
「怒りましたか?ですが事実である筈。違いますか?ガブリエル」
私は最初からカインと話などはしていない、私が話しかけていたのはこの場にいる天使にだった。1人のシスターの姿が浮かび上がり、その背中から巨大な羽が現れたと思った次の瞬間、そのシスターの姿は神々しい光に包まれた天使へと変わっていた。
「ええ、そうですね。マリア7世……いえ、現在の地球で数少ない聖女の血を引く希少な血統の持ち主だけはあります」
「が、ガブリエル様!?な、何故このような場所に」
「カイン。我が信徒よ、黙りなさい。貴方に発言は許しておりませんよ」
ガブリエルの言葉にカインだけではなく、この場にいた全員が膝をついて頭を垂れた。
「さてと、これでゆっくり話が出来ますね。分かっていると思いますが、貴方は聖母マリアの血を引くもの、我らの元へ戻り、メシアと共に新たな秩序を作るべき人間なのですよ、さぁ、どうか私の手をとってください」
手を差し出してくるガブリエルは私を守っていた結界を容易く破壊した。
「お断ります」
「それは何故?メシアの妻となることに何の不満があるのですか?再び救世主が生まれる素晴しき世の聖母になる事に何の不満があるのですか?」
ガブリエルは信じられないと言う表情を浮かべるが、私からすればガブリエルの方が信じられなかった。
「仲間の天使の手足を奪い、機械へ組み込み。貴方達を信じるものに羽を埋め込み、人なざる者にする。そして今も腐っていく天使を見て何故信じられましょうか?」
ガブリエルの身体は現在進行形で腐っている。憑依した人間がガブリエルの神気に耐えられないのだ、目の前で毒々しい煙を上げ腐っていくガブリエルは天使どころか悪魔にしか見えない。
「どうしても私は貴女と話がしたかったのですよ。私の寄り代も私の信徒も皆慶んで命を捧げてくれています、貴女が思うような事は何もないのです。貴女はメシアと婚姻を結び、永劫聖母として崇められる。これほどの幸福があるわけもない、さあ私の手を取るのです」
この天使は何を言っているのか理解出来なかった。いや、元々天使の思考を人間が理解できる訳もない。
「私の幸福は私が決めます。少なくともメシアの妻になる事は私の幸福ではありませんよ」
「強情ですね。ですがメシアの子を孕めば考えも変わるでしょう。子を産むのは女の幸せですからね」
ガブリエルと私の話はどこまでいっても平行線でしょう。そしてこの胸糞悪い話も変わることが無いのは間違いない。だけど……その胸糞悪い話を聞いたのにも意味があるのです。
「お断りですわ。私の夫となるべき人は私自身で決めます、貴女に命じられる必要もありませんわ」
「分からない人ですね、しょうがありません。手荒な真似はしたくありませんでしたが、カイン。マリア7世の手足を切り落としなさい、胎だけあれば十分です」
「全てはガブリエル様の御心のままにッ!」
これは最早狂信者、何が正しいか、何が間違っているかも分からないのでしょう。これが今の教会、そして天使のあり方。なんとおぞましく、そして醜悪なのかと斧を手に迫ってくるカインを見て心からそう蔑んだ。
「私も十分です。とても良い話が聞けましたわ」
ドレスの中のボイスレコーダーを見せ付けるように停止ボタンを押すと同時に私の身体を紅い煙が包み込んだ。
「これは吸血鬼ッ」
「遅いぞ、天使ガブリエル。マリア7世は頂いていく」
ガブリエルが光を放つ前に一瞬だけ顔を見せたブラドー伯爵に抱き抱えられ、私は閉じ込められていた部屋を後にした。
「すまぬ、こんなに遅くなって」
「大丈夫です、カオス様。それよりも逃げましょう」
「そうじゃな、ここまで露呈した今取り繕う事もあるまい。ホテルを破壊される前に逃げるぞッ!」
悲鳴と共にホテルの中にいた教会の人間がどんどんと変異していく中を私はカオス様に手を引かれ出口へ向かって駆け抜ける。
「マリア7世!ご無事でしたか!」
「話は後だ西条!おら、お姫さんッ!!さっさと逃げるぞッ!!」
私を救出に来てくれていたであろうオカルトGメンの西条達とも合流し、生物のように変化するホテルの通路に足を取られながら必死に外を目指して走る。
「大丈夫か、マリア?」
「大丈夫です。急ぎましょう」
休んでおらず、禄に物を食べていない私を気遣ってくれるカオス様に大丈夫ですと返事を返し、必死に走り抜けてホテルのロビーへと出た私達の前に完全にゾンビのようになったガブリエルと機械に組み込まれた天使が立ち塞がった。
「ここで貴方達には死んでもらいましょうか、ホテルも潰して不慮な事故として全ては終わります」
【アア、アガガガ】
「残念ですよマリア。貴女も千年王国に連れて行こうと思っていたのに、こんな事になってなんて本当に残念です。ですが、せめて苦しまず死ぬだけの慈悲は上げますよ、ではもう会うことも無いでしょう」
ガブリエルに憑依されていたシスターの身体が塵となり、手足のない天使がその翼だけで浮かび上がり、私達に敵意を叩きつけてくる。
「マリア。精霊石を持って離れているんじゃ」
「……皆様、お気をつけて」
私は結界の中に隠れ天使との戦いに身を投じるカオス様達の無事を祈るのだった……
リポート18 月面決戦 その5へ続く
という訳でクソ仕様の天使の参戦でした、横島達が戦っている中地上も結構ピンチだったというのを書いて見ました。
次回からは月の話で、月の話終了後に地上での戦いを再開したいと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。