GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL 作:混沌の魔法使い
リポート18 月面決戦 その5
~美神視点~
レクス・ローの呼び出した仮面ライダーとの戦いから風呂と食事、そして僅かな仮眠を取った後で私達は今後の話し合いを始めていた。
「まずは貴方は何者ですか?コヤンスカヤさん?」
横島君の隣のタマモに良く似ているがタマモとは似ても似つかない冷酷な表情を浮かべている少女――コヤンスカヤに小竜姫様が問いかける。
「私が何者かですか、そうですねえ……人類悪と言われれば分かりますか?」
人類悪の言葉に小竜姫様とブリュンヒルデが腰を上げようとしたが、2人の目の前に展開された大口を開けた黒い狐の頭に無理矢理動きを止められる。
「話は最後まで聞くべきですよ?私は確かに人類悪、ですが人類悪の種であり、そして九尾の狐の一側面でもあります。横島との縁を辿って人類悪としての力をそぎ落として自分で縁召喚された英霊ですね」
横島君との縁……前世とかそういう問題ではなく、魂で繋がった縁があるのだろう。そうでなければタマモも横島君の所に居つくわけが無いし……考えられるのはインド、あるいは中国だと思うけど……。
(そのどちらも基本的にアウトね)
今横島君が思い出していない、あるいは横島君に影響を及ぼしてはいないけど……平安時代の高島でさえも横島君にかなりの影響を与えているのに、魔郷とも言えるインドと仙人が沢山いた中国にも前世のルーツがあるとか出来れば、いや、出来ればとかじゃなくて絶対に避けて欲しい案件だ。
「コヤンスカヤちゃん」
「は~い、なんでございましょうか~♪」
横島君が名前を呼ぶと一気に猫なで声になるコヤンスカヤの姿に蛍ちゃんとくえすが眉を顰める。確かに見ていて面白いものではないと思うけど、我慢してもらわなければ困る。
「英霊って事はえっと……キャスター?」
「いえいえ、私はアサシンでございますよ~♪多分タマモも英霊という括りになればアサシンでしょうね」
「タマモは知ってるの?」
「はいはい、知っておりますよ。タマモも私を知っていますし、私もタマモを知っています。同一存在ですからね、基本的には互いの事は知っておりますよ?まぁ仲は悪いですが」
仲悪いんだとぼそりと呟いた横島君は小竜姫様とブリュンヒルデに視線を向け、私にも視線を向けた後にコヤンスカヤに問いかけた。
「人類悪って何?」
人類悪……確かに私も知らない、小竜姫様達が動こうとした事と人類悪という肩書きから禄でもないものと言うのは分かるが……人類悪とはなんなのかという疑問はどうしてもある。
「んー人類悪と言われれば悪い物と思うかもしれませんね、ですが人類悪は決して悪と言う訳ではございませんよ?」
「そう……なの?」
「ええ、人類悪とは人類をよりよくしたい、人理を守りたいという願いを抱き、今の人類を滅ぼす事を選んだ者、それ即ち究極的な愛の形……人が人を愛するが故に生まれる憎悪も敵意もないのです。まぁ世界か、人を滅ぼしより良い未来を作る事を考えているので今を生きる人類にとっては悪そのものですが、地球あるいは未来を思えば正義とも取れる。簡単に言えば究極の自分勝手ともいえますね~」
人を愛するが故に生まれる究極のリセット存在であるとコヤンスカヤは軽い口調で言うが、横島君や私の視線を見て慌てたように両手を振った。
「とは言え私は人類悪になりえる存在という物で人類悪というわけではないです。大人の、もっと力を取り戻した私ならば人類悪として顕現するでしょうが……今の私は可愛い子狐ですコン♪」
招き猫のようなポーズを取って媚を売る姿を見て横島君はなんだあっと安心したように溜息を吐いた。
「じゃあ今のコヤンちゃんは安全って事で良いんだ」
「はいはい、勿論ですよ。私は横島、貴方を守る為に現界した英霊ですので~ご安心ください」
にこにこと笑うコヤンスカヤだが、小さく呟かれた言葉を私達は聞き逃さなかった。
『クソ天使共のせいで貴方が人類悪になんてなる必要はないのです。ああ、憎たらしい……天使、人類……神魔も全てが憎ましい、そしてお前達が憎い、お前達のせいでこの人は人類悪へと堕ちたというのに……ッ』
横島君には聞こえていない怨嗟の声――小声とかではなく、霊力に乗せられ私達へと向けられたコヤンスカヤの憎悪の声……それはジャンヌ・オルタが、そしてS達が語った絶望の未来の1つの結末。それを知るコヤンスカヤの言葉に私達は机の下の拳を強く、強く、爪が皮膚を突き破るほどに強く握り締め、その未来をなんとしても覆してやると決意を新たにするのだった……。
~小竜姫視点~
人類悪――神魔としてその存在を許してはいけない相手……だがコヤンスカヤにはより詳しい話を聞かなければならないと思った。
(人類悪が抑止力として召喚されている……もしかすると……あの3人も)
S達もまた人類悪に分類される英霊なのかもしれない、そう仮説を立てるとある答えが導き出される。
「コヤンスカヤ。1つ聞いてもいいですか?」
「龍神に何を答えろと?神魔なのでしょう?自分で考えて「コヤンちゃん、小竜姫様の質問に答えてくれると俺嬉しいなあ」……1つだけですわよ」
横島さんの言葉に苦虫を噛み潰したような表情で1つだけ質問に答えてくれると言うコヤンスカヤに私は踏み込んだ質問をした。
「1人が複数の人類悪に当てはまる事はありますか?」
「……ありますわよ。世界の数だけその可能性はありますわ」
やはり……ですか、恐らくだが……横島さんは特異点、世界の修正力の影響を受けず過去と未来を改変する能力がある。言うまでも無く、その能力は極めて危険な物だ。その危険性の1つの可能性……レクス・ロー、S達、そしてジャンヌ・オルタ、そしてコヤンスカヤ……。
(全員が同じ結末を見ていないんでしょうね)
全員の話に少しずつすれ違いがある。それは考えたくは無いが横島さんが人類悪に至った後、世界が複数の形の分岐してしまい、その中の1つを知っているのかもしれない、そして恐らくコヤンスカヤは四大天使が勝利した結果誕生した人類悪としての横島さんを知っているのだろう。
「はい、俺も聞きたい事がある」
「横島の質問なら幾らでもお答えしますわ~♪」
「タマモというか、九尾の狐の側面ってどれくらいいるの?俺タマモとタマモキャットしか知らないんだけど」
スンって顔になったコヤンスカヤはふうっと溜息を吐いた後に遠い目をした。
「私が知ってるのはタマモと玉藻前ですね、玉藻前は良妻願望マシマシで奉仕願望が凄くて、呪とか使う割りと頭のおかしいタマモなので間違っても召喚しようとか思わないほうがいいですわよ」
「お、おう……?」
絶対駄目といわれて何とも言えない表情で頷いている横島さんを横目に私は美神さん達に視線を向ける。私の質問の権利はもう使ってしまったが、美神さん達は違う。情報が少しでも欲しいが、話し合うことは出来ない。
(横島さんに聞かせるわけには行かない話もありますからね)
横島さんに聞かせてしまうことで未来が固定されてしまう可能性もある。だがコヤンスカヤは後で質問を聞き入れてくれるようには思えない、今ココで横島さんに聞かせれる範囲で今後に繋がる話を聞きださなければならない。
「レクス・ローは根源接続者ですか?コヤンスカヤ?」
「答えはNO。あいつは我々とは違うルールの中を生きております」
いきなりぶっこむくえすさんですが、その質問はありがたい内容だった。レクス・ローの無敵性は根源接続者の能力でと思っていましたが、そうではないと分かったのは僅かな進展だった。
「根源ってなんですか?」
「魔法と魔術の最奥ですわ、横島。まぁ横島には関係のない話ですが、簡単に言えば文珠と似たようなことが出来ると思ってくれればいいですわね」
「なるほど?」
「横島分かってないのになるほどっていうのはどうかと思うわよ?」
根源については横島さんには詳しく説明するべき内容ではないので、文珠に例えて話を切り上げてくれた事に感謝するべきだ。だけどそうなると……。
(レクス・ローの無敵性は一体なんなのでしょうか……?)
神通力も、魔力も物理も受け付けないレクス・ローの無敵性――根源接続者ではないのならばそのカラクリは何なのかと新たな謎が浮上する。
「レクス・ローの無敵の秘密は何?」
「それは存じ上げません。全盛期の姿の時に何度か対峙した事もありますがどうやっても引き分け、千日手ですからね。怪人以外の何物でもないですよ」
九尾の狐であり人類悪のコヤンスカヤでさえ引き分けにしか持ち込めない、コヤンスカヤの言う通り怪人としかいえないレクス・ローの謎はますます深まるのだった……。
~蛍視点~
九尾の狐の一側面であるコヤンスカヤは決して私達の味方ではない、だが横島の味方だからか色んな情報、いや、ヒントを与えてくれた。
例えば……。
「反英霊が抑止力に選ばれるほどにこの世界は乱れておりますわ、それ即ち通常の方法では世界は救えないという事ですわ」
本来は悪をなすはずの反英霊が抑止力として選ばれ、召喚される。その異常性を教えてくれた。
「無敵の女神?は?馬鹿なんですか?そんなのいませんわ、もっと見るべき場所を変えるべきですわね。例えば極めて限定的な支配者とかを考えてみてはどうです?」
依姫さん達が手も足も出なかったレイが変身に用いている眼魂は限定的な条件下で高い能力を発揮する女神だと教えてくれた。
「S?ああ。あのチビッ子共ですか、あいつらもレクス・ローと同じで何度かぶつかってますが、かなり厄介ですわ。そうですわね、現在の霊的法則では手も足もでないのではないですか?」
現在をやけに強調するのは古き神かそれに順ずる何かに関係する能力を持っていると教えてくれたのだろう……ただ横島に関係あることは教えてくれるがそれ以外は辛辣だった。
知らない、答える理由がない等……横島か、この月での戦いに関係する内容しか答えてはくれなかったが、かなりの情報を得れた。
「……横島、それと陰念、お前達はもう休め。変身して身体に負荷が掛かっている。これ以上は見過ごせない」
「ん、そういわれるとしんどいな……すいません、少し休みますね」
「では私も……コン♪」
子狐の姿になって横島に抱えられたコヤンスカヤはもうこれ以上答えるつもりはないと如実に物語っており、シズクのドクターストップでコヤンスカヤとの話は終わってしまった。
「結構話を聞けたわね、レイが変身してる眼魂が女神って分かっただけでも大きな進展ね」
「スルト、トールと来ているのでやはり北欧神話からですわね、ブリュンヒルデ何か思い当たる女神はいないのですか?」
「直接見ている訳ではないですから……名言は出来ませんが……エイル、ゲフィオン、ヘル……くらいでしょうか?」
「エイルは確か医療を司る神でしたよね?ヘルは冥府の女神で……ゲフィオンはなんの神なんですか?」
エイルとヘルは知っていたが、ゲフィオンは知らず何の女神かと尋ねる。
「争乱と死の女神だ。でも確か転生したはずだよ」
「ええ、セーレの言う通りで転生したばかりで確か横島の持ってる写真に写ってたと思います」
とりあえずゲフィオンは外して良さそうだ。とは言え、エイルとヘルでも相当やばい神格の持ち主なのは確定だ。
「それに加えてスルトとトールか」
「めちゃくちゃ厳しいな、それに……」
「レクス・ローの乱入も考えられますね」
考えれば考えるほどに悪い予想が積み重なってしまう……人類悪としての知識を持ったコヤンスカヤが召喚された事もかなり異常なのだと言える。
「……お前たちも休め、疲れた状態で考えても言い答えなどではしない、どんどん暗くなるだけだ。あと1日猶予がある、その時にもう1度話し合えば良いだろう」
ドつぼに嵌り掛けていたのでシズクの言う通りだと休む事にしたのだが、その日私はやけにリアルな夢を見た。私はもっと大人になっていて……牢屋を思わせる無機質な部屋の中にいた。
『私は行くよ、あいつを壊すんだ』
『どうして壊すの?皆が望んだのよ?死んだ人に会いたい、大好きな人と又過ごしたい、そう願って私はそれを叶えた。何の権利があって壊すの?』
『死者を蘇らせるのは間違ってるから』
『おかしいわ、貴女も喜んだじゃない、お兄ちゃん、お兄ちゃんって慕ってくれたじゃない』
『そうだよ、だから私達が終わらせるんだ』
『出来ないわ、彼を壊すことは出来ないわ、神魔だって、私達だってもう誰も壊せない』
どこまでいっても私ともう1人の少女の話は平行線だった。ただ分かるのは私は狂っている……それだけは分かった。
『壊すよ、何をしても私はあいつを壊す。人類悪――アークウィスプを私は壊す』
『違うわ、人類悪じゃない、彼は救世主よ』
痩せ細っているのに信じられないほどの目力を持つ私が狂った光を宿した瞳で笑い出し、向かい合っていた少女は悲しそうに目を伏せて闇の中へと消えていった……
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「なんて酷い夢……」
起きた時に見た夢は殆ど忘れていた。だけどそれでもそれが現実だと思えるリアリティを私は感じていた。
「汗……流そう」
酷い寝汗に顔をゆがめながら私はベッドから立ち上がり、ふらふらと寝室を後にする。
「ライジングホッパー……か、なにかしらね」
闇の中から聞こえていた軽快なメロデイとライジングホッパーの名前、薄れていく夢の記憶の中でそれだけが最後まで耳に残っているのだった……。
リポート18 月面決戦 その6へ続く
という訳で今回はインターミッションとなりました。ここも今後の話に関係ある部分なので、ちょっと短いですが挟ませてもらいました。
次回は戦闘回メインで話を進めて行こうと思いますので、次回の更新もどうかよろしくお願いします。