GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL   作:混沌の魔法使い

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その6

 

リポート18 月面決戦 その6

 

遠くから響いて来る激しい戦闘音に小竜姫、ブリュンヒルデに抱えられて移動している美神と蛍は顔を歪めた。月面広がった膨大な魔力は魔力砲が稼働状態になったことを示していた。

 

「……とっととけりをつけて横島達に合流する。それが最善だ」

 

「分かってる!分かってるけど……ッ」

 

月にはレイ、そしてスルトとトールの眼魂を使っている量産型レブナント、蘆屋道貞、ガープ、アスモデウスがいる。それらと真っ向から戦って勝てる確率は0%――美神達に出来たのは横島とメドーサ、陰念、依姫・豊姫の5人を残し、魔力砲を破壊する為の囮とし、美神達は魔力砲一点狙い。賭けともいえない大博打……美神達に出来るのはそれだけだった。

 

「戦って勝てと言ってるわけではありませんわ、時間を稼ぐ事に意識を向ければ十分に時間は稼げる筈。ここで私達が動揺している方が横島達を危険に晒しますわ、雪之丞ほど開き直れとは言いませんが今は目の前に集中するべきですわよ」

 

「とにかく今は突っ込んでぶっ壊すしかねえだろッ!」

 

美神と蛍と同じ様にくえすも横島達を囮に残した事は不安に思っている。だが敵陣を突破し、魔力砲を破壊する事が横島達の安全に繋がると確信しているからその歩みには何の躊躇いも迷いも存在しない。

 

「僕も協力するさ、一気に突破すればいい」

 

セーレが大丈夫だと笑うが、そのセーレが1番の不安材料である美神と蛍は返事を返さず。月面に響くネクロマンサーの笛の音色、そして響き渡る激しい戦闘音に顔を歪めるが美神達に足を止めている時間はない。

 

「魔力砲が機械ならあたしと姉さんで何とか出来るッ!」

 

「まずは魔力砲の無力化それが最優先ですッ!」

 

生きている機械である魔力砲だが、機械であることに変わりは無い。マリアとテレサによるハッキング、そして美神、蛍、小竜姫、ブリュンヒルデで砲身を破壊する。それが美神達が考え、そして実行可能な唯一の勝ち筋だった。

 

「小竜姫様急いでッ!」

 

「ブリュンヒルデさんもッ!」

 

魔力砲を破壊し、ガープとアスモデウスの作戦の根底を崩す……それが達成出来れば戦況は変わると信じ美神達は真っ直ぐに魔力砲の元へと向かうのだった……。

 

 

~横島視点~

 

雨のように降り注いでくる霊波砲を俺はウィスプ魂を駆使して必死に回避していた。ゴーストチェンジ出来ればもっと回避するのも楽になるのだが……。

 

ズクンッ!

 

「あっぐっ……」

 

胸の奥、心音とは違う鼓動が響き、俺は苦痛に呻いて足を止めた。その姿をレイは見逃してくれなかった……。

 

「そこ」

 

鈴を転がすような声が響くと同時に放たれた霊波砲が凄まじい速度で俺へと迫り、命中する寸前で俺と霊波砲の間に何かが割り込み、パーカーの襟を掴まれ、レイから強引に引き離され、レイの射程距離からなんとか離脱する。

 

「す、すみ、すみません……ッ」

 

「かまやしないよ、そもそもあたしはあんたの補助だからね」

 

盾になってくれたのはビッグバイパーで、俺を救い出してくれたのはメドーサさんだった。ぶっきらぼうな物言いだが俺を心配してくれているメドーサさんに息も絶え絶えでなんとか、ありがとうございますと言って無理矢理呼吸を整えて立ち上がる。

 

「もう動けるのかい?」

 

「気合で何とかします、それで心眼。あの眼魂が何か分かった?」

 

レイが変身している姿は漆黒のパーカーに機械的なフェイスパーツ、それと背部に背負っているタンクがやけに特徴的だ。だが最大の特徴は移動していないことだった。

 

【正体はわからんが、不死性の正体は分かったぞ】

 

霊波砲による攻撃も、ガンガンブレードによる攻撃も有効打にならなかった中でレイの不死性が分かったという心眼の言葉に一縷の希望が生まれる。

 

「そのカラクリはなんだい?」

 

【地面だ、ダメージを受ける、あるいは攻撃をする際に消費した霊力を地面から吸い上げている。恐らく使用している神魔眼魂は大地に関係する能力、あるいは逸話の持ち主だろう】

 

「月の魔力を吸収して回復してるんじゃないのか?それかえっと霊脈」

 

月の魔力が凄まじいと言う事は聞いているし、霊脈を使えば回復するのはノスフェラトゥとかとの戦いで学んでいるのでそれじゃないのかと問いかける。

 

「月の魔力は今魔力砲に回ってるからまずないよ、次に月の霊脈は微弱だ。回復量に対して全然足りてない、それより動けるようになったなら走るよッ!」

 

「はいッ!」

 

レイの手にしている杖に魔力が集まっているのを見て、作戦会議は一時中断し、左右に分かれて再びレイへ向かって突貫する。

 

(横島、さっきも言ったがサイキックソーサーで受け止めるのも駄目だ、全て回避しろ)

 

レイは狂神石をエネルギー源としている。防ぐのは勿論、掠めるだけでもアウトなのはさっきの攻防で分かった。

 

(狂神石を使ってるかどうかは私が見極める。とにかく今はお前とメドーサに注意を集めろ、今のレイならこの距離でも魔力砲の元まで狙撃できる。美神達が魔力砲を破壊するまではなんとしてもこの場に食い止める。反撃に出るのはそれからだ)

 

美神さん達が出発する前に何度も打ち合わせをしているからどう動くべきかはちゃんと理解している。理解しているのだが……。

 

ドクンッ!

 

ドクンッ!!

 

心眼には聞こえない狂神石の胎動が俺の中で強くなっている事を感じる。

 

(俺が暴走する前に何とかしてくださいよ、美神さん)

 

続け様にシェイドの力を使った事でくえすに言わせれば俺の状態は闇に傾いているらしい、そんな馬鹿なと、心眼がいるから大丈夫だと思っていたが……レイとの戦いの中で少しずつ、だが確実にその闇の鼓動が強くなっている事を嫌でも俺は感じていた。ナイトランターンの炎が少しずつ青く、そして黒くなっていく、それが心眼ですら気付いていない俺が自我を保てるタイムリミットだ。それを認識し、少しずつ、少しずつ俺の動きはメドーサさんと合わなくなっていたが、レイの圧倒的な強さの前に俺も、メドーサさんも、そして心眼もそのズレに気付く事が出来ないのだった……。

 

 

 

 

~依姫視点~

 

私を両断せんと迫る燃え盛る大剣が振り下ろされる瞬間に私と剣の間に割り込んだ紐――ファムトファイバーの組紐が一瞬剣を受け止めると信じ、地面を蹴って一気に後へと飛んだ私の目の前でファムトファイバーの組紐が燃やされて消滅する姿が映り、思わず顔を歪めながら姉さんの隣に着地する。

 

「ありがとう姉さん。助かった」

 

「でも一瞬だけだったわね……ファムトファイバーの組紐でも駄目みたいね」

 

八意様の使いである美神達から月神族の大半を倒した燃える大剣を持つ戦士の能力を伝えられたが、正直半信半疑に思っていたがこうして実際に対峙すると美神達の言葉が真実だったと分かった。

 

「神に特化した能力。触れられるだけじゃなくて攻撃範囲に入った瞬間に駄目みたい」

 

私の神卸しもレブナント・スルト魂の射程距離に入った瞬間に無効化された。

 

「範囲タイプの無効化能力……か」

 

「固有能力に頼りきりの私達には厄介な相手ねぇ」

 

月神族の強さの秘密は各自の特殊能力や固有能力にある。私の場合は神卸しでより高位の神魔の力を借りて戦闘能力を強化すること、そして姉さんの場合はワープ能力に本来ならば絶対に切れない、燃えない、ファムトファイバーの組紐、そして森を浄化する風を放つ扇子と多岐に渡るが……。

 

「多分周囲を消し飛ばしてもあいつには効果はないわね」

 

「間違いない」

 

神魔の固有能力を消滅させるレブナント・スルト魂には神魔として能力は役に立たない。私と姉さんがレブナント・スルト魂に勝つ方法はこの瞬間に1つになった。

 

「支援はしてあげる。難しいけどワープで回収もするわ」

 

「それで十分、行って来る」

 

固有能力に頼らずにレブナント・スルト魂との完全な実力勝負だ。刀の柄を握り締めて、レブナント・スルト魂へと突貫する。

 

【……】

 

無機質な殺気を放つレブナント・スルト魂の持つレーヴァティンと私の刀がぶつかり合う。

 

「くっ!力負けかッ!」

 

加速がついていた上に上段からの一撃だったが、レブナント・スルト魂は簡単に私の一撃を受け止めるだけではなく、受け止めた衝撃で私を弾き返して見せた。月面を抉りながら着地し、動きが止まったと同時に再び地面を蹴って今度は遠心力をつけた横薙ぎの一撃を放つ。

 

【?】

 

「くう……ここまで固いかッ!」

 

胴を捉えたがレブナント・スルト魂は数歩よろめいただけでダメージが通ったようには見えない。それ所か即座に放たれる炎の帯に完全に硬直していた私は反応出来ず、姉さんが辛うじて発動させてくれたワープでギリギリ射程距離から逃げ出すのがやっとだった。

 

「っつうッ!強いな……ッ」

 

僅かに服が焦げただけに留まったが直撃を受けていればその瞬間に消し飛んでいたと分かり思わず冷や汗が浮かぶが、それでも刀を握る手を緩めず、刀身に霊力と神通力を溜める。

 

「はぁッ!!」

 

裂帛の気合と共に放たれた飛ぶ斬撃とレブナント・スルト魂の放った炎の帯がぶつかり合い大爆発を起こすと同時に地面を蹴って再びレブナント・スルト魂へと突撃する。

 

「はああああッ!!」

 

跳躍し、裂帛の気合と共に刀を振り上げると姉さんが正確に刀の背に霊波砲を当て私の刀を加速させる。

 

【!?】

 

鋭い斬撃音と共にやっとレブナント・スルト魂にダメージが通ったと確信し、着地と同時に姉さんの能力で姉さんの隣までワープする。

 

「はぁはぁ……ど、どうだ?会心の手応えだったが……」

 

今出せる最大の一撃だったと確信していたが、レブナント・スルト魂はまだその両足で立っていた。

 

「傷が浅い……まさかッ!?」

 

「どうもそのまさかみたいねぇ……これは不味いわね」

 

手応えの割りにダメージが浅い事に気付き、慌てて刀を見ると熱で刀の刃が完全に潰れていた。

 

「霊破刀を……」

 

「待ちなさい、それを使えば力を使いきったら終わりよ。依姫、貴方の性じゃないのは分かってるけど霊波砲で戦うしかないわ」

 

刀に神通力を通して刀を強化すればまだ戦える。だがレブナント・スルト魂の能力が神通力の無力化である以上無力化を続けられれば依姫の命は削られていく、それに気付いた豊姫は白兵戦を止めて中・長距離の差し合いをすると指示を出す。

 

「これが閉ざされていた月の弊害かッ」

 

「そうねえ、地球の神魔と交流があればもう少し変わってたかもしれないけど、それを言ってもどうにもならないわね」

 

自分達が優れていると言って他の神魔と交流してこなかった月神族。個の能力は高くとも汎用性は応用力に乏しく、個の能力を封じる能力を持つレブナント・スルト魂を前に依姫と豊姫は揃って顔を歪めながらも、なんとか目の前に立ち塞がる終末の炎の化身を倒す手段を考え出すために効果が薄いと分かりながらも霊波砲による戦いを始めるのだった……。

 

 

~陰念視点~

 

振るわれる巨大な槌に向かってガンガンアックスを振るう、交通事故のような轟音が響き渡り、俺とレブナント・トール魂の身体が大きく弾かれる。

 

「馬鹿力がッ!」

 

パーフェクトノックアウト魂はパズル魂の自己強化能力も使えたので、それで極限まで自分を強化してもレブナント・トール魂の力の方が上だったことに思わず悪態をついた。

 

【!!】

 

「くそッ!」

 

翳された手から雷が幾重にも走ってくるのを見てパズルのピース状の霊波砲を飛ばすと同時に月面の岩の影に隠れる。

 

(特殊な能力は無いみたいだな)

 

圧倒的な身体能力を武器にしたゴリ押しタイプ。だが戦うと考えるとこれ以上厄介な相手はいないと断言出来るのがレブナント・トール魂だった。雷の霊波砲はトールの神格を利用した物だから固有能力ではなく、一種の余剰霊力を放出しているに過ぎないようだが……。

 

(威力と速度が尋常じゃなく速いな、今回は相殺できたが……)

 

次弾を相殺するのはかなり厳しい、そこまでの賢さがあるかは判らないが手を向けられたのを見て避けたとして、避けた所を狙い撃ちされたらそのダメージだけで変身解除まで追い込まれそうな威力がある。

 

【!!】

 

「ちいっ!面倒な事をしやがってッ!!」

 

隠れている俺に痺れを切らしたのか、無差別に放たれた降り注ぐ雷を見て、舌打ちと共にガンガンアックスを投げ飛ばし避雷針の変わりにした瞬間、俺の身体はくの字に折れていた。

 

「がっはッ!!」

 

岩に背中から叩きつけられてくぐもった悲鳴が発せられる。そのまま咳き込みそうになるがそれを必死に堪え正面に視線を向けると巨大な槌を振り切った姿勢のままのレブナント・トール魂の姿があった。

 

(流石は戦神って所かよ)

 

トールと言えば雷神であり、戦神だ。狂神石で自我を奪われていても、その戦闘センスは全くと言っていいほど失われていない。むしろ慢心や油断が無い分、自我があるトールよりもレブナント・トール魂が強い可能性まである。

 

【!!】

 

「くそがッ!」

 

徒手空拳の俺に向かって突進してくるなり槌を振るってくるレブナント・トール魂に舌打ちし、パズルのピース状のシールドを使って槌を受け止めるのではなく、角度を上手く使って受け流すように防ぐ。だが衝撃までは殺す事は出来なかったが、それでいい。殴られた衝撃を利用して態と飛ばされてガンガンアックスを回収し、それを再び構えながらどうやってレブナント・トール魂を打倒するか必死に考えを巡らせる。

 

(まずは真っ向からぶつかるのは駄目だ、押し潰される)

 

限界まで強化してもレブナント・トール魂の方が力が上なので、真っ向勝負は駄目だ。次に差し合いも駄目、レブナント・トール魂のほうが攻撃速度が早いので数発は相殺出来ても徐々に負けるのは目に見えている。しかも電撃の霊波砲は掠めれば感電するので受けるのも不可能だ。

 

(となれば……俺に出来る事は1つだな)

 

ガンガンアックスをゴーストドライバーの中に収納し、レブナント・トール魂から背を向けて走り出す。

 

【ッ!!】

 

逃げる俺を見て怒りの咆哮をあげてレブナント・トール魂が追って来る。その激しい足音を聞きながら俺は月面に罠を仕掛ける。

 

(時には逃げるが勝ちってなッ!)

 

卑怯と言われようが、まずは生き残る事が最優先。そして負ければ日本が、いやもっと言えば地球が危ない中で格好付けた戦いなんてやっている余裕はない、パズル魂の能力を用いて精製された弱体化させるメダルを走りながら月面へと落とす。その全てをレブナント・トール魂が踏むなんて都合のいい事は考えていないが、少しでも能力を弱体化させることが出来れば勝利の目はでてくる。それに弱体化させるだけを目的で俺も逃げているわけではない。

 

(他の所に行かせるわけにはいかないからな)

 

適度に攻撃しレブナント・トール魂をいらつかせ、俺にヘイトを集める事で横島達の所へ行かせず、なおかつ魔力砲から引き離しながらレブナント・トール魂を打倒するチャンスを待つ。

 

(どうせ魔力砲をぶっ壊してもこいつらは撤退しねぇだろうからな、戦力は回収させねぇッ!)

 

魔力砲を壊せば恐らくガープ達は撤退するだろうが、レイ達はこの場に残るだろう。そしてスルト、トールも回収されれば今よりも強くなって再び現れる可能性があるそうなれば次は間違いなく勝てない。強くとも今ならばまだ勝てる、そしてスルト、トール眼魂をこちらで回収出来れば反動はきつくともガープ達に対する切り札になりえる。

 

(まだ全然弱体化が効いてねえか、だが塵も積れば何とやらッ!)

 

トールの圧倒的な神通力には弱体化のペースも緩やかな物になるだろう、だが今回はそれでいいとさえ陰念は思っていた。余りにも早く弱体化されればレブナント・トール魂を追ってくるのを止めるかもしれない、そう考えれば緩やかな弱体化は陰念にとって望み通りの物であった。誰よりもクレバーに陰念が立ち回り、横島は自身を蝕む狂神石の鼓動に耐え、そして依姫達は己が圧倒的に不利と分かりつつも必死に奮闘する中、美神達は無事に魔力砲の元へと辿り着いたのだが……。

 

「このままいけばまず貴女達は何も目的を成し遂げる事無く、死に絶えるでしょう。どうです?助っ人はいりませんかね?」

 

無数の量産型レブナント、そして蘆屋の作り出した合成生物を前に立ち往生をしている美神達の前に現れたレクス・ローはにやにやと笑みを浮かべながらそう問いかけるのだった……。

 

 

 

リポート18 月面決戦 その7へ続く

 

 




今回はここまで、横島は暴走を恐れ、圧倒的な不利体面で戦う依姫・豊姫に、逃げながら戦う陰念と三者三様の戦いの中、美神達は魔力砲の元へ辿り着きましたが、そこでレクス・ローと再会と場面が色々と動いております。次回は美神達の視点をメインで書いて行こうと思いますので、次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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