GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL 作:混沌の魔法使い
リポート18 月面決戦 その7
~くえす視点~
魔力砲の警備が思った以上に強固で、どうやって魔力砲を破壊するかと考えている私達の前に何時の間にかレクス・ローはいた。
(結界は全て「同時」に消え去っていますわね)
私の多重結界は1回の攻撃で破られるほど柔な物ではない。だがそれが全て同時に破壊された……レクス・ローが複合能力者であることは分かっていたが、時間に干渉する能力者である可能性が強まった。
「私達の邪魔をしておいて、今度は協力する?その言葉を信じれると思う?」
「ふふふ、まあ当然ですね。ですがね、私の信条は神が守るならそれを壊す、神が壊すならそれを守る事なんですよ。あの砲は壊す物、ならそれを壊して守ろうとするのは当然ではないですかね?」
「どの口で「なるほど、それが貴方の能力の発動条件の1つということですわね?」ええ、その通りですよ」
怒鳴ろうとした美神の言葉を遮り、私がそう問いかける。はぐらかされると思っていたが、レクス・ローは驚くほどにあっさりと認めた。
(どういうこと?発動条件って)
(恐らくですが、レクス・ローの能力は極めて複雑な発動条件がありますわ)
あの無敵性を考えると並の条件ではないという事は分かっていたが、恐らくレクス・ローが能力を行使する条件は……。
「神魔と戦ってその神通力、あるいは魔力を奪い、自分で使うと言ったところでしょうか?」
「当らずとも遠からずとだけ言いましょうかね。さて無駄話をしているつもりはないので単刀直入に行きましょうか、私の助太刀がいるか、いらないか、お早めに決断していただきたい」
レクス・ローに助力を願うか否か、本心を言えばこんな奴の力を借りたくないというのが本音だ。だが量産型レブナントを突破するだけで恐らく私達は殆どの力を使う事になるだろう。そうなれば魔力砲を破壊する事は叶わなくなる。
「助力って言うけど、何をしてくれるのかしら?それを聞かせてもらわないと決断なんて出来ないわ」
「それもそうですね……では無傷で魔力砲の近くまで移動するか、それとも私も共に魔力砲の元へ向かうか、いつ消えるか分からないですが、仮面ライダーを護衛として貸し出すのもいいですよ。貴女達のお好きなほうでどうぞ」
レクス・ローの中では私達に助太刀するのは既に決まっていることなのだろう。いや、違うか、私達には選択肢が無い。
(美神さん……協力を要請するんですか?)
(するわ。レクス・ローと戦って勝てるとは思えないし、真っ向から突破するなんて不可能よ)
分散して突入すると言う手段もあるが、ガープ、アスモデウス、蘆屋がいるなかで戦力を分散するという選択は考えるまでも無く悪手だ。
(魔力砲の元までが1番堅実でしょうか?)
レクス・ローを同行させるのはあまりに危険、そしていつ消えるか分からない召喚された仮面ライダーを頼りにするのも危険だ。選択肢があるようで選択肢が無いわけですわね。
「魔力砲の元まで無傷で連れて行ってちょうだい」
「畏まりました。ではお手伝いしましょうかね、ああ、それともう月で会う事はないと思いますので、またいずれ、どこかでお会いしましょう」
指を鳴らす音が響いたと思った瞬間、私達は金属製の床で出来た通路に立っていた。
「転移ではありませんわね」
「超加速でもないです……何をすればこんな事が……」
転移でも超加速でもない、呼吸でもするかのように……ん?
「セーレがいないですわね」
「え?ほ、本当だわッ!?」
セーレの姿だけが私達の中に無く、変わりにセーレの居た場所に落ちていたのは……赤黒い液体が納められた注射器だった。
「どうも獅子中の虫はセーレだったようですわね、小竜姫、ブリュンヒルデ」
落ちていたのは狂神石の入ったアンプル……それがセーレがガープ達一派の1人であると言う何よりの証拠だった。
「安全にと付け加えたから裏切り者を排除してくれたと思うべきでしょうね。小竜姫、これが終わったら部隊の見直しを進めますわ」
セーレを信用していた小竜姫とブリュンヒルデですが、明確な裏切りの証拠が出たのだ。昔の功績などは関係無しに、もう1度前後関係をしっかりと調べるべきだろう。
「それも大事だけど今は魔力砲を何とかするのが先決よ。マリア、テレサ頼りにしてるわよ」
「任せてください、私とテレサなら魔力砲の無力化は可能です」
科学に関してはマリアとテレサに任せるとして、私や美神、そして小竜姫達はこの基地の破壊を目的にするべきでしょう。
「……急ぐぞ、横島達もいつまでも持たない」
「それに見つかると不味いだろうしな、速攻で決めようぜ」
業腹だがシズクと雪之丞の言い分が1番正しいだろう。ここで裏切り者のセーレの話をしているよりも魔力砲を無力化することが最優先、これからの事はそれから考えても十分に間に合う。まだガープ達に見つかる前に私達は魔力と神通力の流れを頼りに動力炉の元へ走り出すのだった……。
「やれやれ、危ないでしょう?」
「よく言うよ、僕を空間を利用して両断しようとしたくせに」
「敵を態々連れて行く必要はないでしょう?邪魔者は排除する。誰だってそうする、違いますか?」
レクス・ローの問いかけにセーレはその通りだと笑った。
「そのとおりだね、だから僕は持てる力を使って、お前を殺すよ」
数百体の量産型レブナントとそれを指揮するセーレを前にしてもレクス・ローは余裕の笑みを浮かべた。
「本当に良いのですか?」
「なんだい、命乞いかい?でも残念、そんなのは「ああ。違いますよ」……は?」
レクス・ローが拳を作った瞬間に量産型レブナントの半数が消し飛んだ。その信じられない光景にセーレが目を丸くする。
「たったそれだけの戦力で良いのか?と私は聞いたんですよ、セーレ。とは言え、もう遅いですがね」
【フォーティスッ!】
「変身」
【逆行! パラドクスタイム! スゴイッ!ネガイッ!オモイッ!!フォーティス、フォーティス、フォーティスッ!!】
「かかれッ!数はまだ僕達が上だ。押し潰せッ!!」
【【【!!!】】】
「雑魚はどれだけ集まろうと雑魚。なんの役にも立たないということを教えて差し上げよう」
仮面ライダーフォーティスへ変身したレクス・ローとセーレの戦い……戦いとも呼べぬ一方的な蹂躙が美神達の知らぬ所で始まるのだった……。
~ブリュンヒルデ視点~
短い気合と共に槍を振るい飛びかかって来た虎と蟷螂の合成獣の鎌を弾き、そのまま回転して合成獣の頭を刺し貫いて絶命させる。魔力砲の動力部を守っているであろう合成獣と戦いながらも私は別の事を考えていた。
(裏切った……いえ、最初からスパイだったんですよね)
セーレ様が裏切ったというのをどこかで信じたくない自分がいた。レクス・ローが仲間割れを誘発させる為にアンプルを落としたということも考え……。
「シャアアッ!!」
「ふっ!!」
深い思考の海の中にいても身体は動く、合成獣を倒しながら私の考えが希望的観測と私の冷静な部分が訴えかけてくるのだ。
(辻褄が合う部分もあります)
確かにセーレ様はお父様の為に良く働いてくれた。その能力もあってお父様だけではなく、魔界正規軍でも重宝されていた。本人の性格も温厚で好感の持てる相手だった。ネビロス様とベリアス様が一時的に逮捕された時も、セーレ様も同じ様に牢獄へ入って己の潔白を証明した……でもだ、狂神石を持っているのならば監視役の神魔を操るなんて事は簡単なことだろうし、転移能力を持つセーレ様の転移を封じる為に転移封じの術式が牢屋に刻まれていましたが……ガープとアスモデウスが裏にいたのならばその裏をかく事なんて容易いだろう……考えれば考えるほどにセーレ様、いやセーレは黒であり、冷静に考えれば簡単に分かる事だったのに、それにすら気付けなかった。
「ああ、最初から私達の作戦は全部筒抜けだったんですね」
ルーンを空中に刻み、放たれた炎に合成獣が飲み込まれ、燃え尽きるのを見ながら私はそう呟いた。最初から恐らくアスモデウスとガープが敗退してからすぐにセーレは投降した、その時から全ては始っていたのだろう……。
「相手が上だったと言えば簡単だけど……腑に落ちない部分が多いわね」
「ええ、仮にも最上級神魔ばかりが揃っている魔界正規軍が気付かないっと言うのは違和感がありますわよね」
私が後悔していると走りながら美神達が気になることがあると口々に呟いた。
「それは狂神石のせいなんじゃないの?」
「いえ、違います。狂神石はここ最近製造が始ったはず……アスラが解き放たれてからですよね?小竜姫様」
「はい、その通りです。ガープとアスモデウスの襲撃によってアスラを始めとしたデタント反対の神魔が解き放たれたのは最近の事、セーレが魔界正規軍に入った時にはアスラ達は幽閉されていたのは間違いありませんし……」
「私も恐らく同じ状態だったと思います」
ルーン使いとして最上位という自負はありますが全く気づけなかった。セーレが魔界正規軍を欺けたのには何かカラクリがあるのかもしれない。そのカラクリを破らない限り、ガープ達を打破する事は出来ないのでは?という考えが脳裏を過ぎる。
「光が見えてきましたよッ!次は広いフロアに出ると思いますッ!」
先行していた蛍の警告と共に狭い通路から大きく開けた広場へと私達は踏み込んだ。
「ンンン、ようこそようこそ、おやおやおや?横島はいないのですね。ンンン、これは甘く見られたものですな、横島無しで拙僧たちに勝てるとお思いですかな?」
てるとお思いですかな?」
【【【……】】】
広場に待ちうけていたのは怪人蘆屋道貞、そして外にもいた量産型のレブナントが3体――陰陽師である蘆屋とレブナントが3体、それだけでも下級神魔の部隊を壊滅させるだけの戦力だが、想定内だ。私と小竜姫の背後でごぽんっという音が響き、美神達の気配が消える。
「おいていかれてしまいましたな?」
「いえ、最初から計画通りですよ、蘆屋。これでも上級神魔、人間に遅れを取るわけには行きませんから」
「そういうわけです」
愛用の槍を虚空から取り出し、その切っ先を蘆屋達へと向けると芦屋はくぐもった声で笑い出した。
「甘く見られたものですな、拙僧を……「……甘く見たのは貴様だ、陰陽師」……ンンムッ!?」
シズクが顔だけ出し、飛ばされた水の刃が芦屋を両断し、シズクが再び姿を消した。目の前の蘆屋は着物の下は殆ど空洞で背骨と僅な肉で上半身と下半身が繋がっている状態だった。
「やっぱり、貴方も弱っていたようですね、蘆屋」
「ンンン、なるほどなるほど、ばれてしまえば仕方ありませんなッ!ええ、ええッ!!拙僧あのレクス・ローに挑んで破れ、この有様。しかし……たかただか上級神魔が2人に敗れる拙僧ではありませんよ」
「それはこっちのセリフです。負傷している相手が1人と意思のない人形が3体、そんなのに負けるわけには行かないんですよ」
「ええ、その通りです」
横島は私達よりも遥かに強い相手と戦っている。神魔としてそれは情けない、守るべき人間に守られているのだからみっともないにも程がある。だからこそここで負けるわけには行かないのだと槍を握り締め、私と小竜姫は同時に地面を蹴ってレブナントと蘆屋に向かって行くのだった……。
~蛍視点~
小竜姫様とブリュンヒルデさんに蘆屋を任せるというのは最初から決まっていた。陰陽師である蘆屋と霊能者の相性は最悪であり、そこに量産型レブナントが加われば私達では勝ち目はゼロになるからだ。蘆屋の能力はまだ完全に解明できていないので恐らく小竜姫様達でも勝ちの目は限りなくゼロに近い。小竜姫様達は時間稼ぎの為に自ら囮になってくれた、その間になんとしても魔力砲をシステムダウンさせなければならないのだが……。
「くっ……魔術だけじゃなくて科学も一流とか良い加減にしないよねッ!!」
「ああああッ!!ま、また変わったッ!!」
「くうっ……これは厳しいですね」
マリアさんとテレサ、そして私の3人がかりで魔力砲をハッキングしようとしているのだが、リアルタイムでプログラムが書き換えられてしまって全然作業が進まない。
(これ絶対ガープが手を出してるわねッ)
私達3人がかりでガープ1人を突破出来ない、技術不足もあるが、恐らく遠隔操作で私達を嘲笑いながらリアルタイムでプログラムを書き換えているのだ。それに加えてウィルスを送り込んで制御プログラムを消去しようとしてくるのでどうしても手が足りない。
「まだですのッ!?とっくに15分は過ぎてますわよッ!?」
「踏ん張るけど早くッ!!」
制御システムの防衛装置……眼魂とパーカーゴーストを科学で制御したビットの猛攻撃を美神さん達が必死で防いでくれているが、少しずつ流れ弾がこっちに飛んでくるようになってきた。
(急がないとッ)
激しい焦燥感に駆られながらプログラムの解析を進めながら、私は解析中に分かった事を叫ぶ。
「魔力砲を完全に止める事は出来ないですッ!」
遠隔操作で操作されている以上、こちらで止めてもガープの手によって再起動するのは目に見えていた。
「はぁ!?それならこっちを手伝いなさい蛍ッ!」
「それは無理ッ!完全に止める事は出来なくてもエネルギーのチャージは無効化できるからッ!!」
発射を止めるのは無理でも、その威力を少しでも軽減する事は出来る筈だ。
「地球に残ってる神魔でも威力を軽減出来るレベルまでエネルギー通路に……くっ!A-21からC-17まで通路切断ですッ!」
「1番進んでる所をッ!テレサの方はッ!?」
「D-42から入れるッ!」
「めちゃくちゃ遠回りじゃないッ!!
メインのAの一ケタ台まで辿りつかなければならないのに的確に妨害される……多分このままだと正規の方法じゃ発射まで間に合わない。
「シズクッ!!月面で龍に戻れるッ!?」
出来ればやりたくなかったけどこれしかない、邪龍としては最上位のシズクに龍の姿に戻れるかと叫ぶと、すぐにシズクが返事を返してくる。
「……戻れるが何をするつもりだッ?」
水と氷の槍を乱射しつつシズクが何をするつもりかと尋ねてくる、私はキーボードを殴りつけるように入力しながら声を上げる。
「魔力砲のベース生物の制御プログラムを破壊するッ!」
「おいッ!?それって大丈夫なのかッ!?」
「大丈夫な訳無いでしょうがッ!でもこれが今出来る最善なのよッ!!」
出来る事ならば絶対したくない事だがこのまま魔力砲として目覚められるよりは、獣として目覚められたほうが対処出来る可能性がある。
「暴れだした魔獣は力尽くか……蛍ちゃん、マリア、テレサッ!やっちゃってッ!!」
「「「はいッ!!」」」
美神さんもそれしかないと判断してくれたようで許可を出してくれたので、メインシステムをハッキングするのではなく、魔獣の脳に埋め込まれてるプログラムの破壊へとハッキングの進路を変える。この魔獣も桁違いに強いが、それでもガープがコントロールする魔道兵器として目覚めるよりも本能で戦う魔獣の方がまだ対処のしようがあると私は踏んだのだ。
(横島に負担を掛けさせないためだったのに、結局こうなるのねッ!?)
魔力砲を無力化させる為に侵入したのに、結局魔力砲を無力化出来なかったことに歯を噛み締めながら、私は杜撰なプロテクトが施されている制御装置のハッキングを行なう、いや簡単に突破できるようにされているおざなりのファイヤーウォールを突破するうちに、ガープの手の中で踊っていることに気付いた。
「蛍さん」
「蛍……」
「うん、分かってる、分かってるけどこれしかない」
マリアさん達も分かったようだが、それでも私達にはこれしか魔力砲を無力化する術が無く、私は1つまた1つとファイヤーウォールを突破し、今も戦っているであろう横島の無事を祈った……だが現実は非情だった。
「もう終わりだね」
「……う、うぐ……」
レイの変身したレブナントによってメドーサは打ちのめされ、横島は触手に首を絞められ吊るされ、絶体絶命のピンチまで追詰められているのだった……。
リポート18 月面決戦 その7へ続く
という訳で今回は魔力砲の元へ向かった美神達の話でした、まぁまたガープの計画通りに動く羽目になってしまったのですが、これもシナリオの都合ということで、次回は横島視点をメインで新しい変身も交えつつレイとの戦いを書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。