GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL 作:混沌の魔法使い
リポート18 月面決戦 その8
~依姫視点~
日本神話に神殺しが存在するようにスルトもまた神殺しの逸話を持つ強大な神だ。だが日本の神殺し……いや、日本だけではなく、世界中を見ても数多の神を殺し、そして世界を終焉に導いたという逸話を持つのは世界広しと言えどスルトくらいの物だ。つまり何が言いたいかと言うと神殺しと世界を滅ぼした逸話を持つスルト、その劣化版といえ量産型レブナント スルト魂と依姫、豊姫の相性は最低を通り越し、最悪であり、神卸しによって身体能力の向上も、特殊な能力も望めず完全に自分の力だけで戦わなければならない依姫は限界を迎えようとしていた。
「はぁ……はぁ……」
「さ、流石に……こ、これ以上は持たないわね」
能力を、使える武器を最大限に活用して戦ってきたが、神魔と言えど疲れは蓄積するし、神通力も霊力も無限ではない。そしてもっと言えば閉鎖空間である月で生きていた私達の戦いと言えば模擬戦くらいの物であり、数百年ぶりの実戦による疲労によって体力や神通力だけではなく集中力も限界を迎えようとしていた。
【……】
それに対し量産型レブナント スルト魂にダメージ以外によるダウンはありえない。狂神石による無尽蔵の魔力・霊力・神通力の供給、そして自我も存在しないので疲労も精神的消耗も存在しない、いやもっと言えばスルト魂も含めてクローンレイも、ファントムコールダーもガープにとっては使い捨てであり、敗れるのならば自爆して周囲を消し飛ばす為の爆弾も兼ねているので惜しむ訳ない。言うならば量産型レブナントは攻撃の為の尖兵であると敗れたとしても敵対者にも相応の損害を与える事を目的としていた。そんなガープにとっては何の価値も無い言える量産型レブナントに依姫達は敗れかけていたのだ。
「……握力が……ッ」
「こっちも後何回能力を使えるか……」
体力の限界を迎えている私は勿論、姉さんも力尽きる寸前……それに対して量産型レブナント スルト魂はいまだ健在、一矢報いるのも厳しい有様だ。
(来るッ!!)
ゆったりとした動作で量産型レブナント スルト魂が燃え盛る大剣を振りかぶるのを見て動かなければと分かっているのに、疲労によって思うように動けない。やられる……そう思った瞬間私と姉さんの前に氷の壁が作られ、剣から放たれた火炎弾を完全に無効化した。
「……助けてくれたのか……?」
「月神族は好きじゃないけど、永琳さんからあんた達は良い人だって聞いてるから、だから助けただけ」
「ありがとう」
月神族に強い憎しみを持ちながらも師匠から話を聞いてるからという理由で助けてくれた横島に素直に感謝の言葉を告げ、震える足に活を入れて立ち上がる。横島がここにいる……それは首都を滅ぼした不死身のレブナントを倒したという事だ。月神族の全勢力を持って戦っても勝てなかった相手を横島は1人で倒して見せたのだ。それは私と姉さんの神魔としての誇りを完膚なきまでに破壊した。
(……これが月神族の限界か)
閉鎖された世界で、自分達が優れていると思って生きていた月神族の限界、そしてそんな月神族に反発し、己を鍛えて来たとしても人間……いや、横島にも劣ると分かると開き直る事が出来た。
「……勝手な事を言ってるのは分かる。だがあれは私と姉さんに倒させて欲しい」
【勝てると思ってるのか?】
【馬鹿だ、馬鹿だと思ってたけど、あんたらはそこまで馬鹿なのかい?】
横島の使い魔の心眼とメドーサの私と姉さんを罵倒する声がする。確かにそのとおりだ、このまま戦った所で負けるのは必須、素直に横島に変わりに戦ってもらうのが得策というのも分かっている。
「ほんの少しだけ助力して欲しい。そして最後まで見届けてくれまいか?」
「……戦士の誇りとかいう奴か?」
横島も馬鹿かと思っているのだろう信じられないと言う様子で私に問いかけてくる。
「ああ、馬鹿だと分かってるがそれでもだ」
「……分かった。少しだけ力を貸すけど、俺はあんたらが負けるまで何もしない」
「すまない」
勝手な事を言っているし、信じられない頼みをしていると言うのも分かっているが横島はそれを聞きいれ、私と姉さんに手を翳すと霊力と魔力の光が私と姉さんを包み込み、ほんの少しだけ力と体力が戻った。
「姉さん」
「ええ。分かってるわよ」
残る全ての力をつぎ込んで、月面に皹が入るほどに強く踏み込んで……。
「おおおおおッ!!!」
咆哮と共に弾丸のような勢いで量産型レブナント スルト魂へと突撃する。
【!!】
「はぁッ!!!」
燃え盛る大剣と私の剣がぶつかり合い火花を散らす、さっきまで切り結ぶ事すら禄にできなかったのに今は切り結ぶ事が出来ている。それは間違いなく横島の力によるものだ。
(ああ、情けない、情けないな)
神魔なのに人間に力を借りなければ戦えない、自分達の国を滅ぼした相手ともまともに戦えない。情けなくて、見っともない。
【!?】
姉さんの放った霊波砲がスルトの腕を消し飛ばす、さっきまで弾かれていた物がスルトを弾き飛ばす。それは私と姉さんの力ではなく、横島の力だ。
【!!!】
突撃する私に向かってスルトが炎の帯を飛ばすが、それが完全に広がる前に月面から飛び出した氷柱が炎とぶつかり、完全に炎を無効化する。横目に写る横島が右手を突き出し、指を鳴らしている姿がある。
(善人なのだろうな、憎んでいても、恨んでいても……それでも助けてくれるのだな)
横島の目には恨みも憎しみも感じられる。それでも力を貸してくれている、憎しみも恨みも全てを飲み干して力を貸してくれている、その事に内心どれだけ苦しんで、悩んでいるだろうかと考えるだけでも胸が痛い。そしてそんな横島に自分勝手な頼みをした自分自身にも呆れてしまう。
【!?】
私の振るった刀で残されたスルトの右腕が肘から飛び、宙を舞った燃える大剣を手が焼けるのを覚悟で掴み、月面を蹴って両腕を失ったスルトの頭上へと飛び上がる。
「ああああああッ!!!」
残された霊力、神通力を全て出し尽くしながら斬り付け、スルトの身体が×の字に切裂かれる。そして切裂かれた×の字から炎が溢れ出し私を飲み込もうとした瞬間――水の檻がスルトを飲み込みスルトの自爆を押さえ込んだ。
(……こんな人間もいるのだな)
人間は醜く愚かと思っていたが、横島のような人間もいるのだなと思い、霊力と神通力を使い切った事で薄れ行く意識の中私の名を叫んで駆け寄ってくる姉さんの姿を見ながら私の意識は深い闇の中へと沈んでいくのだった……。
~陰念視点~
パーフェクトノックアウト魂の能力の1つ「パズル魂」の力を使ったトラップでレブナント・トール魂の弱体化を狙っての逃亡だったが、それが失敗だったと気付いた。確かに弱体化は通っている……通ってるのだが……。
(力ずくで解除してやがる……ッ!これは金時と同じかッ!?)
白竜寺に偶に来る英霊坂田金時。あの金太郎が大人になった姿の坂田金時は病に対する耐性、そして鍛えなくとも身体が最善の状態になるという能力を持っていたが、トールも似たような能力を有しているようだ。全てを同時に打ち消す事は出来ないようだが蓄積させて弱体化させるという俺の狙いは完全に瓦解してしまった。しかも……。
(変異してやがるッ!)
パーカーは消え、屈強な肉体が見え始めている。戦いの中で眼魂に何か異常が起き始め神霊トールが具現化しようとしているのではという最悪の予想が脳裏を過ぎる。
(もしそうだったら最悪だッ!くそ、やるしかねえってのかっ!)
覚悟を決めてレブナント・トール魂と真っ向勝負をするしかないと反転した瞬間魔力砲が俺の頭上を通りレブナント・トール魂に直撃した。
「は?」
「陰念!良かった無事だったのか!」
呆然としている俺の前に新しい眼魂を使った変身をしたであろう横島が降り立った。
(なんでバイクと合体してんだ?)
なぜかバイクと合体している事に突っ込みそうになるが、このタイミングで横島が来たのは俺にとって幸運だった。
「手伝え、俺だけじゃ削りきれねえ」
「マジで?スルトは今なんとか倒してきたけど……」
横島が俺が隠れていた岩から顔を出して、戻って来た。
「なんかやばくない?」
「やべえんだよ、見りゃ分か……やべえッ!!」
放電音が響き、無差別に雷が降り注いだ。直撃こそしなかったが、その余波で俺も横島も吹っ飛ばされ月面を転がる羽目になった。
「心眼!俺はあれが神霊トールが具現化しようとしてると思ってるんだがどうだ!?」
【その可能性は極めて高い、出来るだけ早くあれを倒す必要があるが……】
出来るだけ早く倒せと言うが、回復能力、尋常じゃ無い膂力、雷と近~遠からまるで隙が無いレブナント・トール魂を倒すのは生半可な事ではない。
【弱気になってるんじゃないよッ!陰念!】
どうするか考えていると横島からメドーサ様の声がした。
「なんでお前からメドーサ様の声がするんだ!?」
【緊急事態で身体を維持出来なかったから横島の身体に憑依してるんだよ!トールは確かに強いさ、真っ向から戦えばまずは勝てないだろうね。しかもスルトと違って本体が具現化しかけてる】
「メドーサさん、どう考えても詰みなんじゃ?」
【話は最後まで聞きな!馬鹿共ッ!完全に具現化されたら確かにやばいさ、だが今の中途半端に具現化してるなら、打つ手はある】
メドーサ様の声を聞くだけでにやりとした笑みを浮かべてるのがわかった。
【トールの死因を知ってるかい?】
「知りません!」
「馬鹿野郎!大声出すなッ!うおおおおッ!?」
横島が大声を出したので雷が降り注いできた。それを咄嗟に回避し、無言で横島のパーカーの襟首を掴む。
「なんか言う事は?」
「ごめんなさい」
「良し、それとメドーサ様。するとの死因は確かヨルムンガントとの戦いによる毒でしたよね?」
【正解だ。陰念、さて……私の言いたい事は分かるね?】
「勿論」
「???」
【横島、今度から神話の勉強も始めるぞ】
1人だけ頭の上に?が飛んでいる横島にメドーサ様と心眼が何をするのかを説明する。
【陰念、分かってるね?横島はコントロールをするのでやっとだ、トールにトドメを刺すのはあんただよ】
「うっす」
メドーサ様の言葉にそう返事を返し、俺はトールを倒す為の時間稼ぎの為にレブナント・トール魂の前に躍り出た。
【……お、おおおおッ!!】
ずっと無言だったのが雄叫びのような物を発し、手にしたハンマーを振りかざし襲ってくる。踏み込みの速度、破壊力が段違いに上がっているが、冷静に霊力をパズルのピース型に集め、レブナント・トール魂のハンマーを一瞬だけ防ぎ、ピースが砕けると同時に懐へと飛び込む。
「はぁッ!!」
気合を込めた渾身の一撃を叩き込むが、手に帰ってくるのは分厚いゴム板を殴りつけたような嫌な感覚。
【うらあッ!!】
効かないと言わんばかりにハンマーで横薙ぎの一撃を叩きこんでくるレブナント・トール魂の一撃をしゃがみ込んで回避し、立ち上がる勢いでアッパーを顎に叩き込む。
「だよなあ」
【かああああッ!!】
顎に直撃したが一瞬の脳震盪さえも起す事が出来ず、咆哮と共に無差別に放たれる電撃を気合を入れて耐える。
「ぐっ……うおらあッ!!」
電撃は確かに痛い、だが霊力などで発生するダメージなので気合を入れれば我慢出来る。そして我慢したままワン・ツーを放つ……勿論それは半分具現化しているトールが具現化しているレブナント・トール魂には文字通り蚊に刺された程度のダメージだが……。
「悪いな、俺の勝ちだ」
俺の勝利宣告と共にレブナント・トール魂が膝をつき、自身の足に視線を向ける。そこにはメドーサ様の使い魔、ビッグバイパーが横島の霊力、そして変身しているウィッチ魂による魔力、そして心眼とメドーサ様の竜気で蛇ではなく龍に似た姿に変化した個体が大口を開けて齧りついていた。
「吹っ飛べ」
俺がレブナント・トール魂に白兵戦を挑んだのはある細工をする為、デバフはレブナント・トール魂は効かないが、それでもしかけを施す事は出来る。握りこんだ左拳をレブナント・トール魂に叩きこむとレブナント・トール魂の姿はまるで滑るように後ろ、後ろへと流されていく……俺が設置したのはゲームで言う罠パネル、踏んだら無理矢理後退させる仕掛けを9つ配置したのだ。
「極めてやる」
【ダイカイガン!パーフェクトノックアーウトッ!!】
9歩下がった瞬間半分具現化していたトールの姿がぶれ、消滅していく……トールは確かに強力な神だが、その死は神話に刻まれている。ヨルムンガントを倒したが、ヨルムンガントによって猛毒を流し込まれていたトールは9歩下がった後に絶命した。ビックバイパーを強化する事でヨルムンガントを作り出し、9歩後退した事でトールの死が再現された。
「はっ!!」
【クリティカルオメガドライブッ!!】
気合を込めて跳躍し渾身の蹴りをレブナント・トール魂へ叩き込み、吹っ飛んだレブナント・トール魂は月面の岩に背中から追突すると同時に爆発し、その爆煙の回りをPerfectの文字が踊っていた。だが終わったと気を緩めている時間は俺には無かった。
【グギャアアアアッ!!】
「陰念!美神さん達に合流するぞ!」
「ちいっ!一息入れる時間も無いかッ!」
魔力砲としては無力化したが、そのベースとなった龍の本能までは無効化出来なかったのだろう。だが魔力砲としての効果を奪えれば十分御の字であり、俺と横島は美神達の助太刀をする為に休む間もなく咆哮を上げ暴れている機械龍の元へ向かうのだった……。
リポート18 月面決戦 その9へ続く
スルト・トールは決着、次回は魔力砲になっていた機械龍との戦いを書いて行こうと思います。機械龍との戦いのあとは少し仮面ライダーのねたを入れてみたりとやってみたいこともありますが、とりあえず心眼の人姿解禁の為にやってみよと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
PS
クリームヒルトさん狙い20連で項羽様
違うそうじゃない