GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL   作:混沌の魔法使い

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その9

リポート2 竜の魔女リターンズ その9

 

~心眼視点~

 

横島が寝かされている部屋の外から轟音が響き始めて30分近く経とうとしている。正直な所ジャンヌ・オルタに対しての美神達の勝率は無い訳ではない……むしろその勝率は横島がやってきた事を考えれば答えを得て戦いを有利に進めることも可能であろう。問題は……美神達がそこに気付くかどうかであるが……今私が優先すべき所は美神達の安否を気遣う事ではなく、眠り続ける横島をどうやって起すかにあった。

 

【横島!良い加減に起きろ!】

 

「むにゅー」

 

何がむにゅーだぁッ!紫とかと昼寝しすぎて移ってるんじゃないのか!と言うかこれだけドンパチしてるのに何で起きない!絶対これ東京中に響いているぞ。

 

【ええい、この音に気付いて茨木童子か金時が助けに来ないのか!?】

 

家で待機しているというか、勝手に出歩いてはいけないと言う約束を律儀(シズクが怖いのと、横島との約束)に守っている茨木童子は心眼の願いに反して動き出す気配は無かったりする。

 

~一方その頃の横島家~

 

「なぁ、金の字。これどうやって使うって言っておったか覚えておるか?」

 

【……捻る奴どうした?】

 

「千切れた」

 

【それは壊したって言うんだよ!?どうすんだよ、水神様に怒られるぜ】

 

平安クオリティの茨木童子と金時はこれくらいの大騒動は妖怪退治では当たり前の事なので、別段動じる事無く、むしろ茨木童子がねじ切った電子レンジのつまみのほうが大きな問題に感じていた。

 

「くっつかないか?」

 

【いや、無理だろよ】

 

駄目元でつまみを近づけるが当然くっつくわけが無く、ポロリと転がり落ちる。

 

「お、怒られるどうすればよいのだ!?」

 

【素直に謝るしかないんじゃないのか?俺ッチはしらねぇぞ】

 

「いいや、逃がさんぞ!お前も道づれだ!」

 

【なんでだよッ!?俺ッチ関係ないじゃねかッ!】

 

「うるさーいッ!お前も吾と一緒に叱られろ!」

 

【なんでだよ!?理不尽が過ぎるぞッ!】

 

電子レンジを壊した事に対してシズクに怒られるかもしれないということで茨木童子、金時の両名は電子レンジの前で口論を続けていた……。

 

【ぬう、どうしたものか。助けに来る可能性はあると思うが……距離か、それとも迷っているか……どっちだ。タマモかシロが神代琉璃に状況を伝えに行っていると信じるしかないか】

 

そんな事になっているとは夢にも思っていない心眼は茨木童子、もしくは金時が博物館までの道が判らない、もしくは電車とバスを乗り継ぐと言う距離の問題で到着に時間が掛かっているのかとその2つだと考えていた。となれば横島が攫われた段階で応援を呼びに行っているタマモとシロが戻るのを信じるしかないのかと考えていると、凄まじい振動が心眼を揺らした。

 

「みぎいーッ!!」

 

「ぷぎーぴぎーッ!!」

 

【ノブノーノブノブーッ!!】

 

扉の外から響くチビ達の声と扉を破壊しようとしているのか部屋の中に響く轟音を聞いて、心眼は僅かに希望を見出した。

 

【この声はチビ達か!頑張れ!】

 

心眼の声を聞いて、この中に横島がいると確信したチビ達の攻撃はどんどん激しくなり、徐々に扉に亀裂が入り、結界に亀裂が入る。だがその惨劇の中でも横島は眠り続けているのだった……。

 

 

 

 

 

~美神視点~

 

霊基再臨を行なったのかただでさえ強かったジャンヌ・オルタの圧力は更に強くなり、全身から迸る魔力は最早上級神魔に匹敵すると言っても良いだろう。人間では絶対に勝てない……それが頭の中では判っているのだけど、不思議なことに恐怖は殆ど感じていなかった。

 

(……うん、こんな風に思ったらいけないけど……ジャンヌ・オルタには感謝しないといけないかも)

 

今までは横島君と別行動をしていても横島君が合流してくれると頭のどこかで思っていた。自分達と横島君は攻撃力が違いすぎる……そう思って横島君が合流するまで耐えればいいと思っていた節があるのかもしれない。師匠としてやらなければならないこと、すべきことがある。政治的、社会的場面で横島君を守る事を考えていたけど……それはもしかしたら逃げだったのかもしれない。

 

「こっのおッ!!!」

 

【はっ!少しは良い面構えになってきたんじゃないのッ!】

 

こうして自分達でやらなければならない状況に追い込まれないと横島君に頼りきりと言う事に気付けなかったのはあまりにもみっともない。

 

「そうね!あなたのお蔭で目が覚めた気分よ!だからふん縛った後は弁解くらいはしてあげるわよ!」

 

【大きなお世話だってのッ!】

 

神通棍とジャンヌ・オルタの旗がぶつかる。だけど吹き飛ばされる訳でもなく、押し潰される訳でもない。完全な鍔迫り合いに持ち込むことが出来た……でもそこから動く事が出来ず、必死に霊力をコントロールする。

 

(ぐっぐぐう……や、やっぱりきついッ!!)

 

考えてみたら私を含めて全員が思い違いをしていたのかもしれない。確かに眼魂は強力な武器である。英霊や神魔の力を借りて戦えるのだ、普通に考えれば人間には過ぎた力と言える。そして変身することで横島君も実際に桁並外れた力を発揮していた。でもこれが根底からの間違いだったのかもしれない、横島君の膨大な潜在霊力、そして英霊や神魔の力が上乗せされれば1+1以上の力を発揮していると思うのは当然だ。いや事実霊力や神通力、魔力は倍以上に増幅されていた。しかし、しかしだ、それならば平安時代で横島君が暴走した時に私達は全滅している、だって考えてみてほしい1体1体が下級とは言え神魔に匹敵する12神将に、眼魂に狂神石だ。普通に考えてガープクラス、いやもっと言えばガープすらも越えているだけの神通力が横島君に集まっていたのだ。攻撃の余波を防御するだけでも魂が砕かれ、肉体は無事でも精神的な死に追い込まれていても不思議ではない。

 

「貰ったぁッ!」

 

【ッつうッ!?】

 

鍔迫り合いをしている私とジャンヌ・オルタの回りを炎が覆っていたが、それを貫通した霊体ボウガンの矢がジャンヌ・オルタの胸部を捉える。ダメージには程遠いが、それでも胸を攻撃されたことで本能的にジャンヌ・オルタが身体を庇った。

 

「でやああああッ!!!」

 

後退したジャンヌ・オルタを追って両手で握り締めた神通棍を全力で振るった。トラック同士……いや、重機同士がぶつかり合ったような轟音が広場に響き渡り、ジャンヌ・オルタが吹っ飛んだ。その姿を見て、私も、蛍ちゃんも、くえすもやっと確信を得ることが出来た。

 

「まさか現代の除霊形式と全く異なる技術を要求されるとは……やれやれ、戦い方も1から見直しですかね」

 

「そうね。でもこれがこれから必要となる技術なのかもしれないわ」

 

思い違い――それは単純に私達が長い時間を掛けて身に付けた現代式の除霊術にあった。良く考えれば、平安時代と言えど人間という面では私達と平安時代の人間にさほど差はない。強いて言えば霊力の濃い・薄い程度の差があるが……人間としての差は殆どないと言っても良い、では何故現代の霊能者よりも平安時代の霊能者が強いのか?それは簡単な理屈だった。

 

「私達も勘違いしてたって事ですよね。横島が強いんじゃない、横島が私達と異なる霊力の運用法をしていた……それだけだったんですね」

 

「絶対そうとは言えないけど……これはかなり近いと思うわ……」

 

私と横島君の違い……それは本当にシンプルな物だったのだ。私達の除霊の基本は戦う相手の霊力を常に上回るように自分の霊力を調整し、相手より強い力をぶつけて消滅させると言う方式だ。仮に自分の霊力が相手より劣っていたとしても、霊体ボウガンや神通棍を用いて霊力を増幅し、相手の霊力を上回ると言うものだ……例えるのならば自分の霊力を1、そして道具や魔法などを用いて1、その2つの1を足すと言う図式だ。これが現代式の除霊の基本であり、霊力を枯渇させず、霊体に負担を掛けない安全性を考慮した戦い方だ。これを私達は幼い頃から叩き込まれている、それが私達の勘違いであり、私達が横島君と違うと思わせる1つの理由になっていた。

 

「霊力=強さじゃないって事なんですね」

 

霊力、そして神通力、魔力は1種のステータスである事は間違いない。だが霊力=強さではないのだ。考えてみればそれは当たり前の事で、眼魂を使い英霊や神魔の力を借りたとしてもだ、眼魂に収まるレベルの霊力と神通力で最上級神魔のガープに届くか?と考えれば答えは10人が10人こう答えるだろう「不可能」だと。変身していても人間が神の霊力をそのまま受け入れられるわけがない、それは神卸しの巫女である琉璃が証明している。だが例えばだ……ずっとその霊力を使おうとするのではなく、一時的に例えば攻撃する時だけ、防御する時だけと限定的に絞ればそれは不可能ではない、更に言えば自分の霊力と眼魂の力を掛け合わせるだけで……いや、眼魂を使わなくとも霊力の放出経路を限定し、ホースの手元を押さえるが如く、放出する経路を細めれば……一時的に相手の霊力を上回れば、人間であっても神魔にその攻撃は届く、神魔であっても常に最大で力を維持している訳ではないのだ。確かに人間と比べれば、その霊力や神通力は圧倒的だろう。しかしそれだけに脅え、身体を硬直させれば受け流すことが出来ず押し潰されるだろう、力を集束させようなんて思わないだろう。霊力を安定して使う事を身体に染み付いている私達には思いもつかない戦い方だ、下手をすれば霊力の枯渇に繋がるし、霊体にも深刻なダメージを与えるだろう。

 

【恐れているだけでは何もつかめないし、何にも辿り着けないと判ったかしら?】

 

「ええ、ありがとう。貴女のお陰よ、これで手打ち……じゃないわねえ」

 

【当然よ、私は面白くないんですよ。ええ、とても面白くない、例えお前達が神魔や英霊と戦う術を手にしたとしても、横島をこちら側に向かわせたことを私は許さない。そしてもっと言えば……私以外に横島が笑いかけるのが気に食わない】

 

「「「は?」」」

 

ジャンヌ・オルタの口から零れたまさかの言葉に思わず間抜けな言葉が出た。

 

【ここからはただの八つ当たりです。ええ、そうですね、死者の場違いの八つ当たりです、でも死者でも想う事は自由でしょう?死者が生者に想いを寄せても良いでしょう?】

 

……待って、お願いだから待ってさっきよりも圧力が増しているんだけど、しかも横島君の側にいるのが気に食わないって言う嫉妬でここまで圧力増す?

 

【そうですね、ここで私が勝ったら横島は暫く私のものと言う事で良いでしょう】

 

「「なにが良いものかぁッ!!!」」

 

蛍ちゃんとくえすが爆発し、さっきまでシリアスだった雰囲気が木っ端微塵に砕け散るのを私は感じて深く溜め息を吐くのだった……。

 

 

 

 

 

~琉璃視点~

 

タマモとシロに横島君がジャンヌ・オルタに攫われたと聞いて、唐巣神父、ブラドー伯爵、三蔵法師様の3人に応援を頼んで博物館に来たんだけど、そこで繰り広げられている光景に私達は揃って絶句した。

 

「殺す!幽霊の分際で!」

 

【幽霊でも今こうして生きているんだから良いでしょう?なんですか?腹黒嫉妬魔女♪】

 

「……殺すッ!!!」

 

それは殺伐とした雰囲気ではなく、なんと言うかじゃれあいに近い状態に見えた。

 

「これはどういうことかな?」

 

「判らん……が、ふむ。痴話喧嘩か?」

 

身も蓋もない言い方をするのはやめてくれませんかね、ブラドー伯爵。でも実際にそう見えるのよね、美神さんも下がってきて、動けないでいる小竜姫様達の所にいるし……。本当にどういう状況なのか私達に判るように説明して欲しい……。

 

「これどういうことかしら?」

 

「いや知らないわよ。攫われる前は凄い殺伐としてたのよ?」

 

「今は喧嘩してるだけみたいに見えるでござるが……」

 

本当にそのとおりである。と言うかその内容も私としては受け入れられるものではない。

 

「あのさ、マジで言ってる?」

 

【ええ、本気も本気ですよ?英霊が人間に恋したら駄目ですか?】

 

「いや、その駄目じゃない……「そこは駄目って言え!ポンコツへタレッ!!」誰がヘたれかあッ!!!」

 

……これはあれだ。その……なんだ……うん。横島君の取り合いである……ただの痴話喧嘩です、本当にすみません。

 

「琉璃君。私は帰っても良いかな?」

 

「我もだ」

 

「あ、はい、すみませんでした」

 

唐巣神父とブラドー伯爵にすみませんでしたと頭を下げ、帰っても良いですよと口にしかけた時三蔵法師が待ったを掛けた。

 

【待って確かに痴話喧嘩だし、ある意味横島君が悪いって言えるんだけど、まだ帰るには早いと思うわ。ねぇ?力の抜ける会話はそのあたしも気になるけど、ジャンヌ・オルタと戦ってるのよ?2人が】

 

そう言われて私もハッとした。そうだ、霊力量、魔力量で言えば蛍ちゃん達の2倍、いや3倍はあるジャンヌ・オルタと真っ向から打ちあっている。それは異常な光景だ押し潰されて、当然戦うなんてあり得ない光景だ。それなのにまともに戦えている……その光景は私達には衝撃的な光景だった。

 

【別に少しくらい良いじゃないですか!別にとって食うわけじゃないんですし!】

 

「「信じられるかぁッ!」」

 

例え3人の会話がとてつもなく脱力する光景だったとしても、これは神魔、英霊と戦う事になることを考えると蛍ちゃんとくえすが何かを手にした可能性を示唆していた。

 

「琉璃君。少し思う事はあると思うんだが、もう少し落ち着けないか?」

 

「……これはその……はい」

 

横島君の取りあいならば私にだって参戦する権利は十分にあると思うんだけど、この炎の結界のせいで中に入れないし、近くに来てくれて状況説明をしてくれている美神さんの声も凄く聞こえにくい。

 

「少し待て、こちらで補助する」

 

ブラドー伯爵が魔法を発動させると美神さんの声がやっとしっかり聞こえるようになった。

 

「どういう状況ですか?」

 

「普通に横島君の取り合いって言えたら良いんだけど……ジャンヌ・オルタのお蔭で神魔と戦うヒントをつかめたって言う所。完全に逆行する形になるけどね」

 

「それはどういう……」

 

美神さんの言葉の真意を知りたいんだけど……多分今は駄目だ、横島君の取り合いの口論が激しくて、話の内容が全然頭の中に入ってこない。

 

「タマモ、何を不機嫌になってるでござるか」

 

「お子様にはわからない所よ」

 

「拙者子供でないでござるよ!?」

 

タマモとシロの口論もあるし、目の前の炎の結界の中での……。

 

【大体そっちが尻込みして何の関係の変化もないなら私が割り込んでも良いわよね!このヘタレ共ッ!】

 

「「うぐう……」」

 

止めてその一言は私にも効くわ……確かにこういざってなると尻込みしてたのは認めるわ。こう今の曖昧なこの感じって嫌いじゃないのが悪いって言うか、横島君が関係を進めようとすると逃げるのが悪いと思う。

 

「OK、判ったわ。もうここでくえすとジャンヌには脱落して貰いましょうか」

 

「それはこっちの台詞ですわ。2人脱落、私にとっては好都合です」

 

【大丈夫ですよ。私は優しいですからね、少し……そうですね。2ヶ月ほど横島を独占するだけでお返ししましょう】

 

3人の間の空気が歪み始めるのが良く判る。重く、邪気に満ちた3人の笑い声が木霊するのが心底恐ろしい。

 

「……横島君はもう少し態度をしっかりするべきだと思うんですがどうですかね?ブラドー伯爵」

 

「うん?見目麗しい少女達だ、取り合いなどせずに横島が全員娶ればそれでよいではないか、誰が本妻で妾かさえしっかりしていれば良いだろうに」

 

「あ、ああ。そうでしたね、中世の価値観ではそうですね」

 

ブラドー伯爵からすれば喧嘩の理由は意味不明なのだろう、中世と言えば妻と妾は何人もいて当然だし……事実神代家はそういう面がないわけではないから私も忌避感は殆どない。ただ自分が本妻で、妾がいてもいいと言う認識だけど……。

 

【うーん、あのさ。琉璃】

 

「は、はい?三蔵法師様なんですか?」

 

三蔵法師さまに言われて振り返った時だった。凄まじい轟音と……。

 

「へぶろおおおおおおーーーッ!?」

 

【「「あ……」」】

 

「み、みむううううーー!?」

 

「ぴ、ぴぎいいいーーッ!?」

 

【のばああ!?】

 

「「「横島くーんッ!?」」」

 

横島君の悲鳴とチビ達の悲鳴、そしてやっちまったと言う顔をしている蛍ちゃん達。私は油の切れたブリキ人形のような動きで三蔵法師様に視線を向けた。

 

【ぎゃてえ……博物館から横島君出てきたって言おうと思ったんだけど……遅かったわね】

 

「すいません、遅すぎです」

 

すいません、三蔵法師様。そういう大事な事はもっと早く言ってください。消えた炎の結界と責任の擦り付け合いをしている蛍ちゃん達を見ながら、私は喧嘩している暇があったら手当てをしなさーいと叫ぶのだった……。

 

 

リポート2 竜の魔女リターンズ その10へ続く

 

 




今回はここで話のク切れが良いので終わりにしたいと思います。次回はこの光景を見て爆笑をしているルイ様とこの事件の後始末を書いて行こうと思います。これももっとギャグの要素を入れて行きたいと思っております。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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