GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL 作:混沌の魔法使い
リポート18 月面決戦 その9
~美神視点~
魔力砲の照準システムの無力化が最大の目的だったがマリア、テレサ、蛍ちゃんの3人がかりでもガープのプロテクトは突破出来なかった。リスクを承知で魔力砲の元になっている龍の制御装置を破壊し、魔力砲としての性能を失わせたが……。
【ギャオオオオオンッ!!!】
小山のような胴体、丸太のような足、そして機械で出来た2本の首と本体であるであろう半分機械化された首を持つ龍の咆哮に思わず足が止まりかけるが、それを根性で押さえ込んで走り出す。
『……時間は稼いでやる。早く外に出ろ』
本来の姿である水で出来た巨大な龍の姿になったシズクの言葉に背中を押され、来た道を全力で引き返す。
「くえす、勝算はなんかある!?」
「龍殺しは流石にやったことが無いですから何とも、ただの龍ならなんとでもする自信はありますが……」
「あのドラゴンの身体を覆ってる鎧が厄介ですね!」
マリアの言う通りだ。伝説や神話に名を連ねるようなドラゴンではなく、魔力砲のベースにされたドラゴンは魔界に生息するドラゴンだ。確かに強力なのは間違いないが、本来ならば勝てない相手ではない。
「蛍ちゃん!あの鎧の特性は掴めてる!?」
「魔力と神通力と霊力に凄く高い耐性があります!軽減率は約60%ですッ!」
「でしょうねッ!!」
ガープが兵器とする為に選んだドラゴンなのだ。生半可では破壊されないように対策しているのは当然だが……余りにもガチ過ぎる。攻撃の半分以上の威力が軽減されるのは正直洒落にならない。
「小竜姫達がレブナントと芦屋を迎撃してくれてれば良いんですけどね」
「小竜姫様とブリュンヒルデなら大丈夫よ」
とは言え、最悪の場合も考えられるので雪之丞に視線を向ける。
「悪いけど最悪の場合は氷の魔装術を使って貰うわよ」
「分かってるぜ、生き埋めで死ぬなんて俺もごめんだからな」
普通の霊や英霊ならば戦う自信はあるが、やはり仮面ライダーと戦うには力不足を実感する。戦う術は少しずつ習得できているが……まだ足りないと言うのを実感させられる。
(どうすればもっと強くなれるのかしら)
出来る限りの事はしてきたが、私達が戦う力を得るには時間が掛かりすぎる。力が必要なのは今なのに、戦えるだけの力を得るにはどう見積もっても年単位の時間が掛かると言う現実に思わず歯を噛み締める。
「美神さん! 龍の雄叫びが聞こえてますが何があったんですか!?」
コロシアムには芦屋の姿は無く、電源が切れた人形のように膝をついているレブナントの姿とボロボロの小竜姫様とブリュンヒルデの姿があった。
「魔力砲は無力化したけど、素体が暴れだしたの!今はシズクが抑えてくれるから早く外に出るわよッ!」
機能停止しているレブナントに念の為に結界札を投げて貼り付けながら叫ぶと、小竜姫様とブリュンヒルデも出口に向かって走り出す。
「最悪になってしまった訳ですね?」
「魔力砲の方はリアルタイムでガープがガードしてたからどうしても突破出来なかったんです。ヒャクメがいれば何とかなったと思うんですけど……」
「蛍さん、今回はベストな対応だったと思いますよ。魔力砲を無力化して地球は守れた、それで最低限の勝利条件は達成出来ましたよ。そう気を落とさないで」
小竜姫様の言う通りだ。私やくえすでは魔力砲の発射は阻止できなかった。それよりも力づくで制御装置を破壊して暴発、あるいはドラゴンをより凶暴化させていた可能性があるのだ。魔力砲を無力化しただけで御の字だ。
「まぁでかい化けもんが残っちまったが、こんだけ頭数がいればなんとかなるだろうよ。なぁ?」
「ええ、大丈夫ですよ、龍は確かに強いですが……戦う術はあります」
「私もドラゴンの討伐は慣れているので大丈夫ですよ。とりあえず今は生き埋めにならないように外にでましょう」
ブリュンヒルデの言葉に頷き、走る速度を上げてガープ達の基地から外に出た直後に基地の天井が崩壊し機械化されたドラゴンと龍へと変異したシズクが姿を見せる。
「……ちょっと押されてますわね」
龍種としてはシズクが上でも、機械化されてる分不利になってるようだ。
「軽減されても良いからくえすは魔法をぶっ放して、マリア!予備の銃を私と蛍ちゃんに貸してちょうだい!」
ドクターカオスの発明であろうペンダントから銃を取り出して投げ渡してくるマリアから銃を受け取り、セーフティを解除する。
「爆弾もあるよ!」
「それは私とブリュンヒルデがもらいます。まずは相手の装甲を破壊しましょう」
「それがベストですわね。今のままでは私達は余りにも無力ですから……とは言え、それも簡単には行きそうに無いですけど」
2本の首でシズクと戦いながら、もう1本の首が私達へ向けられ、無機質でありながら怒りに満ちた瞳が私達を睨みつける。
「横島君や陰念達と比べれば楽な相手よ、さぁて、ドラゴン退治と行きましょうかッ!!」
確かに機械化された龍はレイと戦っている横島君や、トールと戦っている陰念と比べれば楽な相手だが、それでも十分に強いのは肌で分かっている。だがこんな所でくじけている場合ではないと己を鼓舞するように叫び、私は先手必勝と言わんばかりにロケットランチャーの引き金を引き、放たれたロケット弾がドラゴンの頭部に炸裂し、苦悶の叫びを上げるドラゴンの咆哮が私たちの戦いの幕を切って落とすのだった……。
~雪之丞視点~
くえすが作ってくれた魔力の板を踏み台にして思いっきり飛ぶ、無重力で上に向かって飛ぶなんて正直自殺行為だが、俺には勝算があった。
「これでもくらいやがれッ!!」
ドラゴンの頭上で氷の魔装術を発動。足を鋭利な氷の槍にし、両手から霊波砲を撃って加速し、そのままドラゴンの頭へ突撃する。
【グギャアアアアアッ!!!?】
「しゃおらあッ!どー……うおッ!?」
ドラゴンは痛みで暴れているが、身体についている機械はやはり別なのか霊波砲やレーザーを撃ち込んでくるので氷で盾を作りながらドラゴンの上から飛び降りる。
「雪之丞!今のまだ行ける!?」
「後2~3発なら行けるぜ!それ以上は俺の足が砕けるッ!」
魔装術の上に氷の魔装術を上乗せして防御力を上げていてもジンジンと足が痺れている。ドラゴンの身体を覆ってる装甲が想像以上に固い……。
(後3発って言ったが、多分次で右足は死ぬな)
右足の感覚がまるでない、かなりのダメージを受けているのは分かっているので右足に体重を掛けないようにしつつも、普通に立ってる振りをしていると美神に睨まれた。
「メドーサと三蔵法師に怒られるから無理なら無理って正直に言いなさい」
その言葉と共に投げ渡された霊薬を反射的に掴んだ。
「見れば分かりますからね?変な意地を張らないで素直に自分の状態は言いなさい」
「そういうことね、一応は頼りにしてるから、一応は」
くえすと蛍にまで釘を刺され、俺はバレバレだったのかと溜息を吐き、霊薬を一気に飲み干した。完全に回復したとは言わないが、氷の魔装術はまだ維持できる。
「ブリュンヒルデさんよ!ちょいと俺に力を貸してくれ!」
「何か作戦でもあるのですか?」
「あるぜ。とっておきのがな、本当はシズクの力を借りれれば良いんだが」
そう言いながらドラゴンに視線を向けると機械化された胴体に水で出来た胴体が巻きつき、装甲をメキメキとへこませながらブレスを至近距離でぶっ放しているシズクの姿がある。
「横島ならまだしも俺に力を貸してくれるとは思えん」
毒舌の癖に横島には駄々甘なシズクが俺に力を貸してくれるとは到底思えない。馬鹿かって一蹴されて終わりとしか思えない。
「シズクということは水ですか?」
「ああ、水を作ってくれよ。それを俺が凍らせてぶつける……いや俺だけじゃなくてもいい、とにかくあの装甲をぶっ潰すのが最初だろ?」
あの装甲がある限り美神達は戦力とは数えにくい、一応ドクターカオスの作った武器で攻撃には参加してくれているがダメージが通っているようには思えない。やはりあの装甲を破壊してからが本番なのだろうが……。
「あんたの弟呼べねぇ?」
「……呼べたら呼んでますよ」
「だな、あーあ……本当ガープは性格が悪いぜ」
仮に装甲を破壊し、霊力などが通るようになるとしよう。そうなっても俺達が有利になる事は絶対に無いと断言出来る。ガープがこんな目に見えた弱点をそのままにしている訳が無い。つまり装甲を破壊し、攻撃が通るようになってからがガープの策の始まりと言える。だが装甲を破壊しなければ勝ち目はない、つまり相手が強くなると分かっていて装甲を破壊しなければならないのだ。
「小竜姫さんよ!装甲ぶっ壊すけど良いか!!」
「構いません!どの道今のままではジリ貧ですから!お願いします!ブリュンヒルデ、雪之丞さんッ!!」
小竜姫の許可を得て、俺とブリュンヒルデはドラゴンの全身を覆っている装甲を破壊する為に動き出した……それがもっとも行なってはいけない悪手だと知らずに……。
~蛍視点~
魔力砲の素体になっていたのは魔界に生息しているドラゴンだ。だが下から数えたほうが早いような、そんな弱いドラゴンをガープは素体として選んだ。その理由を私は巨体であり、生命力が桁外れて高い事を理由にしていると思っていた。高位のドラゴンになれば知性もあり、どう考えても改造した所で反逆される事は目に見えている。高位のドラゴンになればなるほどそれは顕著になるから低位のドラゴンを使用したと考えていたが……それが間違いであったと私は、いや私だけではない美神さん達も気付いた筈だ。
「美神さん!このままだと!」
「でも続けるしかないわッ!やられたッ!こんなのは想定してないわよッ!シズクだけじゃ抑えきれないッ!」
シズクが善戦してくれているが水の無い月面ではその能力を十分に発揮出来ていない。装甲が破壊され、徐々に力と野性を取り戻し始めているドラゴンに押されている。
【……十分な水さえあれば、こんな雑魚……ッ!】
龍種として最上位のシズクが屈辱だと言わんばかりに吐き捨てる。
「くえす、なんとかならない!?」
「出来るならしてますわよ!シズクに供給できるだけの水を人間が用意できると思ってるんですの!?」
全く持ってその通りである、仮に水をくえすが作ったとして間違いなくシズクに吸われてくえすの魔力は枯渇するだろうし、下手をすれば生命力さえも吸われてくえす自身が死にかねない。
「恐らくガープがそれさえも想定しています!」
「でしょうねッ!くうっ!何とかしないといけないのにッ!」
「本当にいつもいつも、厄介な事ばかりしてくれるわねッ!」
ドラゴンを素体とし魔力砲を作り地球を攻撃する、失敗したらドラゴンを使って私達を殺す……2段構えの作戦だと私達は全員考えていた。だがもう1枚、隠されていたのだ……ガープの本来の目的の為の隠し札が……。
「あのドラゴンの身体に刻まれてる魔法陣を削りとりゃどうだ!?」
「駄目です!そんな事をすれば英霊召喚に必要な魔力が全部逆流します!」
ドラゴンの装甲の下……そこには魔法陣が刻まれていた。恐ろしく精密な、そしてアルテミスを召喚したのと同等の規模の魔法陣が……それが英霊召喚の魔法陣であることはすぐに分かった。だからこそ私達は焦っていたのだ。
「ちなみに逆流したらどうなりますか!?」
「余波だけで月と地球が吹っ飛びますッ!!もう発動し始めてますからッ!」
魔力砲としての機能が無力化された段階で既に召喚は始っていたのだ。ただそれに気付けなかっただけ……。
「英霊召喚の余剰エネルギーをバリアにするなんて誰も想像しないですわよ!」
「それねッ!」
霊力も魔力も、神通力も軽減する装甲と思っていたが、実際は違うのだ。ドラゴンの身体に刻まれた魔法陣が装甲を通じてバリアを精製し、それを私達は装甲によって軽減されていると勘違いしていたのだ。
(あんな精密なダミー作る!?ふつーッ!?)
私とマリアさんとテレサが誤解したのも当然で、ガープは態々誤解させる為だけにプログラムを作っていて、私達はそれに引っかかってしまったのだ。
「龍の命を使って召喚される英霊……それは1人しかいないッ!そしてそれは私達竜神の天敵ですッ!」
膨大な神通力と魔力が溢れ出し、吹き飛ばされるのを必死に耐えている中で小竜姫様がそう叫んだ。小竜姫様、メドーサ、そしてシズクの天敵たる英霊、私は思わずブリュンヒルデさんに視線を向けた。
「ブリュンヒルデの弟が召喚されるとかいう落ちはないかしら!?」
「残念ですがありません、伝説に語られる邪龍ファブニールは2頭いました。ジークの持つバルムンクの本来の所有者ジークフリート、そしてもう1人が伝説に語られる龍殺し」
【ギャオオオンッ!!!】
ドラゴンの3つの首が同時に断末魔の悲鳴をあげ生き絶える。ドラゴンの命、そして体内に埋め込まれていた狂神石がトリガーとなり英霊召喚がなされる。
【……】
黒い甲冑とマントを身に纏った仮面の英霊は光り輝く剣を無言のまま振りかぶると跳躍し、一刀でシズクを切り倒した。
「し、シズク!?」
「……うるさい、聞こえてる」
シズクの声が背後から聞こえて慌てて振り返るとそこには両腕を失い、額から脂汗を流しているシズクの姿があった。
「だ、だいじょうぶ!?」
「……大丈夫と言いたいが……駄目だ……な、美神、悪いが……少し離脱する……」
そう言うとシズクの身体は弾け、水となって姿を消した。
「し、死んだ?」
「シズクは死んでないですよテレサ。シズクの事が心配なのは分かりますが、まずは私達です」
動揺してるテレサを一喝するマリアさんだが、当然ながらその顔色は悪い。物理において最強の耐性を持つシズクが一撃で倒された……それは召喚された英霊がなんなのかを雄弁に物語っていた。
「北欧神話最強の戦士……シグルド」
ジークフリートと同一視されることもある伝説の龍殺し、善に属する筈の英霊が狂わされ、言葉を失い真紅の瞳で私達を睨みながら獣のような咆哮を上げるのだった……。
リポート18 月面決戦 その10へ続く
という訳で月面のラストボスが竜では無く、シグルドでしたー。龍を倒すのもありかと思ったんですが、それでは物足りないと思いシグルドを出して見ました。なおブリュンヒルデさんとは夫婦ではないのであしからず、シグルド登場、横島と陰念が応援に来るまで美神達は耐えれるのか? 次回の更新もどうかお楽しみに!