GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL   作:混沌の魔法使い

122 / 157
リポート19 決着/冥界で 
その1


 

リポート19 決着/冥界で その1

 

~ドクターカオス視点~

 

放たれる漆黒の波動に向かって最後の魔法薬の入ったビーカーを投げ付けて相殺する。大天使サリエルは数多ある魔眼の開祖であり、その魔眼の効果から逃れるのに出し惜しみなど出来る訳が無かった。

 

「今ので最後じゃッ!次は防げんぞッ!」

 

天使と1戦交えるのは想定しておったが、流石に大天使サリエルは想定外だった。予想よりも早く媒介を使い切ってしまった。

 

「相手も動きが鈍ってる!十分だッ!」

 

「機械で制御されているから力加減が出来ていない、雑魚ならまだしも俺達には通用しないッ!!」

 

不動と須田の2人がサリエルへ飛び掛るが甲高い音と共に2人は弾かれ、ホテルの床を削りながら着地する。

 

「ちい!おい!爺さんッ!さっきより固いぞっ!」

 

「喚くなッ!魔眼に使ってた力を守りにまわしてきただけだッ!」

 

須田の分析力はやはり恐ろしいほどに高い、今のぶつかり合いでサリエルの障壁の質が変わったのを一瞬で見抜きおった。

 

「どれほど力を残しておるか分からんのが怖いの……ッ」

 

「ええ、僕もそう思います。ヘタに白兵戦を仕掛けて反撃の魔眼なんて冗談じゃない」

 

全く持って西条の言う通りである、障壁が強くなったら魔眼を使う余力が無いと思わせておいて、近づいた瞬間に魔眼で即死なんて事も考えられる。

 

【なんとかしたいところだけどネ、さてさて遠距離で削れるかナ?】

 

「仕方あるまいよ、モリアーティ。我とカオスとお前で何とかしてみるとしよう」

 

「確かにそれしかないの」

 

【はっはッ!そうだネッ!】

 

魔術師としては最高峰のブラドー、錬金術師のワシ、そして英霊モリアーティ……見事なまでに爺ばかりだが、少しばかり老骨に鞭を打つとしよう。

 

「〆は任せるぞ、モリアーティ」

 

【OK、一発で決めてみせよウ。マイボーイがいないのは残念だよ、良いところを見せたかったのだがネ】

 

「それだけ無駄口を叩けるなら問題ないな、しくじるなよ」

 

軽口を叩きあっているが実際は余裕なんて殆ど無い。マリア7世を救出し脱出するまでに戦った天使の羽を埋め込まれた狂信者共に、サリエルという規格外の天使との戦いで霊力も魔力も限界手前まで消耗しているし、老いた身体でここまで派手に立ち回りをしてきたのであちこちガタも来ている。

 

「カオス様……皆様も頑張ってッ」

 

マリア7世の応援の声がする。助けに来て、限界ですなんて情けない真似が出来るわけも無い。

 

「もうひと踏ん張りいくとするか」

 

「若い者が頑張ってくれてるんだ。我らも良い所の1つや2つ見せるとするかッ」

 

サリエルへの有効打がない西条達はワシらがサリエルの障壁を破壊してくれると信じ、何も言わずに陽動に回ってくれている。

 

「オラオラ!こっちだぜッ!!」

 

「こっちだ、こっち!!」

 

「物陰に隠れろッ!!」

 

西条と不動が銃を撃ちながら走り回り、須田が小型の霊波爆弾を投げ付ける。

 

【ォ、オオオオオッ!?】

 

手足をもがれ、機械に埋め込まれ、己の意志を奪われたサリエルが苦悶の声を上げる。それは痛みによるものか、それとも早く終わらせてくれという嘆きの声か……ただ1つ言えるのはサリエルが嘆き、苦しんでいるということだけは確かな事であるという事だ。

 

(同族の天使であっても、自分達に逆らうならば……か、哀れ)

 

神の前に立つ事を許された12体の御前天使、医療に精通し、ラファエルの右腕とまで呼ばれた天使が達磨にされ機械に組み込まれている。元より天使の危険性は知っていたが、それでもこれは余りにもむごい。

 

「せめて安らかに眠れッ!」

 

「さらばだ霊魂を司りし死の大天使よッ!」

 

ワシとブラドーの魔術が同時に放たれ、サリエルは当然障壁でそれを防いだ。

 

「防いだか、防いではならぬことすら分からぬか」

 

ワシとブラドーの魔術は方向性が異なる。それは命中した箇所からまるで反発する磁石のようにサリエルの障壁を……いや、違うか。サリエルの目には安堵の色があった、自ら死す為に避ける事も出来たのにワシらの攻撃を受け入れたのだ。

 

【おやすみ、サリエル。どうか良い夢ヲ】

 

1発の銃声の後ガラスが砕けるような音をホテルのロビーに響かせながらサリエルの障壁は砕け散り、西条と不動の振るった霊波刀によってサリエルは×の字に切裂かれ、砕け散るように消滅した。

 

「終わったか。後はマリアを連れて脱出するだけだ」

 

「出来ればオカルトGメンでもう少し調査したい所ですが……」

 

【それは今は止めた方が良いネ。四大天使がサリエルの状態を監視してない訳が無イ、まとめて消し飛ばされる前にトンズラしようカ】

 

「攫われた名家の娘は我が回収する。先に行けッ!」

 

ブラドーの言葉に頷きマリアを連れてホテルを飛び出したワシらの前に琉璃が運転する車が止まる。

 

「助かるぜ、会長!」

 

「ごめん、続けて緊急事態!横島君が……横島君がセーレに地球に向かって飛ばされて、生死不明なのよッ」」

 

「な、ななな、なんだとおッ!?」

 

マリア7世の救出は済んだ。だが続け様に横島の生死が不明だと涙声で叫ぶ琉璃にワシらは思わず絶叫してしまうのだった……。

 

 

 

 

~横島視点~

 

ただひたすらに熱くて痛い、それしか考える事が出来なかった。遠ざかっていく月と、俺を地球へ向かって蹴り飛ばし笑うセーレ……手を無意識に伸ばしたが当然届く訳なんか無く……瞬きほどの一瞬だったのか、それとももっと長かったのか……それすらも定かではない。

 

【オヤスミー】

 

ただ変身が解除された事を示すオヤスミーのコールだけはやけにはっきりと聞こえたのを覚えている。

 

【横島!おい横島ッ!!目を覚ませッ!死ぬぞッ!!】

 

「う……あ……し……が……ん……?」

 

【目を覚ましたかッ!良かった】

 

凄まじい風切音の中でも心眼の声だけはやけにはっきりと聞こえた。だけど手足の感覚はなくて、全身に走る痛みで今にもまた意識を失ってしまいそうだった。

 

(俺……死ぬのか……)

 

ウィッチ魂に使っていたバイクが落ちていくのが見える。手足は動かなくて、声も出ない、力も全部出し切ってしまい陰陽術を使う余力も無い……宇宙から落下していることを考えればどう考えても死ぬ。

 

【大丈夫だ。お前は死なないよ】

 

「し……ん……?」

 

【良くここまで私はお前と共にあれたと思う。十分……ではないが……それでも……ここまで横島、お前とあれた日々はとても輝かしい物であったよ】

 

バンダナに浮かんだ目が穏やかな光を宿して俺を見つめ、バンダナ……いや、心眼が遠ざかっていく……。

 

「しん……がんッ」

 

痛む身体に活を入れて心眼へ手を伸ばすが、心眼は俺の指をすり抜けて遠くへと行ってしまう。

 

【私はきっと何度だって同じ選択をする。私は……お前に生きていて欲しい、悲しまないで欲しい、笑っていて欲しい……】

 

「ま……て……」

 

まるで遺言のような心眼の言葉は聞きたくなかった、遠くに行って欲しく無かった。歯を食いしばり心眼へ手を伸ばすが、どれだけ手を伸ばしても心眼に触れる事が出来なかった。

 

【2度目、これで2度目だ。私はお前を生かす為に死ぬ、いや死ぬなんて言えない。ただの気の塊、生きてる等と言うにはおこがましい物だ。だがそれでもお前と共に生きた日々は本当に……楽しかったよ」

 

「心……眼ッ」

 

仰向けで落ちていた姿勢を歯を食いしばってうつ伏せに変わり、必死に心眼へ手を伸ばす。

 

【私の役目はこれで終わり、本当なら最後まで側にいてやりたかったが……ごめんな】

 

「心眼ッ!!」

 

最後の力を振り絞って心眼にやっと手が届いたが……俺の手に握られていたのは焼け焦げたボロボロのバンダナの一部だけだった……。

 

「心眼ッ!」

 

「だわッ!?」

 

心眼の名を叫びながら身体を起こすと物凄く近くから奇妙な悲鳴が聞こえた。血のように紅い瞳と金のような金髪で黒いドレスを来たその少女……いや女神の姿に驚きながらその名を呼んだ。

 

「え、エレちゃん……?つ、つつう……」

 

冥界の女主人エレシュキガル……なんで彼女が目の前にいるのかと疑問に思ったがそれよりも全身に走った激痛に呻き声を上げる。

 

「う、動いたら駄目なのだわ。わ、私は治癒系は得意じゃないから、というか手当ても初めてで上手く出来ているか全然分からないのだわッ!?だから無理に動いちゃ駄目」

 

軽く押されただけで俺はベッドに背中から倒れこみ、柔らかいベッドなのに信じられないほどに全身が痛くてまた呻き声が零れる。

 

「どう……して」

 

震える声でどうしてエレちゃんがいるのかと尋ねるとエレちゃんは少しだけ気まずそうな表情を浮かべた。

 

「お、落ちてきたからキャッチしたのだわ。竜気が最後まで横島をしっかりと守ってた。そうでなければ横島は焼け焦げて死んでいたのだわ」

 

宇宙から落ちてきた俺を竜気が守っていた……それが何を意味するか分からないわけが無い……聞きたくない、知りたくないと思っても……俺はエレちゃんに問いかけていた。

 

「心眼……は?」

 

額に巻かれていないバンダナだが、もしかしたらエレちゃんが外してくれているだけかもしれない。そんなありえない一縷の望みに縋って問いかけるとエレちゃんは目を伏せながら心眼がどうなったのかを俺に教えてくれた。

 

「……焼け焦げてボロボロでした。それでも竜気は私が横島を受け止めるまで消滅しませんでした……恐らく自分の存在全てを使って貴方を守ったのでしょう」

 

もしかしたら心眼が燃え尽きたのは夢だと思いたかった。だけどエレちゃんが俺に差し出してきた焼け焦げたボロボロの布……心眼だったバンダナの切れ端が心眼が消滅した事が現実だと俺に突きつけてきた。

 

「あ……あああ……あああ」

 

心眼がいない、ずっと一緒だった心眼がもう何処にもいない。胸にぽっかりと穴が空いたような空虚感が襲ってきて涙が溢れる。悲しくて、苦しくてどうにかなってしまいそうだった……。

 

「泣いて良いのだわ、何があったかは今は聞きません。今は泣いて悲しみを吐き出すと良いのだわ」

 

エレちゃんに抱きしめられ泣いて良いのだと言われた俺はエレちゃんの背中に手を回し、悲しみを吐き出すように大声で泣いた。心眼がもういない……胸の中にぽっかりと開いた埋める事の出来ない苦しみと悲しみを吐き出すように声と涙が枯れてもなお、エレちゃんに縋りついて泣き続けるのだった……。

 

 

 

リポート19 決着/冥界で その2へ続く

 

 




今回は短いですが、ここで終わりたいと思います。ここから続けても話が上手く転がってくれないですし、ここで切るのが1番丁度良いかなって思ったので、原作ではマリアに抱かれて落下して記憶喪失になった横島ですが、今作では心眼がオーズのアンクのような役目をし、心眼が己の存在と引き換えに横島を救ったルートに入りました。ここから心眼がどう復活するのか、そして月面から戻って来た美神達に何が待ち構えているのかを楽しみにしていてください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。


PS


FGOの星4交換は水着エリセにしました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。