GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL   作:混沌の魔法使い

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その2

 

リポート19 決着/冥界で その2

 

~美神視点~

 

小竜姫様とブリュンヒルデによって何とか地球へ戻って来た私達はすぐに琉璃に連絡を取り、小竜姫様とブリュンヒルデは神魔のほうでも横島君を探すために確実に味方と呼べる面子に声を掛けると言ってそのまま天界と魔界へと向かった。全員が疲労も身体の痛みも我慢して、横島君の捜索に動いた。普通に考えれば変身していたとはいえ大気圏突入をした横島君が生きているとは思えなかった。

 

「あ……ああ……」

 

「……」

 

「う……そ」

 

蛍ちゃんは月面にへたり込み言葉を失い、くえすは目を見開き無言で立ち竦み、おキヌちゃんは涙を流して震える声で嘘だと繰り返し呟いていた。雪之丞と陰念は何も言わなかったが血が出る程拳を握り締め、月面の岩へと拳を叩きつける。私含めて全員が横島君の生存が絶望的だと思った。

 

「……まだ諦めるのは早い。横島は生きている」

 

「本当!?横島君は何処にッ!「……落ち着け、生きている。生きてはいるが……どこにいるのか分からない」……どういうこと」

 

横島君と魂で繋がっているシズクが言うのなら横島君が生きているのは確定だ。だがどこにいるのか分からないというのはどういうことかと尋ねる。

 

「……結界……だと思う。かなり強力な代物だ、かなり集中しないと横島の気配を感じ取れないが……間違いない、生きている。ただこの結界の強度を考えると最上級神魔の可能性が高い」

 

最上級神魔と聞いてガープ達に攫われたのかと最悪の予想が脳裏を過ぎる。

 

「安心なさい、ガープ達ではありませんよ。横島を連れ去ったのはね」

 

頭上から聞こえた声に顔を上げるとレクス・ローが本を片手に宙へと浮かんでいた。

 

「そう睨むことはないでしょう?絶望しているようなので希望を与えてあげようとしたのに、それとも私の情報はいりませんかね?」

 

「……ガープ達じゃないってどういうこと」

 

「素直で大変結構。さて今日本には超常の存在が集まっておりますが、その中の1人が横島を連れ去ったようですね。敵意や悪意などはございませんのでご安心を、では精々頑張って、必死に横島を探すと良いでしょう」

 

レクス・ローは僅かに見える口元に笑みを浮かべ、私達に背を向けて歩き出そうとし、思い出したように足を止めた。

 

「そうそう。その神魔ですが女神ですので、あと横島とも随分仲が良いみたいですよ?では御機嫌よう」

 

最後にとんでもない爆弾を落としていったレクス・ローにこの野郎と思ったが、ガープ達にさらわれていないという事が分かっただけでもありがたかった。そして女神、横島君と仲が良いという事が分かった事でその女神も特定する事が出来た。

 

「横島を攫った……ううん、助けてくれたのは多分……冥界の女主人エレシュキガルだと思います」

 

「私も同意見よ。ただ私達はエレシュキガルに会った事が無いのよね。似顔絵……描ける?」

 

「描きます、絶対描きます。横島を、横島を迎えに行かないと……」

 

「そうですわね、渡さないとなったら戦いになりますが……それも仕方ないですわよね」

 

「生きて……生きてる……ふふ……良かった」

 

……横島君が生きているのは嬉しいけど、やっぱり蛍ちゃん達の精神状況が余りにも不味いというのを私は再認識する事になるのだった……。

 

 

 

 

 

~琉璃視点~

 

マリア7世の救出、そして月面の魔力砲の破壊……作戦自体は上手く行ったが横島君が消息不明というのは私も大ショックだった。いや本音を言えば寒くも無いのに手足が震えて、目の前が真っ黒になるのを感じた。何時の間にかそれだけ横島君の存在が私の中でも大きくなっていた……。

 

(ああ……そうか、本気で好きなんだ)

 

自分が本気で横島君に恋をしていると自覚した瞬間でもあった。でも今は恋する乙女ではなく、GS協会の会長として動かなければならない。

 

「タマモ。エレシュキガルはどんな人かしら?」

 

「……金髪、紅い目、背格好は蛍と同じ位、年齢もそれくらい10代後半から20代前半」

 

むすっとしているタマモはジト目で蛍ちゃん達を見ている……いや、これは蛍ちゃん達じゃなくて……。

 

「そんなに睨まなくても良いでしょう?一応ほら、姉妹みたいなものですよ?」

 

「同一存在を見て笑顔でいられるわけないでしょ」

 

「それはまぁそうですね。私も同じです♪」

 

互いに瞳孔が開いた目で睨み合っている。タマモとコヤンスカヤ……外見的な容姿は余り似ていないがそれでも霊視をすれば同じ存在だと分かる。同じ九尾の狐、恐らくその尾の1つが持つ悪の人格であり、神格。

 

(下手に刺激しないほうが良いわね)

 

人類悪の卵……そんな存在を刺激するほど馬鹿ではないので当たり障りの無い対応をしておくべきだろう。

 

「……横島は多分擬似冥界にいると思う」

 

「同意しますわ。エレシュキガルが落ちたきたところを回収したと見て良いでしょうね。貴方の意見は?」

 

「同じ、横島の気配は東京にある。だから東京のどこかに擬似冥界があると思うけど……」

 

そこで言葉を切るタマモ。何を言いたいかは私達も分かっている。

 

「どこにあるのか分からないって事ね」

 

東京で暮しているのに擬似冥界に気づけなかった……エレシュキガルという規格外の女神の術だとしてもそれを見つけるのは困難を極めるだろう。だが手がない訳ではない……恐ろしいほどのリスクを背負う事になるだろうがエレシュキガルの擬似冥界を見つける術はある。

 

「ネロかルイさん、そのどちらかを見つけることが出来れば擬似冥界を見つけることが出来ると思います」

 

魔人姫の疑いがあるネロ、そして明けの明星であるルイさん。そのどちらを見つける事が出来れば擬似冥界の場所のヒントを得る事が出来るかもしれない……そんな細い糸しか擬似冥界を見つける術は無く、仮に擬似冥界を見つけたとしてもエレシュキガルと戦いになる可能性もある……だが止まっている事など出来ない。

 

「ルキさんは教えてくれないんですか?」

 

「出来なくはないですよ?ただ……ルイ様の事を考えると私を頼りにしてルイ様を見つけたとしても……」

 

「臍を曲げて教えてくれないって事ですわね、問題ありませんわ。元から頼るつもりなどありません」

 

ルキフグスならばルイさんの場所は分かるだろうが、それをすれば全て駄目になる可能性がある以上ルキフグスさんを頼るわけには行かず、私達は人海戦術でネロ、そしてルイさんの2人を探す為に疲労を押して街へと繰り出すのだった……。

 

 

 

~ガープ視点~

 

横島が消息不明という情報は私の元にも入っていた……。これには流石の私もアスモデウスも想定外であり、ニコニコで戻って来たセーレをボコボコにし逆さ吊りにした。

 

「いや、魔術はかけたから死んでないよ」

 

「誰が横島を地球に向かって蹴れと言ったこの戯け」

 

「馬鹿なのか?ああ。いや、馬鹿だったな。お前は」

 

考えうる限り最悪な事をしてくれたセーレが弁明しようとするが、私もアスモデウスも聞く耳持たずでセーレの口に布を捻じ込んで、その下で消えない炎を配置し、どうするかと揃って頭を抱えた。

 

「生きているのか?」

 

「生きてはいるがどこにいるかは分からん、あの馬鹿が余計な事をしてくれたからな」

 

横島を最終的にこちらに引き込む作戦だというのに横島が死んでしまっては意味が無い。セーレがとんでもなくおろかな事をしてくれた、これで瞬間移動などの能力者で無ければ殺している所だ。

 

「こちらからも捜索するか?」

 

「せざるをえんだろう。横島がいなければ全てが瓦解するのだから」

 

私達の作戦は横島ありき、特異点の横島が必要不可欠なのだから探さないわけには行かない。

 

「とにかく使い魔を出すぞ」

 

「仕方あるまい……計画通りに進んでいたというのに」

 

「全くだ」

 

月面でやりたかった事は全て達成したというのに最後の最後でセーレが馬鹿をやってくれたお蔭で台無しだ。

 

「どういう道順で探す?」

 

「一瞬だけ日本上空に最上級神魔の反応があった、それを軸にして探す」

 

日本にいる最上級神魔となると確率としては3分の1だ。

 

「魔人姫かルイ・サイファーか、エレシュキガルか……」

 

「ホムンクルスに押し込めてるエレシュキガルが案牌か」

 

「エレシュキガルが回収していれば良いんだがな」

 

魔人姫では計画よりも早く横島が魔人になってしまうだろうし、ルイ・サイファーでは何か意味の分からない何かにされる可能性もある。そういう面ではホムンクルスに捻じ込んだ事で大分丸くなったエレシュキガルが回収していてくれれば良いが……。

 

「とにかく今は横島を探すのが最優先だ」

 

横島を失うわけには行かないのは美神達だけではなく、私達も同じだ。実行しようとしていた作戦全てを先送りにし、私達も横島を探す為に動き出すのだった……。

 

 

 

~エレシュキガル視点~

 

「……上手く出来たのだわ。我ながら上出来……よね?」

 

料理なんかした事ないけれど、人間の横島には栄養が必要なので見よう見真似だがスープを作ってみた。自分で味見をしてみたけどそう不味くないので大丈夫……な筈と少しばかり不安を感じながらもスープを手に横島の元へ向かう。

 

「横島。調子はどうなのだわ?」

 

「……」

 

分かっていたが返事はない、今の横島には私の言葉は届かない。

 

「少しお腹に入れておかないと身体に悪いのだわ。はい、どうぞ」

 

冷ましたスープを口へ運ぶとゆっくりと本当にゆっくりとだがスープを啜ってくれる……だが何の反応も無い事に目を伏せる。

 

(冥界に移動して正解だったわ)

 

心眼を失った事がショックだったのか泣き疲れた後の横島は人形のようになってしまっていた。冥界は死者の国、一時的とは言え横島を死者に当て嵌めることで生かしている。

 

「疲れたのね、横島。大丈夫よ、ここは優しい場所。もう動きたくないのならここで眠っても良いのだわ」

 

分かっていた事だ。横島は戦いに余りにも向いていない……今まで溜まりに溜まっていた精神的疲労、そしてその傷が心眼を失ったことで噴出したのだろう……あるいは……。

 

「心眼は貴方にとって半身だったのね」

 

心眼が横島の精神と魂を癒していた。壊れないように、崩れてしまわないように……己の存在を少しずつ削って、横島が壊れないように優しく優しく守っていたのだろう。その心眼を失ったことで傷ついた心が表に出てしまったのだろう。

 

「貴方はやっぱり戦いには向いていないわ……横島」

 

才はあるのだろう、戦う者として、神官として高い素質があるのは私も認める。だけど横島は戦闘者でもなく、神官でもない。ただの心優しいだけの人間、戦いに最も向かない者。だけど守りたい者を、失いたくない者を守る為に戦い続け、その結果が今の横島だというのならばなんと救われない話だろうか。

 

「大丈夫、大丈夫よ。私が守ってあげるのだわ」

 

この優しい場所で眠ってくれれば良い、もう十分に傷ついたのだ。もう戦わなくて、立ち向かわなくても良い……何の色も見せないその瞳に悲しいと思いながら膝の上に寝かせてその頭を撫でながら目を閉じさせる。

 

「おやすみなさい、優しい貴方」

 

このまま冥界に居続ければ横島は緩やかに、眠るように死ぬだろう。だが私はそれで良いと思っている。

 

「眠りなさい、このまま。安寧の中で苦しむ事も、悔やむ事も、嘆く事も無く眠りなさい。私が、この冥界の女主人エレシュキガルが許しましょう」

 

これが横島にとって1番良いであろうと私は欠片も疑問を抱かず、少しずつ、少しずつ横島の魂の灯火を消し去っていくのだった……。

 

 

リポート19 決着/冥界で その3 へ続く

 

 

 




どの陣営にとってもセーレの行動は想定外でどこもバタバタとしております。そんな中でエレちゃんは本体の陰湿さが少し表に出て来てちょっとやばい感じ、そしてヒロインズのメンタルもやばいとどこもかしこも地獄でお送りします。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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