GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL   作:混沌の魔法使い

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その3

リポート19 決着/冥界で その3

 

 

~蛍視点~

 

横島を探す為にまず私はお父さんに連絡を取る事を選んだ。お父さんは女神イシュタルが悪魔に落ちた存在だから、エレシュキガルを探すヒントを得れると思ったのだが……。

 

「そっちも把握して無いの?」

 

『ああ、ガープとアスモデウスの指示で横島君の捜索をしているね。あとセーレはうん、お前は何てことをしてくれたんだとボコボコにされていたよ』

 

つまり、今回の件はセーレの独断であり、ガープ達にとっても想定外だったようだ。

 

「そっちは動く?」

 

『……恐らくセーレは動くだろうが、本体は動かないだろう。それよりも早く擬似冥界を見つけ出すんだ、時間はさほど無いぞ』

 

焦った口調でいうお父さんに分かってると返事を返すが、お父さんは分かっていないと強い口調で私を窘めた。

 

『良いか、どれだけ温厚でもエレシュキガルの本質は冥界の主であり死の女神だ。彼女が望む、望まないは別にして冥界にいる以上横島君は死者へと傾く、エレシュキガルが横島君を死者にして冥界に縛りつけようとする可能性もある』

 

認めたくは無いが、エレシュキガルは横島を随分と気に掛けていた。確かに今は横島が生きていても、それは時間の問題の可能性もある。

 

「お父さんでも見つけれないかな?」

 

『……イシュタルの神性がもう少しあれば可能だが、今の私には無理だ。とにかく、冥界を探すんだ。エレシュキガルの本質は引き篭もりで基本的に自分のテリトリーを出ない、まず横島君もエレシュキガルのテリトリーの中にいるはずだ』

 

「分かった。ありがとう」

 

頑張れと言って通信を切ったお父さんに言われた通り私も美神さん達と同様にエレシュキガルの場所を知る、あるいは探せる可能性を持つルイさん、もしくはネロを探して人海戦術に出ていた中、運が良いのか、悪いのか、私は偶然ネロが裏路地の喫茶店に入ったという話を聞きネロの後を追ってその喫茶店に入店しネロと同席する事が出来ていた。

 

「ふうーむ。冥界の女主人の居場所を知りたいと……」

 

「駄目かしら?」

 

魔人姫の可能性が高いネロと1人で向き合うというのは正直恐ろしかったが……横島を見つける手掛かりを得たい一心で私はネロに事情を説明し、協力を要請したのだが……。

 

「それをして余に何の利益がある?お前達が不甲斐無いから横島は1人で落ちた。そうであろう?そんな相手に横島の居場所を教えてなんになる?」

 

ぐうの音も出ない正論だ。セーレが裏切り者ということは分かっていた。そしてセーレの権限も加味すればあのタイミングで奇襲を仕掛けて来る事は十分に予測出来ていた……それなのに私達はセーレの奇襲に対応出来なかった。横島が行方不明になったのは私達の責任である。

 

「確かにその通りだわ。反論も出来ないわ」

 

「そうであろう。今回の事情を聞いてお前達の不甲斐無さに余は落胆しておる。帰るが良い、余はお前に話す事は「帰らない。ネロ、貴方のいう事は全て正論だけど、私達を見限るのは早過ぎる」……ほう?」

 

ネロの雰囲気が変わり、恐ろしい魔力と神通力が私の肩にどっと圧し掛かる。それでも屈せずネロに視線を合わせ続ける。

 

「確かに私達は……ううん。私は横島に頼りきりだわ、師匠だの何だの言っても何も出来ていないこれは事実よ」

 

横島の地力はもう完全に私達を越えている。私が横島を越えている部分は最早知識しか残されていないのは悔しいが事実だ。

 

「頼られている。頼りにされている……横島の信頼に私は応えたいの」

 

「横島より弱いのにか?」

 

「そうよ、本当に情けなくてみっともないけど、それでも……私は横島を守りたいと思うわ」

 

「戯言であるな。やれやれ、横島は見る目が無い」

 

ネロはそう言うと立ち上がり、机に立てかけてあった日傘を手にする。

 

「居場所は教えてやらん。だがヒントはやろう、精々足掻け、だがあの女神は陰湿だ。返せと言って返すわけも無し、命を捨てる覚悟で精々足掻け」

 

机の上の水が独りでに動き、なにかの線を描き始める。それは一見落書きのように見えたが、なにかの規則にそって描かれているのが分かる。机の半分を埋めるほどに水が広がった頃にはネロの姿は完全に消え去っていた。

 

「……言われなくても足掻いて足掻いて、泥を啜ってでも見つけてやるわよ」

 

手帳にネロの残した幾何学模様をメモし、机の上を拭いて代金を支払って店を出る。ネロがくれたのは文字通りヒントだけ、これだけでは横島の元へは辿り着けない、更なる手掛かりを求め、私はルイさん、そして雅を探して早足で歩き出すのだった……。

 

「よろしいのですか?姫様」

 

「構わぬ、それに余は横島は大好きだが美女・美少女も好きだ!横島の次の次くらいには肩入れしてやっても良いと思ったのだ」

 

楽しそうに言うネロに付き添いのペイルライダーは何とも言えぬ表情を浮かべる。

 

「私はあの人間は冥界の女主人の使い魔にも勝てぬと思いますが……」

 

「それはそれ、これはこれ。足掻いてみせると言ったのだ。命を賭して戦えば芽はあるだろうよ」

 

にいっと邪悪な笑みを浮かべるネロ。肩入れはするし、手助けはする。だがそれとこれはまた違う話……神魔特有の残酷な視点でエレシュキガルと戦おうとしている蛍達を娯楽としてネロは見ているのだった……。

 

 

 

 

 

 

~小竜姫視点~

 

私は美神さん達に言えなかった事があった。言うべきだと分かっていたのに、どうしても言葉に出来ず自己嫌悪で思わず溜息が出る。

 

「落ち込んでる暇があったら手伝って欲しいんだけど?」

 

ジト目のヒャクメの言葉にハッとし顔を上げる。

 

「す、すいません。ヒャクメ」

 

「別に構わないけど、私はちゃんと言うべきだと思うわね~」

 

いつもとおりの口調のヒャクメだが、その目は血走っていて指は恐ろしい速度で動きタイピングを続けている。

 

「心眼が消滅したなんて私には言えないですよ」

 

「まぁ横島さんは心眼を大事にしてたからね~」

 

心眼は1番横島さんの側にいて横島さんを支え続けていた。恐らく心眼は己の存在と引き換えに横島さんを救ったのだと分かる。

 

「……正直に教えてください、ヒャクメ」

 

「なんなのね~?」

 

「……横島さんの心は大丈夫ですか?」

 

「分からないのね」

 

心眼は横島さんの心を守り癒していた、その心眼を失った横島さんがどうなっているか……どうしても最悪が脳裏を過ぎる。

 

「身体は生きていても、心が死んでる可能性は……」

 

「……無いとは言えないのね~だから覚悟を決めてちゃんと美神さん達に説明してくるのね」

 

最悪の可能性……心眼を失い、心の守りを失った横島さんの精神的な死あるいは狂神石によって狂ってしまっている可能性がある。そしてそれはかなり現実味を帯びているといえる。

 

「……一緒に来ては……」

 

「行けると思うの?」

 

「無理ですよね、はい。分かってます」

 

ヒャクメは横島さんを探すので手一杯。ここで一緒に来て説明してくれなんて言える訳も無く1人で東京へ転移したのだが……。

 

「やぁ、小竜姫」

 

「ルイ様ッ!?」

 

東京ではなく別時空に無理矢理引き込まれた感覚と共に私はルイ様の元へいた。その声を聞いて反射的に頭を下げる。

 

「横島が行方不明らしいね。それも冥界の女主人に連れ去られたとか?」

 

「……はい、そのとおりです」

 

「やれやれ。君とブリュンヒルデがついていて情けない事だ。いや、もっと言えばセーレなんて小物の裏切りに気付けなかった当りで落第点だね」

 

「分かって……?」

 

「逆に聞くけど何で分からないと思うのさ?まぁ良いや、横島がこのまま冥界の住人になってしまうのは困るから少しだけ手助けをしてあげよう」

 

ルイ様が指を動かすと空中に無数の点が浮かび上がる。それを見て慌てて手帳を開きその点をそのままの形でメモする。

 

「ヒントだけだよ。ああ。それと……いつまでも猫を被ってるのは見ていて見苦しい、少しは自分に正直になるんだね」

 

その言葉を最後にルイ様は消え去り、私は東京の上空に佇んでいた。

 

「素直に……正直に……なれるわけが無いじゃないですか……」

 

胸の中に渦巻くどす黒い感情……自分でも御す事の出来ない黒い炎。私が心眼を与えたのに、私よりもずっと横島さんの心に近い心眼に抱いている嫉妬めいた感情を表に出せるわけが無い、胸に走る痛みに顔を歪めながら私は美神さん達と1度合流する為にGS協会へと向かうのだった……。

 

 

 

~くえす視点~

 

凄まじい轟音と共に着弾した魔力弾に思わず冷や汗が流れる。直撃していれば手足が千切れ飛んでいてもおかしくないレベルの魔力弾を連射してくる高城雅……いやベルゼブルの姿に流石は最上級神魔であると感心していた。

 

「無様、脆弱、惰弱……やはり貴様ら人間はいつだって愚かだ」

 

ベルゼブルから感じるのは混じり気の無い失意、そして敵意だった。その理由は言うまでも無く、横島の行方不明に関するものである事は間違いない。

 

「そうですわね、少なくともあの一瞬私は気を抜きましたわ」

 

横島を止める事が出来なかった。止めていればとどれだけ悔いた事か……それかセーレの事を話していれば横島が無理に突っ込む事は無かった。あの距離ならば私の魔法でも、テレサとマリアの狙撃でも撃ち抜くことは出来たのだ。私達の疲労と疲弊を感じ取り横島が動いてしまった、横島を動かざるを得ない状況にしてしまったことを私は悔いていた。

 

「あいつは良い奴だ。だからこそ私はお前達が嫌いだ。無能な人間に使い潰される横島を私は見ていられない、エレシュキガルの元で安寧を得れるのならば私はそれでも構わない」

 

「それは貴女が横島を愛しているからですか?」

 

「……友人だからだ」

 

私の問いにベルゼブルは間を置いた。それだけでベルゼブルが本当は何を思っているのか分かり、思わず笑ってしまう。

 

「何がおかしい」

 

「いえ、横島は本当に罪深いなと思っただけですわ」

 

人も神魔も横島の前では心を乱してしまう……それでいて横島は捕まえようとすれば逃げてしまう。本当にもう……。

 

「今度は何処にもいけないようにしっかりと捕まえておくことにしますわッ!」

 

地面を蹴ってベルゼブルとの距離を詰める。そうはさせまいと飛んで来る魔力弾をナイフで切り払い、私の前に斜めに展開した魔力障壁で受け流しベルゼブルとの絶望的な距離を必死に詰める。

 

「鬱陶しいやつだ」

 

「鬱陶しいのは其方もでしょう?だって貴女の顔嫉妬に歪んでいますわよ?」

 

私の言葉に魔力弾が止まった。それだけショックだったのか、それとも自覚して無かったのか完全に動きを止めたベルゼブルの間合いに入り込み、額に銃口を押し当てる。

 

「これで勝ったとでも?」

 

「協力してくれたら横島に貴女がとても頑張ってくれたと伝えますわ。そうしたらさぞ喜んで貴女に何か贈り物をしてくれるかもしれませんわよ?」

 

「……仕方ないな、手伝ってやる。正しこれ限りと思えよ」

 

こいつチョロイと思うくえすであったが、くえすもまたチョロイ女であるのだが……人間自分の事は分からないものである。

 

 

 

 

~美神視点~

 

蛍ちゃん、小竜姫、くえすの3人が擬似冥界の手掛かりを掴んだと連絡が入ったので1度GS協会に戻って来たのだが……。

 

「なんでいるんですか?」

 

「どこにいようが私の自由だろう?別にルイ様に何をしろ、これをしろと言われてるわけではないのだから」

 

何故かベルゼブルまで一緒にいたが……とりあえずそれにはふれないようにする事にした。藪をつついてなんとやらだからだ。

 

「それで蛍ちゃん、小竜姫様、くえす。手掛かりって何?」

 

「あ、はい。私はネロからなにかの線を」

 

蛍ちゃんがそう言いながら手帳を差し出してくるのでそれに視線を向ける。一見乱雑な線に見えるが、何かの法則性があるのが見て取れる。

 

「私はルイ様から多分何処かの地図の点だけだと思われるものです」

 

小竜姫様が差し出してきた手帳には無数の点が打たれていた。これも乱雑に見えるが、何かを描こうとしているのが分かる。

 

「くえすは?」

 

「雅が手掛かりですが?」

 

……あ、だからベルゼブルがここにいるのかと納得したが、明らかに不機嫌そうなベルゼブルが協力してくれるようには正直思えなかったのだが……。

 

「点と線を結ぶんじゃないぞ、点と線は別物だ。だがその2つには共通点がある、そうだな。お前達が1度解決した事件が手掛かりになるだろう」

 

なんかめっちゃヒントと手掛かりをくれたわ……点と線は別物……だけど繋がりが……1度解決した。

 

「「「あっ」」」

 

私達の声が重なった。そうだ、これら全てが1つに合致する場所が1つだけあるじゃないか……。

 

「盲点でしたね」

 

【いや、気付かないじゃろ。普通……】

 

「……これも1つの思い込みか」

 

私達は皆知っていた。東京で大規模異界は確かにあった。だがその異界は閉じている物だと、もう消滅したものだと思っていた。

 

「都庁のノスフェラトゥが封印されていた異界の確認に行きましょう」

 

冥界の女主人であるエレシュキガルは死者の魂を管理する逸話を多く持つ、そしてノスフェラトゥもまた死者の王であり、冥界に関する逸話を持つ……。

 

「ノスフェラトゥの異界を開いて、己の異界へと切り替えた。エレシュキガルならばありえない話じゃないですね」

 

「考察は後、今は行動しましょう。話し合いですまない可能性もあるから完全装備でね」

 

終わった事件を見直すという考えがなかったわけでは無いが、ノスフェラトゥの異界は完全に頭から消えていたのは間違いない。都庁にいると断言できるわけでは無いが、今1番エレシュキガルがいる可能性が高いのが都庁であるのは間違いない。それに何よりも……。

 

(今は動いてないと頭が変になりそうだから)

 

自分達のミスが招いた結果が横島君の行方不明だ。ジッとしていれば後悔が胸を焦がす、手掛かりも無く人海戦術でルイ達を探したのもジッとしていたくなかったからだ。そして今都庁にエレシュキガルがいるかもしれないという可能性が浮上し、私達は大急ぎで装備を整えてGS協会を出て都庁へと向かった。

 

「……思ったより早い、ううん。これはルイ達が手引きしたのね……ッ!貴方達、少し遊んであげて、逃げるなら逃がしても良いわ。だけど殺したら駄目、良い?分かったらいきなさい」

 

そして美神達が都庁に向かって来ている事を感じ取ったエレシュキガルだが、自ら動く事無く使い魔に美神達を迎え撃つように、だが決して殺すなと命じ今も眠り続けている横島に視線を向ける。

 

「どうして貴方を休ませてくれないのでしょうね、こんなに貴方は疲れているのに」

 

肉体、精神、魂、そのすべてがボロボロの横島を何故戦わせようと、何故休ませてあげないのだと嘆き、その髪を撫でようとしたエレシュキガルの手を横島の手が掴んで止めた。

 

「エレ……ちゃん。お願いが……あるんだ」

 

今までの空虚な瞳では無く、強い意志を感じさせる横島の目を見てエレシュキガルは一瞬息を呑み、だが小さく微笑むと横島の顔に手を当てた。

 

「後で聞いてあげるわ。だから今は眠りなさい」

 

今横島を動かす訳にはいかないとエレシュキガルは横島を眠らせ、動くつもりはなかったのだがそうもいってられなくなった。

 

「……お願いするのだわ」

 

【コクリ】

 

神通力と魔力を分けて作り出した分身を地上へと送り出し、本体であるエレシュキガルは眠る横島の髪を優しくなでるのであった……。

 

 

リポート19 決着/冥界で その4へ続く

 

 




と言うわけで今回はここまで、次回はエレちゃん(分身)&ガルラ霊沢山との美神達との戦いを書いて行こうと思います。
横島とエレシュキガル本体はまた別のシナリオを進めて貰うので、次回もまた2つの視点の話をメインに書いて行こうと思います。
それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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