GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL 作:混沌の魔法使い
リポート19 決着/冥界で その4
~美神視点~
信長に擬態していたノスフェラトゥが拠点としていた都庁地下の異界。そこにエレシュキガルがいる可能性があるという事で私達は都庁に訪れたのだが……都庁についた瞬間にそれが事実であると判明した。車から降りて駐車場に降りた瞬間に異界に引きずり込まれたからだ。
「最悪に備えてて正解だったわね」
相手は小竜姫様達を上回る力を持つ古き神だ。私達が都内に近づいているのは間違いなく感知しているだろうから、霊具などを車のトランクではなく最初から身につけていたのは間違いなく正解だった。
「何を腑抜けた事を言ってますの?そんなことを言ってるから横島が消息不明になったんですわよ」
くえすの射殺すような視線が向けられる。確かにくえすの言う通りだ。小竜姫様達がいるからまだ気が緩んでいたのかもしれない、それとも埋められない力の差に何をしても無駄という諦めにも似た感情を無意識に持っていたのかもしれない。
「分かってた事だけど……歓迎はされてないわね」
くえすの警告に謝っている間もなく、全方位から叩きつけられる敵意に意識が切り替わる。分かっていた事だ、冥界の女主人……エレシュキガルが横島君を保護しているのならばこのような状況になった私達に友好的な感情を抱いているはずが無いからだ。
【これは警告です。立ち去りなさい、今すぐ立ち去るというのならば私から貴女達を攻撃することはありません。今すぐ立ち去りなさい】
見た目は確かに蛍ちゃん達と同程度の年齢の少女だ。だがその全身から放たれている神通力と魔力が目の前の少女が人間ではなく、神魔であるという事を雄弁に語っている。
「女神エレシュキガル。私達も貴女と敵対するつもりはありません、横島さんを迎えに来ただけなのです」
小竜姫様が交渉を試みた次の瞬間、小竜姫様がボールのように吹っ飛ばされ異界の壁に叩きつけられ崩れ落ちる。
【言った筈です。去れと、誰が貴女達と言葉を交わすと言いましたか?立ち去らずにこの場に残った、それ即ち私への侮辱、そして敵対行動に他ありません】
敵意が殺意へと変わり、エレシュキガルの周りにレギオンらしき霊団が現れる。だがそれは霊体の骨同士が結合した巨大な骨巨人にも見えるし、レギオンにも見える。そして僅かに神通力を放つ私達の理解を超える化物だった。
「み、美神さん……さ、流石にあれは私浄化できそうにないですよぉ……」
「分かってるわ。おキヌちゃん、あれは霊団だけど霊団じゃない。全くの別物よ」
女神エレシュキガルがレギオンなんて言う下級の怨霊の集まりを使役している訳がない、恐らくあれは別の何かであり、神魔に足を踏み入れている何かなのだろう。
「……エレシュキガル。横島はここにいるのか?」
【います。いますが……それが何か?ただの1人の人間に全てを押し付け、見ているだけ、戦えもしない者達のもとへ何故我が友を帰す必要があるのです?】
絶対零度の視線と拒絶の色を感じさせる言葉を口にしたエレシュキガルは私達から背を向けた。
【違うと言うのならばこのガルラ霊達を倒し、再び私の前に来なさい。そうなれば話くらいは聞いて上げても良いですわよ。まぁ……どうせ無理でしょうけどね】
【【【■■■――ッ!!!】】】
エレシュキガルの姿が消えると同時にガルラ霊が咆哮を上げて襲い掛かってくる。骨同士が結合した巨大な腕が振るわれるのを見て、反射的に跳躍すると、私達の足の下を霊波の刃が通過した。
「……やばいですね、これ」
「うん。でも……やるしかないわね」
相手は下級神魔クラス、もしかすると英霊クラスの実力を持った複合霊だ。つまりこれから私達が戦わなければならない敵と言える。
【最悪になれば手伝いますが、私達を戦力として考えないように】
【ま!そういうことじゃね!シズク、お前はどうするんじゃ?】
「……手伝う理由はない」
牛若丸、ノッブ、シズクは協力してくれないが、これは当然だ。実力で言えば3人とも小竜姫様よりも上で、横島君がいるから私達に協力してくれているだけなのだ。私達への試練に力を貸して貰おうということ自体ありえない話だ。
「厳しいけどやるしかないって事ですね」
「横島が戦ってきた相手の事を考えれば弱い相手ですわ、これに勝てないようでは横島を連れ戻しても何も変わりません」
「……そうよね、意地でも私達だけで倒すしかないわね」
「そういうことッ!」
琉璃とくえすと、私と蛍ちゃんの4人で戦うには厳しい相手だと思うが、それでも勝たなければ、私達の力を示さなければ何も変わらない、正直に言えば足が竦みそうになるほどの力を秘めたガルラ霊が3体、どう考えても勝ち目なんてあるわけが無いのだけど……。
(横島君はずっと戦ってきた、師匠っていうならこの程度で怖気づいてどうするのよッ!)
横島君が戦ってきた相手を考えればガルラ霊は弱い相手だ、こんな相手に怖気づいてどうすると己に激をいれ、私達はガルラ霊に戦いを挑むのだった……。
~ベルゼブル視点~
美神達はあの女を本当に冥界の女主人だと思っているのか、それとも偽物だとしてもまずは試練を乗り越える事を選択したのか……。
「どっちだと思う?」
「……どっちでも良い」
【気付いてないと思いますよ?】
【まぁ気付いてるんじゃないかの?】
この返答を聞けばもうシズク達が美神達に対して期待していないのが分かる。元々私は美神達に期待はして無かったし、ルイ様も横島が師匠として敬っているのでそれなりの対応をしているが、期待などしているわけが無い。
「人間にしてはやるくらいか、横島を見ているとこの程度かくらいにしか思えんが」
確かに人間にしては強い部類だ。突出した能力こそないが手札の多い美神と蛍。応用力の高い琉璃、神魔に匹敵する魔法使いであるくえすだけは別格だが、それでも横島という規格外を基準にするとくすんで見えるは事実だ。
【この程度には勝って欲しいんですけどね。ある程度は訓練を見た身としては】
【まぁな~ワシもそう思うけど……なぁ事実あんまり強くないしのう】
鍛錬や稽古を見た身としてはガルラ霊に勝って欲しいと考えているようだが……実力不足は否めないな。
「小竜姫とブリュンヒルデが加わっても五分、いや、五分にしているだけ善戦はしてるか」
「……装備の質の悪さもある。これで良質な装備なら……7ー3くらいまで詰めれるだろう。後は戦術次第で五分五分だ」
「暴れてるだけのガルラ霊を相手にそれでは望み薄だな」
根本的にだが美神と蛍は不測の事態に弱い、これは小竜姫も同じだ。考えうる限りの事を考え対策し、その上で準備をしているのだからその準備を越えられるとどうしても弱い。琉璃は不測の事態にも強いが、神卸しの巫女という事を考えると長期戦には向かない。本人の実力は中の中から中の上、神卸しを行なって上の下から上の中ほどの実力である事を考えれば人間では破格の能力と言えるが霊力の消耗が激しいので息切れが早い。
【もう息切れしかけてますね】
【巫女だからな。まぁ元々戦闘に向いていないのは間違いない】
1度神卸しを解除して戦闘方法を霊体ボウガンに切り替えて、おキヌの支援を受けて体力を回復させようとしているが琉璃が抜けた事で少しずつ崩れの予兆が見えてきた。
「……能力自体は悪くないんだがな」
「確かにな。くえす1人でも上手い事戦えればあの程度簡単に勝てるだろう」
くえすを主軸にし、周りがフォローするという戦いが出来ればガルラ霊は簡単に殲滅できるだろうが、根本的にくえすはスタンドマン。そしてそれでいて本人が他人を信用しない性格なのでご破算ではあるが……。
【■ッ!?!?】
「まず1ッ!残り2!」
美神の言う通りガルラ霊を1体倒す事が出来たようだ。中々に早いと言いたいが……。
「今回は悪手だな」
エレシュキガルからしてもガルラ霊が落ちたのは些か早かったらしく、姿を消していた分身体のエレシュキガルが再び現れ、手にしているランタンを高く掲げる。
【動きが変わりますね】
「……だろうな、適当に痛めつけて退散させる筈が想定より強かったんで考えを変えたんだろう」
死者に関係する神にしては元々甘い所があるエレシュキガルだ。ガルラ霊3体で戦意を折って撤退させる予定が、ガルラ霊が倒された事で考えを変えたという所か、だがまぁどっちにせよ言える事があるとすれば……。
「ここからの戦いに勝てなければ何の意味もないということだ」
エレシュキガルにコントロールされ、その力を十全に使うガルラ霊と戦って勝てなければ当然これからの戦いについていけるわけも無く、今の状態のガルラ霊に勝てるのならば少し位美神達の評価を改めても良いなと思いながら、私は再び美神達との戦いに視線を向けるのだった……。
~エレシュキガル視点~
横島の師匠だから殺すつもりはないけれど、適当に痛めつけて追い返すように命じていたガルラ霊が1体倒されたので本腰を入れることにしたが、ルイやネロに聞いていたよりも美神達は強いのかもしれないと少しばかり考えを改める事になった。
(だとしても横島にここまで負担を掛けているんだから少し増し程度くらいでしょうけどね)
横島にかかっている負担を考えればそこまで強いわけではない筈だ。私の分身が指揮しているガルラ霊ならば美神達を突破させる事もないだろう。私は私のやるべきことに集中しよう。
「確かに冥界には心眼の魂がある可能性はあります。ですがあれは作られた魂、あるかないかで言えばない可能性が高いです。それでもどうしても冥界に行きたいと言うのならばそれ相応の契約を「サインしたよ」ほわああッ!?なんで、なんでサインしちゃうの!?」
脅しのつもりの契約書に迷う事無く契約している横島に思わず絶叫してしまうが、もう契約は成されてしまった。
「……分かりました。死後を私の冥界で過ごすという契約をしたのだから、案内しましょう。こちらです」
横島の死後私の冥界に来るという契約書に横島がサインした以上、その対価として私には横島を案内する義務がある。まだ思うように動けないであろう横島に手を貸して、冥界の奥へと降りる。
「そこまで心眼が大事なの?」
横島が冥界に来てくれるのは嬉しいけど、心眼を人質に使ったみたいで気分が悪いので心眼がそこまで大事なのか?と横島に問いかける。
「……別れるならちゃんと別れをしたいんだ。ありがとうも、もう大丈夫も俺は言えなかったから……ちゃんとした形でさよならを、今までありがとうって言いたいんだ」
もしもいるならと付け加える横島の言葉にそれだけ心眼という使い魔が横島にとって大きな存在なのだと分かった。
(擬似冥界とは言え、ここはちゃんと冥界の機能もある。それに横島を連れて来たときにきっと心眼も一緒に来ているはず)
これだけ縁があるのならばきっと心眼は私のこの冥界にいるはず……いなければおかしい、絶対にいる。
「横島、こっちよ」
「ごめん、我侭を言ってるのは分かるんだ」
「構わないのだわ。さ、こっちよ」
まだ思うように動けない横島の手を引いてゆっくりと冥界を下る。横島の死後がどうとか、私の側にいて欲しいとかは別にしても……横島に穏やかな時を過ごして欲しいというのが私の願いなのだが……。
(最悪、本当に最悪)
「エレちゃんどうかした?」
「ううん、なんでもない、さ、もう少し先よ。辛いと思うけど頑張って」
東京の上空に強い魔力を感じた。間違いなくそれは横島達の敵であり、休む間もなく敵を送り込んでくるその悪辣さ、そして何よりも私が心を痛めたのはこのままではまた横島が戦う事になる。それが避けられないのならば……。
(立ち位置を定める時が来たのかもしれないのだわ)
ネロやルイのように傍観者でいられる時は過ぎてしまったのかもしれない。いや、傍観者でいたければ傍観者でいることも出来るのだが……私自身が横島の味方でいたいと思っている以上……自分の立ち位置を定める決断の時は近いのかもしれない……そう思わざるを得ないのだった……。
一方その頃横島家では……。
「横島がわ、私……私以外の狐をぉぉ……」
「よーし、よしよし。大丈夫でござるよタマモ。せんせーはタマモの事を大好きでござるからな」
「……だって私めんどくさい性格だもん」
「大丈夫でござるよ、あの狐も結構めんどくさい性格をしてるでござるから」
妹属性は敗北者と言って高笑いしてるコヤンスカヤと、メンタルがやられてるタマモのフォローにシロはてんてこ舞いで……。
「みぎぃ」
「うきゅうッ」
「お兄様がまだ帰ってこない……」
「ぷーぎゅう」
「……もう皆一杯一杯でござるなあ」
横島がいないことで不貞腐れてるチビや、ちょっとダークサイドに落ちかけている紫など、横島の家は地獄絵図の形相を呈しているのだった……。
リポート19 決着/冥界で その5へ続く
美神達はボスアタック、横島は冥界下り中、横島家は崩壊寸前と地獄絵図の中で更なる敵の出現予告となっております。次回でリポート19は1度区切りでリポート20へ向けていこうと思います。エレちゃんの正規参入と心眼がどうなるのか楽しみにしていてください、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
PS
テセウス狙いで札7枚で征服王をお迎えして変な声でました。