GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL   作:混沌の魔法使い

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その5

 

リポート19 決着/冥界で その5

 

~蛍視点~

 

鈴の音が響いたと同時に頭を庇いながら地面を転がり、即座に立ち上がって体勢を立て直し、今の攻撃をしてきた相手に視線を向ける。

 

【逃げて、防いで、反撃をする気もないのかしら?】

 

身体から赤い神通力と魔力をオーラのように噴出している黒衣の少女――冥界の女主人エレシュキガル。

 

「ガルラ霊は前哨戦だと思ってたけど、やっぱり古き神は格が違うわね」

 

「本当ですね、小竜姫様やガープなんかよりもずっと強いッ」

 

文字通り現在の神とは格が違う。ホムンクルスの器に入れられているとしても、その実力は本物だ。檻の様な物を鈴の様に鳴らすと共に召喚される亡霊と杭のような物を連続で打ち込んでくる射撃と中~遠距離攻撃ばかりだが、間違いなく近距離戦闘も小竜姫様よりも上だろう。

 

【弱いわね、貴女達は弱すぎる】

 

鈴の音と共に召喚される亡霊が大口を開けて突撃してくるのを辛うじて回避したところでエレシュキガルが私達にそう声を掛けてきた。その瞳には何の感情も感じられず、ただただ失望したというのがひしひしと伝わってくる。

 

【貴女達からは本気が感じられない。人間だから、自分達よりも上の存在には勝てないという諦めしか感じない】

 

その言葉に思わず身体が固まった。図星に近かった、今も、今までも私達は見ているだけだった。何をしても横島達の戦いに割り込めない、補助に徹するしかないという考えが胸の中に無かったとは言えない。

 

【横島は戦いに向かない者よ。でも不運にも戦う才能を持ってしまった……自分でも戦いたくないと思っていても、守りたい者を守る為に戦って、戦って傷ついて、壊れていくの、どうして貴女達はそんな横島を見ても奮起しないの?貴女達は横島がいれば勝てる、横島に任せれば何とかなるとどこかで思っている】

 

「ち、ちがっ【違うと言うのならば、それを証明して見せなさい。私はただエレシュキガル様の分身、本物ではない。こんな存在にも勝てないのならば、貴女達に道はなく、横島の死は覆せない。抗える、神魔とも戦えるというその気概を私に見せなさいッ!!】

 

鈴の音が幾重にも鳴り響き、私達の周りに亡霊が一斉に現れ全方位から襲い掛かってくるのを精霊石の結界で防いだ。

 

「……耳がとんでもなく痛いですわね」

 

「確かにねノッブ達にも言われたけど私達には本気度が足りないって事よね」

 

自分達に出来る事はやって来たつもりだ。だけどそれでも足りてないのだ、神魔からみれば私達は自分達で諦め、成長を拒んでいるように見えるのかもしれない。

 

「私も耳が痛いですよ。神魔でありながらこの体たらくって言われてるような感じです……分身を分身だと見抜けなかった。不甲斐無いにも程がある」

 

小竜姫様も悔しそうに言うが、私達もあのエレシュキガルが本物だと思っていた。まさか分身であれほどの力を持っているとは、本物のエレシュキガルの強さはどれほどの物なのかと恐怖してしまう。

 

「これが駄目って事なんですよね、美神さん」

 

「ええ、霊能は意志の力、魂の力、私達がどこかで諦めていれば、どれほど技術を身につけても何の意味もないって事よ」

 

昔の除霊術を覚えても、英霊との戦いの術を覚えても、心のどこかで無理と思っていれば霊能はそれに答えてくれない。

 

「絶望せずに、魂を曇らせずに戦いぬけって事でしょう。口で言うのは簡単ですが、行動するのは難しい。貴女達はどうですかね?」

 

鈴の音と共に突っ込んで来た亡霊に向かって回し蹴りを放ったくえす。質量の差からくえすが弾き飛ばされる、そう思った私達の目の前でで召喚された亡霊は弾け飛んだ。

 

【貴女は迷っていないのね?】

 

「迷う理由が何故あるんです?私は私の道を行く、そこに迷いも、ためらいも、動揺もありませんわ。貴女をぶちのめして横島の所まで辿りつく、それだけですわ」

 

迷わない不屈の心、自分への絶対の自信……傲慢とも取れるその自負がくえすを支えている。

 

「これが私達にない物なのね、迷いは揺らぎ霊力を濁らせる。口だけじゃなくて魂からの意志の力で抗えって事ね」

 

技術だけで戦えると思っていた。だけど私達に足りなかったのは、己を信じる心。そして冥界という死地でどこか萎縮していたのかもしれない、あるいは死を恐れ身体だけではなく、魂まで萎縮していたのかもしれない。

 

「やってやる、やってやるわよ」

 

横島が出来たのだ。私達にだって出来るに決まっている。意志の力で霊力を、魂の力を引き出してやる。己を奮起させ、私は宙に浮かび私達を見下しているエレシュキガルを睨み返すのだった……。

 

 

 

 

~エレシュキガル(分身)視点~

 

私はエレシュキガル様が横島を守る為に生み出した分身であると同時に、横島と共にいる人間を見極める為に作り出されたその分身。本来であればあの人間達を殺すなんて簡単なことなのだが……。

 

(今のエレシュキガル様の方が仕えがいはある)

 

ホムンクルスの器に入れられたことでどこか人間寄りになったエレシュキガル様が生み出した分身だから、どうしても殺してしまおうという意思が弱く感じる。

 

(それか横島の影響なのかもしれない)

 

あの底抜けのお人よしの影響もエレシュキガル様にあるのかもしれない、私もまた影響を受けているかもしれないけど、今の私はそんなに嫌いじゃない。

 

【抗いなさい、己の力の使い方をもっと理解しなさい】

 

確かに目の前の人間達は弱い、だけどポテンシャル自体は過去の人間と大差が無い。では何故弱いのか?それは魂のあり方だ。自分はここまでなのだと、自分にはここまでしか出来ないのだという思い込みがその魂の出力に制限を掛けている。

 

「いつまでも分身の分際で私を見下ろしているんじゃありませんわよ!!」

 

放たれた魔法を檻から放った魔力波で相殺し、恐竜の亡霊を召喚する。

 

「それはもう何度も見ましたわ!!」

 

だが魔女は簡単にそれを相殺し、再び魔法を放ってくる。

 

【貴女は強いわね。だから貴女はもう良い】

 

「は?」

 

鈴を鳴らして魔女だけを隔離し、この世界から追い出した。

 

「くえすに何をしたの!?」

 

【あの魔女は強い意思と力を見せた。先に進む資格がある】

 

あの魔女ならば何の問題も無く横島の力になれる。まだ抗う力を、立ち向かう力を見せていない他の人間達とは違う。

 

「貴女は試練なのですか?」

 

【エレシュキガル様にその意思は無くとも、そうなったのだと思うわ。横島が信じているから私も信じたいという気持ちがエレシュキガル様にもあるのだわ。とはいえ失望なされるかもしれないけれどね】

 

横島が信じているから殺すには躊躇いがある。殺す事で横島に嫌われるかもしれないという事をエレシュキガル様は恐れている。だから私は試練という形で人間の前に立ち塞がっているのだと思う。

 

「そうなら、私達の力を認めさせてあげるわ」

 

【貴女は口は強いけれど、ずっと迷いと躊躇いがあるのね】

 

「んぐうっ……魂の状態を見れるのあまりにも卑怯じゃない!?」

 

【人間は口ではなんとでも言える。口ではなく、己の行動で示しなさい】

 

美神と呼ばれた女に向かって杭を放つと美神はそれを避けて霊波砲で反撃してくる。

 

(確かに迷いはある、躊躇いもある……だけど切っ掛けさえあれば皆戦う術を手に出来る)

 

全員素質はある。だけどそれを発揮するには切っ掛けが足りていない。存在するだけで魂に負荷をかける擬似冥界は魂を覚醒させるのに適した場所ではあるが、それと同時に魂にダメージを受けやすい場所でもある。

 

(私は殺すつもりはないけれど、それは貴女達次第よ)

 

私が殺すつもりは無くとも、不慮の事故は起きうる。これを試練と、殺すつもりもないと思っていれば人間達は死ぬが、それもまた己の出した答えであり、甘さの証明でもある。

した答えであり、甘さの証明でもある。

 

【抗いなさい、死ぬ気でね】

 

鈴を幾重にも鳴らし恐竜達を次々に呼び出す、人間達への試練はまだ始まったばかりだ。

 

(エレシュキガル様。時間は稼ぎますから)

 

冥界くだりを行なっているエレシュキガル様が何を考えているか分からないが、その冥界くだりが終わるまでは誰も横島の元へは辿り着けない。先に試練を突破した魔女もまた冥界くだりを行なっているだろうが、決してゴールに辿り着く事はないのだから、エレシュキガル様を邪魔するものはいないことに安堵しながら私は再び檻を鳴らし、亡霊の恐竜達を呼び出すのだった……。

 

 

 

 

~横島視点~

 

心眼にきちんと別れを、そして感謝を告げたいと我侭を言った俺にエレちゃんは契約書を出した。それは死後、エレちゃんの冥界で過ごすという契約で、俺が天国にはいけないという事を現していたが、俺は躊躇う事無くサインをした。俺は今まで幾度と無く心眼に助けられた。心眼がいなければここまで来る事は出来なかった……心眼にはいくら感謝をしても感謝を仕切れないほどに助けられた。だからきちんと感謝と別れをしたかったのだ。

 

「ど、どうかしら?や、やっぱり冥界は怖いかしら?」

 

俺の手を引きながらエレちゃんは冥界が怖いかと不安そうに尋ねてくる。確かに冥界を聞けば地獄のような場所を想像し、恐ろしいイメージであった。だが実際に目の当たりにした冥界は俺の想像と全く異なっていた……。

 

「凄く綺麗だと思う」

 

確かに暗い静寂の世界で恐ろしいと思わないわけではない。だが、周囲を漂う蛍のような輝きがあまりにも美しかった。

 

「そ、そう!?ち、ちなみにどこら辺がなのだわ!?」

 

「このなんだろう、青くてキラキラしてる砂も綺麗だし、この檻も光ってて……なんかクリスマスみたいだ」

 

語彙力が無いので子供のような返答になってしまったかもしれないけど、クリスマスのイルミネーションのように綺麗だと思った。

 

「クリスマス……?」

 

「エレちゃんはクリスマス知らない?」

 

「う、うん。あちこちは見て回ったけど……そういうのはあんまり知らないのだわ」

 

そっかエレちゃんは古い神様だから今のお祭ごととか祝い事は知らないのか……。

 

「じゃあ今度クリスマスパーティをしよう。クリスマスはまだまだ先だけど、エレちゃんも一緒に祝おうよ」

 

「迷惑じゃない?」

 

「迷惑じゃないよ。約束一緒にクリスマスパーティをしよう」

 

俺がそう言うとエレちゃんは満面の笑みを浮かべて頷いた。

 

「約束なのだわ!」

 

「うん、約束」

 

エレちゃんとそんな約束をしながら、俺は冥界を下る。と言っても身体が思うように動かないのでエレちゃんに肩を借りっ放しで、本当に申し訳ないと思う。

 

「俺こそ迷惑掛けてない?」

 

「大丈夫なのだわ。冥界だと私は無敵なのだわ!横島を抱えて空だって飛べるのだわ!」

 

ふんすっと自慢げにいうエレちゃんの姿は神様なのにとても愛らしくて、思わず笑ってしまった。

 

「何か変な事を言ったかしら?」

 

「ううん、エレちゃんらしいなって思ってさ、死神は優しい神様って言うけど本当なんだなって」

 

「いやいや、私横島をここに閉じ込めたいとか思ってるけど……」

 

真面目でちょっぴり怖い時もあるけどエレちゃんはやっぱり優しい神様だと思うと言うとエレちゃんはぼそぼと何事か呟いていた。

 

「何か言った?」

 

「な、何でもないのだわ!?そ、それよりも目的地が見えてきたわよ」

 

目的地が見えてきたといって遠くを指差すエレちゃんにつられて顔を上げた俺の視線の先には何ともいえない光景が広がっていた。

 

「檻の森?」

 

エレちゃんが持っている檻よりもずっと巨大な大きな檻がいくつも乱立していた。

 

「ここは死んだ物の魂を収める場所。ここで休息して、新しい命へと生まれ変わるための場所。心眼が居るとすればここにいるのだわ」

 

殆どが殻だが凄まじい数の檻が乱立している。この中から心眼を探すのは間違い無く困難を極めるのは一目で分かった。美神さんや蛍達、それにチビや紫ちゃん達も俺の事を心配しているのは分かっている。

 

「エレちゃん。行こう」

 

「分かったのだわ、こっちよ」

 

だけどそれでも俺は心眼を探す為にエレちゃんと共に檻の森の中へと足を踏み入れるのだった……。

 

「ガープ~。反省したってさぁ~」

 

「分かっている。お前に頼みがあって来た。エレシュキガルの擬似冥界の中に横島がいる。それを連れて帰ってきて欲しい」

 

「え~また横島なの?」

 

「そうだ。お前はまだ横島の力を直接見ていないから軽んじているのだ。だが横島の戦いを見ればその気持ちも変わるだろうさ」

 

「ほんとに?」

 

「私とアスモデウスを退けた男だ。お前もうかうかしていると出し抜かれることになるぞ」

 

「ふぅ~ん。分かったよ、エレシュキガルの擬似冥界に行けば良いんだね?」

 

「そうだ。頼むぞ、セーレ」

 

だが心眼を見つけるよりも先にガープによって、セーレが擬似冥界へと送り込まれようとしているのだった……

 

 

リポート20 2人で1人のゴーストライダー その1 へ続く

 




次回からは本来の立ち位置に戻ったセーレを絡めての冥界を書いて行こうと思います。タイトルで分かると思いますが、次回は僅かに仮面ライダーの要素が強くなると思いますのでご了承願います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
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