GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL   作:混沌の魔法使い

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その2

リポート20 2人で1人のゴーストライダー その2

 

~蛍視点~

 

ソロモン72柱の中でセーレは26の軍団を率いる強大な君主であり、悪魔としての格は極めて高い。だがアスモデウス、ガープと比べるとその危険度は低い……私はそう思っていた。セーレは召喚しても召喚者に害をなす事は無く、生贄や対価を要求する事もない。ソロモン72柱の中では公平で良い性質を持つからだ。攻撃的な逸話の多いアスモデウスや魔術に秀でているガープよりも戦いやすい……そう思っていた。それはくえすも同じだと思うのだが……セーレは私とくえすの予想とは全く異なる戦い方をしてきた。

 

「つうっ!?」

 

「くっ!?」

 

私とくえすの呻き声が同時に響く、浅い切り傷が何時の間にか身体に刻まれていた。

 

「このっ!!」

 

「おっと危ない危ない」

 

エレシュキガルが杭を射出するが、セーレの姿は一瞬で消え、私達の頭上で胡坐をかいて浮かんでいた。

 

「僕は確かにアスモデウスとガープと比べれば弱いよ?悪魔としての格は最上級だけど、多分純粋な戦闘能力じゃあよくて下級神魔クラスだろうね」

 

にやにやと笑いながらセーレは自分は余り強くないと告げ、私とくえすに見せ付けるように右手を突き出してくる。そこには精霊石と銃のカートリッジが乗せられており、私とくえすはポケットに手を入れ、そこに入っていたはずの物がないのに気付いた。

 

「精霊石がッ!?」

 

「私はエンチャントした銃弾をいかれましたか……ッ!随分と手癖が悪いですわね!」

 

何時の間にか道具を盗まれていた事に気付きうろたえている私とくえすをみてセーレはニヤニヤと笑った。

 

「でもね、弱い能力は弱い能力なりの戦い方があるのさ、真っ向から戦うなんて方法をしなくても僕には僕の戦い方があるのさ」

 

セーレが指を鳴らすとまた見えない刃に身体が切裂かれた。何の気配も魔力も神通力の気配も感じない。

 

「エレシュキガル。何をされているのか分かりませんか?」

 

「分からないのだわ……多分セーレの固有の能力だと思うのだけど……私でも感じ取れないのだわ」

 

エレシュキガルでも攻撃の予兆も気配も感じ取れないのは厄介だ。

 

(今は私達を甚振るのを目的にしてるからこの程度で済んでるけど……カラクリを見破らないとやばいわ)

 

セーレの攻撃の秘密を見破らない事には、いや、仮に見破ったとしても私達にセーレを倒すだけの攻撃力はない。

 

「また持っていかれましたわッ!」

 

「こっちもよ……」

 

どんどん装備が奪われ、攻撃する手段が減っていく……セーレの戦い方が何なのか、私もくえすも嫌でも気付かされる羽目になった。

 

「神魔の癖に人間のような戦い方をするのですね、セーレ」

 

くえすの言う通りだ。これは神魔の戦い方ではない、人間の戦い方だ。

 

「その通りだよ。僕には他の神魔のような派手な戦いは出来ない。だから僕は油断も慢心もしないよ」

 

セーレの戦いはリスクを減らし、どれほど時間を掛けようと確実に勝利する戦いだ。

 

「厄介な相手なのだわ!」

 

エレシュキガルが檻を振るい何かの攻撃を弾いた音がした。咄嗟に周囲を見るがセーレが使っている武器らしい物はやはり見えなかった。

 

「喰らいなさいッ!」

 

「このっ!」

 

攻撃の手段を見破るのは今は出来ないと判断して、セーレへの攻撃を選択した。だがセーレの姿は一瞬で消え、闇の中からセーレの声だけが響いて来る。

 

「エレシュキガルなんてインチキをしてるんだ。真っ向から僕が戦う理由はないよね?じっくりと狩らせてもらうよ」

 

再び見えない攻撃で身体が切裂かれ、ポケットに入れていた結界札が消え去っていた。

 

「厄介にも程がありますわねッ」

 

くえすが文句を言いながらも回復魔法を使ってくれたおかげで傷が塞がり、出血多量は防ぐ事が出来たけど、セーレの攻撃を見破らない限りはまた同じことの繰り返しだ。

 

「エレシュキガル。セーレの姿を見つけれないかしら?ここは貴女の異界よね?」

 

「ごめんなさい、無理なのだわ。なんらかの方法で姿を消しているのならなんとかなるのだけど……」

 

「権能だから無理ということですわね。なんとかして同じ戦いの土俵に引きずり出さないといけない訳ですか……」

 

「とは言え、引きずり出したとしても戦うのはかなり難しいわね」

 

セーレの権能はどこにでも移動できる能力となんでも盗み出せる能力……それは確かに戦闘向けの能力では無いが、それを完全に使いこなしているセーレは攻撃と防御に使用しているのは間違いないけど……。

 

「本体以外もどこにでも移動させれる?」

 

「流石にそれはないでしょう。それが出来ればセーレは暗殺に特化した神魔になっていて、既に最高指導者は殺されているはず……何か別のカラクリがある筈ですわ」

 

確かに攻撃も移動させれるのならばセーレはどの神魔も警戒しなければならない強力な神魔になる筈で、これほど長い間スパイ活動を出来るわけが無い、隠していたということも考えられるが、暗殺が続けば間違いなくセーレは疑われる。

 

「ガープと合流して何か新しい手札を手に入れたって事ですわね。でも段々分かってきましたわね」

 

「そうねッ!」

 

一瞬だけ、本当に一瞬だけ気配が現れる。その気配を感じ取る事が出来れば攻撃は回避出来る。回避出来るといっても致命傷を避けるだけでダメージは蓄積していくが、動くのに支障がなければ回避出来ているといっても良い筈だ。

 

「エレシュキガルはセーレを探して、1発どでかいのをぶちかましてくれますか?」

 

「分かったのだわ! でも、ちょっと見つけるのは難しいかもしれないのだわッ」

 

エレシュキガルの探知能力でも探し出せないセーレを見つけ出すのは中々に骨だがやるしかない。

 

「もっう!乙女の柔肌をなんだと思ってるのよ!」

 

「全くですわねッ!」

 

嫌がらせのように小さく、細かい攻撃を繰り出してくるセーレに思わずくえすと共に叫んでしまったが、別に悪ふざけとかではない。これも私とくえすの作戦の1つであった。

 

「今度は髪を狙ってあげようかな」

 

((掛かったッ!))

 

嗜虐的なセーレならば私とくえすの言葉を聞いて動いてくると思った。姿が見えない、攻撃も見えないというのは変わらないがその視線を感じることが出来る。

 

(タイミングを間違えないでよ)

 

(言われなくとも)

 

恐らくチャンスは1回、その1回を逃せば、セーレは距離を取り私とくえすが動けなくなるまで近くに出て来る事はないだろう。それにエレシュキガルにでかいのをぶつけてくれと頼んだが、エレシュキガルに任せるつもりは私には無く、古い除霊術の修行、エレシュキガルの分身体との戦い、そしてくえすの白と黒魔法を混ぜるのを見て、私も私なりに神魔への攻撃手段のヒントを掴めたと思う。

 

(ソロモン72柱、試すのにうってつけの相手だわ)

 

いつまでも足手纏いではなく、私も神魔と戦う術を手に出来る。横島の力になれる、横島にだけ負担を掛けなくて済む。そして何よりも何度も言われている最悪の未来を変えることに繋がると私はそう信じ、集中力を高めながら反撃のチャンスを待つのだった……。

 

 

 

~横島視点~

 

 

檻が樹木のように乱立しているのを1つ1つ確認していくが、心眼の姿は何処にもない。でもエレちゃんはここにいるといっていたので、根気よく檻の中を確認していると背後に気配を感じた。

 

「エレ……お前はどうしてここにッ!?」

 

エレちゃんだと思ったのだが、俺の背後にいたのはローブ姿で本を手にした男……正体不明の怪人レクス・ローの姿で、咄嗟に眼魂を構えるが、レクスはそんな俺を手で制した。

 

「勘違いしないで欲しい、私は戦いに来たわけではないよ。横島忠夫」

 

「そんな言葉を信じると思うのか?」

 

レクス・ローの言葉を信じるほど俺は馬鹿ではないつもりだ。それに今までの立ち振舞いを見て、レクス・ローを信用なんて出来る訳が無い。

 

「心眼を探しているのだろう?彷徨い闇雲に探している君にヒントをあげようじゃないか」

 

心眼の言葉に俺は動きを止め、そんな俺を見てレクス・ローは喉を鳴らして笑った。

 

「心眼は目に見えていたかな?実体のある物だったか?違うのではないか?」

 

「それ……は」

 

「良く考えると良い。心眼は君にとって何なのか、それを思い出せば心眼の場所へと自ずと辿り着けるはずさ」

 

レクス・ローはそう言うと現れた時と同じ様にその姿を消した。

 

「心眼……」

 

心眼は俺の側にいてくれた、俺の道を示してくれた……目に見えなくとも、そこにいなくとも……心眼は確かに俺の側にいてくれた。目を閉じて意識を集中する、目ではない、心眼の姿を映すのは肉体の目ではなく、魂の目だ。

 

「……見つけたッ」

 

遠い、凄く遠いけど確かに見えた。心眼の姿がはっきりと見えた。

 

「今行くからッ」

 

ちゃんと別れを告げたい、心眼に今までありがとうと言いたいんだと思い、俺は足を引き摺りながら心眼の元へと歩き出した。そんな横島の姿をレクス・ローは上空から見つめていた。

 

「ここも1つの分岐点。横島忠夫……君はどちらへ辿り着くかな?」

 

レクス・ローの手の中には2枚のライダーカードが握られていた。そのどちらもノイズが走り、絵柄が現れは消え、消えては現れるを繰り返していた。1つは鎧を纏ったような大きな目がヴァリアスバイザーへ浮かんだ姿、そしてもう1つは2人のウィスプの姿が描かれたカードだった。

 

「君が思うよりも心眼は大きな存在である。心眼がいるかいないか、それだけで未来の可能性は大きく変わる。頑張りたまえよ、横島忠夫。心眼はもう己の役割は終わったと思い込んでいるからね」

 

心眼を見つけたとしても説得できるか、それとも出来ないかは横島次第。その結果次第では未来も大きく変わるとレクス・ローは呟いて振り返った。

 

「さて、あちらはどうしますかね」

 

セーレと戦っている蛍達の勝率は現状では0%。テコ入れするか、それとも見定めるべきか、はたまた横島を観察しているか……レクス・ローが手にしていた本を閉じると、レクス・ローの姿は2人に増えていた。

 

「君は横島を見ていてくれたまえ、何かあれば助太刀してもかまわない」

 

「了解した。そちらも蛍達を死なせてはいけないぞ」

 

「分かっているとも、では互いに頑張ろう」

 

2人へと分かれたレクス・ローは溶けるように消え去り、冥界の暗い空に冷たい風が吹きぬけるのだった……。

 

 

 

~琉璃視点~

 

エレシュキガルの試練を突破した私達は蛍ちゃんとくえすを探し、そしてエレシュキガルと一緒にいる2人を見つけた。そこまでは良い、だけど其処からが問題だった。

 

「はっははははッ!ゲストが沢山だ。歓迎してあげるよ」

 

闇の中にセーレの声が響き、見えない攻撃が飛んでくる。肌に痛みが走った瞬間に霊力で弾きながら周囲に視線を走らせるが、やはりセーレの姿は見えない。

 

「小竜姫様!なんとかなりませんか!?」

 

「すいません無理です!」

 

「私でも無理ですね……ッ!」

 

小竜姫様達は無理だと叫ぶ、セーレの格は小竜姫様達よりも上なのは分かるが、もう少し何とか頑張ってくれないだろうか。

 

「シズクが横島君を捜しに行ってくれてるからそっちの心配はないけど……」

 

元々見ていただけのベルゼブルと牛若丸とノッブはまだエレシュキガルの試練の場所に残っているらしい、シズクは水が本体なので、分身が美神さん達についてきたので、こっちに飛んだ瞬間に横島君を捜しに行ったので、ここに横島くんがいるのは間違いないが、今連れてこられるとこっちが大分不味い。

 

「こっちが問題ですね」

 

エレシュキガルと小竜姫様とブリュンヒルデ、神魔が3人いてもセーレの姿を見つけることが出来ない……間違いなくセーレの権能だと思うが、厄介すぎるにも程がある。

 

「っつうッ!」

 

「いったあ……」

 

本当に浅い、浅い傷なのだが身構えてない所に来るので思わず呻き声を上げてしまう。

 

「いっっつうう」

 

ネクロマンサーの笛の音色が途切れ、少し身体が重くなるがおキヌちゃんは頑張って再び笛を吹いてくれる事でまた身体の感覚が鋭くなる。

 

「くえす、蛍ちゃん。これ避けるとか防ぐコツある?」

 

「馴れてください」

 

「多少の痛みは我慢ですわね」

 

脳筋だが、本当にそれしか対象法が無い。

 

(装備は奪われるし、不可視の攻撃はあるし……厄介な相手だわ、セーレッ)

 

純粋な強さよりもこういう絡め手を使ってくる相手の方がずっと厄介だ。しかも私達は基本的に霊具使いであり、霊具を奪われるのは戦闘方法に制限が掛けられると同意義で時間が経つに連れてどんどん不利になる。

 

「見鬼君でも駄目で……」

 

「ルーンでも駄目ですね……」

 

見鬼君でも駄目、ブリュンヒルデのルーンでも駄目となると考えられるのは2つしかない。

 

「セーレの技量か、ガープの道具。どっちだと思います」

 

セーレの純粋な技量か、ガープの作った武器を使っているのかどちらかではあると思うのでどっちかだと思うんだけど……。

 

「多分両方。私達全員が同時にダメージを受けてる。さすがの神魔でもここまでは出来ない筈。小竜姫様違うかしら?」

 

「いえ、あってると思います。ただ私達を殺す訳には行かないってだけで、本気になれば……」

 

「手足の1本、2本は飛びますわね。その前に何とかしてセーレをこちらの戦場に引っ張り出さなくては……」

 

姿の消えている最上級神魔を見つけ出し、この攻撃を止めさせる。勿論引きずり出したとしてもセーレの強さは変わらないが……。

 

「人間はすぐ動けなくなるんだから頑張りなさいよ!」

 

エレシュキガルの言う通り出血多量で簡単に人間は動けなくなる、もっと言えば死に近づく訳だ。

 

「十分に動けるだけの余力を残して、セーレをこの場に引きずり出す……本当最悪ですね」

 

「そうね、でもやるしかないのよッ」

 

余りにも厳しい条件だが、やるしかないのだ。横島君はもっと厳しい条件で戦ってきたのだ、この程度で泣き言なんて言ってられない。

 

「でも痛いものは痛いのよねぇッ!」

 

本当に浅く細い切り傷……浅く、細い……?この一瞬で刻まれる傷にふと疑問を抱いた。小竜姫様の言う通り、セーレがその気ならば簡単に手足が飛ぶだろうがそれをしない、あるいは出来ない理由がある?斬り飛ばすことをしないのではなく、出来ないのではないか?そして姿を消しているのではなく、消さなくてはいけない理由があるのかもしれない……神卸なんていう霊能を持っていれば神の気配にはかなり鋭くなる、もっと意識を研ぎ澄ませばセーレの存在を探知できるかもしれない。

 

(試してみる価値はあるかも知れないわね)

 

ダメージを覚悟で試してみる価値はあると私は判断し、神経をより細く、鋭く研ぎ澄ましセーレの気配を探り始める。これがこの絶望的な状況の突破口になるとそう信じて……。

 

 

リポート20 2人で1人のゴーストライダー その3へ続く

 

 




再び怪人レクス・ロー暗躍タイムです。そしてセーレとの戦いに何かを掴み始めた美神達と戦況は少しずつだけど変化してきました。次回は横島と心眼をメインで、セーレ戦2戦目に入って行こうと思いますので、次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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