GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL 作:混沌の魔法使い
リポート20 2人で1人のゴーストライダー その5
~横島視点~
セーレの言葉は一言一言が胸に突き刺さった。心眼を失った事はとても辛かった、仇が目の前にいるのに敵討ちをしないのか?と言われた時は怒りのままにセーレに飛び掛りそうだった。だがその度に胸の奥で何かが脈打つのだ。それは止めろと、怒りに飲まれるなと心眼が俺に訴えかけて来ているとしか思えない優しい物だった。だがその優しさがあっても心眼の声が聞こえない、それが俺の中の悲しみを強く刺激した。
「がっぐ……ッ!」
俺の悲しみがまし、心眼を失った原因が目の前にいる。その事に対する怒りが俺の中の狂神石をより強く脈動させた。
「うっがあ……うぐっ!」
暴れださないように自分で自分を抱きしめるようにして狂神石を押さえ込もうとするが、狂神石の鼓動が強くなるたびにセーレへの憎しみが俺の中へ生まれ、それによってより狂神石が活性化するというループに俺は頭がおかしくなりそうだった。怒りと憎悪と殺意でおかしくなりそうになる度に心眼の鼓動が俺を呼び戻す。
ドクン……ドクン……ドクンッ!
俺の中で狂神石の鼓動はどんどん激しくなり、心眼の鼓動を消していく、霊力が黒く染まり俺の耳元でゾッとするような俺の声が響き始める。
【憎め、恨め、お前にはその権利がある。何故怒りを解き放たない?何故憎悪を押さえ込もうとする】
狂神石が俺を写し取った……いや、違う、これは俺の嘘偽りのない本心だ。
【そうだ。俺はお前だ、そしてお前は俺である】
心眼はこの俺を拒絶したが、俺はこの俺を拒絶した事は無かった。分かっている、知っているのだ。この俺も俺の本質の1つであり、切っては切れないものであると分かっているのだ。狂神石によって表面化しただけで俺の中に闇があるのは分かっていた。
「それとも使い魔だから、使い捨てとでも……「セーレえええええええええッ!!!!」
【殺してしまえ、あいつがいなければ心眼を失う事は無かった。何を我慢する必要がある?】
セーレの挑発と闇の誘いに俺の中で何かが弾けて、ウィスプ眼魂が黒く染まり、それを手にしようとした瞬間だった。
「……心……眼?」
闇の中でも白く輝く光に俺の手が止まった。胸の中心から溢れる白い光は間違いなく心眼だった。
【どうもまた邪魔されたようだな。ふん、好きにしろ。何れお前はこちらへ堕ちてくるのだからな】
闇の俺が消えてもなお溢れた闇は消えていない、胸から放たれる白い光に両手を当てる。
「……やっぱり駄目だ、駄目なんだ。心眼」
そこにいると、姿が見えなくても側にいると心眼は俺に言った。だけど俺にはそれが耐えられないと思った、心眼がいてくれたからここまで来れたのに、その心眼がいなくなる事に俺は耐えれない。その時だった、指が自然と動いて印を結んだ。すると胸から溢れていた光が俺の目の前で丸い球体になり手の中に落ちてきた。
「……心眼、俺に力を貸してくれよ」
【アーイ心眼ッ!】
今までの眼魂と違う陰念のパズル・ファイター魂のように眼魂の前面が回転するそれをベルトに押し込むと、ベルトから眩い光が溢れ出し俺とセーレの間の闇を全て消し去った。
「な、なんだ。何が起きて……」
その光に困惑するセーレが攻撃してくるがその光がセーレの攻撃から俺を守ってくれていた。
【ツナゲテミナーッ!ツナゲテミナーッ!!】
「……行くぜ、心眼。変身ッ!」
【開眼心眼!!俺が私で、私がお前!2人で1人ゴーストライダーッ!!】
純白のパーカーがベルトから飛び出し、それを纏うと目の前に霊力の壁が現れた。ゆっくりと迫ってくるその壁を通過した瞬間俺の隣にはもう1人のウィスプがいた。セーレだけではない、美神さんや小竜姫様達も驚き、そしてもう1人のウィスプに変身している誰かも困惑していた。
「何がどうなって……」
自分の手を見て、周りを見て何がどうなっているのかと困惑しているその声は心眼の声だった。ずっと一緒にいたその声を俺が聞き間違えるはずが無かった。
「行くぜ心眼ッ!」
そう叫んでガンガンブレードを手にセーレへと突撃する。1人では俺は間違いなくセーレに勝てない、だけど心眼がいれば勝てる。届かないはずの牙をセーレへと届かせる事が出来ると確信していた。
「横島……ああ。行くぞッ!!」
心眼が近くにいてくれる、それだけで俺は何も恐れず戦う事が出来る。前だけを、憎いセーレだけを見て俺は冥界の大地を蹴って走り出すのだった……。
~セーレ視点~
目の前の光景に僕は完全に混乱していた。死んだはずの心眼が蘇った、僕の目の前で横島と共に戦っている。
「ふざけるなよッ!この規格外のイレギュラーがッ!!」
「うるせえぼけえッ!!」
僕の怒号を掻き消すように怒鳴り返す横島が振るった剣をレイピアで受け流した直後に霊波弾が打ち込まれる。
「この程度があッ!」
転移が封じられているので面倒だと分かっていても後ろへ飛んで続け様に打ち込まれる霊波弾を回避する。
(狙いが正確だッ!鬱陶しいねぇッ!)
余りにも狙いが正確で避けるのに苦戦していると何発目かの霊波弾が炸裂し、舞い上がった冥界の砂で視界を奪われる。
「きかねぇのは分かってるんだよッ!!」
霊波弾を隠れ蓑にして突進してきた横島の右拳が僕の顔面に叩きつけられる。
「だから効かないって言ってるだろうッ!!」
直撃を受けても僕は怯まず反撃にレイピアを突き出そうとし……。
「待たせたな横島。もう大丈夫だ」
【トマーレ!】
標識のようなマークが僕の前に浮かび、僕の動きは完全に止められた。
「だけどこんな事をしても無駄だよ!僕に人間の攻撃なんか効かないよッ!」
さっきまでの狂神石の影響を受けていた横島ならば僕にダメージを与える事も可能だ。だけど狂神石が安定し、更に変身した事で横島もまた神魔に近い状態になっている。最上級神魔である僕に横島の攻撃も、心眼の攻撃も通用していない。多少弾かれたり、衝撃を受けたりしたとしてもダメージにはなり得ない……そう思っていた。
「ぶっとべッ!!」
「がっはぁッ!」
横島が僕の腹に両手を当てた瞬間、何かが炸裂して僕は思いっきり血反吐を吐いた。
「な、なにをじだあッ!」
「くえすや蛍がやっただろッ!霊力と魔力をあえて反発させればッ!!」
手の平を当ててから、肘うちが叩き込まれると再び轟音が響いて僕は吹っ飛ばされた。
(こ、こいつ……僕の身体にッ!)
間違いない、横島は自分の霊力を僕の身体に蓄積させて、打撃に魔力を付与してそれらを反発させる事で爆発させている。
「いい加減にしろよッ!このイレギュラーがッ!?」
「やかましいぞ。セーレ、お前の声は耳に障る」
「とったぁッ!」
心眼が打ち込んできた霊波弾による衝撃で声がつまり、霊波弾が命中した所に横島の正拳が叩きこまれ、衝撃が身体の中を突き抜ける。
「げぼっ!!くそがッ!」
横島1人ではおそらくこの攻撃は出来ないのだ。横島1人でここまで緻密な霊力と魔力のコントロールは出来ないだろう。それこそ超至近距離でなければ出来ないのだろう、だがそれを心眼が霊波弾を打ち込み、霊力が僕の身体に残っている間に横島が打撃を叩き込み、それを炸裂させる。
「お前なんぞにッ!人間相手にこの姿にさせられるなんてなぁッ!」
人間の姿のままでは勝てないと僕は屈辱ではあったが、魔神の姿へとその姿を変える。
「人間を馬鹿にしてるからそうなるんだよッ!」
「人間の分際で神に抗うなッ!」
レイピアが変化したブレードと横島の手にしているガンガンブレードがぶつかり合い火花を散らし、心眼が横島をサポートする為に霊波弾を打ち込んでくるが、魔神へと変化した僕にそんな豆鉄砲なんて痛くも痒くもない。
「遊びはここまでだ、覚悟しろよ。人間と偽魂如きがああッ!!」
たかが人間と作られた魂相手に魔神としての姿を使わされたことに僕の怒りは頂点を向かえ、今の僕に横島を殺さないで捕獲するという考えは微塵も残されていないのだった……。
~蛍視点~
魔神の姿となったセーレと横島と心眼が2人で戦っている光景を見て、私は思わず奥歯を噛み締めた。横島を守ってくれているのは嬉しいし、私達を殺させないために一緒に戦っているということも分かっている……分かっているのだが、どうしても心の中で納得出来ない物があった。
(何も言葉を交わしていないのに……ッ)
横島と心眼は何も言葉を交わしていない、それなのに2人の連携は完璧だった、相手が何を望んでいるのか、何をすれば良いのかを完璧に理解しあっていた。「今」の私に横島と一緒に戦う力はないというのは分かっている……だけど自分の居場所を奪われたような気がして言葉に出来ない黒い炎が胸の中にこみ上げるのを感じた。
(私にも同じ事が出来る……できるのに)
私だって心眼と同じ事が出来る……それなのに見ていることしか出来ない事が悔しかった。まだ神魔と戦うだけの技術を確立出来ていない、今回の事でヒントは掴めたと思うけど荒削りなのは分かっている。これをもっと煮詰めないと一緒に戦えないっていう事は分かっている……だけどそれでも……見ていることしか出来ないという事が悔しかった。
「ちょこまかちょこまかとッ!!」
「真っ向から戦うような馬鹿な真似はしないだけだッ!」
ガンガンブレードとブレードがぶつかり合い火花を散らす。魔神となったセーレは全身を甲冑に包み、身体も一回りも二回りも大きくなっていて、どう考えても鍔迫り合いが出来る体格差ではなかった。だが横島とセーレは鍔迫り合いを行っていた。
「シッ!!」
ガンガンブレードの峰に正確に心眼が霊波弾を当て続け、それによって足りない力を補った横島の上段からの振り下ろしがセーレの胸を捉える。
「ぐううっ!!鬱陶しいんだよッ!!」
ダメージを受けたセーレはますます激昂し、ガンガンブレードを振り切った態勢の横島の首目掛けてブレードを振る。
「させるわけがないだろう」
【トマーレ】
だがそのブレードはナイトランターンから発射された止まれの標識によって止められ、横島はその間にセーレの胸に札を貼り付けて距離を取る。
「急急如意令ッ!」
剣指で空に文字を描き、次の瞬間には札が炸裂しセーレの姿がボールのように吹っ飛ぶ。
「横島私の後ろに回れ」
「OKッ!」
横島が心眼の後ろに回り、心眼がナイトランターンから霊力の壁を作り出しセーレが放った真空刃を防いで見せた。
「ふうううッ!」
続け様の攻撃が叩き込まれているがセーレはいまだ健在だった。
「横島君と心眼を助けないと、今のままだと持たないわよ」
「分かってますッ!分かっているんですけどッ!この結界が余りにも強力すぎるんですよッ!」
「……当たり前だ。横島が文珠を使ってつくった結界だぞ?外から抉じ開けれるのは至難の技だ」
文珠の結界を使ってまで私達を守ろうとしてくれたのは嬉しいが、それに喜んでいてはいけないのだ。これに喜んでしまっていてはいつまでも私達は足手纏いにしかならないのだ。なんとかする方法を、なんとかして横島を助ける方法を考えなくてはならない。
「貴女達が色々と思っているのは分かりますが、今はあの魔神を擬似冥界から追い出すのが優先なのだわ」
「追い出すって……エレシュキガル、そんな事出来るの?」
横島と心眼はセーレと戦えているがダメージは殆ど通っていない、僅かなダメージは与えれているがセーレを倒すには程遠い。このまま戦い続ければ横島が危険なのは言うまでもないので追い出す術があるならそれに頼りたい気持ちはある。
【何かあるなら出し惜しみしないで欲しいです。セーレが冷静になれば主殿が危険です】
【うむ、今は激昂しているから対処出来ているが、冷静になられると不味いぞ】
牛若丸とノッブの言う通りだ。冷静さを欠いているから戦えているが、本来ソロモンの魔神であるセーレと2人で戦うというのが土台無理な話だ。細かい攻撃が挑発になっていているが、セーレがそれに気付けば横島と心眼は一気に不利になる、文珠の結界を解除する術が無いが、文珠の効果が切れるまで横島1人で、そして横島の戦いを見ているだけなんて耐えれる訳が無い。例え微々たる物で横島の助けになれるのならばなんでもする覚悟はある。
「何か対策があるなら教えて、命に関わるレベルの無茶と無理でもやる覚悟があるわ」
迷いと躊躇いを見せるエレシュキガルに向かってそう言うと、エレシュキガルはにやりと笑みを浮かべ、あ、しまったと思った時にはもう遅かった。
「ならギリギリまで魔力と霊力、それと生命力を貰います。駄目と言っても貰いますから」
足元の冥界の砂が輝き、エレシュキガルの言った通り死ぬギリギリまで力が吸い取られ、私達は地面に突っ伏した。
「横島!今ゲートを開きます!蹴り出しなさいッ!!」
「わ、分かった!心眼!行くぜッ!」
「任された」
薄れ行く意識の中私が見たのは心眼の放った霊波弾を背中に受けて加速した横島の飛び蹴りがセーレを捉え、セーレがエレシュキガルが開いたゲートの中へと吸い込まれて消えていく姿で、これでひとまず一安心と思った瞬間に私の意識は闇の中へと沈んで行った……。
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そして私達が目を覚ました時。そこには何とも言えない光景が広がっていた……。
「シテ……コロシテ……」
顔所か耳まで真っ赤にして顔を両手で隠して転がっている横島とどことなく、私と琉璃さんとくえすに似た容姿の銀髪の女性が困ったように肩を竦めている光景と爆笑してるノッブ達の姿があって……。
「「「どういうこと?」」」
私達が気絶している間に何があったのか、そしてあの女性は誰なのかと心底混乱しながらそう問いかけるのだった……。
リポート20 2人で1人のゴーストライダー その6へ続く
セーレのラストは蹴りだされて終了でした。あんまり盛り上がる所ではないのであっさり目にかいてみました。次回は謎の女性というか、分かっていると思いますが心眼の所に触れ、セーレの支店でのラストアタックを書いて、リポート20は終了で、そこからは暫くほのぼので書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします