GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL 作:混沌の魔法使い
リポート20 2人で1人のゴーストライダー その6
~セーレ視点~
魔神へとなっても押されている。1対1なら間違いなく勝てる……人間と、そして作られた魂なんかにこの僕が負けるわけが無い。
「ふ、ふざけるなよッ!!人間の分際でッ!!」
レイピアが変化したブレードを怒りに任せて振るう。その斬撃に横島は反応出来ておらず、間違いなく必中を確信していたが刀身を通じて手に伝ってくる重い衝撃にブレードの切っ先が逸らされたのを感じた。
「うおりゃあッ!!」
「くうっ!鬱陶しいなッ!!」
横島が両手で握った大剣の一撃が胸の装甲を穿つが、当然ながらその程度でダメージを受けるほど僕の魔神としての姿は弱くない。だが僅かに後方に押し込まれ、そこに心眼がはなった霊波弾が続け様に打ち込まれ、大きく姿勢を崩す事になった。
「こいつも喰らえッ!!」
横島が投げてきた陰陽札が胸に張り付いた瞬間に爆発し、後へと更に吹っ飛ばされる。
(めんどくさい!殺して良いならこんな奴らなんか……ッ!)
殺して良いのなら転移能力を封じられたって遅れを取る訳が無い、だが殺してはいけないというガープとアスモデウスの指示が僕の動きを縛る。
「こっのおッ!」
「横島あまり深追いするな!面倒な事になるぞッ!」
更に僕のストレスを加速させるのが心眼だ。かなりクレバーな心眼は横島が攻め込み過ぎないように警告し、僕の妨害をしつつ横島が戦いやすいように戦況をコントロールしてる。
「ちいっ!!」
放たれた霊波砲を後へ飛びながら回避し、ブレードの切っ先から魔力刃を地面に向けて放ち舞い上がった冥界の砂で横島と心眼の視界を奪う。
「ガープ!撤退するよ!これ以上は面倒だッ!」
『横島はどうなった?』
「訳わかんないよあいつッ!どうやったのか知らないけど心眼を復活させてライダーにしてる!しかも僕の転移能力まで封じて来てるから厄介なんてもんじゃないよッ!」
ガープとアスモデウスが遅れを取ったのも悔しいが分かる。横島は余りにも異質だ、戦闘の中で恐ろしい速度で成長進化する。本気で戦うのならば真っ先に殺さなければならない相手だと分かる。殺してはいけない上にエレシュキガルの異界なので少しずつ身体が重くなっているのを感じる。これ以上は本当にやばい、命の危険に晒されてまで横島を殺さないなんて言っていられるわけが無い。
(……あの魔女なら分かるんだよ、なんだ。こいつ、本当に頭おかしいのか)
ガープでも優れていると認めているあの魔女なら分かる。霊力を魔力を反発させて対消滅作用を利用しての攻撃は対神魔・英霊に優れていると認めざるを得ない。だけど横島はおかしいだろ、見よう見真似でそれを再現して打撃で叩き込んでくるとか頭がおかしい以外の何者でもない。
『撤退してくれ、もう十分だ』
「今度からは蘆屋かレイを付けてくれッ!」
僕1人では面倒すぎる、頭に血が昇って殺しそうになるので適当にヘイトを集める相手が無いと駄目だ。僕は自分で言うのもなんだが、気が短いほうなのでこうも好き勝手にされていると本気で殺しそうになってしまう。ガープから撤退しても良いと言う言葉を聞き、ガープの魔道具で撤退しようとした瞬間、身体が後に吸い込まれた。
「貴方が私の世界に来る事は許可していません!今すぐに出て行きなさいッ!」
「お、おまッ!!女神エレシュキガル!!いい加減にしろよおおおおおッ!?」
別時空に僕を追い出そうとするエレシュキガルの攻撃に咄嗟に時空の穴の縁を掴んで吸い込まれるのを防ぐが、その際に手からガープが用意してくれた撤退用のアイテムが零れ落ちてしまった。
「おまッ!マジでッ!!女神の権能の無駄遣いするなッ!」
「う、うるさいのだわ!早く出て行きなさいッ!!」
「この色ボケ女神ッ!何歳年下だと思ってる!?」
「うるさいうるさいうるさーいッ!!」
横島の為って言葉は冤罪札でもなんでもない、そもそも女神としてもう少し……。
【ダイカイガン!心眼!オメガドライブッ!】
「うおりゃああッ!!」
僕とエレシュキガルが口論している間に地面を蹴って飛び上がった横島の蹴りが眼前に迫っているのを見て僕は本気でプッツンした。
「お前はお前でいい加減にしろよッ!横島ぁあああああッ!!」
「とっとと出てけえこの野郎ッ!!」
飛び蹴りが叩き込まれたが、必死に時空の穴の縁を掴んで耐える。
「うおりゃああああ!!」
「あああああああッ!!」
何処に放り出されるか分かったもんじゃないので必死に耐えていると心眼が僕の方に腕を突き出しているのが見えた。
「地獄に落ちろ、腐れ魔神」
【ダイカイガン!心眼!オメガシューティングッ!】
心眼の突き出した腕から特大の霊波砲が放たれ、その霊波砲を背中に受けて再加速した横島の足の裏が顔に迫ってくる。
「お前らなんか大嫌いだアアアアッ!!ぷぎゃあッ!?」
顔面に蹴りを叩き込まれ、ソロモンの魔神とは思えないくらい情けない悲鳴を上げながら、僕はエレシュキガルの冥界から文字通り蹴り出された。
「ぶは……はははっ!それでバミューダトライアングルに出てそこの龍に追い回されたと?」
「ははは。それはお疲れだったな、セーレ。尻は大丈夫か?」
「うっさい笑うな!つうかなんで人間界に龍なんているんだよ!あいててて……ッ!横島なんか大嫌いだッ!」
顔に横島の足跡、そして蹴り出された場所に何故かいた龍に尻を噛みつかれて、命からがら魔界へと帰還した僕は今まで以上に横島を嫌いになるのだった……。
~美神視点~
セーレを擬似冥界から追い出す為にエレシュキガルに霊力を分け与えた事で蛍ちゃん達は全員気絶してしまっていた。勿論私も気絶する寸前だったが、ギリギリで踏ん張る事が出来ていた。
(メフィストに感謝かしら)
メフィストの残滓、メフィストの存在を認識している事で私の霊力も上昇していた。それが辛うじて気絶しないで済んだ理由だった。
「……ふむ、これが人間の身体か」
「しん……がん?」
横島君の前に立つ銀髪の女性……横島君より少し年上で琉璃くらいの年代の女性は変身を解除した心眼だった。
「どういうこと?」
消滅したはずの心眼が復活したのは良い、だけどそれなら横島君の姿をベースにした姿になる筈だ。だけど目の前の心眼は女性……考えられるのは小竜姫様の影響だけど、中華系の小竜姫様とは全然違っていてどちらかというとくえすに似ている容姿だ。
「分からない、分からないんですけど……今の心眼は擬似英霊に等しい状態かと思うんですけど、ブリュンヒルデはどう思いますか?」
「私も同意見です。ノッブ達のような英霊としての深みはありませんが……限りなく英霊に近い存在ですね」
英霊としての深み……歴史の積み重ねや、伝承の事だろう。それなら1年も満たない時間しか生きていない心眼の霊としての厚みは確かに薄いだろう。
【まぁ横島の霊力に魔力に龍気じゃろ?下手をすればワシらより総量は上だぞ?】
【ええ、主殿がコントロール出来てる分は微々たる物ですけどね】
横島君の霊力の総量が神魔に匹敵するのは分かっていたけど、例えそうだとしても心眼が復活ではなく、人型になったのには疑問が残る。
「エレシュキガル何かした?」
「わ、私は何もしていないのだわ。わ、私は女神だけどそこまでは分からないのだわ」
「こいつに期待しても無駄だ、こいつは引き篭もりだから」
「その言い方は酷いと思うのだわ!?」
「美神、それはあれだ。私のこの姿は横島の印象深い者の姿がベースになっている」
「「「へ?」」」
高城の言い分にエレシュキガルが怒り、完全に話の流れでおかしくなった所で私達の会話に割り込んできた心眼は自分の身体を見て、首を後に向けたりして背中……いや尻などを確認する素振りを見せる。
「くえすと琉璃と蛍だな、つまり今の私は横島が考える理想の女性像の具現という所だ」
心眼の言葉に横島君はボッと耳まで赤くなると顔を両手で隠して、その場に転がった。
「シテ……コロ……シテ」
羞恥心が限界を超えたのかやけに片言で殺してという横島君を私達は何とも言えない表情で見つめ、ちょうどそのタイミングで蛍ちゃん達が起きて来た。
「ふ、ふーん……横島の理想の……へえ~」
「……そんなに私お尻大きいかしら……」
「背丈と口元って……私の要素少なくない……?」
ニマニマと喜びを隠しきれない様子のくえすに、尻の大きさを気にする琉璃に、自分の要素が少なすぎると絶望している蛍ちゃん。
「なんかこう一気に私達らしいって感じになりましたね、美神さん」
「そうね、それは良いんだけどおキヌちゃんは思うところのないの?」
くえすや琉璃に弄られてもう勘弁してください絶叫してる横島君を見ながらおキヌちゃんへそう問いかける。
「え?ないですよ、だって巫女服っぽいじゃないですか。なら私もちゃんと意識してくれてるって事で全然良いですよ」
自分の要素が一欠けらもないことにORZになってる小竜姫様達を見て勝ち誇った笑みを浮かべているおキヌちゃんを見て、生き返って白くなったと思ったけど、やっぱり黒い部分残ってるわねと戦慄しながら私は1回GS協会へ帰りましょうと声を掛けるのだった……。
~横島視点~
ベッドの上に寝転がりながら痛む腹を撫でる。擬似冥界から出て、ナイチンゲールさんに診察して貰って帰ってきた俺を待っていたのは弾丸のように突っ込んできた紫ちゃん達だった。そこにチビやうりぼーも加わってその突進は凄まじく、俺は帰宅と同時に空を舞う事になったし、家に入れば入ればで俯いているタマモとそれを煽るコヤンちゃんに、吐血してる沖田ちゃんにどこを見ても地獄絵図だった。
「はははッ」
でもそれが帰ってきたという実感を与えてくれていた。賑やかで騒がしくて、これが俺の守りたい物であり、大切な物だと改めて実感した。
「……でもうん、なんかちょっと寂しいな」
心眼は一応ヒャクメに様子を見てもらうという事で心眼がおらず、蛍達も検査入院と賑やかで、騒がしいのは事実だが少し物寂しさがある。
「……うーん」
チビ達も俺が疲れていると思ったのかリビングだし、なまじ静まり返っているせいで疲れているのになんか逆に目が冴えて来てしまった。
「良し」
チビや紫ちゃん達が気を使ってくれているのは分かるが、なんかこう……あれだ、寂しいので枕と布団を脇に抱えて部屋を出る。
「……どうした?」
「いや、なんか1人はさびしくてさ、シズク。リビング片付けて雑魚寝でもしようかと」
【良いですね!やりましょう!やりましょう!!】
【机を片付ければ良いですよ!】
「私は横島の隣に「失せろこの押しかけエロ狐ッ!」いったああ!?貴女なんか敗北狐ですよね!?」
「だーまーれーっ!!!」
「みみみみいー!!」
「ぷぎぴぎー!!」
「ほれ、茨木。横島が皆で寝よって」
「枕、吾枕を持ってくるぞ!」
【私横島君の隣が言いでゲブウ……】
「……寝言は寝て言え、この吐血馬鹿。横島を血塗れにするつもりか」
火がついたように騒がしくなるが、それが良かった。1人じゃない、みんながいるという事が実感出来た。
「じゃあ皆で片づけして寝る準備をしようぜ、なんかこう旅館みたいで楽しいと思うぞ」
旅館といえるような広さは無いし、皆で寝るのもかなり厳しいかもしれないが……それが逆に楽しく思えるかもしれないとぎゅうぎゅうづめで眠りへと落ち……。
「なんで全員でリビングで寝てるの?」
「身体大丈夫です?」
翌朝尋ねてきた蛍とおキヌちゃんには呆れられてしまったが、寝ていた俺達としてはとても充実した一晩で体力も気力も信じられないくらいに充実していた。
「散歩行ってくるな、朝ごはんまでには戻るから」
蛍とおキヌちゃんにそう声を掛け、俺達は朝靄が残る道を公園を目指してゆっくりと歩き出した。他人から見たら不思議な光景かもしれないが、俺達にとってはこれが何よりも心休まるなんでもない、だけど大切な日常の始まりなのだった……。
リポート21 なんでもない、だけど特別な日常 その1へ続く
と言う訳で今回でリポート20までのシリアス編は終わりです、次回からはわいわいわちゃわちゃやってる横島達らしい日常と心眼について書いて行こうと思いますので、次回の更新もどうかよろしくお願いします。