GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL   作:混沌の魔法使い

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その2

リポート3 迷いの竹林と月の姫君 その2

 

~金時視点~

 

俺ッチは横島達と一緒に買い物に出ていたのだが、まずは横島を取り囲む環境に驚いた。自分の常識とは違う世界がそこにはあったからだ。

 

「あら?また居候が増えたの?」

 

「茨木ちゃんとリリィちゃんって言うんだ」

 

【リリィです!こんにちわ】

 

「……茨木」

 

にこやかに挨拶をするリリィと横島の後ろに隠れて挨拶をする茨木。茨木童子は鬼だ、人間など簡単に殺せる。それなのに茨木の奴はずいぶんと横島に慣れている、もうそれこそ兄貴のようにだ。

 

(いや、何があったんだよ)

 

確かに茨木の奴は鬼としては生真面目でどちらかというと人間気質だったが、それでもこれは異常だと思う。

 

「どこに行くの?」

 

「電子レンジが壊れたから買いに行くんだ」

 

家の掃除をしていたおばちゃんと世間話をしている横島もそうだが、これだけ人外が出歩いているのに動揺しないって正直どうなんだと思わず首を傾げた。

 

「……慣れたんだよ」

 

「まぁ横島の家に出入りしてるの8割が人間じゃないし」

 

「せんせーの家はお化け屋敷って言われてるでござるよ」

 

【それは良いのか?】

 

もっとこう言ってやるべき言葉があるんじゃないか?と俺ッチは思ったのだが、信長はカカカっと声を上げて笑った。

 

【横島の回りはこれで良いんじゃよ】

 

【落ち着きますからね】

 

これ取り憑かれてるんじゃないか、それともあれか女難を極めすぎているんじゃないか?と思いながら俺ッチは横島の後をついて歩き出した。

 

「えっと電子レンジと布団と……後子供服だな」

 

「せんせー!拙者ジャーキーが欲しいでござる!」

 

「犬用じゃなくて普通のジャーキーな」

 

「判ったでござる!」

 

「お菓子を買っても良いのか!?」

 

「後でね」

 

……父親?父親なのか?どれだけ横島の父親力が高いんだ?子守に特化しすぎじゃないだろうか……?

 

「……おい、金時。電子レンジ買いに行くぞ」

 

【え?別行動なのか?】

 

「……牛若丸とかがついているから問題ない。それに電子レンジを使うのは私だから、横島達がいても意味がない」

 

確かに服とか布団とかの売り場と電化製品の場所は違うので、シズクの言う事も最もだと思う。

 

「……横島、先に電子レンジを見てくる。無駄遣いするなよ」

 

「りょーかい」

 

シズクの言葉に手を上げて返事を返す横島はリリィ達を連れて布団売り場へと歩いていく。その姿を見ているとシズクに脇を小突かれ行くぞと促され、俺ッチも電化製品売り場に向かって歩き出した。

 

「……スチームもあるのか。むむむ……」

 

【そのスチームって言うのは良いものなのか?】

 

「……蒸す料理も出来るようになる」

 

【そいつは便利だな。それにするのか?】

 

「……かなり高いから迷う」

 

この姿を見るととても龍神には思えないなと心から思う。というかなんで龍神様が人間の世話をしているんだよ……普通逆だろ。

 

「……普通逆だと思ってるだろ?」

 

【……いや、まぁ……普通そうだろ?】

 

横島の家の家事を全て取り仕切っているが、相手は龍神。世が世なら不敬なんて話ではすまない話だ。

 

「……私は好きでやっている。何れ横島は誰よりも強くなる、それを近くで見て、そして育てる。そして最後はふふふ……」

 

あ、これ駄目な奴だ。多分指摘しても誰かに話しても終わる奴……頼光の大将と同じ気配がするぜ。

 

「あ、いたいた、シズク、それと金時、横島は?」

 

俺ッチがそんなことを考えていると蛍がやって来て、横島はどこだ?と尋ねてくる。

 

【なんだ?除霊の仕事か?それなら俺ッチも手伝うぜ?】

 

「……まぁ買い物が済んでからになるがな」

 

俺ッチとシズクがそう言うと蛍は気まずそうに首を左右に振った。

 

「六道の仕事で横島が来てくれないと困るのよ」

 

「……あの狸、何をさせるつもりだ?」

 

【そいつは災難だな、とりあえず買う物だけ買って、横島と合流しようぜ】

 

俺ッチが生きていた頃も六道はそれなりに名家だったし、平安時代でガープ達と戦った時も世話になったが、六道の人間は悪人では無いが信用するには怖い相手だ。しかも待たせると怖いので、早いうちに顔を出した方が良さそうだ。

 

「……しょうがない、予算ギリギリになるがこれにしよう」

 

「あ、美神さんがお金見てくれるって言ってからもう一番高いのにしましょうよ」

 

「……そうか?じゃあこれで、金時これを積んでくれ」

 

【あいよっと】

 

とりあえず必要な物は買わないわけには行かないので、電子レンジを荷台に積みそれをおして横島の元へ向かう。

 

「え、良いんですか?」

 

「良いわよ、遠慮しないでちゃっちゃっと買い物して、冥華おば様の所に顔を出しましょう」

 

「うい」

 

横島の所には美神がいて、買い物のリストを手にとってこれこれっと言って、どんどん店員に荷物を積ませている。面倒見のいい奴だなと思いながらふと気になった事を尋ねて見た。

 

【六道の仕事ってなるとやっぱり除霊関係なのか?】

 

「なんか交渉らしいけど……横島じゃないと駄目って言うのが気掛かりで」

 

交渉で横島を指定する……それだけで六道の考えている事が判ってしまった。

 

【そいつは大丈夫なのか?】

 

「正直不安しかないわ……」

 

横島の人外や神魔に好かれる性質便りの交渉になるとすんなりと行くか、それとも好かれすぎて面倒事になるかのどっちかになると判り、俺ッチは蛍と一緒に頭を抱えながら、普通に服と布団の買い物に混ざっていくシズクを見て、小さく溜め息を吐くのだった……。

 

 

 

~美神視点~

 

横島君を迎えに行く前に事務所に寄ったらまさか横島君が買い物に出ているといっちゃんから伝言を聞いて、私と蛍ちゃんはすぐに横島君の家の近くのデパートに向かった。

 

(予想通りすぎて驚くわ)

 

遠くの品揃えの良いデパートではなく、近々閉店すると言われている店に向かったのは横島君の事だから全員連れていると思ったからだ。そうなれば遠くのデパートに行くには乗り継ぎが必要だし、住んでいる人数の多さで食費が多く掛かっているので無駄遣いが出来るわけが無く、歩きでもいけるデパートに向かうと判断するのは当然の事だった。

 

【一緒に行ったら駄目なんですか?】

 

「仕事の話で遊びに行く訳じゃないからね。シズクの言う事を聞いて良い子で待っててね」

 

【……はいです】

 

「判った!」

 

しょんぼりしているジャンヌダルク・オルタ・リリィ。くえすとそっくりだと思うほどに傲慢で人の話を聞かないジャンヌダルク・オルタの子供の時がこんなに素直とか絶対思わないわ……。

 

「せんせーが玩具を買ってくれたのでそれで遊ぶでござる!」

 

「こらーッ!力づくであけるな!壊れるでしょうがッ!」

 

家の中から聞こえて来るタマモの怒声に横島君は肩を竦めて笑った。

 

「すいません、お待たせしました」

 

「別に良いわよ、横島君には今日は休みだって言ってたしね」

 

今朝の会合に横島君を呼ぶ訳には行かないと言うのが私達の出した結論だった。そもそも横島君は元より戦う術を持っている、そこに手探りの戦闘術を組み込んでしまえば大本から崩れてしまうかもしれない。下手に手を加えず、横島君の戦闘スタイルを目標にし、私達がそれを十分に理解してから横島君との意見交流をしようというのが大前提だからだ。神魔や英霊への有効打撃のノウハウを持つのは今の段階では横島君だけだ。それが崩れてしまい、辿り着く場所が判らなくなるというのは何よりも避けなければならない事態の1つだ。

 

「それで冥華さんの所に行くって聞いているんですけど、何をするんですか?」

 

「私達も知らないのよ。とりあえず行きましょうか」

 

冥華おば様も今の情勢は判っているからそんなに無茶な指示だとは思わないけど……一体なにをさせられるのかという不安を抱きながら、私は横島君と蛍ちゃんを後部座席に乗せて六道の屋敷へと車を走らせる。

 

「み、み、むー」

 

「ぷぎぷぎぷぎゅー」

 

【ノブノブノノブー】

 

……冥華おば様の所に行くってだけで不安を抱いているのだから、後部座席でなんか歌って踊っているチビ達が厄払いしてくれないかなあっと思っている辺り、私も結構精神的に来ているわねと思わず苦笑する。

 

(でも本当に何かしら)

 

旗に関しては琉璃と冥華おば様がマリア7世と交渉を続けているし、博物館の周りの火災に関しては小竜姫様達が動いてくれているし……やっぱり琉璃の言っていた通り六道女学院の除霊旅行の件かしら?と思い当たる節を色々と考えながら六道の屋敷に辿り着き、すぐに冥華おば様のいる部屋に通される。

 

「わざわざごめんね~でもちょっーと難しい問題で~令子ちゃん達にお願いしたいのよ~そう、引き受けてくれるのね~ありがとう~」

 

まだ何も言ってないのに引き受けることが決定してしまった。だけど、正直冥華おば様には貸しを作りっぱなしなのでSランクの除霊を行なえとか言われない限りは引き受けようと私も腹は括っている。

 

「詳しい話を聞いてないんですけど……六女の除霊旅行の件と関係ありますか?」

 

「ん~それは勿論オカルトGメンとGS協会にお願いするつもりだけど、今回は別の案件なのよ~と言っても除霊とかじゃないから安心してね~」

 

除霊じゃないと聞いても正直全然安心出来ない。交渉に関わると聞いていたけど、六道が抱える交渉案件とかどう考えても古い神案件なので本当に勘弁して欲しい。

 

「交渉とか聞いてますけど……何と交渉させられるんですか?冥華さん」

 

蛍ちゃんが若干脅えた様子で尋ねる。すると冥華さんはそんなに怖がる事はないわよと笑ったが、冥華さんの目が全く笑ってないので怖がらなくて良いって言うのが土台な無理な話だ。

 

「今回ね令子ちゃん達にお願いしたいのは~薬師との交渉なのよ~」

 

「「「薬師?」」」

 

予想外の交渉相手に私達の声が重なった。神魔とかの交渉まで覚悟していたのに、まさか薬師……いや、薬師は薬師でも神魔の可能性もあるのでまだ安心は出来ない。

 

「冥華おば様、それは構わないんですが、なんで横島君を指名したんですか?」

 

「ちょっと気難しい人だからね~横島君がいれば交渉が楽かなあって~ほら、あれ見てみたらそう思うでしょ~?」

 

冥華おば様に言われて振り返るとチビ達がジッとしているの飽きたのか、悪戯を始めていた。

 

「みむ!みむ!!」

 

「チビ、こら!チビ止めるんだ!どうして今日はこんなに悪戯ッ子なんだ!?」

 

チビが横島君の髪の毛の中に潜り込んで髪を引っ張ったりして、横島君がそれを止めようとすると腕の中のうりぼーが大きくなり始める。

 

「おもッ!?」

 

「「「ぷぎー」」」

 

「しかも増えたッ!?」

 

大きくなった上に足元に分身が現れて横島君がフラフラしている。休みだから遊んで貰えるはずが、まだ話が続いているからチビ達が我慢できなくなってしまったのだろう。

 

【のぶぅー】

 

そしてチビノブは背中にびったり張り付いて口を動かしているから背中を噛まれているのが判る。

 

「とりあえず、蛍ちゃん助けてあげて」

 

「はい」

 

蛍ちゃんに横島君を助けるように頼んで、冥華さんにすみませんと頭を下げる。

 

「気にしないで~だって今日は横島君はお休みだったんだしね~悪いのは私よ~」

 

「ご迷惑を掛けるわけにも行きませんから、交渉先を教えて貰えますか?」

 

にこにこと笑っている冥華おば様。だけどチビ達が調度品にまで悪戯をしだすとそれこそ大変な事になると思い、交渉先はどこかと尋ねる。

 

「そうね~早く遊びに行かせて上げないと可哀想だからね~行き先は六道の所有する土地の迷いの竹林、その中にある~永遠亭って言うお屋敷ね~」

 

迷いの竹林と聞いて冥華おば様の前だが眉を顰めてしまった。迷いの竹林は低級とは言え悪霊や怨霊の自然発生率が高く、連続除霊や山中での除霊中に遭難した場合のサバイバル技術を学ぶ為の演習場だ。確か今では使われてないと聞くけど、まさかそんな所に人間が住んでいるわけが無い。

 

「相手は人間ではないのですね?」

 

「見た目は人間よ~?それに話も出来ない相手じゃないから大丈夫~♪これ地図よ~、この×印の所に案内してくれる子がいるからよろしくね~」

 

紹介状はもう送ってあるから大丈夫と笑う冥華おば様。その姿を見て完全にお膳立てされていると判り、がっくりと肩を落とす。蛇が出るか、鬼が出るか……とにかく行って見るしかないようだ。

 

「あいたたたた!!」

 

「みむぐう!」

 

「駄目だって!?チビ、蛍の指を噛んだら駄目だろッ!」

 

大人しい所しか見てないけど、癇癪を起こしているチビ達って案外危険なのかもしれない。そんな事を思いながら話は終わりだからと声を掛けて私達は逃げるように六道の屋敷を後にするのだった……。

 

「みむう……」

 

「あー大丈夫よ。チビは危ないって教えてくれたのよね?」

 

「みむ♪」

 

「え?癇癪を起こしてたんじゃなくて、あれチビの警告だったのか?」

 

「多分ね、今回の交渉の件も一筋縄じゃ行きそうにないわね……」

 

なお車に乗るなり暴れなくなったチビ。その姿を見てチビ達が悪戯をして、すぐに六道の屋敷から出ようとしているように思えて迷いの竹林とそこに住む薬師に会いに行くと言うのが実は相当の無理難題に思えて私と蛍ちゃんは頭を抱えるのだった……。

 

 

 

 

 

~西条視点~

 

古い時代の除霊術というのは危険性も高いという事も相まってその資料は決して多くない。なんせ命を削るような代物が標準だった時代だ、安全にそして確実に除霊が出来る方法があれば誰だってそれが良い。だが今はその危険な除霊術が必要なのだ、あんまり使うなと念を押されていたが、背に腹は変えられないと受話器を手に取り、ある電話番号をコールする。

 

『……もしもし?』

 

「すみません先生。1つお願いがあって電話しました」

 

ドクターカオスは中世の時代から今の時代に通じる除霊術を使っていた。だから僕の求める情報は持っていない、ドクターカオスが教えれる術となれば儀式をベースとした大規模な物になる。そんな時間の無駄をするのならば、普通に考えて除霊具を作ってもらった方が確実だ。

 

唐巣神父は禁術という事である程度は知っていたが、その術を主に使われていた頃は教会に所属していたので聖句などをメインにしていたので、こちらも当然あまり詳しくはない。

 

『よほどの緊急事態って事ね。何が知りたいの?』

 

「冥華さんが現役時代に使われていた除霊術の資料が欲しいのです」

 

『……なんでそんな物を?』

 

「神魔や英霊と戦うための術を1つ見つけたので、それを煮詰める為に」

 

僕達が手にしたのは切れ味の落ちた錆びた剣だ。これを研ぎなおして鋭い刃にしなければこれからの戦いに僕達は参戦出来ない、横島君だけに負担を掛けるのは大人として余りにみっともない上に情けない。

 

『……判ったわ、すぐに資料を送ります』

 

「すみません、ありがとうございます」

 

その言葉を最後に電話が切れる、先生は神魔に狙われているので電話をすること自体危険だった。先生に迷惑を掛けたなと思いながら、机の上の資料に目を通す。

 

【スケジュールは厳しいけど大丈夫かネ?】

 

「ええ、大丈夫ですよ。教授」

 

【ふふん。裏方と思いきや中々良い面構じゃないカ、ま、頑張りたまえヨ。私も手加減をするつもりはないからねェ】

 

にやにやと笑う教授の顔を見て気を引き締める。今東京にいる英霊で横島君と関係が無いのは、三蔵法師、マルタ、あとは横島君の所で居候している坂田金時を呼べるかもしれない。モリアーティ教授は横島君側だが、基本的に別行動を取っているので側にいなくても横島君は違和感を覚えないと言う考えもある。この4人に加えて、横島君がいない間に信長や牛若丸にも協力を求める事が出来れば色んな距離に特化した英霊が多くいるので、その中で戦いのマニュアルをより洗練させることが出来るはずだ。

 

「あとは小竜姫様達が来てくれるかどうかだね」

 

【多分来てくれるヨ、マイボーイに執心だからねェ、でも彼女達には悪いけどマイボーイをどこへ行かせるかだね】

 

「ああ、それが最大の問題だ」

 

今回の特訓は横島君を参加させる訳には行かない。訓練の予定が組めたのは良いが、僕達が訓練をしていればなんで横島君は自分だけ仲間外れなんだと思う筈だ。どこか安全で、神魔も容易に手を出せず、横島君が違和感も疑いも無く喜んで行ってくれる……そんな場所があれば都合が良いんだが、そんな都合の良い場所はないかと教授と揃ってため息をはくのだった……。

 

 

リポート3 迷いの竹林と月の姫君 その3へ続く

 

 




次回は前半ほのぼの、後半迷いの竹林に出発までを書いて行こうと思います。そして最後の西条さんの言葉はフラグです、並みの神魔では手が出せず、安全で横島が喜んで向かう場所が一箇所だけあるんですよね、リポート4はそこを舞台にしたいと思っております。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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