GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL 作:混沌の魔法使い
リポート3 迷いの竹林と月の姫君 その4
~美神視点~
「横島君、どういう事なのかしら?」
藁葺き小屋の中でどたばたという音と少女の悲鳴に頭を抱えながら、横島君にどういう事なのかと尋ねる。蛍ちゃんから横島君が平安時代でお世話になっていた輝夜姫が神魔だったと聞いたと聞いていた。確かに竹林と輝夜姫は深い繋がりがあるけど……さっきの少女はどう見てもかぐや姫という感じではなかった。
「彼女がかぐや姫なの?横島」
「あーいや、違う。彼女は藤原妹紅って言って……藤原のお姫様」
「「おふ……」」
思わず変な声が出た。なんで藤原の姫が現代まで生きているのよ。かぐや姫は神魔のはずだから判るけど、藤原の姫は人間でしょうに……。
「みーむ、みむむー」
「ぷぎ!ぷぎ!!」
【ノブー】
『待って!今着替えてるから!わ、わわッ!?』
チビ達が扉にしがみ付いてカリカリやっているのを見ると相当慣れているのだろう。ずっと一緒にいる蛍ちゃんより、数日一緒だった藤原の姫に慣れているってどうなのよ……蛍ちゃん半分泣きそうな顔をしてるじゃない。
「えっとなんか不老不死の薬があるとか言ってたから……多分それを飲んだからだと思うんです」
ちなみに俺も薬を飲んで一緒に逃げようと言われましたという横島君に蛍ちゃんと一緒に天を仰いだ。これ絶対落としている……横島君のナチュラルボーンフラグメイカーレベルを私と蛍ちゃんはまだ侮っていたのかもしれない。暫く横島君から事情を聞いていると扉が開いて、少女が顔を見せる。
(……凄いわね。この子)
神通力と霊力の圧が凄まじい――神魔級なのは間違いないし、しかも威圧感からただの不老不死ではないと言う事がひしひしと伝わってくる。
「もこちゃん!」
「よ、横島様。お久しぶりです」
あだな呼びにショックを受けてる場合じゃないのに、崩れ落ちそうになっている蛍ちゃんの腕を掴んで立ち上がらせる。
「六道の使いで来たのだけど……今大丈夫かしら?」
「あ、ああ……あ、いや、大丈夫です」
さっき遠目で見た姿と違い着物姿だが、その言動を見る限り少しぶっきらぼうな喋り方が今の彼女の素なのだろう。目に見えておろおろしている姿を見て、横島君に視線を向ける。横島君は私の視線の意味をしっかりと理解してくれたのか小さく頷いた。
「喋りやすい風で良いよ?もこちゃん」
「え、でも……その大分喋り方変っちゃったし、変な風に思うかも……」
多分長い間に色々とあって喋り方や雰囲気も変ってしまったのだろう。それを見せて横島君に嫌われたり、変だと思われるのが怖いと……。
(なんで横島から少し目を離すとこうなるんですか?)
(諦めなさい、運命よ)
横島君が誰かを引っ掛けてくるのは諦めるべきだ。年下に好かれやすくて、人外に愛される。これはもう横島君の個性なので、どれだけ胃が痛かろうが受け入れるしかないと私は思うことにしている。
「大丈夫。俺も美神さんも蛍も気にしないから」
横島君にそう微笑みかけられた藤原の姫は1度だけ悩む素振りを見せて、大きく1度深呼吸をした。
「疲れてるだろ?食事は用意してあるから休むといい、その後に永遠亭に案内するよ」
おしとやかな口調から、快活なボーイッシュな少女という感じになる藤原の姫。その服装とかなりのギャップがあるのに違和感はまるで無く、そうあるのが当たり前という感じだった。
「ご飯も用意してくれたんだ。ありがとうもこちゃん!」
「あ、いやそんな大した物じゃない」
「用意してくれてるだけでも嬉しいから、ありがとう」
にぱっと子供のように笑う横島君は藤原の姫だけではなく、蛍ちゃんにも抜群に効果を発揮しており、んんっとそろって呻き胸を押さえる2人と良く判ってない様子の横島君を見て、軽い頭痛を覚えながら私達は永遠亭に向かう前の最後の休息を取る為に藤原の姫の住む家の中に足を踏み入れるのだった……。
~蛍視点~
囲炉裏を挟んで反対側に座る少女――藤原妹紅と言う少女にはなんと言うか親近感を持てた。理由はやっぱり最初のあれだ、横島に炭塗れの姿を見られて絶叫したあの姿。私も良くオイルまみれとかで、乙女としてあるまじき格好を良くしているので、横島に見られて絶叫した気持ちは良く判るし、なんと言うか……そう、とても共感が持てる。
「なにか?」
「あ、いや、なんか仲良くできそうだなあって」
互いの視線がとある一箇所に向けられ、暫く互いにそのまま過ごして、私と妹紅はがっしりと握手を交わした。
「蛍ともこちゃんがもう仲良くなってくれたんだ」
「……そうね」
何も判ってない様子の横島となんで私と妹紅が仲良くなったのかを理解している美神さんが苦笑する。だけど胸囲の格差社会での敗者の気持ちが勝者である美神さんに判るわけが無い。これはとても辛く、そして相談しにくい辛い話題なのだ。
「竹の子ご飯と味噌汁、それと山菜と漬物。ちょっと肉とか魚はないけどいい?」
「いや、全然良いよ。ありがとう」
体力と霊力を消費しているので、こうして身体を休めつつ、食事も出来る事に文句はない。いただきますと口にして、竹の子ご飯を頬張った。
「「「美味しい……」」」
私達の声が重なった。普通の竹の子ご飯だ……それなのに信じられないくらい美味しい。
「ぷぎ!ぴぎゅーッ!!!」
うりぼーも茹でた竹の子を頬張り、とても興奮している。もしかしてこの竹の子が何か特別な物なのだろうか……?
「霊脈の力を吸って育ってる竹の子だから霊力を蓄えているんだ。霊能者にはぴったりの物だと思う」
「もしかしてこの竹林の?大丈夫なのかしら?」
これだけ怨霊や悪霊がいる竹林の竹の子が大丈夫なのかという不安を抱いて尋ねる。すると妹紅は竹の子ご飯を食べながらにっこりと笑った。
「もっと奥の永遠亭の近くの竹林を見れば大丈夫って判るさ、あそこら辺は聖域になってるからこことは全然違うよ」
「そうなんだ……ごめんね、変なことを聞いて」
「いや、良いよ。六道の使いにも何時もこんなやり取りしてるから気にしないよ。ほれ、チビ。みかんくらいしかないけど、ごめんな?」
「みむう♪」
妹紅からみかんを受け取り、頭の上で持ち上げて横島に剥いてくれと言わんばかりに鳴くチビ。その姿を見てなんとも言えない気持ちになった。私が餌を上げても受け取らないのに、何で妹紅の物は受け取ったのだろうか……。
(本当にチビの懐く基準ってなんなのかしら?)
【ノブー!】
「あ、俺もお代わりもらえる?」
「勿論、どんどん食べてくれて良いよ。美神と蛍は?」
人のいい顔でそう尋ねてくる妹紅に私と美神さんも空のお椀を差し出して、お代わりをお願いする。ここから永遠亭がどれくらい遠いのか判らないが、妹紅の口振りだとかなり遠いように思えたので、ここでしっかりと空腹を満たしておこうと思うのだった。
「美味しい?」
「こくこく」
霊力が回復したからかマスコットフォームからロリっ子フォームに変身したうりぼーを膝の上に乗せて、茹でた竹の子をひたすら食べさせている横島を視界の隅において、妹紅とこれからの話し合いを始める。
「永遠亭ってここからどれくらい掛かるのかしら?」
「んー日が暮れる前にはつくと思う」
……余りにも要領を得ない返答に美神さんとそろって眉をひそめる。
「みーむ♪」
「はい、あーん」
チビの口にもみかんを運んでいる横島はやっぱり今回も役に立たない……と言うか横島の出番はもっと後なので、今はリラックスしていてもらおうと思う。会議には代わりの人間が出ているので、横島は今回はお休みでも問題が無いのだ。
【ふむ。それは遠いとか、幻術、結界のいずれかという事か?】
「全部、ここはほら。私と輝夜の最後の砦みたいなところがあるし」
危惧していたかぐや姫の名前が妹紅の口から出ると、横島がチビとうりぼーを抱きかかえ、頭の上にチビノブがしがみ付いている状態で妹紅に視線を向けた。
「もこちゃん、輝夜ちゃんもいるの?」
「いるよ、元気にしてるから大丈夫。永琳もいるよ」
また新しい名前が出て来たわね。美神さんと一緒に横島を見ると、横島はあっと口にしてごめんと謝った。
「永琳さんは輝夜ちゃんの先生って事くらいしか俺は知らなかったから、あの時は説明しなかったんだ。平安時代で2人を連れて逃げてくれた人なんだ」
「ついでに言うと私と輝夜と同じで不老不死の蓬莱人。んで薬師でもあるよ」
この時やっと私達が会うべき薬師の名前が妹紅の口から語られるのだった……だが、妹紅の口にした最後の砦、そして平安時代で横島が暴走した話――それらが全て1本に繋がった。
「まだ月神族に追われてるのね?」
月神族の名前が美神さんの口から発せられた時、柔和な笑みを浮かべていた横島から感情が全て抜け落ちた。その姿を見て、慌てて私は横島の額に心眼を巻いた。今もまだ、月神族に対しての横島の怒りの業火が向けられている……それは今も尚、横島が暴走しシェイドへと変化するかもしれないという危険性をこれでもかと私と美神さんに伝えているのだった……。
~美神視点~
幻術、結界、最後の砦――それら全てを繋げるのは1000年前、そして月神族の事だ。
(……すこし見積もりが甘かったわね)
横島君が平然としていたので、ある程度折り合いがついていると思っていたんだけど、まだ月神族への怒りは収まっていなかった。いや、収まっている訳が無かったのである。
「最近は追われてはないんだよ、大丈夫。もう200年くらいは追われてないんだ。念のために隠れてるってだけで」
「……本当?大丈夫、もこちゃん」
「大丈夫、大丈夫だよ。勘違いさせちゃってごめん、横島様」
念のためというのも、200年追われていないと言うのも嘘ではないだろう。それでも横島君と別れてから800年追われていたのは確実で、それはきっという事も躊躇うほどに辛い出来事だっただろう。
「……無理してない?」
「大丈夫だよ、それより準備が出来たら永遠亭に行こう、きっと輝夜も喜ぶよ」
妹紅の笑みを見て、横島君の顔色に血の気が戻ってくる。だけど、月神族の名前を聞いただけであそこまで変貌するというのは気をつけなければならない事だ。
【馬鹿者、追われているのならばこんな所に家など持っていないだろう。少しは良く考えろ】
「う、ご、ごめん。心眼、それに美神さんも、蛍もごめん」
私達に謝る横島君だけど、本来謝るべきなのは私達で、横島君に強い心的負担を掛けたのは私達に完全に非がある。帝に釘を刺されていても、無理にでも横島君と合流するべきだったと平安時代での自分の判断ミスは悔いても悔いても悔いたりない。だが余りにもデリケートな部分で容易に触れられないのも事実……。
「気にしてないわ。それよりも日暮れまで時間が掛かるって言うなら、そろそろ出発しましょうか」
師匠として弟子のメンタルケアも禄にできないのかと歯噛みしながら、あえて私は笑みを浮かべて永遠亭を目指そうと明るく言うのだった。
「はい、手を放さないでね。放した瞬間に逸れると思ってくれていいから」
迷いの竹林の奥に進めば進むほどに結界が強くなり、私達でも方向感覚がおかしくなり、全員で手を繋いで妹紅に手を引かれて竹林を進んでいた。
「普段もこうやって案内してるの?」
「いや?普段は何回も出発地点に戻されながら縄で互いを繋いで進んでるよ。私が子供みたいだからさ、甘く見ている六道の使いも多いのさ」
そういう奴は何回も何回も戻されて半泣きで案内してくれって言いに来るのさと笑う妹紅。六道の使いと言っても冥華おば様が全て管理できている訳ではない、今回横島君に白羽の矢が立ったのはどうも他の事情もありそうだ。
「妹紅は普段あの家で1人で暮らしてるの?」
「違うよ、大体永遠亭にいるかなあ。六道から薬を取りに来るって言う連絡があってからあっちに移動するのさ。でも今回は横島様達で驚いたよ」
華が咲くように笑う妹紅は横島君に会えて嬉しいというのを全身で表していた。歳相応の少女という感じで見ていて微笑ましいと思うが、それと同時に蛍ちゃんにまた強敵が現れたことを現していて、なんとも言えない気持ちになった。世間話をしながら永遠亭を目指して歩き続けるのだが、本当に遠い。
「みむ?」
「ぷぎゅ!」
【のぶう……】
「もうちょっとさ」
逸れないように横島君の頭の上とかに乗っているチビ達が飽きたと言わんばかりに何度も鳴き声をあげるが、妹紅はもう少しさとしか言わない。
「普段ずっとこんなに遠い道を行き来してるの?大変じゃない?」
「普段は飛んで移動してるんだ。横島様達は飛べないだろ?」
確かに人間だから飛べないわね……しかし蓬莱人って言うのは飛行能力まで持つのかと正直驚いた。
「そのさ、もこちゃん。横島様なんて言わなくても良いよ?」
「いいじゃないか、私は好きでそう言ってるんだからさ、それにもこちゃんって言われるの私結構好きなんだよね」
にこにこと笑う妹紅にもこちゃんという渾名で呼んでいる横島君は何も言えないのか、うーむと唸るにとどまる。
「悪霊とかの数が減ってきましたね」
「そうね、聖域だからかしら?」
さっきまで溢れていた悪霊が目に見えて減ってきた。妹紅の話では聖域と言っていたので永遠亭に近づいて来たのだろうか?と考えていると何十羽という兎が楽しそうに鳴いている姿が見えた。
(……霊獣だわ)
見た目は兎だが、凄まじい霊力を内包している。兎の姿をした霊獣、もしくは神獣なのだろう。私達に気付くと蜘蛛の子を散らすように逃げてしまったが、あの兎が永遠亭がもうすぐ近くというのを私達に教えてくれていた。そして最後の竹林を抜けると、大きく開けた場所に出た。
「お疲れ様、あれが永遠亭だよ」
迷いの竹林の中にあるとは思えない立派な日本家屋が私達の目の前に広がっていた。深い竹林の中にあるのに、柔らかな光が差し込み、妙神山に匹敵する聖域に私は驚きを隠せなかった。
「これ凄いな」
「ええ、本当にね」
「迷いの竹林の中にこんな場所があるなんてね……」
絵画とか神話の中にあるような神秘的な場所だ。妹紅は200年前からここにいると言っていたので、私達が実習している頃にはここがあったのかと驚くのと同時に、六道の宝は確かにあったわねと思い、暫し余韻に慕っていると永遠亭の縁側を誰かが歩いてくる音が響いた。
「ふわあ……」
絹のように艶やかな黒髪、同性であっても綺麗だと思う白い肌をした15~17歳くらいの天性の美少女と言ってもいい子が、「働いたら負け」というとんでもないダサTを着て、スカートやズボンをはいておらず、だぼだぼのシャツが膝丈まであるのでスカート代わりになっているとんでもなく酷い有様だった。
「え、あれがかぐや姫とか嘘でしょ?」
「違うわよね?あれが永琳って言う薬師さんよね?」
私と蛍ちゃんがそう尋ねる。だけど横島君と妹紅は沈鬱そうに頷いた。ぼさぼさ頭で歩いているあの残念な少女がかぐや姫と知り私と蛍ちゃんは絶句した。その美しさを全て無かった事にするダサTの破壊力に驚いた。
「おい輝夜!そんな格好で出て来てどうする!?横島様がいるんだぞ!?」
「んん?もこ、横島なんているわけ……「輝夜ちゃん、ちょっとそのTシャツは正直どうかと思う」……んんッ?」
目をごしごしと擦り、ジーっと横島君を見つめた輝夜姫の顔が一瞬で赤くなり、青くなった。
「うあああああああああッ!!!!!!」
「このばかぁッ!!!!」
「えーりん!えーりぃぃんんんんッ!!!!!!」
号泣しながら永琳という人物の名を叫んで永遠亭の中に消える輝夜の姿は先ほどの妹紅と同じで、とてもデジャブな光景なのだった。
「……俺が悪かったんですかね?」
「「ううん、違うと思う」」
完全に気を緩ませていた輝夜が悪いんであって、横島君は悪くないわよと凄く複雑そうな顔をしている横島君に私と蛍ちゃんはそう声を掛けるのだった……。
リポート3 迷いの竹林と月の姫君 その5へ続く
妹紅とデジャブなことをしているぐやちゃん、ダサTはなんかこんな感じかなと思いこういう話になりました。次回はなんとか立て直そうとして自爆する輝夜とかを書いてギャグ展開で書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。