GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL   作:混沌の魔法使い

18 / 157
その5

リポート3 迷いの竹林と月の姫君 その5

 

~横島視点~

 

泣きながら永遠亭の中に逃げ込んでしまった輝夜ちゃんはギャン泣きで酷い有様で、俺たちは永遠亭に入るべきなのか、それともここで待つべきなのか悩んだ。

 

「全くあの馬鹿はずぼらすぎるんだ。多分風呂とか、髪を整えたりしてると思うから中で待とう」

 

当然のように永遠亭の中に入ってくもこちゃんに促され、俺達も永遠亭の中に足を踏み入れるのだった。

 

「……なにかしらね。この実家のような安心感……」

 

「あ、判ります」

 

清涼な空気はなんか凄く安心する。畳って言うのも大きいと思うけど……足を伸ばして座っていると視界の隅でうりぼーがもぞもぞしているの気付いて慌てて立ち上がる。

 

「うりぼー!スティ!スティ!!」

 

「ぷぎ?」

 

「駄目!」

 

蹄で畳を削って寝床を作ろうとしていたうりぼーを抱き上げ、膝の上に乗せる。危ない所だった……うりぼーの習性を完全に見逃す所だった。

 

「なんか騒いでたけど、どうかした?」

 

お茶を用意してくると言って部屋を出ていたもこちゃんが戻って来たんだけど……その隣には大きな生き物がいた。

 

「きゅ?」

 

「「「でかッ」」」

 

レトリバーくらいの大きさの兎が頭の上にお盆を乗せて、茶菓子とお茶を運んでくる光景に思わず俺達の声が重なった。

 

「ああ、こいつか。永遠亭に住んでる神獣で案外賢いし、大きくなったり小さくなったりするあと増える」

 

「あ、うりぼーの仲間か。納得」

 

「「納得するな」」

 

美神さんと蛍に突っ込まれたけどつまりこの兎が何なのかは俺には十分理解出来た。

 

「つまり、この兎はマスコット!」

 

「きゅーん♪」

 

俺の背中にぐいぐいと頭をこすり付けていた兎を抱かかえ、兎はマスコット。それが俺の出した結論で、この兎が可愛くて人懐っこいと言う物だった。

 

【良かったな、横島は平常運転だ】

 

「「そういう問題じゃない」」

 

「?」

 

美神さんと蛍が疲れ果てているけどどうしたんだろうか?と思いながら抱かかえていた兎を畳の上に降ろす。

 

「みむ!」

 

「ぷぎ!」

 

【ノブ!】

 

「きゅッ!」

 

チビ達がわちゃわちゃと戯れはじめて、とても微笑ましい気持ちでそれを見つめながらもこちゃんが用意してくれた湯のみを手に取る。

 

「お、茶柱が出てる」

 

【運が良いな】

 

茶柱が出ているのを見て、これは交渉が上手く行く予兆ではなかろうかと思い、俺は温かい緑茶を啜る。

 

「凄くほっとしていいはずなのに、全然落ち着けない」

 

「……本当ですね」

 

「大丈夫?」

 

凄く疲れている様子の2人に大丈夫?と尋ねると美神さんと蛍が揃って溜め息を吐いた。

 

「「横島(君)のせいだからね?」」

 

「え?俺の「ふぎいっ!?」……わったたっ!?」

 

俺のせいと言われ、腰を上げ掛けた時。障子の向こう側から奇声が聞こえ、障子をぶち破りながら部屋に飛び込んできた輝夜ちゃんを反射的に抱きとめる。

 

「お前今日、ポンコツ極まれりだな。輝夜」

 

そんな俺達の様子を見て、呆れながら煎餅を齧るもこちゃんの声がやけに部屋の中に響くのだった。

 

 

 

~永琳視点~

 

六道の使いが横島である可能性は考えていたけど、まさか寝起きで下着もつけず、ぶかぶかのTシャツ姿の姫様と遭遇するのは私に取っても計算外だった。

 

「……」

 

「大丈夫?」

 

「ファアアア――ッ!!!!」

 

姫様の奇声にいい感じに壊れてるわねと苦笑しながら、妹紅が案内したであろう客間に足を向ける。

 

「姫様、何を騒いでいるんですか?」

 

「えーりん、えーりん!!!」

 

完全にキャパオーバーをして突撃して来た姫様を抱き止めて頭を撫でる。部屋の中では呆れた様子の妹紅と、至近距離で音波兵器を喰らった横島達が頭を振っているのが見える。

 

「大丈夫ですよ、でもこれに懲りたら、もう少し不摂生を止めるんですよ?」

 

少々効ききすぎたかもしれないが、ここ数百年の姫様の堕落具合は酷かったのでこれでもう少し人間らしい生活をしてくれればと思い、横島と妹紅が悪いのではなく、だらしなすぎた自分が悪いんですよというと、姫様は呻きながら小さく頷いた。

 

「うーわかったぁ……」

 

普通なら1000年の恋も冷めるほどに酷い光景を見たわけだが、寛容さが尋常じゃない横島は素直に姫様を心配しているのが見て取れた。

 

(なるほど、こっちが素ってことね)

 

永琳の知る横島は月の使者が来る前だったのでピリピリとして、強い緊張感と攻撃的な意志を見せていたので、永琳の中では横島は攻撃的な性格で、窮地を救われた事で輝夜達が好意を抱いたと考えていた。だがこうしてみる限りではぽやぽやとして何を考えているのか、はたまた何も考えていないのか……とても穏やかな雰囲気を纏っており、この穏やかさと優しさに惹かれたのだと1000年越しにやっと理解した。

 

「初めまして永遠亭の薬師八意永琳と申します。永琳と呼んでいただいてよろしいですよ」

 

「美神令子よ。今回から六道の使いとして薬を受け取りに来るわ」

 

「芦蛍です。よろしくお願いします」

 

「永琳さん、お久しぶりです。元気そうで良かったです」

 

私と初見の2人はやや緊張し、こちらを観察する素振りを見せながら頭を下げ、横島は何にも考えてない様子でぽやぽやと笑う。その様子を見て思わず苦笑しながら、私も座布団の上に腰を降ろすのだった。

 

「こちらが六道家当主からのご依頼書になります」

 

「拝見させていただきますね」

 

長い間私達を匿ってくれていた六道家の頼みならば無条件とまでは言わないが、かなり優遇して受けるつもりではある。便箋はしっかりと六道の霊力で塞がれていて、美神達が見た痕跡はないのを確認し、決められた順番で霊力を通して便箋を開ける。

 

(……うーん、今回の薬はかなりの物ね)

 

以前まで要求されていた薬の大半は病気に対するものが多く、2割ほどが毒物や自白剤というものだった。だが今回要求されているのは自白剤や毒物が5割、残りが霊体の回復等に用いられる薬だ。

 

「出来ますか?」

 

「出来るかどうかで言うと簡単に出来るわね」

 

「「「え?」」」

 

私の言葉に拍子抜けした様子で返事を返す3人を見つめながら、そもそもなんで六道の使いの交代を要求したのかを説明する事にした。

 

「六道の使いは男が多くて、ここは女所帯、しかも3人しかいないのよ」

 

「……乱暴してくる人が居たって事ですか?」

 

同じ女だから私の言葉を聞いて蛍が青い顔で尋ねてくる。

 

「まぁいないっていえば嘘になるわね。見た目で侮ってくれるから返り討ちにしてるけど……そういうのって精神的に疲れるのよ。それなら信用出来る相手が良いって思うのは当然でしょう?」

 

あと姫様と妹紅が横島が来ると喜ぶって言うのもあるけど、一々迎撃するのがめんどくさくなって来たって言うのもある。

 

「えっと、今回の交渉は難しいって聞いてるんだけど?」

 

「いえ、別に普通に2つ返事よ?ただそうね……薬を作っている間は横島には姫様達と遊んで貰おうかしら?」

 

今までは基本的に六道の使いがいる時は姫様と妹紅は隔離していた。だけど横島なら心配はないし、何よりも2人がそれを望むと思う。

 

「あ、じゃあ今からでも遊んできましょうか?俺いても話判らんし」

 

「ええ、お願いしようかしら?美神は良いかしら?」

 

精神は肉体に引っ張られる。久しぶりに横島に会ってそわそわしている姿を見ては私も駄目とは言えないし、何よりも2人の様子を見て横島君が必要と言われた意味も理解していた。

 

「じゃあ横島君、輝夜姫と妹紅は任せるわ」

 

「はーい。よっしゃ、輝夜ちゃん、もこちゃん行こうぜ」

 

「ゲームがあるからそれで遊びましょう!」

 

「蹴鞠!蹴鞠がいい!!」

 

きゃっきゃっと騒ぎながら部屋を出て行く横島達を見送り、私は改めて美神と蛍に視線を向けた。

 

「さてと、じゃあ本題に入りましょうか」

 

「あら、判ってくれて嬉しいわ」

 

今回のメインは薬ではなくこれからの話だ。だから横島達を退けた、ここからが本当の交渉の始まりである。

 

「きゅきゅー!」

 

「くそ、早ッ!?」

 

「こっちこっち!」

 

「ぷぎーッ!」

 

「ああッ!くそ、やっぱりうりぼーは強いなッ!」

 

【のっぶうッ!】

 

「ふわッ!?」

 

「すげえ、チビノブスライデイング覚えてるッ!?」

 

【のぶぶー♪】

 

「待て!追え追え!」

 

「きゅきゅーん!!」

 

重苦しい雰囲気である美神達に対して、庭で遊び出した横島は兎軍団を仲間にいれ蹴鞠もといサッカーっぽい何かで戯れており、その温度差は凄まじい物であると言うことは言うまでも無いのだった……。

 

 

 

 

 

~雪之丞視点~

 

俺達の修行の為に白竜寺に顔を出しているのは、あの坂田金時だった。筋骨隆々でサングラスと金髪、上半身裸で直接コートを着ているのは謎だが、その鍛え抜かれた身体はある意味男としての目標到達点の1つだった。

 

【ぬるいッ!!】

 

「ぐっ!」

 

顔面を打ちぬかれ、地面を転がりながら態勢を立て直し金時に向かって再び駆け出す。

 

「おらッ!」

 

【霊力を1点に集中するんだぜッ!んな半端な攻撃は俺ッチにはきかねえぜッ!!】

 

ママお師匠様や綱手、そしてメドーサと組み手をするよりも熱が入る。やっぱりこう、自分より強いと判っていても女に拳を振るうのはどうしても乗り気にならないからだ。

 

【考え事をしてるんじゃねえ!】

 

「うおっ!?」

 

胸にラリアットを叩き込まれ、半回転して地面に叩きつけられる。

 

「行くぜッ!!」

 

【おう!来いよ!陰念ッ!!】

 

俺が立ち上がるまでの間に陰念が金時に攻撃を仕掛けるのを見て俺は怒声を上げた。

 

「割り込むなよッ!」

 

「文句を言うなら、さっさと立つんだなッ!!」

 

【はっ!2人同時に掛かってこいやッ!!】

 

陰念が足を掴まれ、金時の凄まじい膂力で振り回され、ボールのように投げ飛ばされて俺のどてっぱらに命中し2人とも砂煙を上げて地面の上に転がる。

 

「ちっ、しゃあねえ!俺は右だ」

 

「なら俺は左だな!」

 

左右からの挟み撃ちによるラッシュを金時は両手で全て防ぎ、いなし、あるいは反撃に拳を繰り出してくる。

 

「熱くなるんじゃないよ!霊力をもっと研ぎ澄ますんだ」

 

【当たる寸前に霊力を放出するの、普段と違ってもっと細く、鋭くよ!】

 

ママお師匠様とメドーサの声に意識を傾けて、早く鋭く攻撃を繰り出すが金時はそれを簡単に防いでみせる。

 

【足りない、そんなんじゃ足りないぜッ!もっと、もっとだッ!】

 

鉄拳が顔に、胸に、腹にめり込むがそれでも前に出る。これはどこまで行っても訓練であり稽古だ。決して死なないと判っているのだから無茶だって無理も出来る。

 

(ああ、情けねえ、情けねえなあ……)

 

横島が命を賭けて辿り着いた領域に、そのノウハウを真似しても尚俺は届かないのかと……情けなくて、みっともなくて涙が出る。届かない、遠い、余りにも遠すぎる。何故こんなにも差がついてしまったのか……後悔と羨望と追いつくと言う思いだけが俺を前に進ませる。

 

「守りを捨てなッ!攻撃にだけ意識を割けッ!」

 

「「だらぁッ!!!!」」

 

綱手の声に俺と陰念が吠えたのはほぼ同時であり、今まで感じた事の無い霊力の放出を感じた瞬間凄まじい金属音が白竜寺に響いた。

 

【つー、今のは良い感じだったぜ、雪之丞、陰念ッ!】

 

金時がその手に何時の間にか斧を手にし、その頬には確かに一筋の血が流れていた。それは間違いなく俺と陰念の攻撃が金時に届いた証拠であり、俺達は確かな充実感を感じながらその場に倒れこむのだった……。

 

【神魔さんよ、思ったより早かったんじゃないか?】

 

「才能のある弟子だからね。それより悪かったね、英霊にこんな事を頼んで」

 

【良いって事よ、ちゃんと給金ももらってるしな】

 

横島の家に居候している金時はこれで横島に世話になっている間の金に困ることはないと笑みを浮かべたが、その笑みは次の瞬間に凍りついた。

 

「じゃあ、もう少し給金払うから手伝ってくれ」

 

【あたしからもお願いするわ!良いわよね!】

 

着崩していると言うか、胸の谷間を強調するような三蔵と綱手にサングラスの下で目を白黒させながら、おうと返事を返してしまった。金時はこれから毎日、目に毒な美女3人と顔を見合わせることになり、横島の家と白竜寺どっちがましだったかなと悩む事となるのだった……。

 

 

 

 

 

~琉璃視点~

 

美神さん達が六道のお抱えの薬師のもとに交渉に行っている間。私の元には雪之丞君達やくえす達の修行の途中経過のレポートが連日連夜届けられていた。

 

「雪之丞君達はある程度は形になってきたみたいね」

 

横島君の所に居候している坂田金時が修行の相手になってくれているらしく成長の幅が大きいらしい。

 

「くえす達は苦しいみたいね……まぁそれは私も同じだけど」

 

元々霊波格闘を主にしている雪之丞君達はその周波数を変えれば良いので、ある程度はコツをつかむのは簡単だろう。だが問題はある程度では神魔には通用せず、そこから先に辿り着く必要があると言う所だろう。それに対してくえす達は魔法として打ち出しつつ、それの波長を相手に合わせて調整する必要があり難航しているとのことだ。それは私も同じで神卸しをしない場合の私の戦闘方法はオールラウンダーだが、どちらかと言えば中~遠くらいの術が神代の得意な距離なので、出来ればそちらを補える形になると楽ではある。

 

「琉璃さん、横島さんを保護する場所の候補が見つかりました」

 

「え!?本当ですか!?」

 

私達が修行をしている間に横島君が自分だけ仲間外れにされていると思わないように、また不安定な私達の技術を真似して、完成している横島君の戦う術を崩す訳にも行かないので、横島君が不信に思わず、進んで向かってくれる……そんな夢のような場所の候補が見つかったと言う小竜姫様の言葉に思わず椅子から立ち上がった。

 

「浮かない顔してません?」

 

だけど見つかったと言う割には小竜姫様の顔が曇っていて、どうしました?と尋ねると小竜姫様は少し悩む素振りを見せてから口を開いた。

 

「安全性は天界・魔界の中でも上から数えた方が早い場所です」

 

うんうん。それを聞くだけでもかなり安心感があるわね、それなのに何故小竜姫様の顔色が悪いのだろうか?

 

「デタント反対派の魔族も手を出せない区画で魔界の中で1番安全と言えます」

 

「場所は魔界なんですか……まぁ、安全ならいいんですけど……」

 

天界は過激派が多いので魔界って言うのはある意味安全策だと思える。

 

「というか随分と言い渋りません?早く教えてくださいよ」

 

横島君が安全に過ごせる場所が見つかれば私達も安心なので早く教えて欲しいと小竜姫様にお願いする。

 

「……ベリアルとネビロスの所で1週間ほど預かって貰おうと思うんです」

 

「あ、それはいいですね。紫ちゃんとかも面倒を見てもらえるんじゃないですかね?」

 

アリスちゃんと同年代の紫ちゃんや茨木童子も一緒に預かって貰えれば、国際GS協会とかの目晦ましになると思う。

 

「でも魔界の子供が自分の使い魔を見つける時期で多分横島さんが行くと入れ食いになると思うんです」

 

「それは苦渋の決断が過ぎますね……」

 

横島君を安全に東京から離す事が出来るが、その対価に魔界の危険な動物の子供を無数持ち帰ってくる可能性が極めて高いと聞いて、私は小竜姫様の顔が曇っている理由を悟り、どうした物かと小竜姫様と揃って頭を悩ませるのだった……。

 

 

 

 

リポート3 迷いの竹林と月の姫君 その6へ続く

 

 




次回は輝夜と遊んでいる横島と、本当の交渉を始める美神達、そして横島がいない横島家の話を書いて行こうと思います。まだ猛暫くはこんな感じで穏やかな感じで進めて、ガープが動く時はめちゃくちゃシリアスにしたいと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。