GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL   作:混沌の魔法使い

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その6

リポート3 迷いの竹林と月の姫君 その6

 

~ノッブ視点~

 

横島とチビ達がいないので静かと思いきや、案外そうではなかった。

 

【お掃除をするから部屋に行って下さい!】

 

座布団の上に寝転がっていたタマモを無視して座布団を引き抜くジャンヌオルタ・リリィ。フローリングに叩きつけられる前に人の姿になったタマモだが、机かどこかでぶつけたのか不機嫌そうな顔をする。

 

「いったぁッ!何するのよ!」

 

【お兄さんが帰ってくるまでに綺麗にお掃除して褒めて貰うんです】

 

ふんすふんすと胸を張って言うジャンヌオルタ・リリィ。攻撃的な言動をしていたジャンヌオルタよりも礼儀正しい口調じゃが、こういう力づくの行動に出る辺り同一人物だと思う。

 

【ノッブさんもメロンパンのカスはちゃんと掃除してから部屋を出てください!】

 

【はいはい、判っておるわい】

 

リビングでTVを見て過ごそうと思っておったが偉い張り切っているのがいるので、机の上を掃除してから縁側に出る。

 

「……良し、良い子だ」

 

「頑張り屋ですね」

 

【お兄さんに褒めて貰うんです!】

 

ワシ達を追い出して良い子とか褒めるシズクとルキは正直どうかと思うが、精神年齢が子供ってことで横島に褒められる事が最優先という感じのリリィを責めるのもどうかと思い、今回は大人になる事にする。

 

【さてとメロンパンでも……ってあぶねえっ!!!】

 

風切り音を立てて飛んで来たボールを仰け反って回避する。壁にぶつかり跳ね返ったボールを木刀の先で弾きキャッチする茨木童子が笑いながら声を掛けてきた。

 

「ノッブも遊ぶか?」

 

牛若丸考案の木刀でボールを打ちあうという謎の競技で遊んでいる茨城と牛若丸とシロの3人にワシは嘘偽りのない感想を口にした。

 

【その物騒な物を遊びって言うのは正直どうかと思う】 

 

「「【?】」」

 

【そこで心底不思議そうな顔をしないんで欲しいんじゃが?】

 

英霊、人狼、鬼の3人が打ちあっていればその速度は凄まじく下手に直撃すれば大怪我は不可避だ。しかしそれよりも先に牛若丸達は自分達がとんでも無い事をしたと言う自覚が在るのかと思う。

 

「……おい、馬鹿共。また家の壁を壊すつもりか?」

 

鬼の形相というか髪の毛を龍の頭にしたシズクが窓を開けて顔を見せた。

 

【退避ッ!】

 

「賛成でござるッ!!」

 

「説教はいらんぞッ!!」

 

蜘蛛の子を散らすように逃げていくアホの子トリオに苦笑しながらメロンパンの封を切り、中身を取り出しているとルンルン顔の沖田の姿が見えた。

 

【横島ならおらんぞ?】

 

【え……またいないんですかッ!?】

 

横島がいないと聞いて崩れ落ち、ゾンビのように身体を引き摺って近づいてくる沖田に気持ち悪いなと思ったワシは悪くない。

 

【どこへ!?また長期任務ですか】

 

【横島に執着しすぎじゃろ】

 

【ノッブには判らないんですよ、ずっと同居してるんだから!横島君は私にとってオア……ゴブウ……】

 

エキサイトした沖田が吐血して倒れ、びくびくと痙攣しているのを見ながら振り返る。

 

【どうする?こいつ】

 

「……見て見ぬ振りも出来ないから家の中に入れてくれ」

 

【ええーワシが?】

 

「……メロンパン奮発してやるぞ?」

 

【良し判った、ワシに任せておけ!】

 

現在進行形でびくびく痙攣しながら横島の名を呼んでいる沖田は本当に気持ち悪いが、メロンパンの為ならばと思い沖田を家の中に引きずり込むことにしたのだが、その間も私のお父さんになってくれるかもしれないと不気味な寝言を呟いていた。

 

【……なんか横島が私のお父さんになってくれるかもしれない少年とか言ってるんじゃけど】

 

「……それは気持ち悪いな」

 

「いや、それ普通に変態」

 

【変態?】

 

1人だけ判ると言わんばかりに頷いているルキを見て、本当横島の回りのやつって癖が強すぎると改めて思った。

 

【そおぃ!】

 

そしてワシは今も気持ち悪い事を言っている沖田をソファーの上に投げて、気持ち悪かったと呟くのだった……。

 

 

 

 

 

~美神視点~

 

本当の交渉内容――ここからが私達が派遣された本当の理由だと思う。明らかに雰囲気が変っている……横島君を呼んだのも紛れも無く永琳の本心であろう。ドクターカオスが言っていたが、不老不死というのは言うほどいい物ではないと言っていた。

 

【肉体は老いぬ、死ぬことも無い。だが精神は磨耗する……ワシはそれに耐えられ何だ。だから不完全な不老不死の薬を作ったのだ】

 

肉体は若いままだろう、だが精神はそうではない。妹紅も輝夜も見た目からは想像出来ない老獪さを秘めていたが、横島君を見てから明らかに雰囲気が変ってきている。精神の死が近づいているのを感じて、冥華おば様は私達と横島君の派遣を決めたのだと永琳との話で感じていた。

 

「美神さんと蛍さんは月神族についてどこまで知っておられますか?」

 

「地球の神々から独立した神魔という事くらいしか知らないわ」

 

そもそも月神族には余りにいい印象が無い、平安時代の事もあるが……地球の人を穢れ人と呼び、地球の神魔を下等な神魔と呼ぶ……そんな驕りきった存在の情報など今の地球には必要ないものだ。

 

「独立と言えばいいですが、月神族はその傲慢さから地球を追い出されたと言ってもいいですね」

 

「……そこまで言います?」

 

同じ月神族でありながら嫌悪感を隠そうともせず吐き捨てるように言う永琳に蛍ちゃんが驚いた表情でそう尋ねる。

 

「ええ、言います。私は月神族が嫌いですから」

 

嫌悪だけではない、憎悪と殺意も感じられるその声を聞いて、永琳の月神族に向ける殺意が並大抵ではないと言うのを肌で感じ取った。

 

「そんな月神族は自分達の神としての階級を上げる為に私達を狙っています。私と姫様、そして妹紅は蓬莱の薬というものを飲み不老不死となっております。これを人間が飲めば不老不死になるだけではなく、霊力の向上に神通力も得るでしょう。そして神魔が飲めば古き神の座にまでその手が伸びる」

 

確かに普通の人間であるはずの妹紅が凄まじい力を持っているのは判っていた。それだけの効果を与える薬――人間だけではなく、神魔ですらも欲するだろう。

 

「月神族は貴女達を捕えて、その薬でも作らせようとしているって事かしら?」

 

私は薬を作らせる為に永琳達を探している……そう思っていた。だがそれはまだ私は月神族の邪悪さを理解していないだけだった。

 

「蓬莱の薬は適合しても、効果はまちまちです。私達は最大の効果を発揮していますが、他の神魔や人間が飲んでも同じ効果を得れるとは限りません」

 

「じゃあその事を伝えれば追われなくなるんじゃ?「物事はそう簡単ではなく、そして月神族の恐ろしさもそんな物ではないのですよ。蛍さん」……貴女達も見たはず、月神族に対して激しい怒りの炎を燃やす横島君を見たはずですよ。ですが、逃げている1000年の間にやってきた月神族はそれよりも遥かにおぞましく、そして醜悪でした」

 

魂さえも凍りつくような凄まじい怒気と殺意、そして金時から月神族が何をしたかというのは聞いていた。だがそれよりもおぞましく醜悪だったという永琳は私と蛍ちゃんを見てゆっくりと口を開いた。

 

「蓬莱の薬は肝に溜まります。肝に残った蓬莱の薬は適合者である私達の影響を受けて、その性質をより強力な物にします。そして蓬莱人は死んでも生き返る。そして「肝」を抉り出されても再生するのです」

 

その言葉を聞いて私も蛍ちゃんも顔から血の気が引いた……永琳が何を言おうとしているのか、理解してしまったのだ。

 

「私達を捕え、肝を抉り出し続け蓬莱の薬を作り続ける。そのために月神族は私達を追っています、最高の状態の蓬莱の薬を得る為に……」

 

「そ、それが仮にも神魔のやる事なのですか!?」

 

余りにもおぞましい、そして永琳、輝夜、妹紅を人間ではなく、ただの薬の材料としか見ていない月神族の邪悪さを聞いて蛍ちゃんが声を荒げた。

 

「やります、彼女達は自分達こそが絶対の正義であり、それ以外は何をしても良いと思っている。そして……私達の肝を喰らえば不老不死になると人間を唆し、追っ手として放ってもいます」

 

人間を使い永琳達を追い、自分達も追い続ける。恐らく現代にも永琳達の話は伝わっている……だからこんな迷宮染みた場所に隠れ住んでいる。そして襲われたというのも……。

 

「女だからじゃない、肝を求めてってことね?」

 

美女、美少女だから手篭めにしたいと思ったのも在るだろう。だが大本は蓬莱の薬を得る為に、冥華おば様の命令を無視して襲ったと考えて間違いないだろう。

 

「はめて楽しんで、薬も作れるとか言ってましたから両方でしょうけどね。人間も月神族も、神魔もどうしようもなくおぞましく、信用に値しない存在ではありますが……六道と横島は違う。姫様達はそう信じて今まで生きてきて、そして優しいままの横島を見て心から喜んでいる。そんな横島君が師として慕う貴女達だからこそこの話をしました。人は醜く、そして愚かでおぞましい、ガープを筆頭としたソロモンが動き出せば、その悪意に、その存在に心酔し悪意は広がり、止め様の無い騒乱が起きるでしょう。ガープが関係なくとも、私達はそれだけの悪意に晒されて来たのです」

 

とてもじゃないが横島君にこんな話を聞かせられない、それこそ再び狂神石に飲まれる事に繋がるからだ。だが永琳の言うことも判る、蘆屋のようにガープに見出された人間もいる。これから悪意が止められなくなるというのも判る……。

 

「永琳さん。貴女の本当の依頼とは……なんなんですか?」

 

永琳が望む本当の依頼……それはなんなのかと問いかける。だがそれは確認で彼女が何を望むかは判りきっていた

 

「月神族の抹殺、あるいは永遠の月への幽閉、そして私達の事を知る人間の殺害、あるいは投獄を求めます。それさえ成し遂げてくれれば、どんな薬品であれ、私はそれを作りましょう」

 

何の感情も込められていないその言葉には1000年間の間。裏切られ、騙され、追われ続け、自らが傷つきながらも輝夜と妹紅を守り続けた永琳の凄まじい激情の込められた言葉に反論する術も、考え直せという事も私と蛍ちゃんには出来ず、ただ震える声で六道と神代に進言いたしますというのがやっとなのだった……。

 

 

 

~輝夜視点~

 

冥華が買って来てくれたTVとゲーム。それは私と妹紅の暇を潰す為の物で、永遠亭の一室全てを埋め尽くしている。

 

【これくらいしか出来なくてごめんなさい】

 

冥華は若い時から私達に色々と便宜を図ってくれていた。そして今回は横島を連れて来てくれた……それだけで私も妹紅も嬉しくてしょうがないのだ。

 

「とっとと」

 

「ぬぬう……」

 

「あはははッ!横島も妹紅も遅いわよッ!」

 

TVの前に座り3人でコントローラーを握ってレースゲームをする。曲がるたびに私達の身体が傾いて、それぞれの身体が触れ合うのも悪くはない。

 

「みむ?」

 

「ぷぎゅー」

 

【ノブ!】

 

チビ達も画面の前に座り込んで私達の身体が傾く度にゆらゆらと揺れ、チビ達なりに楽しんでいるようだ。

 

「よっし、甲羅発射!」

 

「甘いわね!」

 

「あぶねッ!」

 

妹紅が妨害アイテムの甲羅を取り発射するが、それを私はドリフトで回避し、横島は車をジャンプさせて回避する。

 

「あーッ!」

 

跳ね返ってきた甲羅が直撃し、妹紅が操作していたキャラがクラッシュして川の中に落ちていく。

 

「このまま私の勝ちね」

 

「3連敗はしない、せんぞーッ!!!」

 

横島の操作するゴリラみたいのが追い上げてくる。だけど加速力のある私のキノコには……と思った瞬間。画面が光って私と横島のキャラが小さくなる。

 

「「あっ!?」」

 

「はははははッ!!!今度こそ私の勝ちだ!」

 

クラッシュした妹紅が雷をGETし、私と横島が小さくなっている間にゴールテープを切ってしまった。

 

「勝ったぁッ!!」

 

両手を上げてガッツポーズをする妹紅は良し良しと繰り返し笑う。

 

「じゃあ横島様」

 

「……あのさ、これなんか意味がある?」

 

意味があると言えば意味はある。言葉に出来ないがなんとも言えない幸福感がある、胡坐をかいている横島の膝の上に座りふふんと笑う妹紅となんとも言えない顔をしている横島。

 

「次は私がその椅子を奪うわ」

 

「防衛する!」

 

「俺椅子なの?」

 

最初に私がやり始めたが、あれは中々良い感じである。今度は妹紅を蹴落として、また3人でゲームをして今度は私が横島の膝の上に座ると意気込んで今度は落下や落水の可能性が窮めて高い水の都のエリアを選択するのだった。

 

「それ卑怯!」

 

「勝てばよかろうなのよ!」

 

「あーッ!」

 

妹紅が座っているので操作がしにくい横島が早速落水、実質このエリアでの勝負と言うか、妹紅が横島の膝の上に座っているのは僅か数分の事なのだった……。

 

「卑怯!」

 

「ふふふ!勝てば官軍よ!」

 

「はいはい、喧嘩しない喧嘩しない」

 

私と妹紅が口論していると横島がそれを静止に入ってくる。完全な子ども扱いなんだけど……悪い気はしない。横島が自分達だけを見てくれていると言うのは、なんとも言えない幸福感と高揚感がある。ずっとこのままが良いと思っていたんだけど……不老不死の肉体であれど、眠気というものはどうしても存在する。

 

「ふわ……」

 

「あれ、眠い?」

 

「いや、眠くないわよ」

 

「あふ……ふぁああ……」

 

妹紅も私に釣られたのか大きく欠伸をする……いや、実際は本当に安心したのだと思う。正直な所六道の使いに紛れて私達を捕えに来る相手がいなかったわけではない。新しい六道の使いが来ると聞いていて、やはりどこか精神的に張り詰めていた部分があったのだと思う。横島を見て安堵したら、一気に睡魔が襲ってきた。

 

「昼寝する?」

 

「え、それは……」

 

「嫌かなあ」

 

寝ている間に横島が帰ってしまいそうな気がし嫌だというと、横島がうりぼーを抱き上げた。

 

「お昼寝の時間」

 

「ぷぎいッ!」

 

横島の手から飛び出したうりぼーが分裂して、部屋の中を埋め尽くす。その中でも本体だと思ううりぼーに横島が背中を預けると、チビが頭の上に飛び乗り、チビノブが横島の腕の中に潜り込んだ。

 

「俺も眠いから昼寝しよう。大丈夫、勝手にどこにも行かないよ」

 

そう言って欠伸をする横島を見て、私と妹紅はそろって欠伸をし、かつて……そうおじいさんとおばあさんと暮らしていた時、横島と平安京で出会った時のように、窓から差し込む日の光を浴び、うりぼー達に埋もれながら横島と共にとても幸せな気持ちで眠りに落ちるのだった。

 

だけど……最後まで幸せな気持ちではいられなかった。永琳から聞かされた横島の今の立場、私達よりも危険かもしれないと聞いてしまった。だから横島を永遠亭から出させないように、横島を連れて行ってしまう2人の前に立ち塞がる事にした。

 

「横島は行かせない。横島は私達と一緒に永遠亭にいるのよ」

 

「私も行かせない、だってお前達は横島と比べて弱すぎる。そんな奴と一緒に横島を行かせるものかッ!」

 

それは嫉妬にも、執着心にも似た私と妹紅の嘘偽り無いの気持ちの現れなのだった……。

 

 

 

リポート3 迷いの竹林と月の姫君 その7へ続く

 

 




バトルがないと思いましたか?残念あります。妹紅&輝夜VS美神&蛍。横島君幽閉中、リポート2に続き幽閉されるヒーロー、やっぱりよこしまはヒロインだった?事件ですね。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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