GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL   作:混沌の魔法使い

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その2

リポート1 横島家の新しい日常 その2

 

 

~愛子視点~

 

横島君やピート君達が通う高校は紛れも無く普通の学校だった。少なくとも私の記憶ではそうだった……確かに普通の学校の幽霊とかはいたが、それでもごく一般的な学校だったのは間違いない。だけどそれは先月までの話だった。

 

「オリオン、はよー」

 

「今日も熊してるな!」

 

「おう、元気そうだな。ガキ共ッ!と言うか熊してるってなんだよ?」

 

さも当然のように熊のぬいぐるみに声を掛ける男子生徒。しかし話しかけているのはくまのぬいぐるみではなく、れっきとした英霊であり、アルテミスさんの影響を受けているオリオン座になった狩人だと言うのだから驚きだ。手先の器用な生徒が用意したミニチュアハウスで暮らしているのだが、当然前の世界にあんな存在はいなかった。

 

「アルテミス様。おはよー」

 

「おはようございます。アルテミス様」

 

「はぁーい、おはよう。今日も元気そうね、また面白い話が合ったら聞かせてね」

 

教室のロッカーの上に腰掛けている女神アルテミスさんなんて絶対にいなかった。一体何故、何がどうなってこうなったのかが不思議でしょうがない。

 

(……それは私もなんだけどなあ……)

 

机の上から離れる事は出来たのは良いけど、アルテミスさんの巫女にされて霊力とか神通力が上昇しているのは本当にどうすれば良いのだろうか……。少なくとも並のGSよりかは霊力が増えたのは認めるけど、机妖怪――いや、今は机巫女?アルテミスさんの巫女?……正直良く判ってないけど、神魔の末席に近い存在になっているのはどうすればいいのか本当に判らない。

 

「愛子さん。おはようですジャー」

 

「はい、おはよう。今日も元気そうね」

 

「はっはっは、大分体力が付いてきたと思うですじゃ」

 

「おはようございます、愛子さん」

 

「愛子、おはよー」

 

「おはよう」

 

教室に入ってきたタイガー君に続いてピート君とシルフィーちゃんも登校して来て挨拶をかわす。

 

「そうそう、昨日横島君を見たから今日は学校に来ると思うよ」

 

「え?本当?元気そうだった?」

 

最近姿を見ていなかった横島君は元気だった?と尋ねるとシルフィーちゃんはなんとも言えない顔をした。

 

「神魔の女の子と、鬼の女の子と一緒だったかな?」

 

「……何があったの?」

 

チビちゃん達を連れているのは良く見るけど、何故神魔と鬼の少女と一緒だったんだろうか?

 

「まぁ、いつもの横島さんじゃないけん?」

 

「それで納得するのはどうかと思うんだけどその通りかもね」

 

横島君と言えば人外と少女みたいな所がある。煩悩が控えめになったら子煩悩がました……本当に横島君って両極端なのよねと笑いあっていると教室の扉が開いた。

 

「おはよー」

 

「おう、横島久しぶりだな」

 

「1ヶ月ぶりくらいじゃない?もうちょっと学校に来なさいよ」

 

久しぶりに見る横島君にクラスメイトが次々と声を掛けるのだが、私はその場から動けなかった。久しぶりに見た横島君になんと声を掛ければいいのか判らなかったとか、そういう話ではない。

 

(なに……この感じ)

 

柔らかい笑みを浮かべた何時も通りの横島君だ……それなのに足の竦むような恐怖を感じる。妙な息苦しさを感じた時、私の目の前に白いドレスの裾が入り込んだ。その時だった、全身を縛り付けるような恐怖も息苦しさも一瞬で消え去っていた。

 

「おう、横島。おはようー」

 

「おはよう。横島」

 

「オリオンもアルテミス様もおはようございます」

 

オリオンとアルテミスさんが私の前に立ち、横島君に声を掛けている。柔らかく微笑んでいるのだけど、その目は剣呑な光を宿していて……横島君が姿を見せない間に何か、とんでもないことが起きたのだと私が悟るのにそう時間は掛からないのだった……。

 

 

 

 

~ピート視点~

 

昨日横島さんが久しぶりに教会にやってきたのを見て、僕は正直安堵していた。京都でまたトラブルに巻き込まれたと言う話を聞いていたので、5体満足で元気そうしているのを見て本当に良かったと思う。ただ……1つ気になっている事があるとすれば……。チビ達の他に連れていた2人の少女の事だろう。

 

(あの鬼と神魔の子供は一体?)

 

さも当然のようにおんぶしていたのと手を繋いでたのは驚きはした。だけど、横島さんの何時も通りかと思えば何の問題もないように感じた。京都土産だと言って僕達に生八橋などの京都のお菓子をお土産に持ってきてくれたし、何時も通りの横島さんだと僕もシルフィーも感じていた。

 

『ピート君。明日学校にもし横島君が来たら様子を良く見ておいてくれるかい?』

 

『友達だからという考えは捨て、除霊の様子見のつもりで横島をよく見ておけ、ピエトロ、シルフェニア』

 

唐巣先生と父さんに言われた言葉をその時は全然理解出来なかった。だけど、翌日学校で横島さんに会った時。その言葉の意味を僕は理解した。

 

(2人の言っていた事はこう言う事だったのか……)

 

横島さん自体は全くの自然体だ。何時も通り、チビとうりぼーをつれて朗らかに笑いながら皆にお土産を配っている。

 

「タイガー、これ。エミさんとお前の分な?」

 

「おお、これはありがとうですじゃー」

 

タイガーさんは普通に対応している所を見ると何も感じていないのだろう。僕とシルフィー、そして愛子さんだけが気付いた奇妙な違和感……それは魔力の存在だと思う。横島さんの霊力には元々魔力が混じっていましたが……その密度が信じられないほどに上がってる。

 

「……」

 

「シルフィーちゃん?どうかした?」

 

「……」

 

ぼーっとした様子で横島さんに歩みを進めるシルフィーの肩を掴んで止めた。

 

「え、あ……兄さん?」

 

完全にシルフィーが惹きこまれ掛けていた。それほどまでの濃密な魔力だ……昨日は教会だったから気付かなかったけど、これは正直良い傾向とは言えないと思う。

 

「寝不足か?大丈夫?」

 

「う、うん。そうかもね、ありがとね、心配させちゃって」

 

シルフィーが誤魔化すように笑うが、横島さんはその顔を見て怪訝そうな顔をしている。

 

「調子悪いなら無理しないほうがいいぞ?」

 

いつもの優しい横島さんなだけに、どうして魔力がここまで深く横島さんに根付いているのか……教会に帰るまでの間、僕はそれがどうしても気になってしまい、今日の授業の内容は殆ど頭の中に入って来なかった。

 

「父さんと唐巣先生の気をつけろと言う意味が判りました。横島さんの霊力にかなり魔力が混じっていました」

 

「そうか……実は昼間に神代琉璃に聞いたのだが……横島は平安時代で狂神石の力に飲み込まれたらしいのだ」

 

父さんの口から出た言葉を最初僕は理解出来なかった。少し時間を掛け、言われた言葉を理解した時――僕の声は震えていた。

 

「よ、横島さんは人間ですよ?何故狂神石に影響を……」

 

「神代会長が言うには変身していた時の影響だそうだ」

 

唐巣先生に言われなくても、僕にはわかっていた。変身していれば横島さんの状況は霊体に近い――英霊や神魔に影響を与える狂神石に影響を受けるのは当然というのは判っていたのだ。でもそれでも、違うと言って欲しいからこそそう口にしていたのだ。

 

「すいません」

 

「いや、良いよ。君達が抱えるには大きすぎる……勿論横島君にもね。シルフィー君は?」

 

「寝てます。調子が悪いみたいで」

 

「違う。シルフェニアは惹かれているのだ、横島もまたな……」

 

「どういうことですか?」

 

シルフィーが惹かれていると言うのは判っていた、だが横島さんもまたと言われどういう意味かと問いかけると父さんは机の上に1枚のチラシを置いた。

 

「これってマリア7世の……」

 

「そうだ。そして来日目的は竜の魔女の旗を正式な持ち主に引き渡す事――つまり横島の事だ。そしてこれは英霊の触媒でもある」

 

「……そんな英霊いましたか?」

 

竜の魔女の旗――旗が象徴の英霊というとジャンヌ・ダルクが真っ先に思い浮かぶが、チラシに写っている旗は禍々しくとてもジャンヌダルクの旗には見えなかった。

 

「ジャンヌ・ダルク・オルタ。ガープが召喚し、存在を歪めた英霊。それと横島君はかなり強い縁で結ばれているらしい、それが日本に近づいているから横島君も影響を受けていると見て良いだろう」

 

「……それは大丈夫なんですか?」

 

「判らん。だからこれからカオスの元へ向かう。お前も来い、マリア7世の来日……それを切っ掛けに大きく動くぞ。出来うる限りの対策をとる」

 

父さんと唐巣先生の言う事は判る。だけど……何故毎回横島さんばかりがすべての事件の中心にいるのか……それを知る必要があるのではと感じていた。

 

(何故今まで僕はそれを疑問に思わなかった)

 

偶然などでは片付けられない何かが横島さんにはある。父さんも唐巣先生もそれを口にしないのは何故なのか?そして何故僕は今までそれをおかしいと思わなかったのか……背筋が冷たくなるものを感じながらも僕は唐巣先生と父さんの後を追って歩き出したが……1度芽生えた疑問の種は僕の胸の中から消えることが無いのだった……。

 

 

 

 

~高城視点~

 

横島を守るように命じられてから魔界や天界の情勢に正直疎い。ブリュンヒルデやメドーサ、そしてルキフグスが教えてくれるが、ルイ様に意図的に情報封鎖をされているらしく、部下からの連絡は無し。横島の事を知りたければ、横島の家に訪ねていくか、散歩で遭遇するしかないという徹底振りだ。

 

(ルイ様らしいといえばルイ様らしいのだが……)

 

私が右往左往しているのを見て楽しまれているのは判る。ルイ様にとっては自分以外の全ては玩具――それは部下であっても変わらない。

 

「あれ?高城さん。どうかした?」

 

「ん、いや。ちょっと散歩にな」

 

横島の様子を見るためにふらりと立ち寄った横島の家の前で横島と鉢合わせたのだが、その姿を見て私は眉を細めた。

 

(なんだ。何があった?)

 

666の女帝が横島に執心している事から横島に魔人の適正があることは判っていた。だがそれは微々たる物で、横島という器の中に霊力6・竜気2・魔力1・神通力1という割合だった。京都に行く前に確認していたからそれは間違いないのだが、今目の前にいる横島は人間の証である霊力が減退し、竜気も弱まり、魔力が随分と活性化しているように見える。

 

「ゴミでもついてる?」

 

「肩に葉っぱが付いているぞ?」

 

え?マジ?と言って肩に乗っている葉を振り払う横島の姿を見ていると、横島の家の庭に見慣れない2人がいるのに気が付いた。

 

「……なんだ?凄い気配を感じる」

 

「びりびりするぅ……」

 

子鬼……ではないな。この感じだと上級の鬼だ……それこそ中級神魔に匹敵するレベルだな。もう1人の導師服のチビは……随分とちぐはぐだな。

 

「ああ、茨木童子と紫ちゃんって言うんだ。京都で会ってそのままつれて来たんだ。2人とも、高城さんって言うんだ。ご挨拶」

 

横島がそう声を掛けると2人は一応と言う感じで手を振りかえして来る。それを見て小さく手を振り、踵を返す。

 

「あれ?帰っちゃうの?お茶でも飲んで行きません?」

 

「……いや、買い物も残っているし、用事もある。また今度ゆっくり出来る時にでも来よう」

 

本当ならお茶でもしてから帰ろうと思っていたが、それ所ではなかった。横島の様子がおかしいからと言う訳ではない、横島の魔力が強まっているからではない。

 

「……なんだこれは」

 

自分でも上手く理解出来ないどす黒いなにかが胸の中に逆巻いていた。判らない、こんな感情は私は知らない……あのまま横島の家にいたらそのどす黒い感情に任せて暴れてしまいそうだった。

 

「……嫉妬したのか、私が……」

 

横島の家で当然のように暮らしている2人に嫉妬したのか?ありえない……そう思って首を振ろうとしたが、それを否定できる材料が私の中にはなかった……。

 

「私は……」

 

そこから先の言葉は私の口から発せられる事はなかった。それ以上の言葉を発してしまえば、高城雅という存在が崩れて壊れてしまうような気がしたからだ。嫉妬だけならばいい、だが■■は駄目だ。それは神魔として、ベルゼブルとしての私を壊してしまう。

 

「……はぁ」

 

こんな事ならば自分の紛い物の討伐に何て行かなければ良かった。そうすればこんな感情を知らずに済んだのに……私は足元に落ちている石を八つ当たりで蹴り飛ばし、逃げるように横島の家の前から歩き去った。

 

「散歩の時間だよね!」

 

「そうか!では鯛焼きだな!」

 

「散歩=おやつではないでござるよ?」

 

「あんまり食べるとシズクに怒られるわよ?茨木」

 

「む、むうう……」

 

「はは、そうだな。じゃあ鯛焼きはまた今度にして、今日は普通に散歩にしよう」

 

背後から聞こえて来る楽しそうな声が余計に私の神経を逆撫でした。私がこんなにも悩んでいるのに、何故お前はそんなにも普通に過ごしているんだと罵ってやりたいのをぐっと堪えて、横島の家の向かうときは軽やかだった足が、やけに重いと思うのだった……。

 

 

 

~ドクターカオス視点~

 

東京の霊脈の上に特設された博物館を見てワシは税金の無駄遣いと思わず心の中で呟いた。

 

「どうですか!ドクターカオス。この素晴らしい博物館は!」

 

「ま、見た目は最高じゃな。霊的防御も悪くない」

 

霊脈を利用しての霊的防御は非常に強固だ。それに加えて装飾にも拘っているのが良く判る――用意されている英霊の触媒なりえる観覧物さえなければ正直賞賛しても言いと思えるレベルだ。

 

「ありがとうございます!ドクターカオスにそう言って貰えれば私共も安心出来ます。では……」

 

「悪いが、ワシもワシの準備がある。これ以上は無駄話をしている時間はない、お前の話はゆっくり出来る時にでも聞きに行くよ」

 

気を良くしていた政府からの案内役の男にぴしゃりというと男はハンカチを取り出して、汗を拭った。

 

「流石と言う所でしょうか?」

 

「ふん。ワシはただの爺じゃよ。ほれ、はよう案内せい」

 

ワシの霊力に当てられ青い顔をしている案内役にせっついて、マリアとテレサと共に取り分け豪奢なデザインの一室に足を踏み入れた。

 

「お主ら、馬鹿な事は考えんほうがいいぞ?」

 

「……な、何のことでしょうか?」

 

「竜の魔女の旗を金を積んで譲ってもらおうと考えておるようじゃが……そんな事をすれば東京が消し飛ぶぞ」

 

見た目は豪華な作りだが、あちこちに仕掛けが施されているのが良く判る。マリア7世の言う真の所有者を閉じ込めて、金による交渉を企んでいるのは明らかだったが、それは取らぬ狸の皮算用と言わざるを得ない。

 

「……しかしですね」

 

「旗の所有者は英霊じゃ。それから奪えると思っておるのか?」

 

ワシの言葉に案内人は息を呑んだ。GSに関わっていれば英霊がどんな存在かなんて誰もが知っている。

 

「霊脈の上、それに展示物。全部マリア7世の指示じゃな?」

 

「……はい、その通りです。まさか」

 

「全部英霊召喚の魔法陣じゃよ」

 

ひっと引き攣った声を出す案内人だが、ワシは博物館に入った瞬間からそれを理解していた。

 

「……やはり手を引くべきですか?」

 

「当たり前じゃろ。まぁ、お主は不運すぎるからワシが一筆書いてやる」

 

お願いしますと頭を下げて展示物の無い部屋にワシとマリアとテレサだけが残される。

 

「ドクターカオス。魔法陣をずらせば……」

 

「出来んな。核の物はそう簡単に動かせる代物ではない、一杯食わされたわ。流石マリア姫の子孫だけある」

 

新しく作らせた博物館もマリア7世が出資したのだろう。最初から最後まで英霊召喚のためだけに通路から展示物が用意されている。

 

「大丈夫なのそれ?」

 

「まぁ大丈夫だとは思うんじゃが……現れる相手が心配じゃなあ」

 

現れるのは間違いなく黒き聖女――正直あの娘が現れたらどうなるか想像するだけでも怖いが、ここまでお膳たてされていてはここから邪魔をするのも不可能だ。

 

「ドクターカオスも大変なのでは?」

 

「そうそう、マリア7世からの手紙凄いじゃん」

 

毎日5通は届くマリア7世からの手紙。何を見たとかそういう感じの物で、帰って来いという内容の手紙では無いが毎日何通も来れば流石に恐怖してくる。時差も計算しているのがまた怖い所だ……。

 

「それはおいおい何とかするとしよう。まずはこの召喚陣を補強する」

 

「「はいッ!」」

 

マリアとテレサの元気の良い返事を聞きながら召喚陣の補強を始める。知らないで作られている召喚陣は少し不安定で、補強を加えないと安定して召喚も出来ないかもしれない。そうなると余計に暴走の危険性を高めることになるだろう……それはなんとしても避けなければならない。

 

(まぁ安定したら安定したで問題はあるんじゃがな)

 

テレサとマリアの恋敵が増えるのは間違いない。しかし不安定な状態での召喚は東京も危ない上に、小僧にも強い精神的な負荷を掛けることにもなりかねない――それらを加味した上で召喚陣の補強に踏み切ったが、これが吉と出るか凶と出るか……それはワシを含めて今は誰にも判らないのだった……。ただ1つ判っている事があるとすればマリア7世の来日がすべてにおいて、大きな転換期となると言う事だけなのだった……。

 

 

 

リポート1 横島家の新しい日常 その3へ続く

 

 




次回は蛍や沖田達を絡めてほのぼの風味の話で書いて行こうと思います。今回はシリアスタッチの横島の回りの話でしたからね、次回は違う感じで話を進めて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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