GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL 作:混沌の魔法使い
リポート4 横島INワンダーランド その6
~ルキフグス視点~
森の中に凄まじい雷が落ちて何事かとタタリモッケと共に身構える。私の記憶では電気を扱う魔物は殆どいない、個体数が絶対的に少ない電気鼠とかは生息している筈だが、自然で暮らしている個体はそれほど強力な電気技を使えない筈だ。
「ここら辺にあれほど強力な雷を使う魔物はいましたか?」
「いえ、ここら辺には雷を使う魔物は殆どいません」
一応タタリモッケにも確認し、アスモデウス一派が動いて来たか?と警戒を強めていると私達の目の前に障子が出現し、そこから横島が魔物を抱えて姿を見せる。
「すいません、チビが凄い怒って雷をこの子達に落としちゃったんですけど、なんとかなりますか!?」
口から煙を出し、目を回している4匹の魔物の子供を見て、私は天を仰いだ。タタリモッケも同様だ、危惧していた通りに魔界でも指折りの魔獣の幼生――しかも1匹1匹がかなり強力で並みの神魔なら返り討ちにするほどに強力な魔獣4匹が皆目を回している光景には私もタタリモッケも言葉を失ったが、ぴくぴくと痙攣しているのを見ると瀕死かそれに準ずる重傷で、このままでは親が怒り来るって突撃してくるかもしれないと慌てて治療に入るのだった。
「フカア……」
「ヨギ……」
「ココォ……」
「モーノーゥ」
アンニュイというかかなり落ち込んでいる4匹、幸いというのか、それともチビも本気ではなかったのか4匹とも雷の轟音にびっくりして気絶していたと言うのが本当で……一応直撃はしていたが、元々雷に強い種族なのでそこまで大きなダメージはなかったようだ。
「なんでチビに負けたの?」
「チビってグレムリンなのに……」
タタリモッケになんでなんで?と皆が群がって尋ねている。グレムリンは決して強い魔物ではなく、むしろ下から数えた方が早い魔物だ。しかも、それが幼生のままならなおの事だ。だがチビは現に成獣にならないと使えない雷を使いこなし、その知性も驚くほどに高い。
「みーむーみみーむ」
「手加減はしたから大丈夫。驚かせただけだって」
「う、うーん。それなら良いのかな」
横島に注意されて不満そうにしているチビの言葉をアリスが翻訳し、横島が反応に困った様子で腕組している。
「ぷぎ、ぴぎいー」
【ノブブーノーブウー】
「うりぼーとチビノブもあのままだったら、大怪我するまで止まらなかったからしょうがなかったと思うって言ってる」
「……んじゃあ、しょうがないな。でも、あんまり酷いことをしたら駄目だぞ」
「みむ!」
判ってると言わんばかりに返事を返すチビは本当に賢い。確実に横島の言葉の意味を理解し、怒られた理由もしっかりと理解しているのに驚いた。
(……異常個体なのでしょうか?)
特殊な生育環境などで変異する個体は確かにいるが、チビはそれで説明が付かないほどに強く賢い。異常個体の上に横島の育て方が良かったのだろうか?と首を傾げる。
「まず皆さんは1つ考え違いをしています。強い魔獣が絶対的に強い訳ではありません、確かに種族的にはグレムリンのチビと、暴食龍達の幼生では圧倒的に種族としての強さの格が異なります。ですがそれは魔界の学者などが実際に育成しその時の数値で判断した物であり、育つ環境や育ち方が異なればその能力は大きく変わります。それに皆さんだって殴られたり、言う事を聞けといわれるのと褒められるのでは全然気持ちが違うでしょうし、嫌いな物ばかり食べろと言われても嫌でしょう?」
タタリモッケの説明は大人が子供に言い聞かせるように非常に判りやすい物だった。
「まず使い魔は道具ではなく友達であり、家族です。貴方達が愛し、大切にすれば使い魔もそれに答えてくれます。チビはその究極系の姿と言ってもいいでしょうね、横島さんはどう思いますか?」
「え?あー使い魔が友達で家族って言うのは大事だと思います、はい。チビ、あーん」
「みーん♪」
急に話を振られて困惑した様子で返事を返し、チビの口の中に木の実を入れている横島の姿はある意味使い魔達とのふれあいという意味ではこれ以上に無い正解の姿なのだった……。
~茨木童子視点~
森の中での使い魔探しは昼食の時間という事で1度中断になり、昼休憩と使い魔と更に仲良くなる時間となった。
【……お友達を作れなかったんです】
「うーん、そう言う時もあるよ。今度は最初から俺も一緒についていくな?」
【はいです……】
リリィのやつはどうも友達を作るのに失敗したようだ。吾もある意味失敗したような物なのだが……ついてきている以上友達が出来たという事でリリィの奴に掛ける言葉が無い。
「フカー、フカフカ?」
「ヨーギ、ヨギヨーギ?」
「ココ!コッコ?」
「モーノ?」
ちょこちょこと寄って来た4匹の魔物は自分達も良い?と尋ねるような素振りを見せチビが前に出た。
「みーむ、みむむうーみ」
チビの姿にびくっと身を竦めた4匹だが、チビの言葉を聞いてにぱっと笑みを浮かべ、吾達が座ってるブルーシートの上に座った。
「なんて言ってたの?」
言葉が判らない横島が何て言った?と尋ねてくるのでアリスと吾があの4匹の言葉を翻訳する。
「あの4匹はこっちに居ても良いかって言っている」
「チビは喧嘩しないなら良いよって」
「なるほど、喧嘩しないなら一緒に居ても良い」
横島がそう言って木の実を差し出すと4匹はぱぁっと顔を輝かせ、木の実をその手に取り齧り始める。
「それでさ、茨木ちゃん。それが茨木ちゃんが友達にした魔物?」
「やぁん?」
横島がそう尋ねると桃色の獣はのんびりとたっぷりと時間を掛けて横島の顔を見上げた。
「……凄くのんびりした子かな?」
横島が言葉に困っているのは吾も初めて見たかもしれない、だが吾も正直困っていると言っても良い。
「尻尾を食われてるのに気付かず、半分以上食われて泣き始めたのでな。助けたら懐かれた」
「それはなんとものんびりやな魔物だな。見た目はモチモチしてて可愛いけど」
間抜け面をさらしてるだけなのだが、横島にはこれが可愛いのかと思ってみているとよちよちと歩き出し、木の実でも食べるのか?と思っていると背中に衝撃が走った。
「やぁん」
「重いッ!
背中からおぶさってくるピンク色の訳の判らない魔物に少しの苛立ちを覚える。だが懐かれているので何とも言えないのが本当の所だ。
「んで紫ちゃんは狐と……何?」
「私も判らないんですの」
紫が2匹使い魔を獲得しているが、1匹は狐と判るが、もう1匹がなんなのかまるでわからない。
「鼠だよ?」
「ピカァー」
アリスの言葉にその通りと胸を張る黄色い鼠らしい生き物はパチパチと静電気を発生させ、どーだという顔をした。瞬間、目視できる強力な電撃がチビから放たれた。
「みむ」
「……ちゃぁ~」
勝てないと判ったのか自慢げにしていた鼠はしょんぼりとして、紫の隣で木の実を齧り始めた。
【お友達になってくれませんか?】
「フカ!」
「モーノー♪」
リリィの言葉に鮫っぽいのと、毛で前髪が隠れている犬っぽいのが返事を返す。その返事を聞いてぱぁっと顔を輝かせるリリィ、友達にはなってくれるようで、その言葉に安心したのだろう。
「ヨギ♪」
「お、重ッ!?」
「ココ♪」
「ピイピイ♪」
「ぴぎー♪」
【ノブノブー!】
「無理ぃッ!」
わーっとチビノブ達が横島に群がり、受け止めようと頑張っていた横島はその叫んで、使い魔達に飲み込まれた。ついでにうと鞄から出てきた魔獣の群れも横島に突撃し横島の姿が魔獣の中に飲み込まれてきた。
「ぶみい」
「コンコーン♪」
「ちゃー♪」
「フカフカー♪」
「モーノー♪」
自分も自分もーと群れていく使い魔に団子状態になっている横島を助けようと腰を浮かせ、アリスと共に吾は足、アリスは腕を掴んだ。
「せーので引っ張るぞ」
「まって引っ張ったらお兄ちゃんの腕が千切れちゃうかも、あとでくっつくかな?」
【治療して貰えば大丈夫では?】
「「じゃあ、大丈夫だな」」
アリスの言葉に手に入れた力を緩めた所でリリィが後で治して貰えると口にしたのでもう1度引っ張ろうと力を込める。
【やめんか馬鹿者!横島を殺すつもりか!】
心眼の怒鳴り声に身を竦め、吾達の中で唯一手足を掴んでいなかった紫が信じられない物を見る目で吾達を見ていた。
「なんでそこで力づくなんですの?待って、なんで皆違うの?って顔をするのかしら?」
「違うのか?」
【違うんですか?】
「違うの?」
これが1番冴えた考えだと思ったのだが……紫の馬鹿を見る目が結構辛かった。でも他にどんな横島の救出方法があるのかと紫に尋ねようとしたその時凄まじい轟音が草原に響き渡った。
「みぎゃああ――ッ!!」
再び雷鳴が鳴り響き、横島に群がっていた魔物達がさっと離れた。
「みぎ、みーむ、みぎいッ!!」
めちゃくちゃ怒っているチビを前にうりぼー達が小さくなるのを見て、やっぱりチビが最強なのでは?と吾は思った。
「……何回もこんなのだと死んでしまうな」
【動物に好かれすぎるのも考え物だな】
ぐったりとしている横島と心眼の話を聞きながら、本当にその通りだなと思うのだが、そうなると吾も同じ様な枠組みな訳で何とも言えない気持になるのだった……。
~ルイ視点~
横島が魔界にいるとなれば私も当然魔界に足を運ぶのは当然の事だった。しかも滞在地は新生の地となれば、面白くなるのは当然。そして魔界の最上級の使い魔も横島に懐くのは確実となれば、そんな面白い物は近くで見なければ勿体無い。
「いやいや、予想通り過ぎて面白いね」
「喜んでいただけて何よりです」
横島がいないという事で私の付き人をしているベルゼブルの言葉に笑みを浮かべる。
「横島の回りは常に面白くて私を楽しませてくれる。見たまえよこれを」
流石に新生の地に乗り込むのは問題があるので使い魔を通してみているのがだが、これがまた面白い。
『重すぎて抱っこ出来ない』
『ヨギ~』
『ココォ……』
見た目は小さくても鉱石や石や岩を食べるあの2匹はとにかく重い、見た目に騙されて抱っこしようとして腰を粉砕されるのは一時期の魔界では有名な話だった。
「……これは特殊個体ですか?」
「多分ね、普通の物よりも大きいし、それに艶も良い。恐らく歴戦の個体が親なのだろう」
『タタリモッケさんもルキさんも凶暴って言ってましたけどすごく大人しいじゃないですか』
『グルルル』
『キシャア』
『『……ソウデスネー』』
3つ首の暴食龍、そして身体が鉱石で出来た暴君龍がその巨体を小さくさせて横島に頭をなでさせているのは見ていて実に面白い。
「あいつは本当に一体何者なんですかね?」
「天性のテイマーだよ、しかしまぁ、子供は豪胆な者だ」
子供と言っても転生した神魔だが、横島に頭を撫でてもらう為に伏せているその巨体を滑り台にするとは肝が据わっている。あれだけ親が強ければ子も強くなるのは当然、しかしあれだけ立派な個体は私でも見た事が無いな。
『フカフカッ!』
『わわわッ!くすぐったい』
しかしまぁ随分と懐かれてるね。横島が狂神石でおかしくなったのは報告に聞いていたけど、あの穏やかな様子を見ればそれほど心配する必要はないのかもしれない。
「ルイ様はどうお考えなのですか?横島に狂神石が根付いていることに関しては」
「そうだね、時期尚早かな。まだ横島には早すぎる、何れとは思っていたが……ガープに手を加えられたのは面白くないね」
「……ルイ様は横島が人間で無くても良いと?」
信じられない、望んでいた言葉ではないと言う顔をしているベルゼブルを見て私は笑みを浮かべた。
「構わないよ、横島が人間だろうが、魔族になろうが、私には興味がない。横島が横島であれば良い」
種族や何かを考えるというのは人間や神魔だけだ。横島という個人を考えれば、それがどう変るのかと考えるだけでも面白い。
「ルイ様、大変お待たせしました」
「いやいや、構わないよ。私が急に訪ねてきただけだからね」
ベルゼブルが口を開こうとした時、この屋敷のメイドが扉を開き口を開きかけたベルゼブルはその口を閉ざした。
「これはルイ様。お久しゅうございますな」
「やぁ、トト。元気そうだね」
ヒヒの身体にトキの頭を持つ異形の神――エジプトの「知恵の神」「創造神」「書記の守護者」「時の管理者」「月の神」「冥界の神」など数多の異名を持つが、今回はそれらに用があってきたのではない。
「魔界のレースに私が推薦する人間を参加させてくれないかな? 娯楽だから良いだろう?」
トトはギャンブルの神でもある、そして魔界の使い魔を使ったレースの胴元の1人でもある。これにはビュレトや、魔界正規軍、韋駄天なども数多く参戦する非常に品格の高いレースでもある。
「……ふーむ、人間、人間ですか」
「駄目かい?」
「駄目とは言いませんよ?どうせルイ様が推薦するという事は私に拒否権などはないですし」
からからと笑うトト。ベルゼブルが信じられないと言う顔をしているが、トトはずっとこんな感じだ。だからこそ、私が気に入っている神魔でもある。
「自分の神格を捨ててギャンブルだけにしたんだ。面白くして上げるよ」
「ははは、それは楽しみですなあ」
本来のトトの神魔としての格は最上級。だが今のトトの神格は下級だ、自分の権限の数多くを捨て、自分の好きな事をしている。トトは神魔でありながら1番自由な神魔と言っても良いかもしれない。
「1度私が見てからこの件は返事をすると言うことでよろしいですか?」
「構わないとも、でも君が見ても気に入ると思うよ」
「ははは、それは良い。才能ある者は私も大好きですよ」
これで横島の所に会いに行く口実が出来た。そして横島がレースに参加して勝てば懐も潤う、まさしく完璧なシナリオだ。
「くしゅんッ!」
「お兄ちゃん大丈夫?寒かった?やっぱり帰る?」
「えー、横島があたいの好きなところに着いて来るって言ったんだぞー」
「大丈夫大丈夫、誰か噂してるだけだって、はーしかし、綺麗だなー」
「本当ね、少し寒いけど、綺麗だわ」
オーロラを見上げる横島とアリスとチルノと紫の4人の綺麗な光景を楽しむ感性組の背後では……。
「うりぼーの仲間か!捕まえるぞ!」
「ぷぎ♪」
「でりー」
【ぷーちゃんッ】
綺麗な物よりも遊び、食事と言う茨木童子とリリィが雪原を駆け回り、寒さに対する抵抗値が低いマスコット軍団は暖かい太陽神の化身の側に集まっていた。
「ぴい?」
「み、みむう……」
「ふ、ふふふふかあ」
「よぎい……」
【ノブウー♪】
その暖かさと寒がっている姿を見て可愛そうに思ったのか、小さな炎を吐いて作ってくれた焚き火の傍でぷるぷると寒さに震えているのだった……。
~タタリモッケ視点~
横島さんが居てくれた事で今回の使い魔捕獲は過去最高の数を記録した……しかしそうなると私1人で面倒を見切れなくなってしまう。
「難しい所ですね」
そもそも使い魔と言っても新生したばかりの神魔にとっては下手をすれば返り討ちにあいかねないほどに強く。育成を間違えれば、その方向性は間違った方向に進んでしまう。
「オーディン様とサタン様に連絡を入れておきましょうか……」
本来横島さんは預かりでしたが、彼は保父さんとしてのスキルもかなり高いようですし、もう皆にも懐かれています。それにチビを見ればトレーナーとしての素質も十分。帰るまでの期間アルバイトということで頼めないか相談してみようと思う。
「それにあの子達の事もありますし」
幼生と言えど魔界では指折りの強力な魔獣と魔物だ。当然人間界に連れて帰るのは不可能になる訳なのですが、本人達は使い魔になる気満々なので諦めるつもりはないだろう。となれば預かる場所、横島さんが飼育できる環境を整えるまで預かる事も視野に入ってくる。
「それも相談するという事で良いでしょう、私に全部押し付けたんです。こっちも押し付けてやるとしましょう」
ベリアル様やネビロス様にも相談することになるでしょうが、まずはオーディン様とサタン様だ、知っていて私に押し付けたのだから自分の子供の様子を見に来る魔界の最強の魔獣達が齎す被害に関しては全部押し付けてやろうと思う。まだまだ横島さんが魔界に滞在する日時にはかなりの余裕がある。アリスちゃんの所で過ごすというのも暇でしょうし、横島さんも子供が好きみたいだから相談してみる分には良いかもしれない。私はそんなことを考えながらネビロス様の元へ手紙を持たせた使い魔を送り出すのだった……。
「「ここに私達の神の子供を預かっていると言う人間がいると聞いてきたのですが」」
「すいません、今出掛けているので少し待っていてくれますか?」
炎の衣装の入った巫女服を纏った双子の姉妹――太陽神の化身の巫女は常に2人1組であり、そして次代の子供を育てるという役割があるのに、その役目を人間に取られたという事で不機嫌そうにしている巫女達をなんと宥めようかと私は頭を悩ませるのだった……。
「保父さんか、それも良いだろう」
「アリスも学校があるからな、流石に横島を屋敷でうろうろさせる訳にもいかん」
「ではオーディンに了承したと連絡をするか」
タタリモッケの手紙を見たネビロスとベリアルは速攻でそれを認め、オーディンに手紙を出した。
「まぁ我が認めぬ理由も無い、問題はないな」
オーディンも魔界に横島が滞在する期間は長くて1ヶ月と聞いていたので、特に考えることも無くOKを出した。
「保父さんのアルバイトですか、そうですね。アリスちゃんが帰ってくるまでやる事も無いですし、引き受けます」
そして横島も深く考えずOKを出すのが、これが後に大騒動となる事を今は誰も予想だにしないのだった……。
リポート5 鍛錬/その頃の横島君 その1へ続く
次回からは東京での話を書いて行こうと思います。半分はよこしまでの魔界での話ですね、流石に鍛錬だけで1話は書けないのでリポート4の延長の形になりますが、ご了承ください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。