GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL 作:混沌の魔法使い
リポート1 横島家の新しい日常 その3
~蛍視点~
「おっさんぽ~♪おっさんぽ~」
調子はずれの歌を歌いながら歩いている揚羽と手を繋いで歩きながら私は横島の家へと向かっていた。平安時代での戦いでお父さんは正式にガープ達に協力する事を約束した。活動拠点こそ違えど、ガープやアスモデウスと連絡する事は多く、以前のような和やかな暮らしというのはやはり難しくなってしまった。私と蓮華はまだ良いけれど、記憶が無く、幼い幼女の揚羽にはその環境はやはりストレスになっていた。その事を考えて、私は揚羽を横島の所に連れて行く事にしたのだ。
「横島ー。遊びに来たわよ」
「いらっしゃい、蛍。お、揚羽ちゃんもか、いらっしゃい」
縁側から顔を見せた横島を見て揚羽の顔が輝き、満面の笑みを浮かべて横島に向かってジャンプする。
「よこちまー♪」
「はっはッ! 揚羽ちゃんは元気だな」
揚羽を抱きとめて、そのまま回転する横島に揚羽がきゃっきゃっと楽しそうな笑い声を上げる。こういう子供の扱いって横島っ手凄い手馴れてるわよね。
「蛍ちゃーん♪」
横島に抱きかかえられ後満悦という様子の揚羽を見ながら合鍵で玄関を開けて家の中に入る。
「はい、これ。お土産」
「……肉か、ありがとう」
「ううん、気にしないで、食費って結構今大変でしょ?」
「……まぁな」
基本は眼魂から出てこないけど金時もいるし、茨木童子に紫ちゃんと一気に3人も増えたのだ。横島の家の家計簿は火の車だと思い、お土産で牛バラと豚バラを買って来たけど、やっぱり買ってきて正解だったみたいだ。
「誰ですか?」
「紫だよ!こっちはイバラギン」
「変な渾名をつけるな、紫」
縁側に靴を脱いでリビングに入ってきた揚羽が紫ちゃんと茨木童子を見てその目を輝かせる。
「あそぼー♪」
「良いですよ。遊びましょう!」
自分と同年齢に見える幼女を見て紫ちゃんと一緒にはしゃいで楽しそうな声を上げる揚羽。
「茨木ちゃん、ちょっと様子を見ていてくれる?」
「全くしょうがないな、吾がいないと駄目というのなら聞いてやらんことも無い!」
「うん、茨木ちゃんじゃないと駄目なんだ」
横島に煽てられ、そこに茨木童子もINした。偉そうにしているけど、基本的に揚羽達と大差ないのよね……。
「みっむーみみー♪」
「ぷぎゅー♪」
【ノーブウー♪】
そして更にチビ達も加わって横島の家の小さな庭でボールで遊び始める。その光景自体は凄く可愛いし、見ていて凄く和むんだけど……。
(GSとしては駄目よね、和んだら)
小悪魔、神獣、精霊、鬼、人造神魔、幼女っが一緒に戯れてるって考えなくても凄い光景なんだと思う。
「これさ、蛍も一緒に行かない?」
「え?何?」
どこかに行かないかと言われて、デートのお誘いかと一瞬思ったんだけど、机の上のカラフルな便箋を見て思わず顔が引き攣った。
「どうかした?博物館とか嫌い?」
「ううん、そういうじゃないわよ?」
机の上にあったのはマリア7世が持ってきた旗を展示するという博物館のチケット――美神さん達が必死になって動いているのを知っていると、そのチケットが地獄行きのチケットのように思えるから不思議だ。
「タマモとシロはこういうの好きじゃないって言うし、シズクはめんどくさいって言うからさ。無理だったら良いけど」
「ううん、行くわ。一緒に行きましょう」
横島が行く事でほぼ確実にジャンヌオルタは現れる。なんでも昨日博物館を見に行ったドクターカオスが言うには博物館全体魔法陣だったらしい、そんな所に横島が行けば確実に召喚陣は起動してしまうだろう。そうなるとジャンヌ・オルタが何をしでかすかわからないので抑止力はやっぱり必要だと思う。勿論横島が博物館に行く時は周りに美神さん達もいるから最悪の事態にはならないと思うけど、やっぱり1人は一緒にいたほうが良いだろう。と言うか私が断るとくえすを誘いそうだから、それだけは絶対に阻止したいって言うのが本音だった。
「俺博物館とか初めてでさあ、めちゃくちゃ楽しみなんだよな」
【貴重な霊具とかも展示しているそうだ。良くみて勉強するといい】
心眼に伝えたいけど、心眼に伝えると確実に横島にも知られてしまうので話す事も出来ないし……でもまぁ、凄く楽しそうにしている横島を見えるから、それでトントンかなと思うことにした。
「どんなのがあるのか楽しみだなあ~」
はじける笑顔の横島を見るだけで大概の事は気にしなくなってしまうのもあれだけど、ジャンヌ・オルタの最後の瞬間を思い出すとどうしても憎めないし、美神さん達が危惧するような最悪な展開にはならないだろうと私も楽観的に考えていたのだが、それが間違いだと悟るのはそう遠くない日の事なのだった。
~沖田視点~
あちこちから頼まれる除霊の助っ人を終えて東京に戻った私はすぐに横島君の家に足を向けた。
【横島君、お土産ですよ!!】
縁側に座り幼女を膝の上に乗せている横島君にお土産の袋を見せながら、私は早足で横島君の所に向かうのだった。
「紫だよ。よろしくね!」
【これは丁寧にどうも、沖田総司です】
中華系の導師服の少女が笑顔で自己紹介してくれるので挨拶をかわしながらお土産の袋を横島君に渡す。
「もみじ饅頭だ」
【ええ、広島の有名なお店で買って来たんですよ!】
「おやつ?」
「なんだ?菓子か?吾もくれ」
……なんか鬼まで住み着いている。一体横島君は京都に行っている間に何をしていたんだろう?と本当に心配になったが、突然尋ねてきても嫌な顔をせずに迎えて入れてくれる優しい横島君なので、きっとその関係なのだろうと思い詳しく尋ねる事はなかった。
「……茶を淹れるから少し待ってろ」
【いやあ、すいませんね、何かお手伝いしましょうか?】
「……土産を持ってきてくれたんだ。気にせず座ってろ」
口は悪いけどシズクさんも良い人だ。いや、神様ですから人って言うのはおかしいんですけど、良い人なのは間違いない。
「お、沖田殿!久しぶりでござるな!!」
【沖田殿。元気そうで何より】
【牛若丸さんにシロちゃんも元気そうですね。また今度一緒に稽古をしましょう】
鍛錬に行っていたシロちゃん達も帰ってきて、一気に横島君の家が騒がしくなるのだが、その騒がしさが何かとても心を安らかにしてくれる。
「あれ?沖田じゃない。何?また横島の家に直行してきたの?」
【ええ、他に行く所もないですしね】
幽霊だからマンションを借りたりするのもおかしい物ですし、助っ人をした事務所で寝泊りする事もある。
「眼魂持ってく?中快適ってノッブちゃんとか言ってるけど?」
【いえ、それは横島君が持っていてください】
眼魂があればどこでも快適に過ごせるし、霊力の回復も早まるけどあれは横島君に持っていて欲しいのだ。
【駄目じゃって、眼魂があれば横島の家に合法的に訪ねる理由が出来るんじゃから受け取る訳ないじゃろ?あぶねえっ!?】
【なんで……なんでそういう事を言うんですかねえッ!!!】
よりにもよって横島君の目の前で知られてはいけないことを暴露してくれたノッブを私は刀を抜いて追い回す。
「あのお姉ちゃんどうしたの?」
「さぁ?別に俺は尋ねて来てくれるのはぜんぜん気にしないんだけどなあ」
「美味い!この菓子美味いな!!」
横島君はぜんぜん気にしていない様子なのが逆に凄くつらい上に、居た堪れない気持ちになる。
【シャアッ!!】
【死ぬわッ!?】
これもあれも全部ノッブが悪いので刀を振るい続ける。するすると逃げ続けるノッブに苛立ちばかりが募ったその時。
【げぼああッ!?】
ノッブに制裁を加える前に私の体が限界を向かえて、私は吐血しながら顔面から倒れ込んだ。
【たす……ほわああッ!?】
へたり込んでいるノッブの最後の意地で刀を投げつけたが、命中せず私はその場で完全に動けなくなった。
「大丈夫?ちょっとごめんな」
【けふ……こちらこそ申し訳ありません】
横島君に抱えられて縁側に運ばれ、折り畳まれた座布団の上に頭を預けて横になる。
「顔に砂ついてるな、ノッブちゃんも人が嫌がることを言ったら駄目だぞー」
【いやな、お前が関係してるんじゃよ?】
「俺?俺なんか関係ないだろ、責任転嫁良くない」
ノッブを注意しながら横島君が私の顔に付いた砂や草をハンカチで綺麗に拭ってくれる。
【やっぱり横島君は私のお父さんになってくれる少年でしたね】
「相変わらず訳のわからない事を言っているでござるな」
【まぁあれが平常運転みたいな所もありますからね】
「血吐いたけど?大丈夫?」
「なんじゃ、こいつ呪われてるのか?」
横島君の優しさにときめいている間もなく、一気に騒がしくなったんですけど、この騒がしさがなんか凄く心地よく感じて、横島君が帰ってきたなあと実感するのだった……。
~くえす視点~
先日横島がふらりとやって来て買い取って欲しいと言っていた5つのシルバーアクセサリーを見て、私は思わず満足げに笑ってしまった。
「これで10万とは安い物ですわね、やれやれ、もう少し強欲でも良いんですけどね」
横島の作るシルバーアクサせりーはどれも質がいい。しかも横島の家の様々な力が練りこまれているので魔法の触媒や、魔法道具の作成にも非常に融通が利く。私は最初それを見て100万を提示したのですが、横島は多すぎると言って1万で良いと言ったが、それでは私は納得する訳も無く、押し問答の末10万円で買い取ったのだ。残りの90万は美神に渡し、横島への食費にするように言っておいたので、回りくどい方法だが100万が横島の家に行ったのでこれで暫くは安泰だろうと思う。
「……ここまでの逸品となると手を加えるのが惜しくなりますわね」
片眼鏡を外して、手袋越しにシルバーアクセサリーを持ち上げる。三日月状のペンダントトップ、実に私好みのデザインだ。黄昏の月なんて呼ばれた事もあったが、それは私が月型のアクセサリーを好む傾向があったからだ。
「……緊急時の障壁、自動反撃……何を仕込みますかね」
ずっと身に付けているのならば緊急時に発動する術式がもっとも相応しい、障壁なんかは守られている感覚がして良いのではないか?と考え三日月のアクセサリーに術式を刻み、それが定着するのを待ちながら紅茶を口にする。
「楽しみが出来ましたわね」
魔道書を買いあさり翻訳するのも楽しいが、何よりもこうして横島が作ったシルバーアクセサリーを眺めながら、どんな術式を刻むのが相応しいかと考えるのもまた楽しい。
「……でもまぁ。ちょっとはこれじゃないって感じはありますけれどね」
どうせなら贈り物として貰えたらもっと心が踊っただろう。だがまぁ困っている横島を助けると思えば、それも決して苦ではない。
「……そう言えばそろそろですわね」
マリア7世の来日と黒い魔女の旗が日本に来る日が近い。確かそれの護衛でめぐみもこっちに来ると言っていたのを思い出し、シルバーアクセサリーを丁寧に箱の中に戻し私は顔を上げた。
「竜の魔女……ですか」
報告書を見ただけだったが、随分と横島が心を許していたらしい。しかもそれが暴走しかけている自分を正気に戻し、自分を庇って死んだとなれば横島も正直気を裂くのも当然の事だった。だけどだ……。
「腹立たしいですわね」
英霊は所詮死人である。生きている横島の心を大きく埋めると言う事が私には許せなかった。信長や牛若丸は良いだろう、横島を守ろうとしている。それならば死人なら死人らしく、死ぬ事の無い身体で横島を守ってくれればそれでいい。だがそこに恋愛感情が混じってくれば話は別だ。
「所詮は写し身、何を思い、生者に思いを寄せるのが許されると思っているのか」
死者は死者、生者は生者という明確な線引きが必要だ。正直に言えば、横島が気を許しているがあの沖田だって私は正直気に食わない。紛い物如きが何故愛を語ると言いたくなる。そして分不相応にも死者でありながら生者の横島に思いを寄せると言うのならば……。
「己のあり方くらいは弁えさせなければなりませんわね」
どの道私にも応援の声が掛けられているのだ。己の身の弁え方というものを教えてやるのも重要な事だ。
「ふん、所詮は英霊崩れ、恐れるに足りませんわ」
ジャンヌダルクの紛い物。そんな者が横島に近寄ろうとすること自体がおこがましい事だ、それを霊核にきっちりと刻んでやろう。私はそんなことを考えながらマリア7世の来日を待つ事にするのだった……だがそれが私の予想を超える展開となる事と今の私は知る良しも無いのだった……。
リポート2 竜の魔女リターンズ その1へ続く
今回はくえすにフラグを作ってもらいました。くえすとジャンヌオルタは絶対激突しますからね、性格的に。その為のフラグですね、次回はセカンドから待っていて貰った竜の魔女リターンズで行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。