GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL 作:混沌の魔法使い
その1
リポート6 亡者の嘆き その1
~シズ視点~
氷室神社の周辺に現れる悪魔、悪霊の数を見てワシは眉を細めた。日に日にその数は増え。ナナシとユミルが善戦してくれているが戦力の差は明らか、琉璃が寄越した神代家の護衛も連戦に次ぐ連戦で疲弊しきっていた。
(何よりも、このままでは不味い)
悪魔による制圧も目的ではあるが、倒した悪魔の魔力が周囲を汚染している。このままつづけば周辺の動物までも魔獣になり、敵ばかりが増えることになる。どうするかと考えていると背後から声を掛けられた。
「シズさん、もうこれ以上は持たないのではないですか?」
【キヌ。お主が気にする事ではない】
目を覚まし、氷室家でリハビリをしていたおキヌが沈鬱そうな顔をしているのを見て、キヌは関係ないと言うがおキヌは首を左右に振った。
「いえ、私には判ります。今回の襲撃は私が原因だと……そうですよね?」
【……そこまで気付くほどに力を高めたか……】
おキヌの霊能者としての才はこの時代では異常というほどに高い。300年前に人身御供として選ばれたのもその霊力の質にあった、修行をしてないので目覚めていなかったが名家と言われる霊能者に匹敵するほどの霊力を持ち合わせていた。
【……確かに悪魔の襲撃はお前が関係している。どうも身体の方に細工をされていたようだ】
厳密に言えば魂だが、ガープかアスモデウスか、それとも蘆屋か……誰かは判らないが、氷の中で眠り続けるおキヌの肉体に細工が施されていた。目覚め、霊力が高まれば発動する時限式の悪辣な呪。しかも蘇生の妨害にならないように念入りに隠蔽されたそれにワシは気付けなかった。
「では私は氷室神社を出たほうが……」
【いや、その判断を下すのは早すぎる。狙いはお前だけではないのだからな】
「え?」
ガープ共の狙いは確かにおキヌだろう。だがそれはあくまで副次的な目的を遂行する為の罠でもある、ガープ達の狙いはおキヌ、そして……。
【舞を手に入れる事にある。あの子は神楽の天才じゃ、古の神を呼び戻す儀式に利用されかねん】
琉璃は神降しの天才だが、舞もまた神楽の天才だ。神楽を用いて古き神を呼び戻し、その力を得る為に利用されるだろう。
「ではガープ達の目的は……」
【お主と舞の2人を手にすることじゃろうな】
今はまだ霊力の方向性が定まっていないおキヌはどんな色にもその霊力を変える。蘆屋とガープの2人がいればどんな霊能者に変えることも可能だ、そしてそこに神楽の天才の舞が加わればどんな事も可能になる。
【最も最悪なのが氷室家の霊脈が汚染され、お主ら2人がガープの手に囚われる事。その次は霊脈が汚染され、お前達が2人ともガープの手に落ちる事。そして1番程度が軽いのがお前達のどちらか片方が囚われる事だ】
本当に悪辣だ。どれか1つでも成し遂げられれば人間界、そして天界に想像も出来ない甚大な被害を齎しかねない……。1つの行動が複数の策の起動元になっていると言うのが本当に厄介だ。
「ではどうするつもりですか?」
【氷室神社は出て貰う。だが向こうの思惑通りにはさせん、とにかく準備が出来たら声をかける。それまでは身体を休めていろ、動き出せば身体を休めている時間など無いのだからな……】
ワシがそう言うと深刻そうな顔をして部屋を出て行くおキヌ。その姿を見送りワシは溜め息を吐いた。恐らく、いや恐らく何て言葉はいらない。おキヌと舞の2人だけを氷室神社から逃がすのも恐らく向こうは計算している……それを踏まえた上で相手の裏をかく必要がある。
【出来る限りの事はする……が、どこまで欺けるか……】
ナナシとユミルの2人でどこまで守りぬけるか、そして美神達が合流してくれるのが間に合うか……自分達だけではどうにもならない運の要素が絡んでくる事に唇を噛み締め、ワシの策がどこまで通じるかそれを祈る事しか出来ない己の無力さ。そして姿を見せる事はなく神魔全てを手玉に取っているガープに恐れさえ抱く……。
【だが……お前達の思い通りにはさせん】
ワシは所詮己の本来の名さえ思い出せぬ出来そこないの神ではあるが、それでも神としての誇りもある。長く生きた知識を生かし、なんとしても無事のおキヌと舞を無事に東京まで送り出すための策を必死に練り始めるのだった……。
~美神視点~
おキヌちゃんと舞ちゃんの2人が東京に出てくるという話を琉璃に聞いていたんだけど、状況は3日の間で大きく変っていた。蘆屋の目撃で東京のGSの警戒は跳ね上がったのだが、それを嘲笑うように蘆屋の姿はあちこちで目撃されていた。それこそGS協会内部、オカルトGメン、六道女学院と東京の主要の霊能関係の場所に現れていた。
「氷室神社からおキヌちゃん達が出発したって!?なんでまだ準備出来てないのに!?」
早朝から呼び出された私は琉璃の言葉を聞いて声を上げた。蘆屋が目撃されるだけならば良いが、蘆屋に改造された元・日本軍の軍人や無数の式神の攻撃によって朝方まで動き回っていて、睡眠時間2時間では流石の私も声を荒げてしまった。
「氷室神社周辺でも東京都同じ位悪魔と式神が確認され、神代家の護衛と氷室神社では守りきれないと言う判断によってです」
その言葉を聞いてやられたと悟った。ガープ達お得意の多角的な攻撃――蘆屋という危険人物に目を奪われ、多方面への攻撃への警戒を緩めてしまったのだ。
「今2人はどこくらいにいるんだい?」
「判りません。電車等を使い民間人に危害が及ぶ可能性を考え、シズの使い魔とナナシとユミルと一緒でこっちに向かっているとしか……」
公共の交通機関を使う事によって生まれるリスクを考えたのは判るが、今回は悪手だ。どこにいるか判らず、合流するのが難しくなる。
「ある程度の予想される進路は大きく4つですが……」
「全部悪魔や使い魔が確認されているエリアってワケ」
「最悪ね……」
東京近辺のGSが動き回っているが数は減らず、消耗ばかりしている中での強行軍。それに加えて東京に向かってくる進路がわからない……。
「ねえ、シズク。場所特定できたりしない?」
「……まぁ出来ない事は無いが……なんで私が」
この反応はまず想定通り、横島君がいないので塩反応なのは私も十分に理解している。
「助けれるのにおキヌちゃんを助けなかったってなると横島君が怒ると思うけど……」
「……しょうがないな、助けてやるとしよう。全く、ほうれんそうが大事というのに」
とぷんっと言う音を立てて姿を消すシズク。良し、これでおキヌちゃん達が来る進路は判るから……そこら辺の安全を確保すれば……。
「会長!監視中のGSから緊急連絡!霊団及びレギオンが多数確認されました!」
霊団だけならまだ良いが、レギオンが確認されたとなると状況は最悪を通り越して最低に近づいている。
「レギオンの方が僕とめぐみ君、唐巣神父達で行く、霊団は多分おキヌ君を狙う筈だ。そっちは令子ちゃんに任せるッ!」
西条さんがそういうが早く部屋を飛び出していく、私も立ちあがって机の上の予想進路をメモした地図を手に取る。
「とりあえず私も動くわ、シズクが見つけてくれると思うからその間に準備をするから」
牛若丸とシロは多分2つ返事で協力してくれるはず、タマモとノッブはちょっと判らないけど、2人にも声を掛ける事にする。
「美神さん、気をつけて、霊団なら判りますが、レギオンは自然発生はしません」
「判ってる、十中八九蘆屋の仕業ね」
霊団は複数の怨霊や悪霊が集まり1つになった悪霊だ。そこに知性は無く、霊力を取り込むことしか考えていない。だが周囲の悪霊を取り込み続け巨大化し、その上核がないから片っ端から成仏させるか圧倒的な火力で消し飛ばすしかないと言う厄介な相手だ。
それに対してレギオンは核の悪魔を中心に周囲の雑霊や怨霊を取り込んで生まれる下級悪魔だ。その性質は霊団と類似しているが、核の悪魔がいる分知性があって厄介だ。ここで話し合っても何も始まらない、とりあえず動きながら状況が変わればそれに合わせて臨機応変に対応する。これしかないと思い動き出そうとした瞬間、雷が落ちたような音が響き、くえすと柩が弾かれたように姿を見せた。
「くえす!?それに柩まで!?どうしたのよ!」
琉璃が席を立ちどうしたのかと問いかけるとくえすは手を貸そうとしていた琉璃の手を弾き血走った目で立ち上がった。
「横島と逸れましたわ。魔界も大騒動で今の内に人間界に戻るように言われて、転移した瞬間に何者かに攻撃を受けましたわ」
「ちょっちょ!?それってじゃあ横島君がどこにいるか判らないってこと!?」
「くひひ、そうなるねえ。ボク達みたいに人間界に戻れていたら良いけど……魔界にいるとかになったらこれは正直洒落にならないよ……」
苛立った様子のくえすと、笑いながらもその目を鋭く細めている柩――ガープの攻勢は人間界だけではなく、魔界と天界にも広がっていると知り、もう立ち止まっている余裕はないと私達はトランシーバーだけを手に琉璃の部屋から飛び出して行くのだった……。
~横島視点~
魔界でガープの侵攻が始まったので横島がいるからと言われるとまずいというルイ様の言葉で神宮寺さんと柩ちゃんと一緒に大慌てで人間界に帰る準備をする羽目になった。
「……お兄ちゃん、また遊びに来てくれる?」
「また来るわよね?」
「せんせー……また来てね」
仲良くなったレミリアちゃん達も急な別れに悲しそうな顔をするが、あぶないと言うことは分かっているので俺を引き止める事はしなかった。
「また絶対遊びに来るよ、約束する」
保父さんのアルバイトは俺も楽しかったし、それに懐いてくれたアリスちゃん達や魔界の動物達もこれでさよならと言うのは俺も寂しいので、絶対にまた来ると約束し、紫ちゃん達を連れて部屋を出る。
「横島、急ぎなさい。転移封じの結界を張られたら帰りようがありませんわよ」
「くひひ……流石にこれは予想外だねぇ」
険しい顔をしている神宮寺さんと、笑っているが顔が引き攣っている柩ちゃんに促され魔法陣の所へと走る。
「俺達が維持してやる、戻るまでは安全だ」
「GS協会って所に跳ばすからね」
ビュレトさん達の説明に頷き、魔法陣の中に足を踏み入れ人間界へ転移している途中、強烈な光と振動を感じたと思った瞬間俺は腰を強かに打ちつけていた。
「いっ……ごぶうっ!?」
コンクリートではなかったが、固い土の上だったので思わず呻き、次の瞬間に紫ちゃん達が団子状態で落ちてきて何とか受け止めようとしたが、時間が余りにも無く俺は紫ちゃん達に押し潰される事になるのだった……。
【大丈夫ですか?お兄さん】
「ごめんなさい……」
「ちょっと痛かったけど、大丈夫。心配ないよ、リリィちゃん、紫ちゃん」
何度も謝ってくるリリィちゃんと紫ちゃんの頭を撫でて大丈夫だよと笑いかける。身体の痛みよりも今の問題は俺達がどこにいるのか判らないって所にあるんだよな……樹木があるから森の中だと判るけど、ここが魔界の森の中なのか、それとも人間界の森の中なのかが判らないのが問題だ。
「うりぼー、どこか判ったりする?」
「ぷぎゅうー」
申し訳無さそうに鳴くうりぼーにごめんごめんと謝る。そうだよな、うりぼーに判る訳がないんだから今の質問は俺が悪い。
「茨木ちゃん達は?」
「地面に落ちる前に木の枝を掴んで離れていたので近くの様子を見にいってくれたんだと思いますわ」
子供の姿だけど、こう言う時の動きの早さは流石鬼って感じだな。でも1人で大丈夫だろうかと思わず周囲を見回してしまう。
【心配ない、チビが付いて行ってるからな、それよりもまだ動くなよ、茨木とチビが戻るのを待て】
「うい」
腰を上げようとした瞬間心眼に釘を刺され、上げかけた腰を下ろす。
【まずあの光は間違いなく攻撃だ。次にくえすと柩がいないことから分断あるいは、転移の魔法が暴発している。現在地を確認するまでは動くな、だが周囲の警戒は緩めるな】
心眼の言葉に小さく頷く、身につけていた荷物は後日アリスちゃんが送ってくれると言っていたので完全に手ぶらだ。最初はアリスちゃんの家においていくのは悪いと思ったが、この状況で考えると旅行の荷物を持って移動するのは厳しいので預かってくれると言ってくれたアリスちゃんには正直感謝している。
「横島」
「みむう!」
「茨木ちゃん、チビ。何か判った?」
木の上から頭の上にチビを乗せた茨木ちゃんが飛び降りてくる。その姿を見て咄嗟に立ち上がり、茨木ちゃんに駆け寄って何か判ったか?と問いかける。
「いや、吾は現代の立地などは判らんから周辺をぶらっと見て来ただけだ。赤い塔が見えたからそんなに横島の家からは離れてないと思うが……どうもかなり嫌な感じだ」
赤い塔……東京タワーの事だな。東京タワーが見えるって事は確かにさほど俺の家から離れていないだろう。俺の気配さえ判ればシズクが迎えに来てくれるだろうから、それを待っていても良いと思ったんだけど……嫌な感じと言われて、何かあると悟った。
「雑霊と怨霊の集団が凄い、あちこちで暴れておる。それに……遠目だが2人の女を追い回す、異様な男を見た」
「2人の女って、神宮寺さんと柩ちゃんか!?」
2人の女を見てと聞いて思わず茨木ちゃんの肩を掴んでそう尋ねてしまった。
「いや、あの2人ではない。長い黒髪の女と青みを帯びた髪をした小柄な女だ」
長い黒髪、それと青みを帯びた髪をした小柄な女の子――と聞いて俺の脳裏を過ぎったのはおキヌちゃんと舞ちゃんの2人だった。いや、だけどあの2人は氷室神社にいるはずだから東京の近くにいるわけがない……だけど、余りにも特徴が似すぎている。もしもあの2人だとすれば……2人を追いまわしている男は……。
「茨木ちゃん、異様な男ってどんな?」
「んん?やたら背が高くて、着物姿の……どす黒い霊力をした変な男だ。陰陽師だと思う」
背が高くて、着物姿でどす黒い霊力をした陰陽師――その条件に該当する男を俺は1人知っている。
「心眼……」
【駄目だと言っても行くんだろう?】
おキヌちゃんと舞ちゃんが蘆屋に追われているのならば、俺は行かないといけない。確かに蘆屋は危険だ、俺1人でどうこう出来る相手じゃないし、そもそも眼魂を全然持っていない今戦いに行くのは正直リスクしかない。賢い選択をするのならば、ここは待つことが正解なのだろう。だけど……俺にはそれが出来ない。
「お兄さん、怖い顔してるけどどうしたの?」
【どうかしたんですか?】
心配そうに俺を見上げる紫ちゃんとリリィちゃんの前にしゃがみこんで視線を合わせる。
「俺の友達が敵に追われてるんだ。俺は行かないといけない」
「あ、危ないですわ。1人じゃ……私と一緒に戻って」
確かに紫ちゃんがいれば戻れるし、美神さんと合流する事も出来るだろう。だけど……それでも間に合わないかもしれない。
「いや、駄目だ。間に合わないかもしれない、2人を追いかけている相手が危なすぎるんだ」
【そ、それならなおの事紫と一緒に戻りましょう!】
リリィちゃんが俺の服の裾を掴んで戻ろうというが、俺はゆっくりと首を振った。
「俺も馬鹿じゃないから戦うってつもりはないよ。陰陽術で何とか時間を稼いで逃げてみる、だから紫ちゃんとリリィちゃんは茨木ちゃんと一緒に逃げて美神さん達を呼んできて欲しい、うりぼーがいれば俺の匂いを追いかけて来れるはずだ」
「で、でもでも……」
「我がままを言うな、紫。ここで駄々を捏ねていればそれだけ横島が危険になる。横島の事を思うのならば、早く戻って美神達を連れてくるのだ」
【い、茨木、で、でも……】
「愚図愚図するな、横島。早く行け、吾達は美神達を連れてすぐ戻る。方角はあっちだ」
俺がいれば2人が了承することがないと茨木ちゃんに遠回しに言われ、2人に頼んだと言って俺は背を向けて茨木ちゃんが指差した方角へ走り出した。背後から紫ちゃんとリリィちゃんの涙交じりの気をつけての声を聞きながら、茂みを掻き分け心眼を頼りにし、俺自身もあの緋立病院で感じた蘆屋の霊力を思い返しながら走り続けるのだった……。
~おキヌ視点~
ナナシとユミルを左腕に抱かかえている舞ちゃんの右手を引いて、私は必死に森の中を走っていた。
「んんんー、追いかけっこは楽しい物ですなあ」
背後から聞こえて来るネットりとした男の声に嫌悪感を抱き、必死に前に進み続ける。自分がどこにいるかも判らない、だけど前に進まないという選択肢は私には無かった。
「すまない……油断しておったわ……」
「ぐっ、無念……」
「ナナシとユミルが悪いんじゃないから」
シズさんの使い魔で途中まで飛んでいたが、まさか空中で転移してきて札をぶつけられるなんて想像していなかった。その札によって使い魔は消滅、ナナシとユミルは身体を拘束されて動けなくなってしまっている。
「はぁ……はぁ……ごめんなさい、運動音痴で」
「大丈夫よ!頑張って!!」
舞ちゃんを励ましながら必死に走る。墜落する前に東京タワーの位置は確認してる、だからそこまでいければ……。
「んん、ここまでですな」
突如私達の前に私達を迎撃した男が立ち塞がり、にやにやと笑う光景に絶句した。
「私も仕事がありますからね。ここで遊びは終わり……いや、遊びは続きますな。貴方達に呪を刻みましょうか、美神達に会えばおぞましき化け物となり、かつての仲間と殺しあう。んんー良い演出ですなあ」
目の前に立つ男の言葉に舞ちゃんが悲鳴を上げるが、私はその男をキッと睨み返した。
「恐ろしくないのですかな?」
「怖いです。だけど私は諦めないッ!」
美神さんも横島さんも諦めなかった。だから私も諦めない、片手で握りこんだ砂を男の顔に投げ付け舞ちゃんの手を引いて走り出そうとしたが……。
「残念でしたなあ、生身の人間ならば怯みもしましたが、拙僧は既に人間ではありませんので、正しく無駄な努力という奴ですなあ」
「うっ!?」
素早く伸びた男の腕が私の首を掴み、片手で吊り上げてくる。
「おキヌさん!」
舞ちゃんの悲鳴が聞こえる中、私は自分の首を絞めている男の腕を両手で握り締めた。
「ふーッ!ふーッ!!」
「はは。手負いの獣ですな、貴女は良い兵器になりそうだ」
男がそう笑い、黒い札を私に近づけてくる。それが恐ろしい物であると言うことは判っていた、本当は泣き叫びたいほどに怖い。だけど、それでも勇気を振り絞り男を睨み続ける。
(負けない、絶対に負けない、泣いてなんかやるもんかッ!!)
息も吸えない、化け物にされるかもしれない、それでもそれでも泣かない、例えダメージにならなくても足を動かし抵抗を続ける。最後の最後まで諦めない。
「雷撃のぉぉおおおおッ!!!ファーストブリットオオオオオッ!!!!!」
「なっ!?何故ここ……うぐあああああッ!!!」
黒い札が私に触れる――その瞬間ずっと聞きたかった声が響き渡り、私の首を掴んでいた男が凄まじい勢いで吹っ飛んだ。支えが無くなり、尻餅をつき咳き込む私に舞ちゃんが駆け寄ってきて背中を摩ってくれる。
「げほっ!ごほっ!!!げほごほっ!!!」
「おキヌさん、おキヌさん!!」
大丈夫と返事を返したいのに声が出ない、何度も何度も咳き込み必死に肺に酸素を取り入れようとする。涙でかすむ視界と息苦しさの中でも顔を上げる――そこには横島さんの背中が目の前に広がっていた。
「助けに来たぜ、おキヌちゃん、舞ちゃん」
勝利すべき拳を展開し、私達を庇うように立つ横島さんの背中を見て、私は堪えていた涙が溢れ、それでも助けに来てくれた事に安堵し泣き笑いの笑みを浮かべるのだった……。
リポート6 亡者の嘆き その2へ続く
次回からはぎりぎりで間に合った横島君VS蘆屋の話を書いて行こうと思います。今回のリポート6は原作と全然違う話にしていくので、霊団、レギオンがどうなっていくのかを楽しみにしていてください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。