GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL   作:混沌の魔法使い

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その4

リポート6 亡者の嘆き その4

 

 

~くえす視点~

 

横島達を病院に叩き込んだあと、思う事はありますが私は美神、蛍と共に霊団、レギオンへの対応へと回る事となりました。シズクや信長は横島の護衛に回す必要があり、しかし単独で霊団やレギオンと戦うのは自殺行為となればある程度戦力が均等になるように人員を配置するのは当然だからだ。

 

【アアアアアーッ!!!】

 

【シニタクナイ、シニタクナイィイイイイィッ!!!】

 

【タスケテ、ダズゲデエエエエエッ!!!】

 

しかし戦う中で私や美神達はある違和感を抱く事となった。霊団やレギオンは複数の魂が交じり合い自我と言うのは極めて薄い……それなのにこれだけ叫ぶと言うのはおかしな話だった。

 

「助けてあげますからさっさとあの世にいけッ!」

 

「くえす、もうちょっと言う事無い?」

 

「ありませんわ」

 

助けてくれと言っているのでさっさとあの世に行って生まれ変われるようにしてやったほうがよほど慈悲があると私は思いますがね。

 

「それよりもどう思いますか?」

 

「かなりおかしいと思うわ、むしろ異常ね」

 

「やっぱりそう思います?」

 

私達の話に蛍も加わってくる。通常の霊団とレギオンとは異なる動きをし、生身の肉体を取り込もうとしない異様な動作……。そして横島が病院送りとなった原因である蘆屋の事を考えるとこの不穏な動きをするレギオンたちには何らかの目的があるように……。

 

「ちっ、私に触るな」

 

地面から霊体を伸ばして来たレギオンの触手を蹴り飛ばし、手にした霊波銃で消滅させる。

 

(ああ、苛々する)

 

注意力散漫になっていたのは認めるがレギオン等という下等な……っとそこまで考えた所で違和感に気付いた。確かに苛々していたのは認めますが、そこまで注力散漫になるというのは私としてもありえない。巻きつかれた足を見ると妙な霊力と魔力の膜が張っていた。それを見て、負傷者が多い理由を悟った。

 

「なるほど……そういうことですか、美神!蛍!そのレギオンの触手に触れてはいけませんわッ!その後1度撤退しますわ」

 

私が声を上げると美神と蛍は一瞬驚いた顔をした。まぁ確かに私は基本的に1度除霊をするならそれが終わるまで撤退するという事はしない。それでもだ、この「レギオン」は特別製だ。そして悪辣な性質をしている……何の備えもなしに戦える相手ではないと判断したのだ。

 

「了解っと、撤退したら説明よろしく」

 

「とりあえず結界札と精霊石で行きますね」

 

「OK、それで行くわよ!」

 

手早く精霊石と結界札でレギオンの動きを封じて下がってくる美神と蛍を術式の中にいれ転移を発動させる。

 

(しかしかなり厄介ですわね)

 

もしも私の予想通りならば、このレギオンを早急に処理しなければ面倒な事になる。とにかく今は撤退、そして対策を練る必要がある。無策で突っ込んで勝てる相手ではない、むしろ霊団とレギオンはある程度経験を積んだGSならばある程度は苦戦するが、十分に対処出来る部類の悪魔になる……それが罠であるとも気付かずに戦い、蘆屋達の術中に嵌る事になる。

 

(これは専門家ではなければ判りませんわ)

 

黒魔術、あるいは聖句、または召喚術……それらに精通している者しか蘆屋の悪意に、そしてこのレギオンと霊団の悪辣さには気付けない……私は悟ったのだった……しかしそれに気付いたのはくえすだけではなく……六道女学院の正門前で長い紫の髪を翻し、バリケードを乗り越えたマルタも同じだった。

 

「片っ端から精霊石と結界札持って来て!」

 

「は、しかしマルタ先生、優勢だったのでは?」

 

卒業が近い六女の生徒とレギオンを食い止めていたマルタだが、直接触れてレギオンの危険性を悟ったのだ。

 

「優勢じゃないわ!こいつを倒したらそれこそ大変な事になる!とにかく今は動きを封じるわよ!早く!」

 

「「「は、はい!判りました!」」」

 

マルタの怒声に頷き弾かれたように動き出す六女の生徒を見ながらマルタは腕に巻きついているレギオンの触手を祈りによって消滅させる。

 

「これは不味いわね、本気で……」

 

今までの中で一番やばいという事をマルタは感じ取り、険しい顔でビルよりも巨大化しているレギオンを睨みつけた。

 

「ピート君!陰念君!雪之丞君!撤退だ!」

 

「はッ!?ぶっ潰せるのに何でだよ!?」

 

「唐巣先生、どういうことですか!?」

 

そしてそれは白竜寺と協力し、レギオンを食い止めていた唐巣神父も同じだった。

 

「とにかく説明は後だ!そのレギオンは「倒してはいけない」んだッ!クシナ君!」

 

「何の事か判らないけど、とりあえず今は言う通りにするわよ!全員下がりなさいッ!」

 

精霊石と結界札の輝きによって動きを封じられたレギオンに背を向け、唐巣達は走り出す。

 

「唐巣神父、倒してはいけないと言うのはどういうことなんだ」

 

「あいつ自身が召喚術式それと、人間の精神を乱す術式を織り込まれているんだ。下手に倒せば……」

 

「精神汚染が広がり、それに加えて悪魔が出てくると?」

 

「その可能性が高い、倒すんじゃない。浄化する方針で行かないと駄目だ」

 

「浄化って、あんだけの化けもんを浄化なんて出来るのかよ!?」

 

「判らない!判らないから今は話し合うんだ!とにかく急ごう!何時までも持たないぞ!」

 

複数の魂で構成されたレギオンと霊団を浄化するのは唐巣でも短時間では無理だ。しかし霊脈に辿りつかれれば召喚術式が作動してしまう、浄化ではなく倒せば精神汚染が広がる――悪辣な術式がいくつも込められたレギオンを前に唐巣と言えど撤退という選択肢を取るしかなかったのだ。

 

「んふふふ、さてさてさて我が術式破れる物ならば破ってみるが良い」

 

「……」

 

逃げていく唐巣達を見て嘲笑を浮かべる蘆屋とその隣で冷めた表情で唐巣達を見つめるレイの姿があるのだった……。

 

 

 

~琉璃視点~

 

GS協会、オカルトGメンの若手、中堅が入院しているのは私も西条さんも把握していた。だけどくえす達からの報告を聞いて、鍛錬不足や実力が不足していたのではないと判り眉を顰める事となった。

 

「精神汚染と人間の闘争心や不信感を掻き立てる能力……」

 

「それに加えて倒せば召喚術式が稼動する……か」

 

くえす、マルタさん、唐巣神父、そしてエミさんと黒魔術、聖句に特化した面子だから見破れたレギオンに仕込まれた仕掛け――それは余りにも悪辣だった。

 

「下手に近づければ仲間割れ、怨嗟の声で発狂、倒せば何かが召喚される――安全に処理するには……浄化しかないが……」

 

「レギオンの中にどれだけの魂が内包されているかも判らないと来た」

 

霊団の平均的な魂の内容量は約200体ほど、それに対してレギオンはその5倍近い1000体が一般的とされている。浄化は除霊の数倍の時間が掛かるが……あれだけ仕掛けを仕込んでいるレギオンの事を考えると浄化も簡単に出来るようにはなっていないだろう。

 

「……レギオンの進行方向を考えると東京の霊脈付近となるな」

 

「そこまで進軍されれば召喚術式が作動するって事ね、レギオンの数って今の所どうなってるの?」

 

美神さんの問いかけに報告所に目を向けて、思わず溜め息を吐いた。

 

「6体ですが3体は動きを封じる事に成功、残りの3体の進路は全て霊脈を目指しています……」

 

唐巣神父、マルタさん、くえすが3体の行動を封じてくれたけど、残りは3体――動けるGS協会、オカルトGメンの面子が動きを封じに向かってくれているが、まだ成功したと言う報告は……。

 

「すいません、少し席を外します」

 

電話が鳴り受話器を手に取る。

 

『おう、会長さんよ。なんとかこっちは動きを止めたぜ』

 

「ありがとう、ご苦労様。とりあえず警戒しながら帰ってきて」

 

『判ったぜ、帰る途中に須田のほうも見てくらぁ』

 

「無理はしなくていいからね、不動さん。気をつけて帰ってきてください。勿論須田さんもですよ」

 

『わぁったら、今のGS協会の戦力つったら俺と須田くらいだろ?はっは、問題児を2人も抱えてあんたも大変だな」

 

問題児ではあるけど働き者の不動さんに気をつけてと言いはしたが、その次の言葉に判ってるなら大人しくしろと叫んで受話器を叩き付けた。

 

「何、琉璃、もしかして不動と須田を送り出したの?」

 

「……逆に聞きますけど、私の言う事を聞いてくれる直属の部下って他に誰がいると思います?」

 

私の言葉に会議室にいた面子が黙り込んだ。事務職などは充実しているが戦闘班は鍛えなおしの最中で戦力不足にも程がある。ならば多少の問題児でも戦闘力は一級品の不動さんを使うしかない今の私の状況を理解して欲しい。

 

「こほん、ともかくです。倒す事も、下手に近づくも出来ないのではレギオンを倒すのは容易ではありません、そもそもレギオンと言うのは霊力で削るというのが一般的な対処法ですからね」

 

小竜姫様の言う通りだ。レギオンはとにかく内包している霊を削るのが一般的な対処法で、近づけば発狂する術式を付与されているレギオンに近づくのは文字通り自殺行為に等しい。

 

「近づいた令子ちゃん達に聞くけど、どんな感じだった?」

 

「んー正直実感は殆ど無し、だけど……何か提案されても不信感を先に感じたわね。それに自分の身を守ろうって言う意志も弱くなる感じで……もし近づくなら一撃離脱だけど……」

 

そこまで言った所で美神さんが口ごもった。勿論その理由は私達も判っている……。

 

「火力が足りないですね?」

 

「うーむ、かなり深刻な問題じゃな」

 

火力が足りないのだ1発の突破力・貫通力で考えればここにいる面子は決して秀でている訳ではない。むしろ広範囲攻撃に特化している面子が多く、この中で一点突破の破壊力を求めるのならば雪之丞君、陰念君、ピート君、唐巣神父の4人が候補に上がるが……。

 

「正直に言ったら悪いけど、雪之丞達をアタッカーにすえるのは正直賛成しないわ」

 

「おい、クシナ」

 

「黙ってなさい、雪之丞。そもそもだけど、雪之丞達はガープの術の実験体にされてる、もちろんあたし含めてだけどね。容易に操られる

可能性のある私達をメインにすえるのはリスクがありすぎるわ」

クシナさんの言う通りで、白竜寺の面子はかなりの期間ガープの影響を受けている。今は味方だったとしても意識していない部分で操られる可能性が高い。

 

「ドクターカオス、平安時代から持ち帰ったものを改造をすると言うのはどうだろうか?」

 

「うーん、それは今進めておるが……実用には程遠いなあ」

 

平安時代の霊具の解析は進めているが、それを今で実用レベルにするにはまだまだ時間が掛かる。

 

「あのー1つ提案があるんですけど」

 

会議を聞いていた蛍ちゃんが手を上げて若干気まずそうに声を上げる。

 

「何か良い考えでもあるの?」

 

「いや、そのですね。おキヌさんが笛で横島の暴走を抑えていたじゃないですか……そのーあんまり乗り気じゃないんですけど、狂神石を

浄化出来るならレギオンも弱体化させれるんじゃないですか?」

蛍ちゃんの言う事は仮説だけど、かなり有効なアイデアに思えた。問題は……おキヌちゃんの現在の状況と……。

 

「浄化って言うとネクロマンサーの笛ですわね」

 

「確かオカルトGメンに一本保存してある筈だが……」

 

「後はナイチンゲールさんとの話し合いですかね」

 

あのバイオレンス婦長が入院患者を戦場に連れ出すと言って許可してくれるか、そしておキヌちゃんにネクロマンサーとしての資質があるかどうかという問題はあるが、現段階で最も勝利の目があるのが蛍ちゃんの提案だけなのだった……。

 

 

 

 

~横島視点~

 

ベッドに横たわったまま、ナイチンゲールさんの診察を受ける。と言っても点滴や脈を図るという感じで身体自体は健康体だ。

 

【身体自体は健康体とか思ってませんか?】

 

「……すんまへん」

 

ギロリと睨まれ即座に降参する。ナイチンゲールさんに凄まれると怖いので即座に降参してしまう、目力が半端無いんだよな。

 

【横島何度も説明したが、今のお前は動ける状態ではない。大人しく、ナイチンゲールが良いと言うまで入院だ】

 

【心眼さんの言う通りです。もしもいう事を聞かないと言うのならば……】

 

ゴキリと拳を握り込まれ、俺は反射的に判ってますと返事を返した。

 

【よろしい、では大人しく療養をしているように、それと余り騒がなければ私は怒りませんので、では】

 

一礼し出て行くナイチンゲールさんを見送り、俺の診察中大人しくしていた紫ちゃん達に視線を向ける。

 

「怖かった」

 

「吾も……」

 

【チビ達も怖がってましたね、私も怖かったですけど……】

 

「みむう……」

 

「ぴぎ」

 

怖かった怖かったと言う紫ちゃん達。お見舞い希望があるが、子供達とチビ達と言う事で大人しくは出来ないだろうと個室を用意してくれたナイチンゲールさんには感謝しているし、正直に言えば身体自体は健康体と感じているが、身体が重くて立ち上がれる気がしないと言うのもあったのでベッドに再び背中を預ける。

 

「お兄さん、大丈夫?」

 

「どこか痛いのか?」

 

【ナースコール押します?】

 

「それは止めて」

 

ナースコールを押そうとするリリィちゃんにストップを掛ける。紫ちゃんが頭の上に乗せていたチビとうりぼーを膝の上に乗せて、その頭を撫でる。

 

「めちゃくちゃ遊んだときみたいにしんどいんだよなあ……」

 

霊力枯渇とはまた違う感じのしんどさがある。なまじ元気な分、何とも変な感じだ。

 

「はーい、どうぞー」

 

コンコンというノックの音がしたので、美神さん達か、シズクがきたのかと思いどうぞと返事返す。

 

「失礼します」

 

「横島さん、失礼しますね」

 

「おキヌちゃん、それに舞ちゃんも、出歩いて大丈夫なの?」

 

俺と同じで入院している2人が俺のお見舞いに来たことに驚きそう尋ねる。

 

「お兄さん、だぁれ?」

 

「横島さん、その子たちは……?」

 

互いに困惑している様子のおキヌちゃんと舞ちゃん、そして紫ちゃん達を見て互いの事を紹介しようとするとまた俺の病室の扉が開いた。

 

【ノブノブノッブ】

 

【ノブノブノッブ】

 

【ノブノブノッブ】

 

「「「なんか沢山来たッ!?」」」

 

それぞれが鞄を頭の上に乗せてチビノブ軍団がやってきて思わず驚愕の声を上げる。

 

「……心配ない、増えたんじゃなくて分身だ。終われば元に戻る」

 

「だから大丈夫でござる」

 

「いや普通は安心出来ないからね?」

 

タマモの突っ込みに何故か安心している俺がいる、俺も大概天然だけどこのチビノブ軍団には流石に驚いた。

 

「チビノブ、あそぼー」

 

「今度はトランプで勝つぞ」

 

【あそぼー♪】

 

【ノブノブ♪】

 

俺の見ている前で分身していたチビノブ達が1つに戻り、鞄からごそごそとトランプを取り出し病室の床に引いてあるカーペットの上に座って遊び始めた。

 

「えっと?」

 

「あの導師服の子が紫ちゃん、人造神魔。その隣の鬼の子が茨木童子、んで銀髪の子がジャンヌさんがちっちゃくなったジャンヌダルク・オルタ・リリィちゃん。皆はリリィちゃんって呼んでる」

 

「……なんか少し見ない間に随分と賑やかになりましたね」

 

「それ!?おキヌさん、今の説明を聞いて第一声がそれですか!?」

 

舞ちゃんの突っ込みの切れ味が凄い、と言うか俺達って基本的にド天然の集まりなんだよな。考えるな、感じろって言う面子ばかりだから基本本能で生きていると思う。

 

「まぁ横島さんですから、子供と人外に好かれますから」

 

「納得して良いんですか?」

 

「横島さんですから」

 

「ねえ?それって俺の事馬鹿にしてない?」

 

「いえ、子供と動物に好かれる優しい人だなって思ってますよ」

 

余りにストレートな言葉に思わず照れてしまう。なんというか……うん、言いたい事はたくさんあるし、多分美神さんと蛍がいないのにこれを言うのはなんか反則だと思ったけど、言わずにはいられなかった。

 

「おキヌちゃん」

 

「はい?なんですか」

 

急に名前を呼ばれて困惑しながらも笑みを浮かべるおキヌちゃん、幽霊ではなく生きた姿でそこにいる。

 

「おかえり」

 

「……はい、ただいま」

 

紫ちゃんやリリィちゃん、茨木ちゃんにチビ達がいてもこう、なんか物足りない、何か欠けていると感じていたけど、生きているおキヌちゃんを見てその足りない何かが埋まった……俺はそう感じるのだった……。

 

「なんで拙者達いるのにせんせーとおキヌ殿だけの空間みたいになってるでござるか?」

 

「おかしいわね。おキヌは真っ黒い筈なのに白いわ……どうなってるのよ」

 

除け者が面白くないシロとタマモがぶつぶつと呟く中、舞はさっさと横島とおキヌから離れていた。

 

「混ぜて貰ってもいい?」

 

「ん?良いぞ、よしカードを配りなおしだな」

 

「あーずるいんだー、負けてるからカードを集めちゃうのはずるいんだー」

 

【ずるいー】

 

「良いんだ。仲間外れの方が良くないッ!」

 

舞が仲間に入れてと言ったのでこれ幸いとカードを集める茨木童子に紫とリリィの不満そうな声が上がる。だが茨木童子はそれを無視しカードをさっさと配りなおし、自分の負けゲームをなかった事へとするのだった……。

 

リポート6 亡者の嘆き その5へ続く

 

 




今回はインターミッションでしたが、横島がさらりとおキヌちゃんの好感度を上げております。ナチュラルボーンだから仕方ないですね、次回は話を進めてレギオン対策と攻略を書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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