GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL   作:混沌の魔法使い

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リポート7 初めの一歩
その1


リポート7 初めの一歩 その1

 

~横島視点~

 

【もう良いでしょう、お昼には退院しても良いですよ】

 

レギオンの襲来から3日後の昼に俺にやっと退院許可が下りた。思わずぐっと握り拳を作り、叫びたくなったが病院という事もありそれをグッと堪えナイチンゲールさんに向かって頭を下げた。

 

「ありがとうございます。えっと運動とかは……、あ、いえ。ごめんなさい」

 

凄まじい眼力で睨まれ即座に俺は白旗を上げた。美人なだけに睨まれた時の迫力が凄まじく怖い……頭の上のチビもみむうっと脅えたような鳴き声をあげている。

 

【軽いランニングくらいなら良いですが、霊力の使用などは細心の注意を払い、心眼が一緒にいるのが第一条件、次にミス・蛍や美神、シ

ズクと言った保護者と共にいるのが条件です。これに詳しく書いてありますので、それを必ず守ってください】

物凄い長い診断書と厳守と書かれた運動メニューを差し出され、俺はそれを受け取り小さな声で返事を返すのがやっとなのだった。

 

「おキヌちゃんはどうだった?」

 

「私ですか?私は普通ですよ?見て見ます?」

 

同じ日に退院で、俺の方が診察が長引いていたのでシズクやチビノブ達と片づけをしてくれていたおキヌちゃんの差し出してきた診断書とリハビリメニューを見るが厚さが倍以上に違っていた。

 

「マジか……」

 

「……お前な。無茶を続けているんだから大人しく療養しろ」

 

【その通りだ。散歩くらいは許可するが、筋トレなどは禁止だ】

 

シズクと心眼にも怒られ、弱々しい返事を返し、ふと病室を見ると紫ちゃん達の姿がない。

 

「紫ちゃん達は?もしかしてシロとかタマモに連れられてもう家に帰ってる?」

 

「……待ってる間暇だから外で遊んでるって分身のうりぼー達と外に出てる。帰り際に拾っていけば良いだろう、よし。こっちは準備OKだ」

 

「私の方も大丈夫です」

 

「なんかごめん」

 

俺の荷物を片付けてもらっていたので罪悪感を感じて謝るが、2人は気にしなくていいと笑ってくれたが……やっぱりどうしても申し訳なさを感じてしまう。

 

「……それよりも早く家に帰るとしよう。申し訳ないと思っているのならば早く身体を治す事だ」

 

「そうですよ、横島さん。無理をしても何にもならないですからね」

 

シズクとおキヌちゃんの言葉に頷き、病室を出ようとするとうりぼーとその上に乗っているチビノブに服の裾を噛まれて止められた。

 

「ぷぎゅ」

 

【ノブ】

 

「え?どうした?うりぼー、チビノブ」

 

駄目駄目と言わんばかりに首を振るうりぼー。これはもしかして……あれですかね?

 

「歩いて帰るの駄目とか?」

 

凄く良い顔で頷くシズクとその通りだという心眼に俺はもう1度マジかと呟いたが、当然うりぼーを振り解ける訳も無くうりぼーの背中に乗せられ、背中にしがみ付いてノブノブ鳴いているチビノブになんでこうなったんだろうなと思いながらも移動を始めて正面玄関から外に出ると同時に何かが飛んできた。咄嗟に抱きかかえると茨木ちゃんが頭を左右に振っていた。

 

「ふわッ!?い、茨木ちゃん?何してるの?」

 

「うむ……うりぼーの上に乗ってレースをしていたのだが、曲がりきれず吹っ飛んでしまったのだ」

 

失敗したなと言う茨木ちゃんを地面の上に降ろすと自分が乗っていたうりぼーのそばに駆け寄り再び跨る。

 

「ゆっくりで良いからな、良し行けッ……ああ!?」

 

「ぷぎいッ!!」

 

前足を上げて全速力のうりぼーの分身。そういえば分身なのに個性って言うか性格が違いすぎるのよな。

 

「なぁ、心眼。うりぼーの分身って本当に分身なのかな?」

 

【分け身と言っても良いだろう、うりぼーの性格の一部を引き継いで自分で考えているんだ、分身よりも高位の技術だぞ】

 

「うりぼーそんなことをしてたのか?」

 

「ぷぎ?」

 

何のこと?って言いたげな円らな目をしているけど……本当に心眼の言う通りなのだろうか……?でも心眼が間違ったことを言ってるとは思えないから多分その通りなのだと思うことにする。

 

「くすくす、茨木は下手ね。もっと丁寧に指示を出さないと」

 

「ぷぎゅう」

 

暴走うりぼーを大人しくさせようと悪戦苦闘しつつも、大人しくなり減速するうりぼーを見てホッとしていると、軽やかな動きで俺の目の前にうりぼーが止まり、その上には紫ちゃんは足を揃えて座り、日傘まで差し完全に貴婦人という雰囲気だ。

 

「なんかさ、紫ちゃんの気品が日に日に増してる気がする」

 

「……まぁ人造が付くが神魔だからな」

 

「そういうもの?」

 

「……そういうものだ」

 

神魔だから気品が溢れてるって事なのだろうか?と思っているとリリィちゃんの悲鳴が木霊する。

 

【あわわわああああーーッ!?】

 

「ぴぎーッ!?」

 

スピンしているうりぼーの上に必死にしがみ付いているリリィちゃん、これはあれだ。完全に曲がりきれなかったって感じがする……。

 

【もっと丁寧に指示を出して、スピードを出しすぎていたら止める位が大事ですよ】

 

【どうどう、よーしよし、良い子じゃ】

 

……牛若丸とノッブちゃんの指示が凄い堂に入ってる。うりぼーなのに馬に乗ってるように見えるな。

 

「えっと私も乗るんですかね?」

 

「大丈夫大丈夫、ゆっくりゆっくりって声を掛ければ早く走る事はないし、うりぼーは頭がいいから」

 

初めてうりぼーに乗るので不安そうにしているおキヌちゃんに大丈夫大丈夫と声を掛ける。

 

「よし、じゃあ家に帰ろう。な、うりぼー」

 

「ぴぐッ!」

 

元気良く返事を返すうりぼーに揺られ、俺達は家へと岐路へ付いたのだが……すれ違う車や通行人にガン見されたのは言うまでもない……。

 

 

 

~琉璃視点~

 

レギオンの生き残りや霊団からはじけた悪霊が残ってないか見回りに行っていたGS協会の職員からの電話で、うりぼーに乗って横島君っ達が移動しているって聞いた時は卒倒しそうになったけど、美神さん達がここにいるので足が無かったということだろうと思い、どうしましょうか?と判断を仰いでくる職員に指示を出す事にした、

 

「横島君はほっておいていいから、ええ、うりぼーも害はないし、大丈夫。移動する足がなかったって事でお咎めなしでいいわ。そのままパトロールを続けて」

 

パトロールを続けるように告げて、美神さんに視線を向ける。

 

「……ごめん」

 

「まぁしょうがないですよね、うん、しょうがないしょうがない」

 

面子が面子だし、うりぼー達と共に公共交通機関は使えないのでしょうがないと割り切るしかない。

 

「そんなに気にしなくてもいいわよ~大丈夫大丈夫、家の冥子も同じ事をしてるから~」

 

にこにこと笑う冥華さんがいるのも私達のメンタルをゴリゴリ削ってくれているのだが、喉元まで込み上げて来た言葉をぐっと飲み込んだ。

 

「それで舞ちゃんとおキヌちゃんの編入の件なんですけど……どうなりますか? 冥華おば様」

 

「そうねえ~無理じゃないわよ~だけど~時期的にね~」

 

時期が悪いと冥華さんにしては珍しく言葉を濁す。六道女学院の卒業生である美神さんは勿論、一時期在籍していただけの私も今の時期――つまり夏を控えている今が良くない時期と言うのは判っている。

 

「六道の除霊実習ですね」

 

「ええそうよ~今年は不安要素が多いからねぇ~」

 

小間波海岸の除霊実習を兼ねた臨海学校は六道での一種の篩である。この実習での成績によって進学の際のカリキュラムが大きく変わる、除霊メインか、土地を清めるという方針への選別なのだが、小間波海岸は悪霊や霊が溜まりやすい立地で、ガープ達が派手に行動しているだけに、例年とは違うパターンになる可能性が高い。

 

「1番ベストなのは~臨海学校が終わった後だけど~1年くらい先になるわよ~?」

 

「それだと遅すぎます、冥華おば様。おキヌちゃんも舞ちゃんも素人ではないですし、編入しても大丈夫では?」

 

神楽のエキスパートの舞ちゃんと今のGSでは稀有なネクロマンサーの笛を使えるおキヌちゃんは出来る事ならば、早い段階で戦力として数えたい。1年も待っていられるわけが無いし、そもそも一年後に日本が地球に残っているかも怪しい。

 

「ん~それなら~臨海学校前の対抗試合に出るスケジュールで組む事になるけど~正直舞ちゃんはかなり厳しいわよ~?横島君が来てるから使い魔学科のレベルがめちゃくちゃ上がってるし~?」

 

「それは承知してます、だけど舞ちゃんなら大丈夫です」

 

六道女学院に編入すると決めた段階で舞ちゃんも氷室神社で修錬を積んでいる。元々霊力のコントロールとかには秀でていたので、何の心配もない。

 

「令子ちゃんも~それでいいかしら~?それなら1ヶ月の間に編入準備は出来ると思うけど~?」

 

「それでよろしくお願いします。その代りに私達も今年の臨海学校には参加しますし……「横島君も忘れないでね~?」判りました。横島君も連れて行きます」

 

その言葉を聞いてにっこりと微笑み編入届けを取り出す冥華さんに心の中でたぬきめと呟いた。最初から対抗試合の時期に編入させるつもりだったのに、随分と回りくどい真似をしてくれたと思う。

 

「これを書いて貰ってね~後は~そうね、近いうちに見学に来るといいわ~」

 

言葉にはしてないが横島君も連れてと目が物語っているので、本気で六道に横島君の血を入れるつもりって言うのが良く判る。

 

「じゃあ私は用事があるから帰るわ~」

 

そう笑って会長室を出ようとした冥華さんが思い出したように振り返った。その目は鋭く、試すような色が浮かんでいた。

 

「人造神魔を京都で作ってた連中だけど、南武と西武が手を組みそうよ。そこら辺を少し調べておくといいわね。それじゃあねえ~」

 

口調をガラッと変え、それを元に戻してひらひらと手を振り帰って行く冥華さんを見送り、私と美神さんは揃って溜め息を吐いた。

 

「これあれよね、編入までの期間に尻尾を掴めって事ですよね?」

 

「間違いないわね。はぁ……参ったなあ」

 

最後に告げた言葉。それは冥華さんからの六道女学院への編入の条件と見て間違いないだろう。しかし日本の霊能工業の中で随一と言ってもいい南武・西武グループが手を組んでいるとなると相当厄介な案件だ。

 

「躑躅院に電話してもいいですか?」

 

「……それしかないでしょ」

 

関西の情報は京都をホームグラウンドにしている躑躅院に聞くのが1番早い、GS協会の傘下になるとは言ったが、まだ口約束で十分な取り決めもしてない中で協力を要請するのは怖いけど、しょうがないと溜め息を吐いて私は受話器を手にするのだった……。

 

 

 

~おキヌちゃん視点~

 

横島さんの家でお昼を食べ、そのままTVを見たり、トランプなどで遊んでいると美神さんが迎えに来てくれた。

 

「おキヌちゃん、一応聞いておくけど……六女の寮か、私の事務所がどっちがいい?」

 

「美神さんの所でお世話になりたいと思います」

 

帰る場所、そして住む場所としてどっちが良いかと言われ、私は迷う事無く美神さんの事務所と返事を返した。

 

「ん、OK。ああ、それと横島君、1週間は学校を休む事、あと霊力を使うのは最低限にしておきなさい」

 

「ういっす。それじゃ、お疲れ様です」

 

お疲れ様と返事を返す美神さんの隣でまた遊びに来ますねと横島さんに声を掛けて、横島さんの家を後にする。

 

(ちょっと惜しかったかな)

 

無理強いすれば横島さんの家に居候出来そうだったけど……それは流石にやりすぎかと小さく舌を出す。

 

「どうかした?」

 

「いえ、何でもありません。行きましょう」

 

美神さんの車に乗り込み、美神さんの事務所へと向かう。

 

「そういえば蛍ちゃんは?」

 

「空き部屋を掃除してくれてるのよ、一応掃除はしてるけど……「本当ですか?」……少しだけ」

 

美神さんはやれば出来るのに、本当に掃除も料理もしないですねとくすくすと笑う。

 

「しょうがないですね、一緒に暮らすから私がちゃんと面倒を見てあげます」

 

「もう、これじゃあどっちが年上か判らないじゃない」

 

「あれ?私300歳越えてるんで、美神さんよりずっと年上ですよ」

 

私がそう言うと美神さんは声を上げて笑い、私も釣られるように笑ってしまった。

 

「そうね、じゃあおキヌさんって呼びましょうか?」

 

「嫌だなあ、おキヌちゃんでいいですよ。私、あの呼ばれ方好きなんですよ」

 

横島さんにそう呼んで貰ったから、私はあの呼ばれ方が好きなんだ。勿論こんな事は誰にも言いませんけどね。

 

「ふふ、判ったわ。それじゃあ話は変るけど、おキヌちゃんは六女に編入してもらう事になるわ。その代り対抗試合の時期になるから、そっちに参加してもらう事になると思う」

 

「そうですか……不安ですけど頑張ります」

 

それに関しては問題ない、ここは前と同じ流れだ。だけどその前に……南武グループの依頼がある筈だけど……。

 

(いけないいけない)

 

もう私の知る未来の記憶は何の役にも立たないのだ。この思い込みはこれから邪魔になる、頭を振ってその考えを頭から弾き飛ばす。

 

「どうかした?」

 

「いえ。何でもありません、これから頑張ろうって思ったんですよ」

 

生き返ってからの私の大事な初めの一歩――それはこれから始まるのだ。見ているだけじゃない、嘆くだけじゃない、涙を流すだけじゃない……。

 

(今度は力になれるように頑張ります。だから待っててください、横島さん)

 

私の知っている横島さんとは違うけど、優しさは変わらない。そしてどこまでも歩いて行こうとする姿は自分の知る横島と同じだ……前は見ていることしか出来なかった。嘆く事と悲しむ事しか出来なかった。だけど……今回はついて行ける様に、おいて行かれないように力をつけると心に決めていた。置いていかれるのも、待つのもしない。私はその後を追っていくと、そして横島さんの心も身体も守れるようになると心に誓うのだった……。

 

 

~一方その頃魔界では~

 

「お兄ちゃんの鞄が落ちてたけどどうしよう……」

 

「ふか?」

 

「ここォ!」

 

「モノモーノ!」

 

ガープの妨害によって転移時に取り落とした鞄を散歩をしていたアリス達が見つけどうしようか?と頭を抱えていた。

 

「赤おじさんと黒おじさんに聞きに行こう。持てる?」

 

「ふかッ!」

 

「ぴいッ!」

 

「やぁん?」

 

「……うん、判らないなら判らないで良いよ?」

 

茨木に懐いた怪獣はいまいち理解していない様子でぼんやりとした返事を返し、それ以外の魔界でも危険とされる怪物の赤ちゃん達は横島に会えるとるんるんとした様子で散らばっている荷物を集めてくる。

 

「よーし、綺麗に鞄につめて赤おじさんと黒おじさんが良いよって言ったらおにいちゃんに会いに行こーう!」

 

アリスの言葉に元気良く返事を返す魔獣達がいるとは夢にも思っていない横島はというと……。

 

「鞄と着替えどこいっちまったんだろ……アリスちゃんに預けてない奴……」

 

【仕方ない転移の時にどこかに落したのだろう。また買うしかないな】

 

「やっぱりかあ……あーあ、勿体無い事をしたなあ……」

 

魔界に行った際の荷物が紛失したと思い込み酷く落ち込んでいたりするのだった……。

 

 

 

 

リポート7 初めの一歩 その2へ続く

 

 




アリスちゃん襲来フラグと人造神魔編、六道女学院編のフラグと3つの今後の話の準備をリポート7でして行きたいと思います。
後は地獄の天使が神魔だとばれるとかそんな感じの話も混ぜて行きたいですね。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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