GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL   作:混沌の魔法使い

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その2

リポート7 初めの一歩 その2

 

~蛍視点~

 

おキヌさんが美神さんの事務所に再び下宿を始めたのだが、やっぱりと言うか判ってたと言うべきか、そこにおキヌさんの姿はなかった。

 

「おキヌさんは?」

 

「ん?おキヌちゃんなら六女の編入書類に必要な証明写真とかの準備をするって言って私の朝ご飯を用意したらすぐ出て行ったわよ?確か8時半頃だったかしらね?」

 

味噌汁の入った椀を机の上に戻し、魚の干物に箸を伸ばしている美神さんから視線を逸らし時計を見ると9時を少し過ぎた頃合だ。

 

「横島君の所に行くならこの書類ついでにお願いしても良い?」

 

「ありがとうございます。貰って行きますね」

 

何か理由が無ければ横島の家に行く必要がないので、美神さんが差し出してくれた書類の入った封筒を手にして、私は美神さんの事務所を後にし、横島の家へと向かうのだった……。

 

「蛍殿、おはようでござるよ!」

 

【おはようございます。何か主殿に御用ですか?】

 

庭で木刀を振るっているシロと牛若丸におはようと返事を返し本題を切り出す。

 

「おキヌさんは来てる?」

 

「おキヌ殿でござるか?いえ、来てないでござるよ?」

 

【ええ、来てませんが何か?】

 

来てると思ってたんだけど来てなかったと知り、少し拍子抜けした気分になりながらバイクの荷台から封筒を取り出す。

 

「横島に届け物とおキヌさんを探していたのよ。来てないなら先に横島に渡す事にするわね」

 

どうぞどうぞというシロと牛若丸の横を通り、玄関の鍵を開けて家の中に足を踏み入れる。

 

【あ、おはようございます】

 

【ノブウ!】

 

家に入るなり姿を見せたのはチビノブとリリィちゃんの2人だった。雑巾とはたきを持って頭にバンダナを巻いている姿を見て、思わず笑ってしまう。

 

「おはよう。横島は?」

 

【お兄さんですか?お兄さんは何かを作ってます!暇つぶしって言ってました】

 

【ノブッ!】

 

何かを作ってる……ああ、そうか、横島はシルバークレイを趣味にしてたのを思い出し、小遣い稼ぎを兼ねて何かを作っているのだと思いありがとうと声を掛けてリビングの扉を開く。

 

「ふおお……これは凄いなッ!」

 

【銀細工かあ……こんなのも作れるんだな】

 

「まぁ手先だけは器用だからなあ……軽い散歩くらいしか出来ないならこれが良い暇つぶしになるんだよ」

 

銀細工を作っていることに驚いている茨木と金時に少し気恥ずかしそうに言う横島。ひょいっと机の上を見ると確かに売り物と遜色が無い銀細工がこれでもかと並べられていた。

 

「横島。おはよう」

 

「ん?蛍か、おはよう!」

 

笑みを浮かべておはようと返事を返してくる横島の真向かいに座り、改めて机の上の銀細工に視線を向ける。細かい細工が施されたそれをデザインナイフで更に細かく飾りを刻んでいる。

 

「そんなに根を詰めて作ると疲れるわよ?」

 

「でもなあ……他にやる事も無いしなぁ……ゲームとかは飽きるし」

 

どっちかというとアウトドア派の横島にとっては自宅療養は暇でしかないみたいねと苦笑しながら、横島の顔の前で封筒を振る。

 

【封筒?また何かの書類か?】

 

「うん、六女関連でね。美神さんから届けてくるようにって頼まれたのよ」

 

「冥華さん関連なら嫌だなあ……」

 

露骨に嫌そうな顔をしている横島に苦笑しているとチャイムが響き。お邪魔しますというおキヌさんの声が響いた。

 

「おはようございます。横島さん、蛍ちゃん」

 

「おはよう!おキヌちゃん」

 

「おはようおキヌさん」

 

巫女装束ではなくシャツの上にジャケットを羽織り、スカート姿のおキヌさんを見ると巫女装束しか見た事が無かっただけに新鮮な感じに見える。

 

「……おキヌまで来たのか。何の用事だ?」

 

「あ、はい。えっとですね、書類の事もあるので横島さんと一緒に書こうかなって思ったんですけど……お邪魔でした?」

 

机の上の工具やシルバークレイを見て邪魔でした?とおキヌさんが尋ねると横島はそんなこと無いよと言って笑い、工具を片付ける。

 

「もう仕上げは終わっって乾かす準備をするところから大丈夫。茨木ちゃん、それ持ってくれる?」

 

「え、吾がか?だ、大丈夫か?」

 

「大丈夫大丈夫、そう簡単に壊れる物でもないし、あ、蛍、おキヌちゃん。悪いんだけど机のうえ軽く片付けておいてくれる?」

 

不安そうにしている茨木と一緒にシルバークレイを乾かす準備をしながら片付けておいてくれるかと言う横島に頷き、シズクが持ってきた布巾を受け取り、机の上に散っている粘土の屑などを片付け、書類を書く準備をする。

 

「これ終わった後市役所とか回るんですけど……手伝ってもらえたりします?」

 

「私で良ければ良いけど……私で良いの?」

 

横島の家に来たんだから横島に付き合って欲しいんじゃないのか?と思いながら思わずそう尋ねる。

 

「いえ、横島さんは自宅療養しないと駄目ってナイチンゲールさんに言われてますし、やっぱりそのー女の子同士で話をしたいこともあるじゃないですか」

 

そう言われればそれ以上詮索するのは無粋だと思い、私はおキヌさんの申し出を快く引き受けるのだった。

 

「……んん?除霊実習の臨海学校に俺も?いや、これ場違いじゃない?」

 

「冥華さんからの依頼だからそこは問題ないと思うけど……」

 

「ええ……あの人頭大丈夫か?」

 

その余りにもアレな言い方に思わず噴出してしまう。確かに女子高の臨海学校に男子を連れて来いという理事長がどこにいるんだと思うのは当然の事だろう。

 

「まぁ何か思うことがあるんじゃないでしょうかね?それにこう考えたらどうですか?ただで旅行が出来るって」

 

「いや、ただより怖いものはないぜ?おキヌちゃん……これ断れないかなあ」

 

明らかに乗り気ではない横島にこれはちょっと不味いかもしれないと思い、助け舟を出すことにする。

 

「でも横島、これだけの人数。自前じゃとても無理よ?」

 

「……」

 

ここにはいないけど、紫ちゃん。シロ、タマモ、シズク、茨木、ノッブに牛若丸、それに金時にチビ、うりぼーと普通の旅館じゃ絶対お断りの面子もいるわけで……。

 

「そうだな、うん、たまにはただの旅行もいいかもな」

 

ただでさえ食費でアップアップしてる横島は自分の稼ぎだけじゃ旅行が無理と悟ったのか意見を変える。

 

「旅行?旅か!それは面白そうだな!」

 

「……臨海学校と言うのだから海の近くか、面白そうだな」

 

「何々?旅行行くの?どこに行くのよ、パンフレットとか無いの?」

 

そこに畳み掛けるように茨木達の楽しそうな声を聞き、横島は苦笑いをしながら書類に了承のサインを書き込むのだった……。

 

「それで女の子同士とまで言って私を連れ出した理由って何?」

 

「え、えっとですね……わ、私ってあんまり流行とか詳しくなくてですね……」

 

指先をちょんちょんとやりながら言いにくそうにするおキヌさんに苦笑する。

 

「可愛い服とかを見に行きたいと」

 

「そ、そうなんですよ……やっぱりあんまり野暮ったいのもあれだと思いますし……だ、駄目ですかね?」

 

「別に良いわよ。とりあえず書類関連だけ片付けてから行きましょうか」

 

「は、はいッ!」

 

明るい笑顔で言うおキヌさんに苦笑しながらも、あんまり独占とかしようと思わずに少しは協力的に、むしろ仲間を増やす事が横島を手にするのに必要なことなのではないか?と思い、打算的な考えもありつつも同年代と買い物をすると言う経験が殆どないと言うこともあり、ちょっと楽しそうと思いながら2人で歩き出すのだった……。

 

一方その頃蛍とおキヌが帰った事もあり、リハビリを兼ねた散歩に出かけていた横島はと言うと……。

 

「凜さん、浮いてるんだけどどうかした?」

 

「ほ、ほわああああ――ッ!?」

 

オーラを放ちながら浮遊する凜にそう声を掛け、自分が浮いている事に気付き絶叫する女神と言うとんでもない事態に巻き込まれていたりする……。

 

 

 

~エレシュキガル視点~

 

散歩中の横島と遭遇したのは私にしては運が良かったと思うし、前に明けの明星達と横島の家に行った時にアクセサリーを作ってくれると約束をしたのだが、まさか本当に作ってくれているとは、そして何時会えるか判らないと言うことで横島が出掛ける際にそれをずっと持ち歩いているとは思っても見なかった。

 

「……だからと言って浮かれすぎなのだわ……私」

 

その話を聞いた時に嬉しすぎて神通力と魔力が解き放たれ浮いてしまった。しかも横島に指摘されるまで気付かないという体たらく……最上級神魔として恥ずかしい限りである。

 

「ぷぎぷぎ」

 

「みーむ」

 

【ノブーッ!!】

 

うりぼーとチビが慰めてくれるのでありがとうと言って頭を撫でようとした時だった。

 

「凜さんジュース買って来ましたけどー?」

 

「ふぁいッ!?」

 

今日の自分は駄目すぎるといわざるを得ない上擦った声で返事を返し、呆れ顔の横島(エレシュキガル視点)に更にメンタルブレイクを引き起こす事になるのだった……。

 

「あ、ありがとうなのだわ」

 

「いえいえ、どうぞどうぞ」

 

公園の中の休憩所で横島と並んで座り、横島が買って来てくれたジュースのプルタブを開ける。

 

「ぴぐッ!!」

 

「みむむーッ!」

 

【ノブノブーッ!】

 

「楽しそうだなあ」

 

視線の先ではチビ達がきゃっきゃっと楽しそうに原っぱの上を駆けており、横島は楽しそうにその光景を見つめている。

 

「何も言わないのだわ?」

 

「何か言う事あります?」

 

なんでそこで不思議そうな顔をするのだろうか……と思いながら私は手にしていたジュースの缶を机の上に乗せた。

 

「だって私は神魔だって隠して騙してたのだわ」

 

「別に知ってましたけど?なぁ心眼」

 

【むしろ何で隠されてると思ったんだ?】

 

「だわッ!?」

 

最初からバレてたと知り、顔が異様に熱くなるのを感じた。明星や女帝も人間じゃないって判っているのだろうかと思いながら、脳裏を過ぎった事を横島に尋ねた。

 

「私が何の神って知ってて優しくしてくれたの?」

 

私は死神、冥界の神である。それを知ってもなお優しくしてくれたのか?問いかける。

 

「いや知らないですけど、凜さんは凜さんだからそれで良いんじゃないですかね?」

 

余りにも能天気な言葉に少しだけイラッとした。私が死の神と判ったら、どうせ恐れて逃げるんじゃないかと言う考えがどうしても拭えない。

 

「私は死神なのよ?怖いでしょう、気持ち悪いでしょう?」

 

怖がられて、気持ち悪がられて終わり、どうせ脅えられて過ごすなら嫌われる方がずっと楽だと思い、そう言うと横島はその目を何故か輝かせた。

 

「凜さんは死神だったんですか!?凄いですね」

 

「凄い?何が、どうして凄いなんて言えるのだわッ!!私を馬鹿にしているのだわッ!!」

 

凄いと言われて怒りと共に立ち上がると横島はビクンっと肩を竦めた。

 

「えっとなんで怒らせたか俺には全然判らないんですけど……死神は慈悲深い優しい神様なんですよね?」

 

「え?」

 

「いやだって、死神がいなければ死んだ人の魂は現世を彷徨うから、死神はその魂を回収して輪廻の準備が出来るまでお世話をして、それで再び転生出来るように天国へと送り返すんでしょう?」

 

「……いや、まぁ……そういう仕事がない訳ではないのだけど……」

 

確かにそういう側面がない訳ではないけど、それでも私はどっちかというと気に入った魂は隔離しちゃうタイプの悪い死神だと思うんだけど……。

 

「じゃあやっぱり凜さんは優しい人じゃないですか、あ、もしかして俺が死に掛けた時に助けに来てくれませんでしたか!?」

 

「え、あ……覚えて?」

 

街を案内してくれたお礼に渡した冥界の砂を媒介に死に掛けている横島の魂を現世に戻した事はあるけれど……なんでそれを覚えているのかと正直困惑していると横島は私の手を取って笑った。

 

「助けてくれてありがとうございます。凜さん」

 

にこにこと悪意の無い顔で心の底から感謝する表情を浮かべて笑う横島。その姿は嘘をついているようにも、騙そうとしているようにも見えず。本当に私に感謝しているのが伝わって来た。

 

【思う事はあると思うが、受け入れてやってくれ、こいつは人を疑うって事をどっかに忘れてきてるんだ】

 

「いや、それじゃあ俺が馬鹿みたいじゃないか心眼」

 

【馬鹿みたいではなく、お前は馬鹿だ。こんな馬鹿だが、また見守ってやってくれると嬉しい】

 

ひでえっと嘆く横島と横島に厳しい事を言っておきながら私に、この冥界の女主人である私に生きている人間を見守ってくれと頼む心眼に思わず笑ってしまった。

 

「エレシュキガル」

 

「はい?」

 

「私の名前、凜じゃないの。冥界の女主人エレシュキガル。それが私の名前なのだわ」

 

凜という仮初の名ではない、エレシュキガル……私の本当の名前を横島に呼んで欲しかった。

 

「エレさん?」

 

「さんはちょっと……」

 

「じゃあエレちゃん?」

 

なんで横島は神相手にこんな風に人間みたいに接してくれるのだろうか?それに不思議と不快とも思わない私も実は馬鹿なんじゃないだろうかと思いながら笑う。

 

「しょうがないのだわ、エレちゃんで許してあげるのだわ」

 

神としてではなく、友人のエレちゃんとして接しようとしてくる横島に私はそう微笑みかけるのだった……。

 

「ふぁッ!? ば、倍率、倍率がおかしな事にぃッ!?」

 

一方その頃アシュタロスはエレシュキガルの倍率がおかしなことになっているのに気付いて絶叫しているのだが……その話はまたいずれ……。

 

 

 

~ネビロス視点~

 

部屋で本を読んでいるとアリスが部屋の中に駆け込んできた。

 

「こらこらアリス。部屋に入る前のノックを忘れているぞ」

 

「あ、ごめんなさい。黒おじさん」

 

しょんぼりとした様子で謝ってくるアリスを見ていると部屋の外から横島がアリスに預けて行った使い魔達が鞄を頭に掲げていた。

 

(む?あの鞄は……横島のではないか)

 

見送りした時に持っていた鞄なので横島の鞄と言うのが一目で判ったが、何故横島の鞄がここにあるのかと困惑したが、そういえば横島が帰った瞬間に強烈な魔力反応があったのを思い出した。ガープの襲撃だと騒動になっていたが、恐らくその時に鞄を魔界に落として行ってしまったのだろう。

 

「黒おじさん、お兄ちゃんの忘れ物を届けに行きたいんだ!」

 

キラキラとした目で届けに行きたいというアリス。その気持ちは判るが……。

 

(どうしたものか……)

 

恐らくだが後で待機している使い魔達も人間界に行くつもりなのだろう……まだ子供とは言え魔界の中でもS級の危険生物、それを人間界に連れて行くのは些か、いやかなり危険と言えるだろう。

 

「ふうむ、ではオーディンに連絡を取ろう。オーディンが良いと言えばアリスが届けに行けば良い、もし駄目と言われたら手紙を書いて、それを持って誰かに届けて貰おう」

 

「えーお兄ちゃんの所に行ったら駄目なの?」

 

悲しそうに言うアリスに心が痛むが、何でもいい、どんな物も与えるではアリスの教育上よろしくない。

 

「余りわがままは言う物ではないよ、アリス。そうだね、じゃあオーディンに手紙を書いてみたらどうだろうか?それでもしかするとオーディンが許可を出してくれるかもしれないよ」

 

私の言葉にアリスは顔を輝かせ、判ったと言って部屋を飛び出して行く。その姿を見て苦笑しながらハーピーが用意してくれた紅茶を口にする。

 

「やれやれ、随分とお兄ちゃん子になってしまったものだ」

 

前は黒おじさん、赤おじさんと付いて回っていたのに今はお兄ちゃんお兄ちゃんと横島の事ばかりだ。

 

「これも成長……か」

 

少し寂しくもあるが、これもアリスの成長と喜ぶべきなのだろうなと思う事にするのだった……。

 

「……これはどうするべきか」

 

なお後日、アリスの手紙と沢山の足型が送られて来たオーディンが心底困惑する事になり、そして子を持つ親としてアリスの頼みを無碍にするのは心苦しく……苦渋の策としてある1つの命令がジークに下された。

 

「司令」

 

「今は父でいい」

 

「父上、正気ですか?」

 

「……頑張ってくれジーク」

 

「何を!?僕は何を頑張れば良いんですか!?」

 

「逃走と人間界の破壊回避、それと横島の家に住み着こうとする事の阻止、そしてアリスの御守だ」

 

「無茶が過ぎますよ!?」

 

「お前なら出来る。人間界にはブリュンヒルデもいるので2人に任せたぞ、ジーク」

 

「父上、父上ーッ!!!」

 

ジークに丸投げすると言う暴挙に出たオーディンに対し、ジークの嘆きを伴ったオーディンを呼ぶ声が響く事になるのだった……。

 

 

 

リポート7 初めの一歩 その3へ続く

 

 




友達イベント、エレシュキガル、そしてアリス襲来イベントのフラグを準備してみました。次回は勿論アリスちゃんとマスコット襲来ですね。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
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