GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL 作:混沌の魔法使い
リポート7 初めの一歩 その3
~琉璃視点~
私は読んでいた書類を机の上に置いて、眼鏡を外し机の上の冷め切った紅茶を飲み干してから目の前にブリュンヒルデさんにもう1度問いかけた。
「……すいません、もう1回言ってくれません?ちょっと私耳が遠くなっちゃって」
ちょっとありえない事を言われた気がするけど、絶対気のせいだし、と言うか間違いであって欲しいと思いながらそう尋ねる。
「……魔界の獣10数匹とアリスちゃんが東京入りしました」
あははっ……そっか、そっかぁ……私の耳が遠くなった訳じゃないのかあ……。
「何してくれてるんですかッ!?」
「すいませんすいませんすいません」
私は生まれて始めて上級神魔に土下座で謝られるという稀有な経験をすることになるのだった。
「えっとですね、横島が人間界に転移する際にガープの攻撃を受けて、魔界に荷物を落していってアリスちゃんがそれを見つけてですね」
「それならアリスちゃんだけじゃ駄目だったんですか?」
アリスちゃんだけならまだ何とかなるけど、魔界の獣までセットでは私では対処しきれない。
「アリスちゃんが嫌だと」
これが普通の犬とかなら良かったんだけどなあ……いや、まだチャンスはある筈だ。
「ちなみに魔界の獣って何ですか?危なくないですよね?」
「……」
「こっち見てください」
思いっきり目を逸らすブリュンヒルデさんに私はコンマ1秒でこっちを見るようにと告げた。
「……これを、これを見てください」
差し出されたのは写真の束。嫌な予感がしながらその写真に目を通し……見るんじゃなかったと絶望した。
丸っこい身体で陸上に適応したような姿をしている鮫のような魔物。
見るからにモフモフとした紅い巨大な芋虫……いや蚕のような魔物。
岩のような硬そうな身体に額に1本角に広がった尾をした頑丈そうな魔物。
これと言った特徴は無く、強いて言えば黒い体毛を持ち、目を自らの髪で隠している一見犬のようだが、写真越しでもわかる竜気を伴った魔物。
鋼鉄の身体を持った小柄な恐竜のような魔物。
黄色の体を持った小さな放電をしている魔物に……
氷の結晶が身体の回りを覆っている青い狐……
そして桃色でぼけっとした何これ?って思う魔物……。
「これ全部ブリュンヒルデさんが危ないって言ってた魔物ですよね?」
「……親がですね、はい、横島なら上手く育ててくれると思ったのか親同伴で現れたそうです」
「何その地獄絵図……」
これの完全体と一緒に来るとか恐怖映像以外の何者でもないと思う。
「と、とりあえず名前は付けてないみたいですし、今もジークがついてるので大丈夫だと思います」
「そこは絶対大丈夫って言って欲しい所なんですけどね……」
自分も不安に思っているのだから大丈夫って嘘でも言わないで欲しい……。
「とりあえず、美神さんも呼んで様子を見に行くのでついてきてくれますよね?」
「はい、勿論」
元凶と言ったら可哀想かもしれないけど、責任の半分くらいはブリュンヒルデさんにあるので着いて来て下さいよと頼み込み私は受話器に手を伸ばすのだった……。
なおその頃横島家では……。
「ぷぎッ! ぷぎゅーッ!!」
「痛い!ぼ、僕が何を……いたいッ!しぬッ!殺されるッ!!!!」
「ステイ!うりぼーステイッ!!アリスちゃんはとりあえず縁側に座ってて、シズク!アリスちゃんにジュース出してあげて!」
アリスを連れてきたジークだが、出会いがしらにうりぼーのロケットずつきからの踏みつけ連打を、死ぬ、殺されると叫びながら頭を抱えて必死に転げまわって回避を続け、横島はエキサイトしているうりぼーを止める為に楽しそうに笑うアリスに縁側に座っているように言って、必死にうりぼーに止まるように叫びながらその姿を追いかけているのだった……。
~横島視点~
俺が魔界に落して来た鞄を届けに来てくれたアリスちゃん達とその先導役で尋ねてきてくれたジークなのだが、出会い頭でうりぼーの弾丸ずつきを喰らい、哀れなほど凄まじい勢いで吹っ飛ばされ、その上容赦ない踏みつけ連打を見て、俺は慌ててジークの救出に向かったのだが、普段はいう事を聞いてくれるうりぼーは完全に興奮していて言う事を聞いてくれなくて本当に大変だった。
「こ、殺される所でした……」
「お前なんでそんなにうりぼーに嫌われてるんだ?何かしたのか?」
「……何かしたと思いますか?」
「思わないけど一応念の為に?」
うりぼーは基本温厚なんだけど、何故かジークに対してだけめちゃくちゃ当たりが強いのは何故なんだろうか?多分ジークは何もしてないと思うんだけど……。
「とりあえず家に入ったほうがいいかもな」
「それは死刑宣告ですか?」
「え?なんで?」
庭でうりぼー達が遊んでいるので家の中の方が安全だろうと思い、家の中に入るように言ったのに何で死刑宣告なんて返しをされるのかが俺には本気で判らなかった。
「僕1人で横島さんの家に入る勇気はありませんよ、それならうりぼーに突撃「ぷぎいッ!!!」ふぐうっ!」
「ジークッ!!!」
突撃されたほうがマシと言いかけたジークに弾丸のような勢いでうりぼーが突っ込んで、弧を描いて宙を舞うジークの名を思わず叫び、ジークは頭から落下し、そのまま大の字に倒れて痙攣してる。
「ぷぎ」
ふんすっと鼻息荒く鳴くうりぼーを抱きかかえる。自由にさせていると本当にジークの命が今日終わりそうだからな……。
「ぷぎい♪」
「なんでジークにそんな意地悪すんだ?」
「ぷぎゅ……」
わぁ、俺うりぼーのこんな不服そうな声を聞いたの初めてかもしれない。どんだけジークが嫌いなんだよと俺は内心思いながら、トドメを刺そうとするうりぼーを抱きかかえて拘束する事にした。
「お兄ちゃん、ジュース美味しかったよー」
「そっかそっか、良かった良かった」
荷物を持って来てくれたアリスちゃんはしっとりと汗をかいていたので、シズクにジュースを出すように頼んだけど、アリスちゃんはジュースを飲み終えると満面の笑みでまた飛び出してきた。
「鞄を見つけてくれたのはこの子達なんだよ。えらいでしょ」
「おお、それは本当に助かったよ、ありがとな」
庭でぴょんぴょんと跳ねる魔界で懐いた使い魔達を見ながら感謝の言葉を口にする。
「ふかふかッ!!」
「もーのー♪」
「ぴいぴい!!」
「ココォッ!!!」
なんか皆個性的な鳴き声だよなあと思いながら縁側の上のボールを2個拾って山形に投げる。
「みむう!!」
【ノブノブー!!】
「ふかあッ!!!」
「ココォッ!!」
「モノッ!!!」
「ぴゅい?」
ボールの争奪戦が始まってしまったが、楽しそうにボールを追いかけているので多分大丈夫だろう。
「ちゃぁ~」
「クウ」
「あーごめんなあ、紫ちゃんお勉強の時間なんだよ」
紫ちゃんに懐いた2匹がしょんぼりしているが、紫ちゃんは今頃妙神山で勉強中なので、帰って来るまで待ってて貰うしかないけどいつまでアリスちゃん達は家にいれるんだろうか?
「アリスちゃんは何時まで居るの?」
「夜ご飯の前までかな」
今10時くらいだから17時くらいまでって所かな、紫ちゃんは15時に帰ってくるから……2時間くらいは一緒にいれそうだな。
「茨木、あんた変なの捕まえて来たわね」
「あんまり強そうではないでござるな」
「……やぁん?」
【いや、馬鹿そうじゃな】
【全然駄目じゃないですかね?】
「吾に言うな!なんか懐いて付いて来るんだからしょうがないだろうがッ!!」
「……やぁん♪」
あのピンクの本当に人懐っこいって言うか、苦労してなさそうだよなあ……なんか見ていると変なリラックス効果がありそうな気がする。
「……横島、美神達が来るぞ」
「え?おかしいな、今日訪ねてくるって聞いてなかったんだけど」
抱えていたうりぼーを庭に下ろし、立ち上がると確かに美神さんの車が遠くに見える。
「何か用事かな?」
「……お前は戦える状態じゃないから多分、こいつらの事じゃないか?」
庭で飛び跳ねているうりぼー達を指差してシズクが言うけど、ただのマスコットなんだからそこまで警戒する事はないんじゃないかな?
「言っておきますけど、魔界でも1、2を争う強さの魔物ですからね?警戒するのは当然ですからね?」
「ええ、嘘だぁ……こんなに可愛いのに?」
ルキさんには悪いと思うし、魔界でもそうは言われたけど、大人しくて可愛いものだと思うんだけど……。
「グルアアアアッ!!!」
突然聞こえてきた唸り声に振り返るとアリスちゃんについてきた魔物が皆威嚇体勢にはいり、その小さい爪を美神さん達に向けていた。
「……これどういうことかしら?」
「……なんかすいません、敵じゃないから、この人達は敵じゃないから!」
ふーっと威嚇を続けているマスコット達を落ち着かせる為に俺は慌てて駆け寄ってそう声を掛けるのだった……。
~美神視点~
琉璃にもブリュンヒルデにも、小竜姫様にも聞いていたけど魔界で横島君に懐いた魔物は桁違いにやばい雰囲気を持った魔物だった。
(これが魔界の生態系の頂点の生き物か)
偶に人間界に出現するブラックドッグや、ケルベロスやオルトロスの幼生でさえもGSが何十人と集まりやっと対応出来る魔物だが、今横島君の周りにいる魔物はそれなんかよりも遥かに強いというのを肌で実感する。
「ふか」
「そうそう、敵じゃない敵じゃない。よーしよし、良い子だ」
横島君に撫でられて落ち着きを取り戻したみたいだけど、これで名前をつけていないと言うのだから横島君の妖使いの適正がどれだけ高いのか良く判る。基本的に魔物と言うのは人間よりも強い、契約や名前で縛ってやっという事を聞かせることが出来ると言ってもいい、それを名前も契約もせずに言う事を聞かせるって言うのは横島君の能力の高さを示していると言っても過言ではないだろう。
「やっぱり人見知りが激しいみたいで、威嚇はしたけど、悪意はないと思うんです」
横島君がフォローするように言うけど、実際の所は人間と神魔に警戒してたと言っても良いと思う。それだけ警戒心が強い魔物なのだろう。
「こんにちわー♪」
「こんにちわ、アリスちゃんも元気そうね」
「アリスは元気だよー!」
横島君の隣に座り、満面の笑みを浮かべて手を振るアリスちゃんに手を振りながら挨拶を返す。しかし、本当に横島君に懐いてるわよね……子供と人外に好かれるのは横島君の個性だけど、段々それが強力になってる気がするわね。
「アリスちゃん、横島に荷物を届けれましたか?」
「うん!ちゃんと届けてね、お兄ちゃんにありがとうって言って貰えたよ」
にこにこと嬉しそうに笑う姿を見ると偶にゾンビってことを忘れそうになるのよね……プロのGSとしては褒められた事じゃないけど……それだけアリスちゃんには悪意と敵意が無いってことなのだ。
「では夕方には帰りましょうね」
「ええー」
アリスちゃんだけでなく、アリスちゃんの周りに居る魔界の獣達も不服そうな声を上げる。その声を聞いて、私はちょっと待ってと声を上げた。
「美神さん?」
「琉璃もそうだけど、ブリュンヒルデもさ、態々来てじゃあ帰りましょうって連れて帰るのは余りにも酷だと思わない?」
正直褒められた事をしようとはしていない。ただ、この状況は使える――私はそう思ったのだ。
「1日や2日は泊まっても良いんじゃない?」
「良いんですか!?」
「良いの!?」
横島君とアリスちゃんが嬉しそうな声を出し、その声を聞くと少し罪悪感を覚えるが……これは実は良い機会だと思う。
(横島君は眼魂に頼りすぎている)
確かに眼魂の力は強力だが、それ以外の霊能だって横島君は他のGSと比べてもかなり高いのだ。陰陽術に栄光の手、勝利すべき拳にチビ達……そのどれか1つだって業界のトップを取れる力だ。1回横島君は自分の力をもう1度見つめなおす必要があると私は思うのだ。
「うーん……はぁ……しょうがないですね。泊まるのは良いですけど、横島君絶対名前をつけたら駄目だからね?あとアリスちゃんもあんまり周りにゾンビとかを召喚しないこと」
「うい!」
「判った!」
名前をつけてしまえば使い魔になってしまうので名前は絶対に駄目、ネクロマンサーのアリスちゃんには当然ゾンビを召喚する事の禁止が琉璃から言いつけられる。
「良いんですか?」
「良いって言うか、これで駄目って言えるほど、私冷血な人間じゃないんですよね」
うるうるとした目で見ているアリスちゃんを見れば、思う事はあるが駄目とはいいにくい。
「判りました、では私の方からお伝えします」
「多分判ってると思うけどね」
アリスちゃんの荷物を見れば最初から泊まる事が前提にされているのが良く判る。ネビロスとベリアルはどうだか判らないけど、アリスちゃんが泊まるって騒ぐのは判っていたと思う。
「じゃあお兄ちゃんの所で泊まって良いの!?」
「1泊2日ですけどね……それくらいなら許可も降りると思いますよ」
やったーっと喜ぶアリスちゃんを見ながら、これからの事に頭を巡らせる。明日がおキヌちゃんの六女の見学と、それと霊能のテストだ。臨海学校にスタッフとして招集される横島君の検査もあるし、チビやうりぼーは良く見られているので、それ以外の、しかも使い魔でもない魔物を操っている姿は妖使いとしての力量を十分に示すに相応しいと思う。ちょっと悪い事を考えているけど、これも今後の横島君の事を考えれば必要な事だと思う。
「それで何か用事がありました?」
「明日六女に行くから、それだけ伝えにきたの、ちゃんと準備をしておく事、じゃあね」
ほかに言う事もあったけど、とりあえず今はそれだけ良いかと思う事にして琉璃とブリュンヒルデと共に横島君の家を後にする。
「なんか横島君に古い神魔の霊力纏わりついてたけどあれ何?」
「……多分というか確実に目を付けられてますね」
「なんでそうなるですかね……」
古い神魔が東京にいるのは把握しているけど、あれはすれ違ったとかそういうレベルじゃなくてガッツリ接触している上に、完全にそうあれは……魂に目を付けられている。シズクレベルなので確実にアウトなレベルだと思う。
「凄く疲れた気持ちだわ」
「私は美神さんのせいでもっと疲れてますよ?」
「それはごめんって……」
アリスちゃんの純粋無垢な瞳を見ていると言いたくても言えないことって結構出て来るのよね……子供を泣かせるのってなんか嫌だなって思うし……。
「アリスちゃんの事が問題なのは判るけど、ちょっとあからさますぎない?」
「こっちも調べているんですけど、中々尻尾が掴めないんですよ」
意図的に横島君の悪評が広がっているのがどうにもおかしい。そもそも横島君が療養中なのに、どうしてこれだけ悪評が流れるのかが不思議でしょうがない。
「ガープは関係なさそうね」
「そこまで暇ではないでしょう。考えられるのは1つ……」
「私達を良く思っていない中堅所のGSと言う所でしょうね。裏で手を引いてるのは誰ですかね」
実力があればGSはどこまでも成り上がっていけるが、昔気質――つまり血族などでGSをやってる連中からすれば私達は当然面白く無いだろうし、自分達の意見を聞き入れない琉璃の存在も邪魔と思っている可能性は高い。
「本当禄でもないことばかりが続くわね」
人間同士で足の引っ張り合いをしている場合じゃないって言うのに……私も琉璃も揃って深い溜め息をはく、早い段階で悪評を流している連中を潰さないと、それこそ査問会だなんだのって乗り出してきかねない状況に持って行かれかねない。そんなくだらないことで足止めを受けるつもりはないので、向こうが準備を終える前にこちらから仕掛けるつもりだが……恐らく本当の黒幕には辿り着けないという事を私は感じていた。
(一体誰なのか……何をしようとしているの)
躑躅院かと思っていたが、躑躅院は味方のようだし、何よりも冥華おば様の目を欺ける人間が居るとは思えない。つまり躑躅院は白になるわけだが、ではそうなると誰が?一体何の目的でという謎が私達の前に立ち塞がっているのだった……。
「ふおおお……可愛いのが一杯居るでちゅ!」
「アリス、遊びに来てくれたの!」
「……横島、これどういう状況?」
「こういう状況だよ?」
「説明になってないわ」
美神達が頭を悩ませて居る頃、そんなことになっているとはつゆとも知らない蛍は庭を埋め尽くすマスコットの群れとアリスの姿に頭を抱え、勉強を終えて帰ってきた紫と遊びに来たあげはは満面の笑みを浮かべアリスへと駆け寄っていたりするのだった……。
リポート7 初めの一歩 その4へ続く
ほのぼのには幼女とマスコットが必要不可欠だとわたしは思います、アリスちゃんが続投してますがお許しください。次回はちょっと久しぶりにシリアス気味で六女の話を書いて行きますが、幼女とマスコットが居るので少しほのぼの感も残したいとおもっております。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
PS
単発札でライダーダヴィンチGET 漫画で分かるのガチャはする気が無かったので、これは嬉しいサプライズでした。