GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL 作:混沌の魔法使い
リポート7 初めの一歩 その5
~政樹視点~
氷室おキヌと氷室舞の編入試験の7人の試験官の1人に僕は選ばれたんやけど……思ったより、いや、僕が甘かったんやろうな。
(こりゃ不味いで……)
冥子はんにも気をつけてと言われていたけど、どいつもこいつも良い噂を聞かない試験官ばかりや。
「この時期に編入を認めろなどと……やれやれ我侭が過ぎる」
「神代会長は自分の立場を勘違いしておられているのではないでしょうか?」
最終的な決定権を持つ3人が試験に反対では完全なアウェイな環境での試験と言っても良い。これでは合格できる者も不合格になってしまうだろう。
(……これはかなり不味い雰囲気やなぁ……)
僕も冥華さんの指示で色々と調べているがやはり六道女学院の雰囲気は決して良い物ではない。しかし調べてもからくりが見えてこないので頭を抱えるしかない。
「横島GSの臨海学校の参加ですか……」
「何故そこまで横島GSに拘るのでしょうね。彼はあんまりいい話を聞きませんが、そう言えば鬼道先生は少しの間勉強を見ていたそうですね、横島GSについてどう思いますか?」
僕と冥華さんの子飼いの部下は賛成派、残りの2人は試験に関しては中立。但し横島君を臨海学校に参加させるのはやや納得していないと言う様子だ。
「そうですね、最近の六女の噂は全部がせやと思いますよ」
曰くガープと手を組んでいる
曰く美神はんと蛍を強姦し従えている。
曰く悪魔と契約しておりチビはグレムリンの姿をしている最上級悪魔。
曰く戦いを好み、己が傷つくこともいとわない。
曰く幼女性愛者。
とか単純な悪口から根も葉もない話まで横島君に対しては悪い話が多すぎる。
(これも関係してるかも知れんなぁ……)
一時期は横島君に関しても好意的な話が多かったのに、何故今はこうも悪意に溢れているのか……人の噂も七十五日というけど、毎日毎日違う噂が出ているのは正直異常だと思うやなあ……。
「そうなのですか?」
「ええ、彼はかなり努力家ですよ。それに知識がないからちょっと変わったこともしますけど、面白い発想もしてますし、美神はんが助手にするのも納得だと思いますよ」
少しでも横島君の印象を良くしようとしていると、待機室を出ようとしていた2人が踵を返し歩いて来た。その気配を感じて僕は作戦成功だと内心ほくそ笑んだが、それを隠しながら振り返った。
「それは鬼道先生が見る目が無いだけではありませんか?」
「僕が見る目がないなら六道理事長も同じですよね。反対意見があるなら直接理事に言ってみてはどうでしょうか?」
「……彼に良い話は聞かない」
「悪い話を聞こうとしているからやないですか?使い魔学科の生徒にも貴方達は辛辣ですし」
使い魔学科の生徒は確かにGSとしては異端だが、それも稀少な才能で努力していると僕は思う。使い魔学科は六女に相応しくないと主張したくともそれをすれば六道の批判にも繋がるのでそれすらも出来ない臆病者だ。その代りに生徒に異常な量の課題を出したりするのは余りにもお門違いだ。
「GSなのだから妖怪や悪魔を頼るのはどうかと思っているだけですよ」
「じゃあ冥子はんや僕はどうなんですかね?冥子はんは12神将で神魔を使ってますし、僕も式神使いですよ」
僕の反論に言葉に詰まる3人を見ながら僕はにっこりと笑った。
「学びたいと思う者を自分の好き嫌いで判別するのはどうかと思いますよ。仮にも試験官なんですから中立でいないとね」
思いっきり喧嘩腰になるが、元々反りが合わないのでこれくらいで丁度良い。それに態々喧嘩を売るような立ち回りをしたのも理由がある、ちらりと時計を見て足止めは十分に成功したと僕は確信した。そもそも僕が態々こんな喧嘩腰で声を掛ける必要なんて無かった。
(なにかしそうやしな)
しかし試験場に先に行かれて何か仕掛けをさせない為にこうして無駄話をして、向こうが面白くないと割り込んでくる事も計算していたのだ。扉が開く音がして1人の男性が待機室に入ってきた。
「いやすいません、仕事が遅れまして、オカルトGメンの西条です。今回の試験には僕も試験官として参加させて頂きますね」
オカルトGメンの西条さんの姿を見て目を見開く2人の横をサッと通り書類を手渡す。
「こちらが六女の編入試験のテストと実技試験の内容になります」
「ふむ、ありがとう、目を通させてもらうよ。それと試験場の視察もしたいな、案内を頼んでも?」
「判りました。では僕が西条さんをご案内しますね」
さっさと話を進め2人で試験場へ向かう。その道中で結界札を使い会話を誤認させながら話を進める。
「試験官は中立が2人、賛成派が僕ともう1人、反対派の3人で計7人です。それと試験内容の改竄などが疑われています」
「ここまで堂々とやるかね……六女がおかしいと言うのは本当の事のようだね。とにかく僕は僕のやれる事をしよう」
「よろしくお願いします、試験にまで手を加えられては合格できる者も合格出来ないですからね。あとは……」
「何らかの証拠を掴むだけということだね」
「はい。いま美神さんと神代会長が調べてるそうです」
正直六女の警戒を潜り抜けて細工を出来るとは思えないが、それでも可能性を探る必要がある。
「試験が終わり次第僕も参加しよう。後は……横島君にそれとなく注意をしておいてくれるかい?」
窓の外を見てそういう西条さんになんだろうと思い窓の外を見て、僕は思わず苦笑した。
『あはははははッ!!』
『にゃーっ!!!』
『だーらしゃああああッ!!!』
幼女2人を両腕にぶら下げてぶんぶん回転している横島君とそんな横島君の近くに座りのほほんと笑っている冥子はんをみて、僕は判りましたと返事を返すのだった……。
~西条視点~
六女の入って感じたのは空気が悪いという事だった。令子ちゃんを経由して預かっていた教授の眼魂をポケットの上から触る。
(どうだい?教授)
(うーん、これはあれだねえ……結界の類かなあ、多分だけど私は正規の英霊じゃないシ……普通じゃ判らないかもネ)
教授……いや、ジェームズ・モリアーティは反英霊に属する悪の英霊だ。悪だからこそ判る何かが今の六女に渦巻いていると言うことか……。
(何か判ったら教えて欲しい)
(任せて欲しいネ。なーに、これもマイボーイのためさ!)
そう言うと眼魂から抜け出し、霊体化して駆けていく教授を見送り、筆記試験のテスト用紙の確認をする。
「確かに六女の編入試験の物だね、じゃあこれは僕が届けてこよう」
「いえいえ、私共のほうで」
顔色を変えてくる2人を手で制しテスト用紙を持ち上げる。ここまで確認してすり変えられるなんてアホのする事だ、そもそも僕は試験官を信用していないので届けさせる訳も無い。
「僕の知り合いでもあるから激励と共に届けさせて貰うよ。すぐに戻る」
そう告げて2人だけの試験会場に足を踏み入れる。
「編入試験頑張ってくれよ。なに、君達なら大丈夫さ」
テストの内容は2人なら何の問題も無く正解出来る内容だ。仮にすり変えられていても問題なく正解できるだろうけど、それはそれで別の問題になりそうだからね。
「西条さん、ありがとうございます。頑張りますね」
「が、頑張ります」
頑張るという2人に背を向けて手を振りながら試験会場を後にし、待機室に向かう道中で今回の犯人についての考えを纏める。
(分家筋の暴走の可能性が高いか……案外協力的だったな、躑躅院は)
六道に牙を剥く者と考えて1番可能性が高いのは陰陽寮関係者だ。ただ宗家は既に監視下にあるので分家の者や一部の過激派の暴走である可能性が高い。
(結界と悪意か……独自の物か?それにそこまで出来るとなると……六女にも協力者がいそうだな)
人間側も一枚岩ではない、この状況でもまだ己の利権を得る為に行動出来るとは恐れ入る。とにかく今は尻尾を掴む事だ、オカルトGメン、GS協会の膝元で反乱分子がいるなんて洒落にならないからな。
「試験の様子はどうかな?」
「カンニングとかの気配も無くて真面目なものですよ」
「そうだろうとも、彼女達ならば飛び級で海外の霊能科だって入学出来るさ」
令子ちゃん達に面倒を見てもらっているおキヌ君は言わずもがな、神降ろしの才がないからと養子に出された舞君だって非常に優秀だ。
『終わりました』
『採点をお願いします』
『は、いえ、まだ時間はありますけど』
『大丈夫です。採点をよろしくお願いします』
ほらね、2時間なんて必要ない50分ほどで採点を求めるおキヌ君達に苦笑し、受け取るようにと放送で声を掛ける。
「これで落第点なら笑いものですね」
「ありえないね。それこそすりかえでもされてなければね」
多分早く終わらせろと言うのは指示なのだろう。筆跡のコピーなどを防ぐ為の物で可能な限り早く採点を求めろと言われていたに違いない。試験用紙を回収してきた試験官の元に向かい、テスト用紙を確認する。
「どうかしましたか?」
「いや、海外の方では編入試験で気に食わない者のテストを交換するというのは割りと多くてね、二人の筆跡かどうか確認しただけだよ。問題はなさそうだね、採点を頼むよ」
鬼道の言うには中立派の2人が採点を行なうのを見ながら、反対派に視線を向ける。
(……やはり何かしけていたか)
忌々しそうな顔をしているのを見てやはり何かをしようとしていたのだと悟るが、良くもまあこんな環境出来る物だとあきれてしまう。
(……いや、待てよ)
正常な判断が出来ていないのか?結界の類と教授は言っていたが……精神に作用する物なのか?いやそんな物ならば気付かない訳が無い。
「では次は実技試験ですね。行きましょうか」
とにかく気になる事はあるが、今は早急に編入試験を終わらせるべきだ。何をしてくるか判らない以上、余計な茶々が入らないうちに筆記も実技試験も終わらせるべきだと思い強引に話を進め、実技試験を始めようと声を掛ける。
「そんなに急ぐ事はないでしょう」
「ええ、筆記試験の疲れもあるでしょうし」
反対していた3人がおキヌ君達を気遣うような発言をした。それだけで裏があると思って間違いないだろう、だが休憩時間を取らせるというのは正しい意見で僕の意見が間違っているとも言える。
「それなら理事長から回復札等を預かっていますし、お昼から生徒の除霊実習もありますし本人達が大丈夫というのなら試験をすることにしましょうか」
「鬼道先生、それは余りにも酷いのではありませんか?」
「筆記が50分で終わってしまっては3時間近く待たせることになります。それだと気が緩んでしまうかもしれませんし、編入試験の悪霊はG~Dランクとは言え、気が緩んでしまえば危険な事故もおきかねません。僕達がどうこう言うよりかは本人達の意志を尊重しましょう」
上手く取り成して、いや、冥華さんが既にこの展開を予測していたのだろう。余計な横槍を入れさせまいと準備してくれていた事に感謝し、僕は手を大きく叩いた。
「本人達の意見を聞いてその上で決める事にしましょうか、それじゃあ2人はどうする?」
扉の開く音に振り返るとそこにはマルタさんとおキヌ君達がいて、話を聞いていたのは明らかで、今から実技試験は大丈夫か?と問いかけると2人は満面の笑みで大丈夫ですと返事を返した。
「では今から実技試験だ。実技試験の試験官は「私がやるように言われているわ」ではマルタさんに頼みます。僕達は採点ということでよろしいですね?」
苦虫を噛み潰したような顔をしている2人を無視し、僕達は六女の敷地内除霊実習場へと向かうのだった……。
~蛍視点~
実技試験場の観客席に腰掛けおキヌさんと舞さんの実技試験の応援という名目で会場に細工をされていないかと監視をしていると、携帯電話の鳴る音がし、私は1度双眼鏡を椅子の上に乗せて携帯電話を手に取った。
『蛍ちゃん、そっちはどう?』
「今から実技試験を行なうみたいです。予定より早いですけど、多分妨害対策だと思います」
実技試験を50分で終わらせたって聞いてるし、それも多分妨害対策の筈だ。
『冥華おば様ならそれくらいするわね。蛍ちゃんから見て2人はどう?』
「問題はないと思います。むしろこれで不合格なら横槍を疑いますよ」
ナナシ達の影響もあると思うけど普通に六女のエリートと呼ばれる生徒よりも遥かに知識もあるし、勝負勘もある。まず普通にやれば失敗する事はないと思っていると私の手から携帯が取り上げられた。慌てて振り返るとそこには教授がにこやかに手を振っていた。
「教授?」
【やあ、西条君について来たんだヨ。ちょっと電話を借りるヨ、あ、もしもし?私だ、モリアーティだ。私の調査のほうは結界系と見た、
それとGSとして大成しなかった卒業生の怨念も関係してそうだヨ。うん、うん。蛍君に代わるよ、ほい】
差し出された携帯を受け取り、教授を見上げながら携帯を耳に当てる。
『教授と一緒に行動をしてて、また何かあればこっちから連絡するわ』
その言葉を最後に携帯は沈黙し、私は隣に腰掛けている教授に視線を向けた。
「どういうこと?」
【夢見て六女に来て大成せず引退した者の恨みや嫉妬は強烈な悪意となるのだヨ。恐らく今の状況はそれらを利用していると見て間違いないネ、ほんの少しだけ刺激してやればそれは爆発してしまうのだヨ】
「理屈は判るけど、本当?」
六女の生徒だからと皆が大成するわけではない。無念を抱いたまま引退する者もいるだろうし、除霊助手をしている間に怪我をして引退せざるあるいは、裏方のまま終わってしまうというのもありえない話ではないけど……。
【悪意って言うのはどんな聖人君子の胸の中にも存在するものだヨ。とは言え……それをコントロールして術式に組み込もうとするって言うのは驚きだけどネ】
普通に考えてコントロールできるものではなく、確実に自分に牙を剥く。それを操っていると言うのは正直信じがたい内容なんだけど……横島が関わっているのなら教授が嘘をついているとは思いにくいし……。
「かなり厄介ってことね?」
【そう言わざるを得ないだろうネ、マイボーイが君達といる限り付き纏う問題ダ】
横島への偏見はかなり強い、それが牙を剥いた……いや、それを利用されたと言っても良いと思うんだけど、正直かなり陰湿だ。
【自分は関係ないって顔をしてるけド、君も関係してるからネ?】
「うえ?」
私も関係していると言われ、思わず間抜けな声が出てしまった。教授はそんな私を見てやれやれと言わんばかりな大袈裟ジェスチャーをしてきて正直かなりイラッとした。
【君も沢山嫉妬してるだろう?マイボーイの女性関係に】
「う、それは……そうだけど……」
【そういうのも利用されているんだヨ。色恋ほど利用しやすいものはないヨ、危ない趣味の子がいないわけじゃないシ?】
女学院特有のお姉様って言う関係が無いとは言い切れないのよね……実際そういう趣味の子は六女には多いって良く聞くし……。
「もしかして……」
【うん、君もそういう対象で見られてる可能性が高いよネ】
教授にそう言われて思わず自分の身体を抱き締めて震えてしまった。横島が好きなのにそういう目で見られているなんて悪夢以外の何者でもない。でもそう言われると熱っぽい視線で見られていた事があったのを思い出し、思わず鳥肌が立った。
【まぁあくまで可能性だけド、そういうのは利用されやすいのサ。とりあえず何時でも乱入出来るように身構えるくらいはしておこうカ】
「そ、そうね。判ったわ」
何が起こるか判らない、このまま普通の試験で終わってくれれば良いんだけど……試験場に入場してくるおキヌさん達を見て無事に終わって欲しいと思いながらも、嫌な予感は消えず私は鞄の中の縮めた神通棍の柄を無意識に握り締めているのだった……
「これより除霊の実技試験を始めます。双方リラックスして冷静に対処してください」
「「はい!」」
「では始めッ!」
マルタの合図でおキヌと舞の2人の前に悪霊が出現した頃――横島と冥子はというと……
「も、もう無理ぃ。死ぬ、死んじゃう……」
「「【えーっ】」」」
「ハイパースイングはもう無理、ちょっと休憩……ぜえ、ぜえ……」
紫達を両腕にぶら下げて回転していた横島の体力が尽きていた……もっともっとーと紫達は言うが体力的にレッドゾーンなので横島は首を左右に振った。
「僕が変わりにやりましょうか?」
「「「【やだ】」」」」
「ええ、判ってました、判ってましたよ」
即答でやだと言われてジークが項垂れる。横島が特別なだけで紫達はちゃんとした警戒心をしっかりと持っていた。
【あちこちで走ったりして疲れただろう。ここは1度休憩だ】
「そうよ~お茶を用意してあげるから~お茶にしましょうか~」
「「「【はーい】」」」
「みむー♪」
「ぷぎー♪」
「ふかー♪」
お茶の言葉に六女の裏庭で遊んでいたチビ達も集まってきて、のんびりとお茶会の準備をしていたのだが、そんな横島達を見つめる黒い靄に誰も気付くことはないのだった……。
リポート7 初めの一歩 その6へ続く
次回はおキヌちゃんと舞の2人の視点の話、美神達の視点の話で話を書いて行こうと思います。次回もシリアスメインで書いて行こうと思いますので、次回の更新もどうかよろしくお願いします。