GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL   作:混沌の魔法使い

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その7

リポート7 初めの一歩 その7

 

~???視点~

 

妬ましい

 

恨めしい

 

何故何故何故何故ッ!?

 

私達は優秀だった筈だ。

 

優れた血筋だった筈だ。

 

何故下等な霊能者に劣る。

 

何故私達を認めない。

 

凡人は私達に従えば良い。

 

優れた血筋で当主になった我らに従わねばならぬ。

 

何故陰陽寮を捨てた者が我らを罰する。

 

何故我らを糾弾する。

 

我らは護国の使者なり、国に望まれた正義の執行者。

 

なのに何故、何故、何故我らを排除する。

 

「好き勝手したのが悪い」

 

「血筋だけで己を磨く事を怠った」

 

「全てを犠牲にして己だけ生き延びた」

 

好きな事をして何が悪い。

 

血筋に宿る術を使い、片手間ではあるが人を護った事もある。

 

我らは優秀な存在。下等な者も我らを守れて嬉しかろう。

 

「お前達はもう護国にあらず」

 

「お前らこそが悪鬼なり」

 

「血など何の意味もない」

 

「己の犯した罪を悔いるが良い」

 

「もうお前達には誰も従わぬ」

 

「何時までも古い考えに縛られた遺物」

 

「もう~貴方達は~必要じゃないのよ~」

 

うるさいうるさい、私/俺/我/あたし/ワシを見下すな、お前達は我らを崇拝すれば良い。

 

なのに何故私達は何もかもを奪われた。

 

なのに何故私達の言葉を天皇は聞いてくださらぬ。

 

何故

 

何故

 

何故

 

下等な霊能者の方が私/俺/我/あたし/ワシよりもみとめられているのだ。

 

恨めしい

 

妬ましい

 

憎ましい

 

だが私/俺/我/あたし/ワシの言葉は誰にも届かぬ、ああ、憎い、恨めしい、妬ましい……。

 

「復讐したくないか?君達を捨て1人で逃げた者を、お前達を切り捨てたかつての部下を」

 

にやにやと笑う怪しい男の誘いと狂おしい憎悪だけが私/俺/我/あたし/ワシの全てであり、それを晴らせるのならばと差し出された手を握り返すのだった……。

 

 

 

 

~横島視点~

 

【横島!しっかりしろッ!!】

 

脳裏に響いた心眼の怒声、それで俺は意識を取り戻した。だが膝をついてその場に崩れ落ちた。

 

「げほっ!おえッ!!な、なにが……うえッ!!」

 

栄光の手で殴り飛ばした。その瞬間に俺の意識は飛んでいた。凄まじい闇に飲み込まれたような……なんとも言えない不快感、その不快感から込み上げてくる吐き気を堪える事が出来ず何度も何度もえづいた。

 

「……ちっ、散れ」

 

シズクが舌打ちし、両手を広げると氷の弾丸がマシンガンのように放たれ、俺達に近づいていたコンプレックスを押し留める。

 

「……肩を貸してやる。少し離れろ」

 

冥子ちゃんやジークが戦っているのに1人だけ下がれるかと思い、シズクに大丈夫と言おうとするが俺の言葉は最後まで紡がれず、激しい吐き気によって言葉に詰まる。

 

「いや、だい、だいじょ……うえっ」

 

【横島、シズクの言う通りにしろ。冥子】

 

心眼が冥子ちゃんを呼ぶと俺のすぐ隣にショウトラとマコラが現れて俺を支える。

 

「お、俺はだ……だい……丈夫……だから」

 

紫ちゃん達がいるのに弱ってる姿を見せれるわけが無く大丈夫と言おうとするが、手足が鉛のように重く寒気も止まらない。自分がどうなっているのかまるで判らない。なんでたった1回攻撃しただけでこんな事になっているのかが理解出来なかった。

 

「横島君~無理しないで~横島君とは相性が悪すぎるのよ~」

 

心配そうに駆け寄って来た冥子ちゃんが無理をしたら駄目だと俺の手を掴んで止める。

 

「ど、どういう……?」

 

【あれは恨み、妬み等の集合体だ。こんな言い方をしたく無いが……力の方向性は狂神石に似ている】

 

コンプレックスが狂神石に似ていると聞いて、俺の不調の原因が何なのかを俺は理解した。

 

「……狂神石が活性化してるのか?」

 

【いや、そこまでは行っていない。だが少なくとも横島、お前はあのコンプレックスとは戦うな】

 

あのという言葉をやたら強調する心眼にどういう事だと尋ねる。

 

「多分だけど~あれは~作られたコンプレックスなのよ~悪意を増徴させて、正気を喪失させるタイプの~仲間割れを誘発させる為に誰かが六道の地下で培養してたのよ~」

 

作られた妖怪と聞いて遊園地のスライムの事を思い出した。

 

「そんな……ことをする奴が……いるのかよ……」

 

【六道と琉璃を面白く思っていない奴は少なくとも存在するからな。とにかくお前は休んでいろ。チビ!出番だ!」

 

「みむう!」

 

心眼の言葉に頷きチビ達が俺の前に出る。やる気と気合に満ちている様子のチビ達は大丈夫だからと言わんばかりに勇ましい鳴き声を上げる。

 

「紫ちゃん達~横島君を見てて~」

 

「判った!イバラギン!」

 

「イバラギン言うなッ!!」

 

どたどたと駆け寄ってくる茨木ちゃんに連れられ、俺は無理やり前線から引き離される。

 

「でえいッ!!!」

 

「……倒しても倒しても切がない」

 

「バサラちゃん、頑張ってえ~」

 

ジーク達が戦っている姿を見て、戦えない自分が情けなく、そして怒りを抱く、何故何の為に、どうしてという言葉ばかりが脳裏を過ぎり……。

 

【大丈夫ですよ。私が助けてあげますからね】

 

蠱惑的で、どこか甘ったるい女性の声が聞こえ、身体のどこかで何かが大きく脈動するような感覚と共に俺の手の中には1つの眼魂が現れているのだった……。

 

 

 

~ジーク視点~

 

魔界でも権力闘争、政敵なんてものは幾らでも存在する。だが六道家と神代琉璃を落としいれようとしている相手の策略は悪辣でそして悪意に満ちていた。

 

「ちっ!なんて厄介な物を作ってくれたんだ」

 

バルムンクでコンプレックスを切り裂き、両断すると同時に黒い霊力が吹き出る。その霊力を見て、僕は確信した。六道の人間が何故おかしいのか、何故東京にこれほどまでに悪意が広がっているのかを……。

 

(どれほど手を加えたんだ!)

 

コンプレックスという妖怪は魔界や天上界にも時々出没する妖怪である。妬みや嫉妬を糧にして生まれる陰気の結晶だが、まさかそれに手を加え倒された事で人に寄生し、正常な判断力を奪う個体が生まれるなんて想像もしていなかった。

 

「……浄化する」

 

「お願いしますッ!」

 

僕はあくまで魔族なので浄化することは出来ない。シズクさんに浄化を頼み、バルムンクの切っ先を再びコンプレックスに向ける。

 

(……鬱陶しい)

 

手足に纏わり付くどす黒い霊力――神魔である僕に浸食する事は無いが、それでも手足は重くなる。コンプレックス自体はとても弱い妖怪だ。それこそ力を込めずにバルムンクを振るだけでも倒せる、それこそ人間だって霊力の心得があれば十分に倒せる相手だろう。だがそこが罠だ、コンプレックスを倒せばその中に封じ込められていた悪意が噴出し、その人間を浸食する。そうする事で疑心暗鬼が広がって行く……実に考えられた悪辣な戦略だ。しかし僕には分かっていた……これはガープではない、人間が人間を害す為に作り上げた術だと……。

 

「みーむうううッ!!!」

 

凄まじい轟音と光が鳴り響き、雷がコンプレックスを焼き払う。

 

「助かります」

 

「みむふ」

 

不服と言うのが目に見えているが、横島さんを助けるためだからと協力してくれているようだ。

 

「ぷぎッ!!」

 

「ふーかーッ!!」

 

「やーあーん」

 

うりぼーの牙の間から霊波砲が放たれ、魔界の獣達も思い思いの攻撃でコンプレックスを撃破する。

 

「……中々厄介になってきた」

 

「うん~凄く粘りっこいわぁ~」

 

悪意の質が変わってきている。粘りっこい更に重い執着と嫉妬……これは人間には間違い無く毒だ。しかもコンプレックスの出現の頻度も爆発的に倍増してきている。今はまだ抑えられているが、これが校舎の中に、いや六道の外に出てしまえばそれこそ大惨事だ。人間の街が崩壊すると言ってもいい、それだけはなんとしても防がなければならないが頭数が足りない。

 

「冥子、ジーク、シズク、状況はどうなってるの!?」

 

戦闘音を聞いたのか美神さん達が合流して来てくれたのを見て、僕は声を張り上げる。

 

「コンプレックスを倒すと凄まじい負の瘴気が噴出します!美神さん達は浄化に専念してください!」

 

「……お前達が来たなら私も戦いに専念する」

 

美神さん達に浄化を頼み、これで僕とシズクさんはやっとコンプレックスとの戦いに意識を向ける事が出来るのだった……。

 

 

 

~美神視点~

 

六道の中庭を埋め尽くしているコンプレックスの群れ、シズクの氷の壁があることで生徒がこっちに来る事は無いが、それも何時まで持つか判らない。

 

「ッ! 重いッ!?」

 

「結構厳しいですね、これッ!」

 

コンプレックスは夏場の海などで出現する事が多い妖怪で、人の陰気を糧にして生まれる妖怪だが、例えば彼女がいる男が羨ましいとか、そんな感じの思春期にありがちな嫉妬心を糧に生まれる妖怪で対して強い妖怪ではないのだけど……。

 

「舞ちゃん連れて来れば良かった!」

 

「私はおキヌちゃんね。とは言え、何があるか分からないから慎重になるべきだけどね」

 

ジークとシズクが倒したコンプレックスの霊力を只管浄化するのだが重い、本当に重い。凄まじいまでの妬みや嫉妬などの悪意――明らかに自然発生ではない誰かが作為的に作り出したコンプレックスだ。

 

「でもこれで納得したわねッ!」

 

コンプレックス相手に精霊石を使うなんて冗談じゃないけど、下手を打つともっと大きな大災害になりかねないので精霊石で纏めて浄化する。

 

「コンプレックスは簡単に倒せるから練習のつもりで除霊してって事ですねッ!」

 

倒されて寄生して、その人の嫉妬心などを取り込んでその身体を捨てて別の場所で生まれ直す。道理で証拠も何もないワケだ、調べた所調べた所は既に生まれた後。寄生されている相手も嫉妬心などが消えて明るくなってるから証拠もない……。

 

「どこの馬鹿よ!こんなコンプレックスを作ったの!冥子ッ!」

 

「はいはーい。バサラちゃんお願~い」

 

冥子の合図でバサラがコンプレックスを飲み込み消し飛ばしていく、コンプレックス自体は弱いのでバサラの許容量には関係ないのがありがたい。

 

「横島君は大人しくしてなさい!」

 

「……はい」

 

物凄く不服そうな声で返事を返す横島君に危機感を覚えるけど、このコンプレックスは横島君と相性が悪すぎる。

 

【紫、霊波砲は使えるな?それで攻撃してくれ、アリスちゃんも同じだ。茨木は好きにしてくれ】

 

「吾の扱い雑いなッ!?」

 

茨木が文句を言いながら大剣を振るい、コンプレックスを消し飛ばし、アリスと紫の霊波砲がコンプレックスを消し飛ばす。

 

【よいしょおッ!!!】

 

【のーぶッ!!!】

 

リリィちゃんも実は強かったのねと内心驚いた。旗を振るうと火球が飛びコンプレックスを飲み込み火達磨にし、チビノブは相変わらず口からビームを吐いている。

 

(でもこれで一安心かしら)

 

横島君は正直戦わせたくない、顔色が悪く明らかに不調を露にしている。コンプレックスの負の霊力と狂神石が反応している可能性を考えれば横島君は安全な場所においておきたい。

 

(後は教授と蛍ちゃん、それに西条さんに何とかしてもらうしかない)

 

ここに来るまでにコンプレックスの出現と共に姿を消した教員がいると追いかけている蛍ちゃん達に会い、犯人を捕らえることが出来ればこの大騒動も終わる。それまではコンプレックスを六女の敷地から出ないように、そしてもっと言えば私達も負の霊力に汚染されないように立ち回る必要がある。

 

「琉璃、とりあえず片っ端から浄化していくわよ!」

 

「分かってます!」

 

私はあんまり浄化は得意では無いが、琉璃は専門家だ。2人で当たれば十分に対処出来る……戦いに参加したばかりはそう思っていた。

 

「……ちいっ!」

 

「くっ!?強いッ!」

 

最初は一撃で倒せていたコンプレックスの中に倒せない個体が混じり始め、そして浄化も間に合わなくなるほどの濃厚な瘴気が中庭に広がり始めていた。

 

「さ、流石に~これ以上は厳しいわよ~!」

 

「なんとか踏ん張って!!」

 

「でもこれ……本当にやばいですよ!?」

 

余りにもコンプレックスが強すぎた、いや正確にはコンプレックスの中に封じられている術式が余りにも厄介すぎた。霊力の毒に負の霊力、それにほかの個体を倒すと強化される者……。

 

(これを作った奴は最高に性格が悪いわね!)

 

思わず舌打ちしたくなるレベルでコンプレックスの種類は豊富で、そしてこちらを苦しめる事を徹底していた。ある程度の装備は持って来ていたが、それでも普通の除霊の半分くらいの装備しかない、これでも十分だと考えていたのだが計算が甘かった。本気でコンプレックスを作り出した術者は六女を潰すつもりだったのだろう、こうして横島君が来た事でここまで本格的に動き出すなんて想定外だった。

 

「お兄ちゃん!?駄目だよッ!!」

 

「お兄さん何をッ!?」

 

皆に疲労の色が見えてきた時アリスちゃん達の悲鳴が聞こえ振り返ると、赤黒い霊力が横島君の全身を包み、放電を繰り返していた。変身こそしていないが、その手にはガンガンブレードが握られており、空いている左手には半透明の眼魂が握られていた。

 

【離れろ!これ以上は抑えられんッ!!!】

 

心眼の言葉に頭を抱えて横っ飛びする。次の瞬間、ガンガンブレードに半透明の眼魂がセットされ横島君が大上段にガンガンブレードを構える。

 

【牛王招雷・天網恢々ッ!!!】

 

横島君の声ではない、女の声が横島君の口から発せられ赤黒い稲妻がコンプレックスの群れを一瞬で焼き払った。

 

「……お前何者だ!」

 

【ふふふ、さてさて、どうでも良いでしょう?私は我が子を助けただけ、文句を言われる筋合いはありません。ふふ、私がもっと完全ならよかったんですけどね。お前達を殺せたから】

 

「お前、お前!頼光かッ!横島に何をした!」

 

頼光ッ!横島君が平安時代で遭遇した英霊のッ!思わず後ずさり身構える。

 

【助けただけと言っているでしょう、虫が、言葉も理解出来ないのですか?まぁ虫ですからしょうがないですね。ではまた何れ……私が寄り完全になった時に……】

 

ガンガンブレードから半透明の眼魂が自動で吐き出され、空中で砕け散ると同時に横島君の身体は糸が切れた人形のように崩れ落ちた。咄嗟に駆け寄り声を掛けるが反応はない。だけど呼吸もしているし、脈もある。

 

「心眼、何が起きたの……?」

 

【平安時代で何時の間にか消えていた頼光眼魂。それがコンプレックスの負の念に呼応して顕現しようとしたようだ。だが力が足りず中途半端に横島に憑依した形になったようだ】

半端に横島に憑依した形になったようだ】

 

「それはもしかしてまだ狂神石の影響下にあると言うことなのですか?」

 

【恐らく……そうだろう、私を押さえ込むほどに強力な神通力の持ち主だ。不味い事になったな】

 

沈黙していた頼光眼魂がコンプレックスの、ううん。六道家と冥華おば様を陥れ様とした連中のせいで覚醒した……この想定外の結果に私達は頭を悩ませる事となるのだった……。

 

 

 

リポート7 初めの一歩 その8へ続く

 

 




平安時代で消えていた頼光眼魂の復活です。ただし中途半端な覚醒なので変身は出来ない感じですね、しかし心眼を押さえ込めるタイプの神霊眼魂なので普通に危険な眼魂となります。次回で六女編は終了ですが、黒幕は最後に少し出す予定です。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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