GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL   作:混沌の魔法使い

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その2

リポート2 竜の魔女リターンズ その2

 

~美神視点~

 

マリア7世のプライベートジェットは流石一国の女王の物と正直感心した。赤い絨毯に一目で判る豪奢な装飾が施された家具、それに加えて精霊石や破魔札、結界札なので霊的防御も完璧。空飛ぶ要塞と言っても良い具合だ。しかし、今は私はその要塞が刑務所のように思えていた。

 

「西条さんと神代さん。今回の件はしっかりと日本政府に抗議させていただきます」

 

「「はい」」

 

「まさか空港で盗みに来るとは思っても見ませんでした」

 

「「……はい」」

 

「別に怒ってる訳ではないんですよ?ただ、そうですね。常識がない一部の政治家は本当に……ふふ」

 

……この人やばいわ。若いけど冥華おば様と同じ雰囲気がする……つまり下手に関わったら命が危ないタイプの人種だ。西条さんと琉璃がだらだらと汗を流して俯いている……針の筵なんて言う甘い状況じゃない。それこそ下手をすれば、西条さんと琉璃がどこかに島流しになってもおかしくない案件だ。

 

「そう責めてやらんでくれるかの?この2人はワシが信用して連れて来たんじゃ。西条と神代が悪いのならワシも悪い」

 

「まさか、そんな事はありませんわ。責めているわけではありません、カオス様」

 

公の場だからPTOを弁えてドクターカオスと呼んでいたが、他者の目がないと判るとカオス様と親しさと敬愛が込められた口調でドクターカオスの名を呼んだ。その目に込められているのは父親や祖父を尊敬する眼差しだったけど……なんか、こう危うい感じがあるのは気のせいだろうか?

 

「恐らくイクサが手を回していたんでしょう。抗議するのなら日本政府よりも、オカルトGメンの方がいいと思いますよ?」

 

「そうですか、めぐみがそういうのならそうでしょうね」

 

魔鈴めぐみ――くえすと同じで魔法を実戦に転用出来る数少ない魔女。その専門は白魔術と聞いていたけど……思った以上に覇気が強い。これで白魔術しか使えないとか完全にガセだろう……そうでなければマリア7世の護衛として一緒の飛行機で日本に来る訳がない。

 

「イクサですか、やはりちょっかいを?」

 

「ええ。あの男は何度も何度も我が国に来てて……ふふ」

 

あの小さい笑い声はなんなのよ、飛行機の中の温度が急激に下がった気までするじゃない。

 

「失礼ですが、マリア姫様は完全な独立権を所有している筈ですが……本当にイクサが?」

 

「ええ、旅行という名目で何度も来ていますよ。我が国の物をよこせと遠回しに何度も何度もね?」

 

ドクターカオスが国を出る前に用意したゴーレムや特殊な霊石を排出する鉱山、それに中世に設計されていても、今もなお最高峰の能力を持つ除霊具――それらを作成するノウハウはドクターカオスとマリア7世しか持っていない。それはどこの国も喉から手が出る程欲しい代物だ、壊れかけですらオークションに掛かれば何百億と値が付く代物――それらを作る設計図を欲しいと考えるのは判るが、まさかザンス王国と同じく特権で鎖国同様にしている国にまでちょっかいを掛けるとか……本当正気じゃないわね。

 

「まぁそれは良いです。個人的に来ていると言われればそれまでですしね、さて。博物館の件ですが、そちらは万全ですか?」

 

「は、はい、それに関しては神魔の協力も得ております」

 

「そうですか、それなら良いのです。横島へは招待状は届いておりますか?今回の来日は全て彼の為の物です。彼が来なければ何の意味もありません」

 

笑みを浮かべているがその目がスッと細まった。これで横島君が来ないとか聞いたら、このまま国に帰りそうな勢いだ。

 

「それに関しては大丈夫です。横島君も博物館が楽しみだと言ってましたし、最初のプレオープンの日に向かうと言ってました」

 

横島君自身も竜の魔女の旗を見たくてしょうがないのだ。だから行かないと言う事は絶対にありえない、何があっても博物館に向かうだろう。そして……ジャンヌ・ダルク・オルタは召喚される。

 

「プレオープンの日なら私もご案内出来ますね。私も楽しみです、マリア様の手記は見ましたが……どんな人達か、こうしてあえるのがとても楽しみです」

 

にこにこと笑っている。目の中も穏やかな光を帯びているが……それでもその笑みが怖いと思うのはやはり最初に冥華おば様に似ていると思ったからだろうか。

 

「あのさ、マリア姫様」

 

「なんですか?テレサさん」

 

「本当に旗横島にあげるの?稀少な物じゃないの?」

 

幼い人格のテレサが素直に何の勘繰りも無く、マリア7世にそう尋ねる。するとマリア7世は穏やかにテレサに笑いかけた。

 

「あれは私が預かっていた物です。それをお返しするのは当然の事です、それにあの旗見てくれたでしょう? ずっとあの旗は横島に会いたがっていたんです。それを邪魔する事なんて誰にも許される事はでありませんわ」

 

今もなお黒い炎を上げて、誰も触れてくれるなと威嚇を繰り返している竜の魔女の旗……誰が見ても、あの旗に魂が宿っているのは一目瞭然だった。

 

「よろしいんですね。マリア姫」

 

「ええ、大丈夫です。あの旗が無くても、我々には何の問題もありませんから」

 

国際的に歴史的価値もあれば、霊具としての価値も高い。それが1種のアンタッチャブルとなっていた……それを手放す事のリスクは十分判っているだろう。それなのに、旗に宿る魂の為に日本に来てそれを手放すという選択をした。その決断力と何百年も前のマリア姫様の遺言を果たそうとするその意志の強さは凄まじいと思った。

 

「もうそろそろ火が消えるでしょうね。では行きましょうか」

 

ふんわりと笑い、めぐみを連れてタラップに足を向けるマリア7世。その後姿を見て、私はドクターカオスに視線を向けた。

 

「女王とかじゃなくて、あれ女帝じゃない」

 

「……うむ、ワシもそう思う。前に会った時はあんな感じではなかったんじゃがな……」

 

男子3日会わざれば刮目して見よとは言うがのう……とぶつぶつドクターカオスは呟いていたが、そんな物じゃない。あの短いやり取りで私は十分に理解した。

 

「役者が違うわね」

 

「……本当それですね」

 

琉璃も十分に人の上に立てる人間であり、女王としての風格を持っている。だがマリア7世はそれを完全に上回っている……あれは女王なんて生易しいものではない。自分の意見を通す為ならどんな事でもするまさに女帝とも言う風格を持っている……1時間にも満たない会談で私はそれをひしひしと感じているのだった……。

 

 

 

 

~横島視点~

 

 

博物館のプレオープンの日――ジャンヌさんの旗が飾られている、それを見に行けると思うだけで俺は本当に嬉しかった。

 

【あの娘には感謝しかないな】

 

「……うん。俺もそう思う」

 

俺はきっとあの時ジャンヌさんがいなければ完全に闇に堕ちていただろう。俺を引き戻してくれたジャンヌさんには本当に感謝しかない……。

 

【お前は悪くないそう悔やむな】

 

「……心眼……うん」

 

ジャンヌさんは俺をガープから庇って消滅した。消え去る最後の瞬間まで俺を激励して、そして励ましてくれた。何にも出来なかったのに、俺に会えて良かったと楽しかったと笑ったその顔は今も俺の脳裏にくっきりと焼きついている。

 

「また……どこかでって約束したからさ」

 

【ああ、会いに行かないとな。約束を破る事になる】

 

さよならは言わなかった。また会おうと約束したから、だから会いに行かないと……約束は破ったらいけないから。

 

「お前にも早く会いたいよ」

 

クローゼットの中の籠の中にタオルに包まれている卵を軽く撫でて、前に蛍に買って貰ったシャツとズボン、そしてジャケットに袖を通す。

 

【忘れるなよ】

 

「判ってるよ、心眼」

 

ジャケットの内ポケットにチケットを入れて俺は部屋を後にした。

 

「なー吾も言ったら駄目なのかー?」

 

玄関で靴を履いていると茨木ちゃんがつまらなそうにしながら尋ねてくる。俺は下駄箱の上においていたチラシを茨木ちゃんの顔の前に向けた。

 

「こういうの見るだけで、騒いだりしたら駄目なんだけど、それでも来る?」

 

「……うーん」

 

博物館みたいな所は茨木ちゃんにはきっと向いていない。それにチビ達も悪戯したら弁償なんて出来ないので、今回はお留守番だ。

 

「行かない」

 

「だろ?今度は遊びに行ける所に行こうな。じゃ、行って来るな」

 

「……気をつけてな」

 

「ま、たまにはチビ達の面倒を見ててあげるから」

 

「せんせー、お土産があったらよろしくでござるよー」

 

「みむー」

 

「ぴぎゅう!」

 

【ノブブー】

 

玄関にお見送りに来てくれたシズク達に手を振り、俺は駆け足で蛍と待ち合わせをしている駅に向かうのだった。

 

「……さてどうなるかな」

 

「連れて帰ってくるんじゃない?」

 

「まぁそうなるでござるだろうなあ……」

 

確実にジャンヌダルク・オルタは現界する。それを知っているシズク達はなんとも言えない表情で楽しそうにしている横島を見送るのだった……。

 

 

 

 

~蛍視点~

 

横島と一緒に出かけるのは凄く楽しいし、嬉しい。しかもチビ達もいないから2人きりだ。嬉しくない訳が無いんだけど、確実に召喚されるであろうジャンヌダルク・オルタの事が気掛かりだった。

 

(……うーん)

 

こんな事を言うのは何なんだけど、私はジャンヌダルク・オルタに親近感を抱いている。普通なら横島を私から引き離す存在として嫌うんだけど、私……蛍じゃなくて、ルシオラはジャンヌ・オルタが嫌いではない。そうだからこそ、何とも言えない複雑な感情を抱いていた。

 

「蛍!ごめん、お待たせ」

 

「ううん。大丈夫、走ってきたみたいだけど大丈夫?」

 

「全然平気」

 

私が選んだシャツとズボン、それにジャケットを着てくれくれた横島に小さく微笑んだ。Gジャン、Gパン姿がやっぱり横島って感じがするんだけど……この黒を基調にした服も本当に良く横島に似合っていると思う。

 

「じゃ、行きましょう?」

 

「おう!なんか博物館とか初めてだから楽しみなんだよなあ」

 

楽しそうにしている横島と共に電車に乗り、郊外の博物館に向かう。

 

「ほへー……なんか想像してたのと違うな」

 

「そうね……正直私も驚いたわ」

 

博物館の前には10人にも満たない招待客と、規制線の外側にTVクルーの姿があり、大々的なイベントの割には人の数が少ないという印象が強かった。

 

「チケットを確認します」

 

「あ、はい、俺と蛍で2人で」

 

チケットを受付にいた老人に差し出す横島。それを見た老人は小さく笑って、深く頭を下げた。

 

「お待ちしておりました。横島忠夫様、芦蛍様」

 

どうして私達の名前をと困惑していると老人――おそらく執事はもう1度深く頭を下げた。

 

「遠い過去にて救われた事を私達は決して忘れずに来ました。そしてマリア様もその恩に報いる為にこうして日本に参りました。どうぞ、貴方方が預けた竜の魔女の旗をご覧ください」

 

そう告げた執事さんは鎖を外して、私と横島を博物館に続く道へと案内した。

 

「今日という日を向かえる事が出来た事を大変喜ばしく思います。日本との友好を築ける事を願います」

 

マリア7世のスピーチの後解放された博物館の中に私と横島は足を踏み入れた。

 

「……はぁ、すげえ」

 

「そうね。これは驚きだわ」

 

博物館というだけあって絵画やステンドグラスが所狭しと展示されているんだけど、そのどれもに圧倒されるようなパワーがあった。

 

「素晴らしい」

 

「これだけの物が見れるなんて……」

 

「……この幸運に私は感謝します」

 

私達以外の数組のお客さんも展示物を見て、感動にその身体を震わせていた。私達には絵や展示物の素晴らしさは判らない、それでもその1つ1つに込められている霊力や思いを感じて素直に凄いと思った。

 

「チビ達がいなくて正解だった」

 

「そうね、こんなの弁償できないわ」

 

チビ達の毛が落ちただけでも大惨事だ。本当に大人しくお留守番をしてくれて良かったと思う、そんなことを考えながら赤い絨毯の上を進んでいると横島がある物に気付いた。

 

「なあ。蛍……あれって」

 

「……驚いたわね、残ってたんだ」

 

横島がマリア姫様が保護していた子供達と遊んでいたボールが展示されていた。しかも、その近くには横島の事を描いているであろう絵画もあって、横島は少し複雑そうな顔をしていた。

 

「いいじゃないの」

 

「うーん。そうかな?」

 

サッカーの伝統とか少し変わっていると思うけど、子供を元気つけたいと思った横島の行動は間違いじゃないし、攻められる物でもない。こうして横島の優しさの証とが残っているのが私は素直にいいと思った。飾られている物の多くが中世にタイムスリップした時の物で、懐かしさを感じながら横島と展示物を見ながら歩いているとふと曲がった所にマリア7世がいて、思わず2人とも固まった。

 

「ようこそ、お待ちしておりました」

 

「え、えっとどうも?」

 

「ふふ、そんなに緊張なさらずに、さ、どうぞこちらへ」

 

首から下げた鍵を使い、開かれた扉の中に入っていくマリア7世。その後ろを見ているとマリア7世が顔を出して笑った。

 

「どうぞこちらへ、竜の魔女の旗はこちらです」

 

そう言われ、私と横島は博物館の中心に続く細い廊下を歩き出した。

 

「マリア様からの伝言で我々はずっとこの旗を護り、そして代々引き継いできました。すべてはこの旗を横島様にお返しする為です」

 

「えっとありがとうございます」

 

「いえいえ、感謝するのは私達の方です。貴方達がいなければ我々は死んでおりました、だからこそ、その時の感謝の思いを込めて我々はこれをずっと護っていたのです」

 

マリア7世は扉を開けて、私と横島に道を譲った。

 

「どうぞお通りください」

 

恐縮しながら円形のホールの中に足を踏み入れる。その中心に飾られた竜の絵が描かれた漆黒の旗……何百年も前の物なのに新品同然のそれに私も横島も驚いた。

 

「……本当に大事に護ってくれてたんだ」

 

「そうね」

 

太陽の光が降り注ぐように設計されているのだろう。ステンドグラスの下の旗に日の光が当たり、煌く姿を2人で見つめていると、突如円形のホールの縁を沿うように黒炎が上がった。

 

「えっ!? こ、これってジャンヌさんの炎!?」

 

「横島!」

 

慌てていると横島の手を掴んで、念のために持っていた結界札を手にする。だが私達を囲んでいる黒炎はとても優しく、そして暖かい炎だった。そして黒炎は徐々にその円を狭めながら私と横島へと近づいてくる。だが不思議と私と横島に近づいてくる炎への恐怖は無かった……。

 

「なんだろう。凄く懐かしい気がする」

 

「そうね。うん。きっとそう」

 

美神さん達はジャンヌ・オルタの降臨を警戒していた、だけど……美神さん達の考える最悪の展開にはならないと私も横島もそう感じていたのだった……。

 

 

 

 

~小竜姫視点~

 

横島さんと蛍さんが博物館にはいるのを確認し、そこからはヒャクメに監視して貰っていた。

 

「どう?何か問題はある?」

 

「大丈夫そうなのね、普通に博物館を楽しんでいるだけみたいなのね」

 

このまま何も起きなければ良い、反転英霊の降臨……それが無ければ良いと私は思っていた。

 

「まぁ、なんにもなきゃ、楽に金が貰えるから俺達は嬉しいけどよ」

 

「……駄目だな。来るぞ」

 

周囲の霊力が博物館の中に吸い込まれていき、それと共に周囲に雑霊が現れた。

 

「やはりですわね。ま、判っていた事ですけど」

 

「ああ。こうなる事は判っていた。博物館の形状からな」

 

博物館自体が召喚の陣。そしてそこに横島さんが踏み入れた事でもうその魔法陣は起動を始めていた。

 

「暴れない事を祈るしかないね」

 

「ですね」

 

槍を構えるメドーサを見て、私も剣を構えた。英霊が召喚される為に高まった魔力、それに惹かれて集まって来た雑霊や怨霊を切り捨てながら、心から思った。

 

(どうか、横島さんが知るジャンヌであってください)

 

暴走した英霊を倒すだけの戦力は集まっている。だけど、それを倒す光景を横島さんに見せたくない。召喚される事はもう止められない……だからこそ最悪の展開にならない事だけを祈らずにはいられなかった。

 

「魔力、神通力、霊力、竜気の増大を確認したのね!召喚までは後3……2……1!霊基確認……クラスは「復讐者(アヴェンジャー)」ッ!!」

 

ヒャクメの叫び声が響いた召喚されたのは復讐者のクラス――調停者であるジャンヌの反転存在と考えれば復讐者のクラスはある意味的確と言える。

 

「召喚される事は判ってるんだ!そんなくだらない報告よりも横島と蛍はどうなってるんだい!?」

 

「そんな事はどうでもいい!横島は大丈夫なんですの!?」

 

「ヒャクメ!先にそっちを特定してください!!」

 

「ま、待つのね!?召喚の影響で全然中が確認できないのね~!!」

 

私達の怒鳴り声に半分泣きそうに……泣きながらヒャクメが返事を返した。召喚と共に周囲に溢れていた雑霊や怨霊はその姿を消した……後はジャンヌ・オルタが何をするかそれだけが懸念材料だった。願う事は1つ……どうか横島さんの記憶にあるままのジャンヌダルク・オルタであることを祈りながら博物館に向かって走るのだった……。

 

 

 

 

リポート2 竜の魔女リターンズ その3へ続く

 





次回でジャンヌオルタ召喚の所を書いて行こうと思います。後は小竜姫様やくえすとは別のほうで悪霊とかと戦っていた美神との視点での話を書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。
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