GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL 作:混沌の魔法使い
その1
リポート8 穏やかな日々/暗雲 その1
~横島視点~
カーテンの隙間から差し込む朝日が顔に当たり、俺はゆっくりと目を開いた。
「ん、ぐぐう……いてえ……」
ベッドから身体を起こし背伸びをするとあちこちがメキメキと嫌な音を立てる。その音を聞きながら首に手を当てて、軽く首を回す。
「めっちゃ体が鈍ってるな。まだOKでないしなぁ……」
走りこみや鍛錬の禁止が出ているので身体がめちゃくちゃ鈍っているのを感じながら、額ではなく首に心眼を巻いた。
【おはよう、横島。気分はどうだ?】
心眼の言葉に少しだけ言葉に詰まる。気分はどうかと言われれば良いとは嘘でも良いなとは言えなくて、言葉に詰まっていると心眼が馬鹿と俺を叱った。
【相性の問題だと言っただろう?そうだな、それだけ後悔しているのならばナイチンゲールから許可が下りるまで瞑想の鍛錬でもするか】
「ん、んんー……お願いしますぅ」
本当は身体を動かすほうが好きなんだけど、そんな事も言ってられないので心眼の指導で精神を鍛える鍛錬をして、今度は精神攻撃をされても負けないようになろうと思いながらベッドから降りようとして足をベッドの上に戻した。
「……凄い事になってる」
【寝てる間に入って来たんだな。一部は両手が使えるから、器用な事だ】
カーペットの上にアリスちゃんが連れてきた魔界で俺に懐いた魔獣が寝転がって寝ている。
「ふ、ふかああ……」
へそ天して鼻提灯して涎を垂らして寝てる。そーっと手を伸ばすと無意識なのがガチンっと言う音を立てて口が閉じる。
「……俺もう少し腕伸ばしてたら腕食われてた?」
【だろうな、寝ているが下手に近づくな。やばいぞ】
むしろ寝てるから本能的な何かがあるのかもしれないと思うが、トイレに行きたいし何とかして部屋から出ないといけないんだけど……。
「ヨギヨギ、ヨギヨギー……」
凄まじい勢いで口を開け閉めしてるのがベッドの周りにいて移動不可能だ……。大人しく寝てる組がせめてベッドの近くに居てくれたら何とかなったかもしれないんだけどなあ……。
「部屋に鍵をかけるべきだろうか?」
【粉砕されて終わるぞ】
否定できないなあ……どうやって部屋から脱出しようか……自分の部屋なのに脱出って変な話だよな。
「みみう、みむうう」
「ぷごおー」
ベッドの上の籠で寝ているチビとうりぼーを指で突いてどうやって脱出するか考えていると部屋の真ん中に切れ込みがはいり、ゆっくりとそれが開いて紫ちゃんが顔を見せる。
「あーもう起きてる。つまんない」
「紫ちゃん、ナイスタイミング。部屋から出れないからさ、連れてってくれない?」
「良いよ、そっちに行くね」
とりあえず俺は紫ちゃんが朝の強襲ボデイアタックをしに来たことによって、とりあえずの尊厳は守れたとだけは言っておこう。
「私がお兄ちゃん」
【私はお兄さんが良いですね】
「吾は横島で良いがな」
「呼んだ?」
リビングでわちゃわちゃしているアリスちゃん達に呼んだ?と尋ねながらブラシでうりぼーの毛並みを整える。
「はい、今度はごろん」
「ぴぎ」
ごろりと寝返りを打ったうりぼーの反対側の毛並みを整えていると紫ちゃんがふんすっと気合に満ちた表情を俺に向ける。
「何て呼んでもらえたら嬉しいですか?」
「んん?何の話?」
話の内容が分からずどういうことか説明を求めると雑誌を見ていたタマモが顔を上げた。
「呼び方がリリィとダブってるから別の呼び方にするんだって」
「何それ?」
ちょっと何を言ってるのか判らないのだが、紫ちゃんの顔を見るとアリスちゃん達にとっては重要な事のようだ。
「別に好きに呼んでくれたらそれで良いんだけど……はい、うりぼー終わり」
「ぴぎい♪」
毛並みが整えられ上機嫌で歩いていくうりぼーを見ていると子狐フォームのタマモが膝の上に座る。
「はいはい、今日は甘えん坊の日ね」
「グルぅ」
タマモは基本クール系だが、稀にチビとかうりぼーみたいに甘えてくる日がある。それが今日のようで、タマモの毛並みを整えながら頭を撫でる。
「むうーこれは大事な事なんです」
「そうなの?」
「そうなんです!にいにとかだと子供過ぎるでしょう?それに兄さんって言うのもなんかなあって」
まぁ確かににいにはちょっとおかしいよなあと思わず苦笑する。
【あれじゃろ、呼び名には拘りたいんじゃろ、ワシが猿って呼んでたのと同じじゃな】
「それはただの悪口だと思うでござるよ」
【ノッブは苛めっ子ですね】
【なにおう!猿は本当に猿みたいな奴じゃったんじゃぞ!?】
「……相変わらず騒がしい奴らだ」
【まぁ暗いより良いんじゃねえの?おはよう、横島】
「おはようゴールデン」
久しぶりに帰ってきた金時に手を振っているとタマモに腕を甘噛みされた。
「ごめんごめん」
ブラシを通すと穏やかに鳴くタマモに今日は本当に甘えん坊の日だなあと苦笑する。
「お兄様は?」
「ええ、俺お兄様ってキャラじゃないって」
馬鹿だし、様って言うほどカリスマもないと思うんだけど……。
「それいいでござるな、なんかせんせーのパワーアップ版に思えるでござるよ」
「私も悪くないと思うよ」
【私は呼び方がダブらなければ良いですよ】
なんで高評価なの?いや様ってキャラじゃないですよ。
【私は兄上を推します】
「「「それはない」」」
【しょぼーん……】
「いや、お兄様も兄上と同じ位ないことない?」
兄上もお兄様も大差ないと思うんだけど……多分俺の意見は無視されるんだろうなというのを本能的に感じた。俺の意見が全部却下される時の独特な雰囲気とも言える物が感じられた。
【横島君の包容力を最大限に現していますね】
そして沖田ちゃんのなんか良く判らない意見が決め手となり、紫ちゃんが満面の笑みを浮かべた。
「じゃあお兄様で決まりー♪」
花の咲くような笑みで笑う紫ちゃんにもうどうにでもなれと俺は苦笑する事しか出来ず、タマモの毛並みを整え終えてから立ち上がる。
「散歩行く人ー」
走りこみとかは駄目だけど散歩なら許可されているので、散歩に行く人と声を掛けると一斉に手が上がり、チビ達も短い手をぴこぴこ振ってるのを見て気分転換に俺は散歩に出かける事にするのだった……。
~おキヌちゃん視点~
六女の編入試験については合格を貰いましたが、コンプレックスの事、教師陣に問題があるかもしれないということで編入には少し時間をおくことになり、その間に制服の寸法合わせや、教科書、後授業で使う霊具など買い揃えるものが沢山あり、私は美神さんと蛍ちゃんに助けを求める事となりました。
「美神さん、おキヌさんならこれでどうでしょうか?」
「……んー、そのメーカーのは使いやすいけど霊力の変化が難しいのよね。んーっと、これ、中級者向けだけど霊力さえコントロールできれば十分使えるし、形状変化も出来るからお勧めよ」
「美神さんがそういうのならそれにしますね」
美神さんと蛍ちゃんが力を入れていたのは霊具の選択で、使いやすく長持ちする物を私に選んでくれた。
「神通棍って太腿にホルスターで固定するのが一般的だけどおキヌさんはどうする?」
「んー私は除霊の時を巫女服を使おうと思うのでそれはちょっと」
除霊の時は巫女として、ネクロマンサーの笛とシズさんの笛を使うつもりなので、巫女として余り素肌を見せるのはと難色を示す。
「一応今はこんな巫女装束もあるネ!」
店主の厄珍がカタログを引っ張り出してくれたので3人で覗き込み、美神さんそのカタログで厄珍を殴りつけた。
「代金は払うわよ。蛍ちゃん、おキヌちゃん、行くわよ」
結局厄珍で買えたのは神通棍と除霊札のセットと霊体ボウガンと必要な物の半分にも満たない物だった。
「なんであんな服あるんですかね」
カタログにあった服は極端なミニスカートだったり、肌が露出している物が多く礼装というよりかはコスプレ衣装に近い物だった。
「まぁ技術のある変態ってどこにでもいるのよね。でも間違っても買っちゃ駄目よ、ああいうのは特注で買わないとろくな事にならないのよ、製作者の生霊とかついててね、ノイローゼになる子って結構多いのよ」
製作者の生霊、コスプレに見える過激な衣装……そして美神さんの話を聞いて、私と蛍ちゃんは揃って自分の身体を抱いた。
「ま、まさか……」
「インキュバスの大量発生事件とか昔あったのよ。だから衣装は信用出来る女の製作者で、自分も立会いの物にするって言うのがベストね」
……除霊の世界にこんな裏話があるなんて聞きたくなかったと一瞬思うが、聞いておいて良かったとも思う。凄く複雑な気持ちだ。
「技術のあるGSは自分で作ったりするけど、私はめんどくさいから嫌ね。くえすとかは自分で作ってるはず。魔法の術式とか組み込む必要があるからだと思うけどね、まぁ頼むならドクターカオスが1番だと思うわよ」
マリアとテレサがいるし、そもそもそういう変なことを考えるタイプじゃないし、値段は張るけど1番信用出来る。逆に厄珍は論外と言う美神さんの解説を聞きながら次の必要な道具を買う為に移動を始める。
「次は何を買うんですか?」
「そうね。んーおキヌちゃんだから結界札とか、防御を補ってくれる霊具が欲しいわね。とりあえず六道の管轄の店に行って見ましょうか」
美神さんの運転する車で移動を始めたのですが、道中で公園でアリスちゃん達と遊んでいる横島さんを見て、凄く微笑ましい気持ちになったんですけど……。
「私凄く出し抜かれてる気がします」
「……うん、負けてるわね」
なんか普通に神宮寺さんがいて横島さんと楽しそうに話しているのを見て私と蛍ちゃんは揃って溜め息を吐いた。
「まぁーくえすは積極的だし横島君も気を許してるから強敵じゃない」
「なんでそんな楽しそうに言うんですか」
「部外者から見ると色恋で四苦八苦してるのを見ると案外面白い物ね」
楽しそうにくすくすと笑う美神さんを見れば横島さんに対して思う事がないと言うことは分かるけど、隣にいる蛍ちゃんを含めた沢山の横島さんの事を思う恋敵の事を思い、私と蛍ちゃんは隣り合わせに座ったまま何とも言えない表情を浮かべ、美神さんがそんな私と蛍ちゃんを見て微笑ましそうに笑っているのを見て、私と蛍ちゃんは更に仏頂面を浮かべる事になるのだった……。
「どうかしましたか?横島」
「あー、いや、さっき美神さんのコブラを見て、仕事かなーって思ったんですよ」
【何を馬鹿言っている。今は自分の身体を休めることを優先しろ】
「その通りですわ。もっと穏やかに心を静めて過ごしなさいな」
「……うい」
心眼とくえすに叱られた横島は蛍とおキヌちゃんに似た何とも言えない表情を浮かべながら、ボールを抱えて楽しそうに遊んでいる紫達にその視線を向ける。
「お兄様ー!」
「お兄ちゃーん!!」
元気良く兄と呼ぶ紫とアリスに手を振り返す横島だが、その肩をくえすに掴まれた。
「えっと?」
「何でお兄様になっているんですの?お兄さんと呼んでませんでしたか?」
「あーなんかリリィちゃんと呼び方がダブるから呼び方を変えるって、呼び方は重要だからって」
横島の視線にはうりぼーの上に乗り、公園を走り回っているリリィの姿がある。
【曲がりますよー】
「ぴぎいいいーーーッ!?」
【ふにゃああああッ!?】
曲がりきれずスピンするうりぼーと猫のような悲鳴を上げるリリィに横島が笑っているとくえすが手を叩いた。
「確かに呼び名は重要ですね。ではくえすとお呼びなさい」
「はい?」
「くえす」
「いや、だから」
「くえす」
「あの……ですね?」
「くえす」
「くえす……さん」
ハイライトOFFの合図でくえすとしか言わないくえすに横島はちょっと恐怖しながらも、くえすさんと呼んだ。
「それで結構です。私だけ苗字呼びでなんか疎外感があって嫌だったんですの」
「そ、そうなんですか……」
押しの強いくえすに横島は苦笑していたが、くえすは名前呼びで関係が進展したとガッツポーズを小さく取っていたりするのだった……。
~琉璃視点~
西条さんがGS協会に持ってきた調査報告書を見て私は思わず眉を細め、西条さんに厳しい言葉を投げかけた。
「ちょっと職務怠慢だったんじゃないですか?」
「……それを言われると面目ない……」
コンプレックスを製造し六女を中から潰そうとしていた御影家の連中と、そいつに従っていた六女の教師の全員の死亡が確認された。十中八九今回の犯罪を示唆した黒幕の仕業である事は間違いないが、余りにも手が早い。
「これ私達の所にスパイいませんか?」
「……その可能性は極めて高い」
死亡推定時刻は六女からオカルトGメンに移送され、そこから霊能者専用の牢獄に移送されるまでの時間は僅か2時間ほど、その短時間で犯人は僅かな肉片だけを残して姿を消した。
【姿を晦ます為に肉片って考えたんだけどネ、まさか頭部の肉とは想定外だヨ】
発見された肉片には僅かな脳漿が付着しており、まず十中八九死んでいると言う監察医の解剖結果がでている。
「それで考えると犯人は頭部だけを持ち去った……って可能性もありますね」
「その可能性は極めて高いと言えるだろうな」
霊能の多くは魂が関係しているが、その血に宿っている場合と脳に禁呪を使い、擬似的に蘇生する事でデータベースとしたと言った事例もある。それで考えれば頭部だけを持ち去り、異能の分析をしようとしていると考えるのは当然の事だった。
【問題はそんな大規模な事が出来る組織がいるかということだネ。少なくともガープ達ではないのは間違いない】
教授の言う通り人間の異能なんか高が知れており、ガープが態々動くとは思えない。そして余りにも見事な手際を考えると相手は異能狩りの専門家の可能性が高い。
「言峰神父は?」
「僕もそれを疑ったけど、唐巣神父の所にいたと言う証言がある」
「つまり他の異端狩りってことね」
後ろめたい噂の多い言峰神父を疑うのは当然だけど、唐巣神父達が庇う必要もないので言峰神父の身の潔白は明らか。
「査察組はホテルにいた。それに……」
「正直そんなことが出来るって思えないわよね」
血筋と家紋だけでオカルトGメンとGS協会の上層部にいるような連中が異端狩りなんて出来るとは思えない。無能を装っている可能性もあるけど……正直肥満体か枯れ枝のような貧相な身体を見て、もし無能を装っているのなら私達の目が腐ってるとしか言いようがないだろう。
「マリア7世の護衛は?」
「それも確認出来ているから違う」
【……となると正規ルートじゃないかも知れないネ】
教授の言葉に私も西条さんも眉を細める。正規のルートではないと言う事は密入国、そしてどこかの国の暗部と言う可能性がある。
「やっぱり私達はそこまで信用されてないって所ですね」
「それもあるが、神魔が多く日本に駐在しているのもあるな。神魔の力を取り込めると思っている国は山ほど入るからな」
私と西条さんにGS協会とオカルトGメンの信用が余りないのと、横島君関連で神魔が多く駐在している事。そして馬鹿な考えを持つ一部の人間による暴走……。これは本当に良くない傾向だと思う。
「馬鹿が乗り込んでこないと良いですね」
「それは絶対にないとは言えないな」
日本がガープやアスモデウスを退けている話は流したくなくてもどんどん世界に広がってしまう。災厄と呼ばれるレベルの神魔が何十体も日本に出現し、何かの騒動を起す。それは世界規模で見ても異常なことだ、そうなればどうして日本にここまで神魔が集まるのかという話になり、世界からの注目が集まってしまう。
【まぁ竜の魔女の旗の事もあるし、ドクターカオスもいる。それに日本には現存する神器も多いからネ】
三種の神器に目を付けている国もあるし、竜の魔女の旗をすり替えようとしたのは日本国内にも、海外にもいる。そして1000年の時を生きる錬金術師ドクターカオスも当然国内外からの注目が寄せられている……。
「これはもしかすると特異点の影響なのかもしれないね」
「……確かにその可能性はありますね」
歴史を改変する力を持つ横島君だが、それは何も歴史の改変だけに作用する力ではない、特異な力は様々な怪異を呼び寄せる。
眼魂然り、文珠しかり、そして狂神石然り……。
【ちょっとマイボーイの事についてはもう少し調べる必要があるかも知れないネ】
意図していない何らかの現象が横島君に起きている可能性もある……1回ヒャクメに来て貰って横島君の今の状態を詳しく見て貰ったほうが良いかも知れない。
「……気を休める時は無いが、頑張って行こう」
「ええ、分かってます。大丈夫ですよ、西条さん」
惚れた弱みと言うのもあるが、それを差し引いても横島君は好感が持てる。だから苦労をしても、横島君を助けたいと思うのはきっとその人柄もあると思うのだ。
「ところでアリスちゃんが連れてきた魔界の獣だけど、どうするつもりなんだい?」
「それは何として連れて帰ってもらうわ」
確かに横島君の為になら苦労は買うけど、さすがにそれは無理と私は即答するのだった……。
リポート8 穏やかな日々/暗雲 その2へ続く
リポート8はほのぼの視点2・シリアス視点1の編成で4話くらい勧めて行こうと思います。とりあえず琉璃さんと西条さんには胃薬が必須なのは言うまでもないですね。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。