GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL 作:混沌の魔法使い
リポート8 穏やかな日々/暗雲 その2
~シズク視点~
穏やかな昼下がり……と言いたいのだが、今現在の横島の家はそれ所ではなく、私は家の中に響く泣き声に深い溜め息を吐いた。
「いーやーだー、アリスまだ帰らないもん!!」
「ふかーふかかー!!」
「ココー!!」
「ぴぴいッ!!」
「ヨーギイー!!」
迎えに来たブリュンヒルデに全力拒否をしてるアリスと魔界で横島に懐いたと言う獣達が横島を取り囲むこの状況を見ていると軽い頭痛を覚えてくる。
「あーもうちょっと駄目ですかね?」
「……う、うーん、出来れば魔界軍が動ける間にアリスちゃんには帰ってきて欲しいんですけど……」
横島の背中に張り付き、断固拒否の姿勢を崩さないアリス。横島が悪いのか、駄々を捏ねているアリスが悪いのか……。
「……どっちだと思う?」
「両方」
「せんせーだと思うでござるよ」
【両方じゃね?横島は子供に好かれすぎじゃし】
【むしろ人たらしでは?】
まぁ私も両方だと思っていたがやはり満場一致かと苦笑しているとチャイムがなる。
「……ちょっと見てくる」
あいあーいと手を振る横島から背を向けて玄関へ向かい扉を開ける。
「……暇人か?」
「実際暇ですわよ?私」
竜気を感じていたが清姫か、暇つぶしに横島の家に来るなよとジト目を向けるが清姫は平然とした顔をしている。こいつ本当に面の皮が厚いな……。
「えっとですね。シズクさん」
「……小竜姫。もっと手綱を……は?」
小竜姫の背後から天竜姫と天魔、そして紫がひょこっと顔を出した。
「遊びに来ました」
「横島はいますか?」
「むふー♪」
友達が増えたと上機嫌の紫と喜色満面という様子の天竜姫と天魔、そして清姫を前にして私は深い溜め息を吐いた。分かっている悪いのは小竜姫ではなく、権力を傘にゴリ押しをしたであろう清姫が1番悪い。清姫が行くならということで着いて来た天竜姫と天魔は自分達が悪い事をしているなんて言う自覚は当然無いだろうし、紫はアリス達が帰ってしまう前に一緒に遊びたかったのだろう。子供らしい可愛らしい我が侭だから紫達は許そう……。
「……お前あんまりめちゃくちゃな事をして横島に迷惑を掛けるなよ」
「私が横島様に迷惑を掛けるなんてありえませんわ」
現在進行形で色んな所に迷惑を掛けているのに、この自信は一体どこから来るんだと思いながらも、来てしまった者を追い返すことも出来ず結局家の中に招き入れる事になった。
「……横島。お客さんだ、清姫達が遊びに来たぞ」
「いらっしゃい、あ、天ちゃんと天竜姫ちゃんも久しぶり」
ぽやぽやとした様子で笑みを浮かべ清姫達がやって来た事に嬉しそうに笑う姿を見て、私達が何を言っても無駄なんだろうと諦観に似た気持ちで私は小竜姫が土産にと持ってきた菓子でも横島達に出してやろうと思いキッチンに足を向けるのだった……。
~アリス視点~
お兄ちゃんを訪ねて来た沢山の人を見てやっぱりお兄ちゃんは優しいから色んな人に好かれるんだとアリスは思わず笑みを浮かべた。
「天魔です、天狗の長の娘です」
「天竜姫です。こんにちわ」
ぺこりと頭を下げる2人に少し遅れてアリスとリリィも頭を下げる。アリス達と同じ位の年齢のお友達はとても珍しい、年上か年下が当たり前なので同じ年齢くらいの友達は凄く嬉しく思う。
「アリスだよ、こんにちわ」
【ジャンヌ・ダルク・オルタ・リリィです。リリィと呼んでください】
互いに自己紹介をしているとお兄ちゃんがアリス達を見てにこにこと嬉しそうに笑っている。お兄ちゃんが笑っているのを見るとアリス達も嬉しくなってくる。
「……お菓子を持ってきたぞ。それとジュースとお茶」
「横島様、天界でも珍しいお菓子なので是非食べてみてください」
白い着物の竜族の人がお兄ちゃんにスススと擦り寄るが、その間にシズクが割り込んで防御する。
「何してるの?」
「わかんない」
「私も」
なんで近づくのを邪魔するんだろと思いながらアリス達はシズクが持って来てくれたお菓子を頬張った。
「美味しい♪」
「あまーい」
【美味しいですッ!】
あんまり食べたことの無い味だけど、凄く甘くて口の中で溶けるように消えるその食感はまるでアイスのようだ。
「本当だ、美味い。こんなの初めて食べる」
「確かに美味しいわね。天界にもこんなお菓子があるのね」
「美味しいでござるよ!」
【そうかあ?ワシはメロンパンの方が好きじゃ】
【ノッブは味音痴ですからね】
【なにおう!?ワシはグルメじゃぞ!?】
【はいはいはい、喧嘩しないで食おうぜ】
ノッブ達が一瞬喧嘩しそうになったけど、金髪の身体の大きな英霊が割り込んで仲裁する。
「美味い、シズク。これはもう無いのか?」
「……あるが、1回で全部は出さないぞ」
「けちー」
茨木がケチと言って口をすぼめるのを見て、お兄ちゃん達が楽しそうに笑う。お兄ちゃんの家はいつも笑顔に溢れていて、そして急に訪ねてきても嫌な顔を1つせずに迎えてくれるから本当に嬉しい。
「横島さん。すいません、急に訪ねてきてしまって」
「いやあ、全然良いですよ。俺あんまりで歩いたりしたら駄目って言われてるんで遊びに来てくれると本当に嬉しいですよ」
お兄ちゃんはあんまり体調が優れてない、本人は全然覚えてないけど一瞬だけ物凄く怖かった。それがお兄ちゃんの体調不良の原因だとするのなら1度黒おじさんと赤おじさんに尋ねてみても良いかもしれないと思う。
「それじゃ、外に遊びに行かないほうが良いですね」
「何か皆で遊べる物はありますか?」
「あるある、ゲームもあるし、メンコとかベーゴマもあるし」
お兄ちゃんの家には魔界では見ない、面白い玩具が沢山ある。きっと今日もそれを出してくれるんだろうと思い、ワクワクしながらアリスはシズクが出してくれたお菓子を頬張るのだった……。
~天魔視点~
天竜姫の所にお勉強と言う事で妙神山に行ったのですが清姫様が横島の所に行くと言うので、天竜姫と一緒に横島の家に遊びに来る事になったのですが……。
「フカフカッ」
「ヨーギィッ!」
「ぷぎゅう」
「ステイステイステイ!!!庭を穿り返さないッ!!」
見たことのない使い魔が凄く増えてました。天竜姫に視線を向けると天竜姫も驚いている様子なので、最近使い魔にしたのでしょうね。
「お兄ちゃん、何をして遊ぶのー?」
【庭って事は外で遊ぶ物ですか?】
英霊とゾンビ……本当に横島の所は賑やかで面白い所ですね。鞍馬山ではあんまりお友達がいないので余計にそう思います。
「ちょっと待ってね?んぎいッ!!」
「ヨーギイー」
岩っぽい体をした小さな使い魔を気合を入れて持ち上げ、地面から引き離す横島。確かに庭をずたずたにされると大変だから引き離そうとしていると思うんだけど……。
「駄目って言わないんですか?」
「お兄様の使い魔じゃないからね。あんまり言う事聞いてくれないんだよ」
紫が日傘をくるくると回しながら私の疑問に答えてくれる。
「横島の使い魔じゃないんですか?」
「うん、あっちは使い魔になりたいみたいなんだけどね。お世話する所がないから」
「「あー」」
確かにその通りだ。横島の家は人間の一般的な大きさの家だ。あれだけ沢山の使い魔は面倒を見切れないだろう……。
(上手く行きそうですね、天竜姫)
(うん!横島も喜んでくれそう)
(がんばろー)
妙神山で3人で遊んでいる時に天竜姫と私と紫の3人なら出来ると思ったある事。今日横島の家に来た事でそれが絶対喜んで貰えると私達は確信し、思わず笑みを浮かべる。
「これね。これをこうやって糸を巻いて、それッ!!」
バケツに布を張った物の上に金属で出来た小さな駒を回す横島。初めて見るそれに思わず天竜姫と一緒に手を叩いた。
「器用ですわね。横島様」
「まぁな。こういう遊びは好きだからね、子供の時から遊んでるし。じゃあ天竜姫ちゃんと天ちゃんもやってみようか」
横島に教わりながら私達はベーゴマという駒を使って遊び始めたのですが……。
「パクッ!モグモグモグ……げふう」
「けっぷ」
駒が弾け跳んで地面に落ちる前に鮫のような使い魔と金属質の光沢を持つ小さな竜が飛びついて食べてしまい、今庭に転がって満足そうに転がっている。
「お腹一杯だって」
「うん、見れば分かるかな……んーベーゴマは中止ッ!」
横島が手で×を作るのを見て私達の誰も反対する事はなく、むしろちょっと申し訳無い気持ちになったのは言うまでも無かった。というのも、被害はそれだけではなく、庭の端のほうでは……。
【い、痛い……痛すぎる……】
【ゆ、油断してましたね……】
「い、痛いでござるよ……」
神魔の力でフルパワーで回転させられたベーゴマの回転は凄まじく、ぶつかった瞬間に砕け散るのも珍しくなく、もっと言えば砕けた破片が周囲に凄まじい被害を齎している有様で……破片が命中してしまった人達がぶつかった箇所を押さえて蹲っている。
「……ちゃんと掃除を手伝う」
「……はい」
「なんで私まで……」
破壊してしまった横島の家をシズク様達が掃除をしてくれていて……楽しかったとは言え少しはしゃぎすぎてしまったかもしれないと申し訳無い気持ちになる。
「お兄ちゃん、怒ってる?」
「全然、なんで怒るんだ?子供は遊んで物を壊すのは良くある事だからな。そんなのじゃ怒らないさ、ただこれ以上壊すとシズクが凄く怒ると思うから今度から遊ぶのは家の中で遊べる物にしようか」
困ったように、でも怒っている訳ではなく、楽しそうに遊んでいる私達を見て本当に楽しそうにしている横島に頷いて、今度は家の中で双六をして遊ぶ事になったんですけど……。
「お兄ちゃんのサイコロだけ凄いね」
「イカサマとかしてないよね?」
【お兄さん、凄いですね……】
「うーん……俺は見てるほうが良いかもしれないなあ……」
横島がサイコロを振ると絶対良いマス目にしか止まらなくて全員が何とも言えない顔をすることになってしまうのでした……。
~???視点~
薄暗い研究室の中に無数の細長いポッドが並べられ、その中には無数の魔獣が浮かんでいる。だがそこにいるのは純粋な生物ではなく、体の一部が機械や別の物に置き換えられた生物兵器とも言える生き物達だった。
「んんん、流石ですなあ。拙僧が与えた少しの情報でここまで出来ますか」
「蘆屋さんのお蔭ですよ。生物兵器の製造を禁止され南部だけではなく、西部や東部グループまで破滅してしまい、路頭に迷っている所を助けてくれたことに感謝しています」
何人もの科学者が蘆屋に向かって何度も何度も頭を下げる。その光景に蘆屋は人のいい笑みを浮かべながらも、内心は見下した笑みを浮かべる。
(これだから人は愚かなのでしょうね、まぁ愚かだから拙僧の仕事も楽なのですがね)
表立って攻撃を仕掛けるだけが全てではない、このように裏に回り人間同士の疑心暗鬼、そして権力欲。そして認められたいという承認欲求……それらをほんの少し刺激するだけで仲間割れをし、何もしなくても人間は崩れていくのだ。
「後は美神令子達に依頼を出して、私どもの霊能兵器と戦わせるつもりです」
「なるほどなるほど、しかし美神令子達は強いですからなあ。どれ拙僧からもう1つ贈り物をしましょうか」
そう言うと蘆屋は懐から赤と金の美しい鳥の羽を取り出した。
「そ、それは……」
「ガルーダの翼ですよ、これを差し上げましょう。私共と私の主君は貴方達に期待しておりますので、では次の成果を楽しみにしていますよ」
南部、西部、東部グループから切り捨てられた霊能兵器部門が作り出した程度としては低い霊能兵器を手にして蘆屋はガープが科学者達が与えた研究所兼屋敷を後にしようとし、足を止めた。
「失礼ですが、このホムンクルスは?」
「あ、ああ。はい、我々のノウハウを次ぎ込み作り出したホムンクルスの1号です。能力としては霊力の物質化を重点においております」
解説を聞きながら蘆屋は培養液に浮かぶ少女の姿をしたホムンクルスを見つめる。
(なるほど、人間も侮れませんな)
蘆屋から見ても完成度の高いホムンクルスだ。幼い少女の姿は人間の油断を招き、そして霊力を物質化させるというのも中々に面白い能力だろうと蘆屋は笑う。だが1番面白いと感じたのは少女というアバターを選んだ事にあった。
(んふふふ、これはどうなるか見物ですねぇ)
霊能兵器にホムンクルス。その何れも強力な武器ではあるが、人外という区切りにいる以上横島にどれだけ効果があるのかと言うのは不確定要素であるが、それすらも計算していない科学者達に馬鹿めと吐き捨て、今度こそ蘆屋は屋敷を後にするのだが、突如その足を止めた。
「……なるほど、人間の割には技術があると思いましたが……そういうことですか」
人造魔獣に神魔、そしてゴーレムなどを使役する術を科学者の割りに習得出来ていると思っていましたが……拙僧がてこ入れする前に更に梃入れした存在がいるようだ。
「とは言え見捨てられているようならば問題はありませんな」
恐ろしい神通力を秘めた純白の翼を踏み躙り、今度こそ蘆屋はその場を後にするのだった……。
リポート8 穏やかな日々/暗雲 その3へ続く
と言う訳で今回のほのぼのはロリーズでした。でもなんか悪巧みをしているようで、そろそろ横島専用の幻想郷が誕生するかもしれませんね。そしてシリアスは蘆屋が人造魔族編のてこ入れに参上、こちらもフラグメインの話となりました。次回はロリーズの続きとシリアスでお送りしますので次回の更新もどうかよろしくお願いします。