GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! FINAL 作:混沌の魔法使い
リポート9 穏やかな日々/暗雲 その3
~愛子視点~
めちゃくちゃ久しぶりに横島君が学校にやって来たのは凄く嬉しいんだけど……ちょっと別の問題があった。
「横島君、それどうしたの?」
「ん、いやさ。置いて来ようとすると暴れるから連れて来たんだ」
「ふかぁ!」
丸っこい体の鮫っぽい奇妙な生き物が小さな両手をぶんぶん振る。
「よ、ヨギ……」
動くたびにミシミシと床が音を立てるのでおっかなびっくりという様子で動いている尻尾が扇状に広がっている1本角を持つ生き物。
「……ココ」
「モーノッ!」
そして金属質な光沢を持ち、既に床にめり込んでいる獣を前髪で目を隠している犬のような生き物が救出しようと頑張っている。
「みむッ!」
「ぷぎゅう」
おっと、そこにチビとうりぼーも加わってるけど、3匹でも全然動かないとかどれだけ重いの?。
「ぴい」
そして陽炎を纏っているやけに暖かい人懐っこい芋虫……少し見ない間にとんでもない事になっている。
「横島さん、新しい使い魔ですかのー?「ヨッギシャアッ!!!」ふぐおうッ!?」
「「「タイガーッ!!!」」」
タイガー君が1匹の頭を撫でようとしたら腹パンされて天井まで吹っ飛ばされ、思わず私達の絶叫が重なった。
「ヨギッ!」
ふんすっと鼻息荒く、触れてくれるなと言わんばかりの態度をしているのを見て、私を含めて可愛いと思ってみていた女子達が距離を取った。
「……えふ……横島さん……どういう?」
「すまんタイガー、こいつら俺の使い魔じゃなくて、魔界でもめちゃくちゃ危険って言われる魔獣の子供なんだ。だけどなんか懐いてアリスちゃんの所に預けてるんだ」
見た目は可愛いのに魔界でも危険とされる魔獣と聞いて、思わず身構えるが床に座って、ぺちぺちとボールを叩いている素振りを見れば非常に大人しく見えて、その上可愛いが……根本的に人に馴れるつもりがないのかその視線は警戒するように辺りを窺っている。
「……横島、お前プリントやるから教室から出てくれ、危険すぎる。多目的室の鍵を職員室で受け取って今日はそっちで自習してろ」
「すんません」
横島君が移動するとぞろぞろと皆付いていく、その姿を見送りながら私は折角横島君が学校に来たのにと肩を深く落とすのだった……。
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「ふかー、フカフカ」
「愛子。なんか懐かれたな」
「……そうね」
プリントを届けるように多目的室に行ったらなんか懐かれた。私の周りをちょこちょこと動き回り、興味津々と言う様子で私を見つめている。
【基本的に人間嫌いだからな、お前は人間じゃないから心を許したのだろう】
「心眼せんせー、それだと俺はどうなるんだ?」
【お前は人外に好かれることに特化してるからな、それの所為だと思え】
何とも言えない顔をしている横島君だけど、これはある意味チャンスなのでは?と前向きに考える事にした。
「判らない所あるでしょ、教えてあげるわ」
「マジで?助かるぜ、愛子。全然判らなくてなぁ……」
休んでいる時間が長くて自習では判らない事があるだろうと思い。これを機会に一気に距離を詰めてしまおうと思い、私も多目的室で横島君の隣に座って一緒に自習を始めるのだった……。
「そこは、そこの数式を使って」
「あーなるほどなるほど?」
「分かってる?」
「……ちょっとだけ」
なるほどと言いつつ少ししか分かってないの?とからかう様に言って、横島君が申し訳無さそうに笑う……自分で言うのもなんだけど凄くいい感じだと思っていたんだけど……。
【横島。もうすぐ診察の時間だぞ】
「え、あーもうそんな時間か、悪い愛子。まだ俺通院しないといけないからさ、今日は帰るわ」
「あ、うん。分かった、気をつけてね。プリントとかあったら届けてあげるから」
でもその楽しい時間はあんまり長くなくて、時間にして半日くらいかな?お昼休みに入るかどうかという時間で横島君は帰り支度をして多目的教室を出て行ってしまった。
「……まぁしょうがないわよね」
まだ横島君が通院中で激しい運動も駄目というのは知っていたので、しょうがないと割り切り教室へと戻ったのだが……。
「……なんかまた見ない間に横島の周りに幼女が増えてたな」
「なんでだよ、なんであいつばっかりモテるんだよ」
「……でもさ、あれって多分人間じゃないよな?だって横島って人間にモテるか?」
「「「あー……」」」
「なんでそこで私達を見るのかしら?」
「ええ?酷くない?」
横島君が好かれるのは基本的に人外だと、それで私とシルフィーさんを見るのは少し酷いと思う。
「いや、でもよ、結構昔もいたぞ?人間には全然だけど神魔に好かれるの」
「ダーリンの事ね!」
「……そうそう、俺とかね?ははっ」
乾いた笑い声を上げるオリオンさんに私達の誰も何も言えなかったけど……。
「このままだと横島ロリコンになる「そおいっ!!」あーっ!」
横島君がロリコンになるんじゃないかと笑った男子に目潰しにラーフルを投げ付けた私は悪くないと思うけど、なんか憐れな者を見る目で他の女子達に見られ、何とも言えない気持ちになったのはいうまでもない。だけどその……横島君が幼女嗜好になるとか言う最悪な事を言ったほうが悪いと思うので、私は絶対に悪くないと主張したい所である。
~紫視点~
アリスとアリスが連れてきた沢山の魔物達。アリスの家でお世話になっている時に懐いてくれたので私も当然思い入れはありますし、懐いてくれているので可愛いとも思うのですが……。
(お兄様に迷惑をかけるのは駄目ですわ)
お兄様の家はそこまで大きくはない、正直な所を言えば凄く狭い。天竜姫に天魔にアリス、それに魔界の獣と来れば完全にキャパオーバーだ。眼魂に入れるノッブ達が眼魂に入ってくれたお蔭で寝るところはありましたが、食事をするにもお風呂に入るにも一騒動が起きてしまう。これでは駄目だ、お兄様に迷惑が掛かってしまう。
(しかし、天竜姫と天魔には感謝ですね)
アリスはかなり意固地になっていたのだが、自分よりも年下(に見える)天魔と天竜姫にこう言われては折れない訳には行かなかった。
【あんまり横島に迷惑を掛けるのはどうかと思いますよ?】
【私ももっと遊びたいですけど……色んな人に迷惑を掛けるのはどうかと思います】
とてもまともなことを言ってくれたのですが、とてもにこやかに次の瞬間私が判断に悩む事をにこやかに告げた。
【【私達の所に遊びに来て貰うと良いとも思うんです】】
お兄様の家で狭いのならば自分達の家って言うのは判らないでもないんですけど……ちょっと正直あれかなと思ってしまったが、明後日には帰ると言う事に同意してくれたので、まぁしょうがないと思うべきだと思うのです。
「おーい、紫」
「はい?わっと!?」
茨木に呼ばれて振り返るとゴムボールが飛んできて、それが身体にぽんと当たる。
「紫ちゃんアウトー」
ピーっという笛の音とお兄様のアウト宣告が響き、牢屋……という設定のお兄様が座っているレジャーシートの上から先にアウトになっていた面子が弾かれたように走り出した。
「今度は紫が鬼ね」
【逃げろー】
「ず、ずるいですわよッ!?不意打ちです!」
追いかけっこをしながらボールを当てあうという遊びをしていて、ぼんやりとしていてワーッと逃げていくリリィ達に思わずずるいと叫ぶが、もうどこにいるかも分からない有様だ。
「むう」
「はは、頑張れ紫ちゃん」
「はい!頑張りますわ、お兄様」
そう言うと同時に私は障子を作り出し、その中に身を潜めて転移する。そもそも転移能力を持つ私を鬼にすると言うのがどういうことか……。
「教えてあげます……へぶうっ」
「紫の能力はちゃーんと分かってますよーだッ!!」
「逃げろー♪」
転移で出現した瞬間に天魔の扇でボールを跳ね返され、とんでもなく憐れな声が出た。お兄様が何とも言えない顔をして見ているのに気付き、顔の痛みとは別に心が痛んだ。
「良いでしょう、良いでしょう……私を本気にさせたことを後悔させてあげましょうかッ!!お兄様!ボールをください!」
「え、あ。うん」
お兄様から渡された予備のボールを2つ、私の顔面に跳ね返ってきたボールで計3つを障子の中に取り込み、いつでも射出できる準備に入る。
「なんかアリス。凄く嫌な予感がするな……」
「……うん、紫。凄く怒ってる」
「……やりすぎた」
【でも、ボールは3つですし、だいじょ……キュボッ!……】
リリィの大丈夫という言葉は最後まで発せられる事は無く、凄まじい勢いで飛んできたボールに吹っ飛ばされ、障子の中に飲み込まれて消えていった。
「……死ぬ事ない?」
「全力で逃げるッ!!」
横島の前で無様な声かつ、余りにも変な姿を見せ付けることになった紫は完全に切れており、デストロイヤーかつ、暗殺者のように茨木達を追回し、1人ずつ確実にボールを当て、障子の中に閉じ込めていく……それは正しく狩りの形相を呈していた。
「元気そうだなあ」
【魔界でもあんな風に遊んでいたから問題なかろう。紫はちゃんとしているしな】
ボールを射出してもしっかりと回収し、周囲に被害を齎していないので大丈夫だろうと横島と心眼は判断していた、何故ならば魔界であんな風に遊んでいたのでちょっとはしゃぎ過ぎている位だろうとと認識していたのだ、その為にレジャーシートの上で丸くなり眠っているチビ達の頭を撫でながら、本気で狩られると恐怖し逃げているアリス達を微笑ましそうに見つめているのだった……。
~美神視点~
おキヌちゃんと舞ちゃんの六女の入学の予定も決まり、横島君の完治の目処も立ち。状況自体はかなり良い方向に傾いてきていると言っても良いと思っていたんだけど……ここでもまた想定外の事態が起きようとしていた。
「この依頼、断れないかしら?」
琉璃からの直属の依頼だけど、私はこの依頼を受ける事は正直断りたかった。依頼の内容事態は単純、良くある古い屋敷に巣食っている怪異の駆除と除霊なんだけど、霊感がこの山は受けるなと囁いてる。
(どうもきな臭いのよね)
立地はまるで用意されたかのような人里から離れた山の中、しかも周囲には何の霊的歴史もなく、霊症とは皆無の土地……リゾート開発でかつて華族が使っていた屋敷を改築したいというこれも良くある内容なのだが……どうも違和感を感じ、断れないか?と尋ねたのだが琉璃は申し訳無さそうに目を伏せて首を左右に振った。
「とても厄介な所からの依頼なんです。しかも美神さん達を指名しています。依頼両は最低4億、最高で6億まで出すと」
昔の私なら飛びついていたけど……今の私なら絶対に引き受けないわね。問題はどこからの依頼かとなるけど……琉璃が断れない場所からの依頼となると可能性は3つ……。六道はまずないので、それ以外でもっと厄介な所からと見て間違いないだろう。
「国際?それとも霊防省?」
琉璃はGS協会のトップなのである程度はその権限で依頼を断れる筈だ。有名な所で言うとやはり日本3大悪霊や、殺生石に関する依頼はGS協会として発注する事も受注する事も禁止している。今回の華族の屋敷の件だが、私の勘では禁則に近い依頼だと感じている。国際GS協会か、それとも国からの命令かと問いかけると琉璃は深い溜め息を吐いてから依頼主を告げたのだが、それは信じられない言葉だった。
「両方です」
「は?」
「国際GS協会と霊防省の両方からです」
ありえないという言葉が脳裏を過ぎる。国際GS協会はその名の通り国の間の大きな霊症に対応するための組織で、霊防省はあくまで日本の範囲の仕事だ。その2つが連盟で依頼を出すなんて事は到底考えられない……。
「……査察部が関係してる?」
「分かりません……横島君の事は漏れてないと思うんですけど……」
査察部が日本にいる時は横島君を遠ざけていた。あくまで横島君は除霊助手であり、本GS免許はまだ配布されていないから報告する義務はないから……どこかで情報が漏れた……あるいは……。
「美神だからかしら?」
「……その可能性はあります」
ママが生きていた時はママは国際GS協会と日本のGS協会の両方に所属していた。その娘と言う事で高難易度の依頼をやらせて実力を図ろうとしている……前向きに受け止めればそうだけど……裏があるようにしか思えない。
「多分美神さんたちの実力と、なんでアスモデウス達に狙われているのかの見極めだと思います。監視とかは多分……ないとは思いますし、一応偽造の線も疑ってはいるんですけど……」
「良いわ、断ってこれ以上西条さんと琉璃の立場を悪くする訳には行かないしね」
「……すみません」
「謝るのはこっち、散々迷惑かけてるしね」
断って西条さんと琉璃の代わりの人員が来たらまず十中八九、横島君は逮捕される事になる。表向きは保護と言う形にして、文殊だけを精製するように洗脳、あるいは……自我崩壊し、機械に組み込まれるまで想定される。
「出来れば偽造だと良いんだけどね……」
「でも逆を言うとそれを偽造出来るだけの誰かがいるって事になりますよね」
どっちにせよ面倒なことになって来ている事は間違いない……偽造か、それともどの事件も私達が中心になって事件が解決されているからそれを疑っての事だと思うけど……冥華おば様の言っていた人間の悪意。その意味と、恐ろしさの片鱗を私と琉璃は感じ始めているのだった……。
リポート10 悪意 その1へ続く
次回からは章その2にはいります。なのでオサレなレクスが再び出てきます、後はそうですね。サバイバルの館の半分はマスコットが持って行きます。後ついでにガルーダもお持ち帰りしますし、人造魔族もお持ち帰りする事になると思います。家が狭い? はは、もう無理だって理解してもらうための話になると思ってくださいね。では次回の更新もどうかよろしくお願いします。